ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.73 >> (平19.3.7、裁決事例集No.73 79頁)

(平19.3.7、裁決事例集No.73 79頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)がリース契約を締結するに際し、工事請負業者に依頼して、建物附属設備の金額を器具及び備品等の金額に含めた内容虚偽の見積書をリース会社に交付させ、本来、損金の額に算入できない金額をリース料として損金の額に算入したもので、これは隠ぺい又は仮装の行為に当たるとして、原処分庁が重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該行為は、新店舗開設等の資金調達を図る目的で行ったにすぎず、税金を不当に軽減する意図はなかったから、隠ぺい又は仮装の故意はないとして、同処分の全部の取消しを求めた事案で、主たる争点は、隠ぺい又は仮装の故意の有無である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 平成12年8月1日から平成13年7月31日まで、同年8月1日から平成14年7月31日まで、同年8月1日から平成15年7月31日まで及び同年8月1日から平成16年7月31日までの各事業年度(以下、順次「平成13年7月期」、「平成14年7月期」、「平成15年7月期」及び「平成16年7月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税についての審査請求(平成18年3月14日請求)に至る経緯及び内容は、別表1−1のとおりである。
 なお、以下、平成17年9月20日付の本件各事業年度の法人税に係る重加算税の各賦課決定処分(平成13年7月期及び平成14年7月期については平成17年9月27日付でされた変更決定処分後のもの。)を「本件法人税各賦課決定処分」という。
ロ 平成13年8月1日から平成14年7月31日まで、同年8月1日から平成15年7月31日まで及び同年8月1日から平成16年7月31日までの各課税期間(以下、順次「平成14年7月課税期間」、「平成15年7月課税期間」及び「平成16年7月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)についての審査請求(平成18年3月14日請求)に至る経緯及び内容は、別表1−2のとおりである。
ハ 請求人が、平成17年7月13日に、原処分庁に対して提出した本件各事業年度の法人税の各修正申告書(以下「本件法人税各修正申告書」という。)及び本件各課税期間の消費税等の各修正申告書(以下「本件消費税等各修正申告書」という。)の内容は、別表2−1及び別表2−2のとおりである。

トップに戻る

(3) 関係法令等

イ 国税通則法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
ロ 法人税法施行令第136条の3《リース取引に係る所得の計算》第1項本文及び同項第3号は、内国法人がリース取引をした場合において、そのリース取引が、リース取引の目的となる資産(以下「リース資産」という。)の種類、用途、設置の状況等に照らし、リース資産がその使用期間中当該賃借人によってのみ使用されると見込まれるものであること又はリース資産の識別が困難であると認められるものであるときは、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時に当該リース資産の売買があったものとして、各事業年度の所得の金額を計算するものとする旨規定している(以下、この規定の適用により売買があったものとされるリース資産を「リース不適格資産」といい、その他のリース資産を「リース適格資産」という。)。
ハ 法人税基本通達12の5−2−15《リース資産の取得価額》は、リース不適格資産の取得価額は、原則として、そのリース期間中に支払うべきリース料の額の合計額によるものとし、そのリース取引に係る契約書等により、そのリース料の額の合計額のうち賃貸人におけるそのリース資産の取得価額から成る部分の金額を区分することができる場合には、その賃貸人におけるリース資産の取得価額から成る部分の金額を当該リース資産の取得価額とすることができる旨定めている。

(4) 基礎事実

イ 請求人の組織等
(イ) 請求人は、P市p町○−○○に本店を置き、各種食料品、衣料品及び日用品雑貨等の売買等を目的とする株式会社である。
(ロ) Eは、請求人の設立時(昭和59年8月○日)から現在まで、その代表取締役の地位にある。
(ハ) 本件各事業年度当時、Fが請求人の取締役営業本部長(以下「F本部長」という。)、G(平成16年9月○日退職)が請求人の経理部長(以下「G経理部長」という。)の地位にあった。
ロ 請求人の店舗の開設等
請求人は、平成12年8月にH店を、同年12月にJ店及びK店を、平成14年2月にL店をそれぞれ開設し、また、平成12年12月にM店を改装した(以下、これらの5店舗を併せて「本件各店舗」といい、J店、K店及びM店の3店舗を併せて「J店等」という。)。
ハ その他
請求人は、消費税等の経理処理について税抜経理方式を採用している。

