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超過差押え
- 財産差押えの通則
- 破産宣告と財産の差押えとの関係
- 差押えの効力
- 差押財産の帰属
- 超過差押え(6件)
- 無益な差押え
- その他
- 各種財産に対する差押え
差押処分が超過差押え又は無益な差押えに該当しないとした事例
裁決事例集 No.24 - 165頁
請求人の滞納国税を徴収するため差し押さえた不動産の価額がその滞納国税の額を超過しても、請求人が当時他に本件滞納国税の額に見合う適当な財産を所有していない上、本件不動産について不動産登記手続上これを分割して差し押さえることができないものであるから、直ちに超過差押えということはできず、また、本件差押処分当時本件不動産上に本件滞納国税より優先する他の国税、地方税、その他の債権について差押処分若しくは担保権の設定行為等がなされておらず、本件不動産の処分予定価額が本件差押処分に係る滞納処分費を超える見込みがないものとは到底考えられないから、本件差押処分は無益な差押えに該当しない。
昭和57年6月4日裁決
課税処分の違法を理由として差押処分の取消しを求めることはできず、本件差押処分は超過差押えとはならないとした事例
裁決事例集 No.30 - 181頁
請求人は、本件差押処分について、請求人が審査請求中である違法な本件課税処分に対応する部分は違法であること及びその結果、本件課税処分に対応する部分以外の部分については国税徴収法第48条第1項に規定する超過差押えに該当することから、本件差押処分はその全部を取り消すべきであると主張するが、課税処分が当然無効である場合又は違法を理由として取り消された場合は、これに基づく差押処分の違法を招来するものであるところ、本件課税処分について重大かつ明白なかしがあるとは認められず、また、本件課税処分は取り消されていないから、本件課税処分に係る滞納国税に対する差押処分の取消しを求める請求人の主張には理由がなく、また、それを前提として超過差押えとなるという請求人の主張にも理由がない。
昭和60年9月10日裁決
滞納処分により債権差押えをする場合、全額差押えを原則としており、被差押債権の範囲を一部とするか否かは徴収職員の裁量に任されていて、その濫用が認められない限り、債権の全額差押えは違法とはいえないとした事例
請求人は、原処分庁が第三債務者に対して、請求人が有する株式全部についての株券交付請求権を差し押さえたことは、滞納国税の額をはるかに上回る差押えであり、このことは、国税徴収法第63条ただし書の規定を無視した違法、不当なものである旨主張するが、本件株式については、請求人と第三債務者の間で株券が発行済みか否か訴訟系属中であり、同株券が原処分庁へいつ交付可能となるのか、その時期が特定できない状況からすると、原処分庁が国税徴収の確実を期するため、徴収すべき滞納国税の額にかかわらず株券交付請求権の全部を差し押さえたとしても、違法とはいえない。
平成4年4月8日裁決
土地と建物の差押えが超過差押えに該当しないとした事例
請求人は、原処分庁は滞納国税を相当額上回る価額の土地3筆と建物を差し押さえたのであるから、国税徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第1項に規定する超過差押えに該当する旨主張する。
しかしながら、当審判所の調査によれば、請求人は本件差押財産のほかに換価できる財産を有しておらず、差押財産である土地と建物は一体として請求人の居住の用に供されており、また、これらの全部に差押国税に優先する根抵当権が設定されていると認められるところ、仮に、原処分庁が差押財産のうちの一部の財産を差し押さえるとすると、分割することによって差押財産の経済的価値が害されることになり相当ではない。
以上のことからすれば、原処分庁のした差押処分は、差押財産の担保価値の維持、有効利用の見地、優先債権者への配当等を考慮した妥当なものといえるから、国税徴収法第48条第1項に規定する超過差押えには該当しない。
平成13年8月8日裁決
差押不動産は一筆の土地で分割できないものであり、滞納国税の額に比較して差押不動産の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であるとは認められないから、超過差押えに当たらないとした事例
