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差押えの効力
- 財産差押えの通則
- 破産宣告と財産の差押えとの関係
- 差押えの効力(3件)
- 差押財産の帰属
- 超過差押え
- 無益な差押え
- その他
- 各種財産に対する差押え
先の差押調書謄本が送達されたと認定し、これにより滞納国税の徴収権の消滅時効が中断され、その後に行われた差押処分が適法であるとされた事例
請求人は、土地権利証と白紙委任状を友人に渡したため、本件土地を譲渡されてしまったが、当該友人を刑事告発はしておらず、かつ、その代償の一部として金銭を受領しており、本件譲渡を事後において容認したものと認められ、課税処分は適法である。したがって、課税処分の違法を理由として本件差押処分の取消しを求めることはできない。
なお、電話加入権の差押調書謄本は請求人の住所地に適法に送達されたと認められ、滞納国税の徴収権は消滅時効により消滅しておらず、また、請求人が滞納国税を納付しなかったため、原処分庁が本件差押処分を行ったものであり、原処分は適法である。
平成10年4月13日裁決
差押調書の滞納税額の記載の一部に誤りがあっても差押処分が無効であるということはできないとした事例
請求人は、差押調書に記載された滞納税額に誤りがあるので、差押調書に瑕疵があり、瑕疵ある差押調書に基づいて行われた差押処分は無効である旨主張する。
しかしながら、数個の租税債権を差押債権として行われた差押処分は、各租税債権ごとに数個の差押処分が競合するものではなく、差押処分は1個であり、従って、原因となった租税債権の一部に数額の誤りがあっても、そのことによって、直ちに差押処分の効力が左右されるものではないと解されるところ、本件については、本件差押調書に記載された滞納国税の合計額は、その誤りが特に大きいとはいえないこと、及び滞納税額に誤りがなければ本件差押物件を差し押さえなかったであろう特段の事情があるとは認められないことからすれば、本件差押調書の滞納税額の記載の一部に誤りがあったというだけで、本件差押処分が無効ということはできない。
平成13年12月19日裁決
原処分庁が差し押さえた滞納者が裁判上請求している貞操侵害を理由とする慰謝料請求権は、差押えの時点においては、いまだ行使上の一身専属性が失われたとはいえないから、差押えの対象とすることができない財産に当たるとして、差押処分を取り消した事例
原処分庁は、請求人が加害者を被告として提起していた損害賠償請求訴訟の第1審において認容された「貞操を侵害されたことにより請求人が被った精神的苦痛に対する慰謝料請求権」を、判決の言い渡しの日に差押さえた処分は、慰謝料請求権が差押禁止財産に当たらないから適法である旨主張する。
しかしながら、貞操を侵害されたことを理由とする被害者の慰謝料請求権は、被害者が慰謝料請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、被害者がなおその請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから、なお行使上の一身専属性を有するものというべきであって、被害者の債権者はこれを差押えの対象とすることはできないものと解される。
これを本件についてみると、本件慰謝料請求権については、加害者が控訴して、その後において裁判上の和解がされているから、差押処分の時点においては行使上の一身専属性が失われたとはいえないから、差押えの対象とすることができないものというべきである。
よって、本件差押処分は、違法であるといわざるを得ない。
平成14年2月8日裁決