トップに戻る

2 主張

原処分庁 請求人
 通則法第68条所定の重加算税は、各種の加算税を課すべき納税義務違反が隠ぺい、仮装によって行われた場合に違反者に課せられる行政上の制裁措置であり、故意に所得を過少に申告したことに対する制裁ではないから、税の申告に際して、隠ぺい又は仮装した事実に基づいて申告するという点についての認識を必要とするものではなく、結果として過少申告等の事実があれば足りるものであって、「税金を不当に軽減する目的ではないこと」を根拠として、重加算税の賦課要件を充足しない旨の請求人の主張には理由がない。  請求人は、本件各店舗の開設等に要する資金調達を図る目的で、N社との間で、建物附属設備を器具及び備品等に書き換えた各見積書を各リース会社に提出する合意をしたものであり、税金を不当に軽減する意図はなかったものであるから、隠ぺい又は仮装の故意はない。

3 判断

(1) 本件の審査の対象は、重加算税の賦課決定処分であるが、所得金額等のうち重加算税の対象となる金額が重加算税の基礎となる税額の計算に影響を及ぼすものである以上、重加算税の賦課決定処分の適法性の判断に必要な限りにおいて所得金額等についても審理を尽くすことが必要である。

(2) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人とN社との関係
(イ) N社は、Q市q町○−○○に所在し、スーパーマーケットの冷蔵機器の販売施工、店舗の設計施工、建築工事の請負施工及び内装外装の仕上げ工事等を目的とする法人である。
 請求人は、本件各店舗の開設又は改装のための建物の改修工事、設備の設置並びに器具及び備品等の購入等(以下「本件建物改修工事等」という。)に係る業務及びリース会社への見積書の交付等をN社に依頼した。
(ロ) 請求人は、本件建物改修工事等について、N社に「御見積書」及び「見積書まとめ」を作成させて見積金額を取り決め、その後、これに基づいて作成した各見積書をN社からリース会社に交付させていた。
(ハ) 請求人においては、F本部長が、本件建物改修工事等の交渉を行い、当該交渉の経緯等について、逐次、Eに報告していた。
(ニ) N社においては、同社従業員のRが、本件建物改修工事等について、F本部長及びリース会社との交渉を担当した。
ロ 請求人とN社との間の取引実態
 請求人とN社との間でなされた合意は、以下のとおりであった。
(イ) H店について
A N社は、請求人に対して、別表3−1のイからホまでの内容の平成12年7月4日付の「H店見積書まとめ」及び同表のヘの内容の同年8月28日付の「H店追加見積書まとめ」と題する書面(以下、これらの書面を「本件H店見積まとめ」という。)を交付し、また、別表3−2の内容の同年7月31日付の工事請負契約書(以下「本件工事請負契約書」という。)を請求人との間で交わした。
B N社は、請求人に対して、本件H店見積りまとめ及び本件工事請負契約書の内容及び金額をまとめた別表3−3の内容の平成12年8月31日付の「確認書」と題する書面(以下「本件H店確認書」という。)を交付した。
 なお、別表3−3のイの内訳及び金額が、H店における、請求人とN社との間での最終の見積りである。
 おって、別表3−1の丸16及び丸19並びに別表3−2の各金額の合計額と別表3−3の丸8の金額との差額は、別表3−3の丸5(本件H店確認書において追加されたもの。)及び丸7(値引き額)の合計金額である。
C
別表3−3の丸2丸3(別表3−1のニと同一のもの。)及び丸6の一部(別表3−1の丸17の700,000円)は、いずれも建物附属設備又は構築物であり、リース不適格資産と認められる。
 また、別表3−3の丸1丸5及び丸6の一部(別表3−1の丸18の503,720円)は、いずれも器具及び備品等であり、リース適格資産と認められる。
D 別表3−3の丸4の見積りについて
(A) 別表3−3の丸4の見積りの内訳は、見積書等によれば次のとおりである。

a2階空調機器10,292,000円
b2階売場内装工事4,156,350円
c2階ホームセンタースチール什器14,280,000円
d100円均一什器6,987,812円
eその他工事486,838円