請求人は、差押処分の対象となった自宅底地以外に不動産を所有していたので当該不動産を差し押さえるべきであったと主張する。しかしながら、差押財産の選択については、徴収職員の合理的判断にゆだねられているところ、請求人が差し押さえるべきであったと主張する不動産は換価に不適又は不便な財産であるから、本件自宅底地の差押えには合理性を欠いた点はなく、違法ではない。
国税徴収法第48条第1項が規定する超過差押えとなるか否かを判断する場合、一般的には、差押財産の処分予定価額と徴収すべき滞納国税(延滞税等の附帯税も含む。)の額とを比較して判定すべきものであるとしても、差押財産の処分予定価額が滞納国税の額を超過した場合に、直ちに当該差押えが超過差押えとして違法となるものではなく、他に滞納国税を満足できる換価に見合う財産があるにもかかわらず、滞納国税の額に比較して差押財産の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であると認められるような財産を差し押さえたというような特段の事情がある場合に、初めて当該差押えが違法となるものと解される。
また、複数の財産を差し押さえた場合において、そのうちの一部の差押えによって国税徴収の目的が十分達成できるにもかかわらず、あえて他の財産も差し押さえたときは、超過差押えとなる余地もあり得るが、差押えに係る財産が法律上分割できない場合、あるいは分割することはできるが、分割することにより物の経済的価値を著しく害する場合には、たとえその財産の価額の合計額が滞納国税の額を超過したとしても違法とはならないと解される。
原処分時の本件差押自宅敷地の処分予定価額は、処分予定価額が上回っているが、本件差押自宅敷地は一筆の土地で分割できないものであり、本件滞納国税の額に比較して本件差押自宅敷地の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であるとは認められない。
平成15年4月7日裁決
裁決により第二次納税義務の限度額の一部が取り消されることによって超過差押えになるとしても、審判所は差押処分を取り消すことはできないとした事例
本件各預貯金の差押時点において、本件各差押財産の処分予定価額の合計額は滞納額を下回っていたと認められるが、本件納付告知処分の一部が取り消されることによって、本件各差押財産の処分予定価額が第二次納税義務の限度額を超過する状態になると認められる。
ところで、先行する課税処分と後続の徴収処分との関係については、課税処分が租税確定手続であり、後者が租税徴収手続であって、両者は別個の法律的効果の発生を目的とする別個独立の行為であるから、前者の違法は後者に承継されないと解するのが相当であり、第二次納税義務の徴収手続の場合も同様に、先行する納付告知処分に違法があったとしても、その違法性は当該第二次納税義務に係る国税を徴収するための滞納処分には直ちに承継されないと解するのが相当であるから、第二次納税義務に係る納付告知処分の一部が取り消されたとしても、そのことをもって直ちに当該第二次納税義務に係る国税を徴収するための滞納処分を違法ということはできない。
そして、国税徴収法第79条第2項第1号は、差押えに係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消し、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至ったときは、差押財産の全部又は一部について、その差押えを解除することができる旨規定しており、後発的事由により超過差押えとなった場合の違法状態の是正措置が設けられているところ、同号の規定により差押えを解除するか否か、また、解除する場合に、どの財産の差押えを解除するかは徴収職員の合理的な裁量にゆだねられていると解されることからすれば、後発的事由により超過差押えとなった場合に、審判所が差押えを取り消す財産を選択し、当該財産の差押えを取り消すことは許されないと解される。
また、差押えの解除と取消しの法律的効果の相違も考慮すれば、後発的事由により超過差押えとなったとしても、審判所は差押処分の取消しをすることはできないと解される。
したがって、本件納付告知処分は一部を取り消すべきであるものの、これを理由として本件各差押処分の一部又は全部を取り消すことはできない。
《参照条文等》
国税徴収法第48条第1項、第79条第2項第1号
平成22年2月16日裁決