(B) 別表3−3の丸4の見積り中、上記(A)のbの2階売場内装工事4,156,350円のみが建物附属設備でリース不適格資産と認められ、その余はいずれもリース適格資産と認められる。
(C) ところで、異議調査におけるF本部長の聴取書には、別表3−3の丸4の見積金額36,203,000円のうち、8,023,000円が空調機器及びその設置工事、24,497,740円が電気工事である旨の記載がある。
 しかしながら、上記(A)の内訳は、いずれも見積書等の客観的資料から明らかに裏付けられるものであり、その信用性を疑わせるに足る事情はなく、F本部長の申述は、信用性の高い上記(A)の見積書等と矛盾するものであり、採用できない。
(ロ) J店について
A N社は、請求人に対して、別表4のとおりの内容の平成12年12月24日付の「J店見積まとめ」と題する書面を交付した。
 なお、J店見積まとめの内訳及び金額が、J店における、請求人とN社との間での最終の見積りである。
B 別表4のヘは、建物附属設備であり、リース不適格資産と認められる。
C  別表4のイからホまで及びトからルまでは、いずれも器具及び備品等であり、リース適格資産と認められる。
(ハ) K店について
A N社は、請求人に対して、別表5のとおりの内容の平成12年12月24日付の「K店見積まとめ」と題する書面を交付した。
 なお、K店見積まとめの内訳及び金額が、K店における、請求人とN社との間での最終の見積りである。
B 別表5のハは、建物附属設備であり、リース不適格資産と認められる。
C 別表5のイ及びロは、いずれも器具及び備品等であり、リース適格資産と認められる。
(ニ) M店について
A N社は、請求人に対して、別表6のとおりの内容の平成12年12月24日付の「M店見積まとめ」と題する書面を交付した。
 なお、M店見積まとめの内訳及び金額が、M店における、請求人とN社との間での最終の見積りである。
B 別表6のイは、建物附属設備であり、リース不適格資産と認められる。
C 別表6のロ及びハは、いずれも器具及び備品等であり、リース適格資産と認められる。
(ホ) L店について
A N社は、請求人に対して、別表7のとおりの内容の平成14年1月29日付の「L店見積書まとめ」と題する書面を交付した。
 なお、別表7のうちヘを除く内訳及び金額(85,284,000円)が、L店における、請求人とN社との間での最終の見積りである。
B 別表7のロは、建物附属設備であり、リース不適格資産と認められる。
C 別表7のイ及びハからホまでは、いずれも器具及び備品等であり、リース適格資産と認められる。
ハ 請求人とN社との間の協議及び確認書の交付等
(イ) F本部長は、本件各店舗の開設等に係る建物内装工事等の建築工事(以下「本件建築工事」という。)の代金をリース契約にしないと請求人の当面の手元資金が減ってしまうと考え、H店の開設に先立ち、本件建築工事の代金をリース契約に含めて契約できるよう、Rにその旨依頼した。
(ロ) Rは、F本部長の申し入れを了承し、本件建築工事に係る見積金額を器具及び備品等の見積金額に上乗せした見積書を作成する方法で、当該工事に要する資金を、リース会社の与信の枠内で調達できるよう計画した。
(ハ) N社は、H店について、請求人との間の真実の見積内容(別表3−3のイの内訳及び金額)とリース会社に交付する見積内容(別表3−3のロの内訳及び金額)とを対比して記載し、リース会社に対しては真実の見積りと異なる内容の見積書を交付することを明らかにした本件H店確認書を請求人に交付し、請求人はこれを確認した。
ニ N社がリース会社に交付した見積書等における仮装
(イ) リース会社が見積書記載の物件をN社から購入してこれを請求人に賃貸することを了解した場合は、N社は、リース会社との間で、リース会社に交付した見積書記載の内訳及び金額で売買契約を締結するとしていた。
(ロ) リース会社がリースの対象とするのは動産に限られ、土地及び建物等はリースの対象としていないことを、E、F本部長及びRも知っていた。
(ハ) N社は、請求人との上記ハの協議に基づき、請求人の了解の下、本件建築工事に係る見積金額を器具及び備品等の見積金額に上乗せする方法で、リース資産の全てが器具及び備品等であるかのように仮装した次のとおりの本件建物改修工事等に係る各見積書又は請求書を作成し、各リース会社に対して交付した(以下、この交付した見積書等を「本件リース会社用各見積書等」という。)。
A H店について
 N社は、別表3−3のイの各内訳及び各金額をいずれもリース取引の対象とするため、請求人の了解の下、別表8のイからハまでのとおりの内容(別表3−3のロと同一内容のもの。)の各見積書を作成し、S社、T社及びU社に対して、それぞれ交付した。
B J店等について
 N社は、別表4、別表5及び別表6の各内訳及び各金額をいずれもリース取引の対象とするため、請求人の了解の下、別表8のニからヘまでのとおりの内容の各見積書を作成し、V社、W社及びX社に対して、それぞれ交付した。
C L店について
 N社は、別表7のうちヘを除く各内訳及び各金額をいずれもリース取引の対象とするため、請求人の了解の下、別表8のトのとおりの内容の請求書を作成し、S社に対して交付した。
ホ 請求人とリース会社との間のリース契約等
(イ) 請求人は、別表9−1及び別表9−2の「B」欄記載の日に、本件リース会社用各見積書等に基づき、同表の「A」欄記載の各リース会社及び各売主との間で、同表記載のとおりの各リース契約(以下「本件各リース契約」という。)及び売買契約等(以下「本件売買契約等」という。)を締結した(以下、本件各リース契約に係るリース料を「本件各リース料」といい、各月額リース料を「本件各月額リース料」という。)。
 なお、本件売買契約等は、J店等に係るN社の見積金額の全額をリース取引にすることができなかったことから締結したものである。
(ロ) 本件各リース契約の各書面には、リース不適格資産である建物附属設備又は構築物の記載はない。
 また、本件各リース契約の各書面には、請求人が支払うべきリース料に含まれる利息等に相当する項目及び金額の記載はない。
ヘ リース資産等の引渡し
 請求人は、本件各リース契約及び本件売買契約等により、別表9−1及び別表9−2の「C」欄記載の物件のほかに、N社が施工した本件建築工事に係る建物附属設備及び構築物(以下「本件建物附属設備等」という。)の引渡しを受けた。
ト 請求人の経理処理
(イ) 請求人は、本件各リース料について、別表10のとおり、本件各事業年度の損金の額に算入する経理処理をした。
(ロ) G経理部長は、別表3−3の丸2の「工事請負契約42,910,700円」を資産計上すべきであると判断し、平成13年7月1日付で、次の仕訳のとおり経理処理した。
 なお、当該経理処理により前払金勘定に計上された金額4,181,100円は、G経理部長が算定した別表9−1のハのリース契約に係るリース料に含まれるとする利息相当額69,685円(月額)にリース期間の60月を乗じた金額であり、請求人は、当該前払金をリース期間の経過月数に応じ支払利息勘定(平成16年7月期は雑損失勘定)に振り替え、本件各事業年度の損金の額に算入する経理処理をした。

(借方) (貸方)
建物附属設備 40,866,685 円 未払金 47,091,120 円
前払金 4,181,100 円  
仮払消費税 2,043,335 円  

トップに戻る

(3) 判断

イ 隠ぺい又は仮装行為について
 上記(2)のとおり、請求人は、N社に、本件建物附属設備等の見積金額を器具及び備品等の見積金額に上乗せさせる方法で、リース資産の金額に本件建物附属設備等の金額が含まれているにもかかわらず、リース資産の全てが器具及び備品等であるかのように事実を仮装した内容の本件リース会社用各見積書等を作成させることにより、リース不適格資産をリース適格資産に仮装し、そのリース料(上記(2)のトの建物附属設備として計上したものに係るリース料を除く。)を損金の額に算入し、また、課税標準額に対する消費税額から当該リース料に係る消費税相当額を控除していたものであり、請求人の当該行為は、通則法第68条第1項にいう課税標準の計算の基礎となるべき事実の一部を仮装したことに該当するというべきである。
ロ 隠ぺい又は仮装行為の故意について
(イ) 通則法第68条に規定する重加算税は、同法第65条から第67条《不納付加算税》までに規定する各種の加算税を課すべき納税義務違反が事実の隠ぺい又は仮装という不正な方法に基づいて行われた場合に、違反者に対して課される行政上の措置であって、故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁ではないから、同法第68条第1項による重加算税を課し得るためには、納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではないと解するのが相当である。
(ロ) 請求人は、リース資産の金額に本件建物附属設備等の金額が含まれていることを知りながら、N社に虚偽の見積書を作成させて、これをリース取引に包含させ、そのリース料(上記(2)のトの建物附属設備として計上したものに係るリース料を除く。)を損金の額に算入し、また、当該リース料に係る消費税相当額を控除したものであり、税額等の基礎となる事実の一部である損金等の額が事実と異なることを知りながら、上記イの行為に及んだものであって、隠ぺい又は仮装の故意があることは明らかであり、それ以上に請求人が過少申告を行うことの認識まで有していることは重加算税の賦課要件ではないから、税金を不当に軽減する意図はなかったから故意がないとする旨の請求人の主張には理由がない。
ハ 重加算税の額について
(イ) 本件各事業年度の法人税に係る重加算税の額
A 本件建物附属設備等の取得価額
 リース不適格資産の取得価額については、法人税基本通達12の5−2−15のとおり定められ、その取扱いは当審判所においても相当と認められるところ、上記(2)のホの(ロ)のとおり、本件各リース契約の各書面には請求人が支払うべきリース料に含まれる利息等に相当する項目及び金額の記載がないから、本件建物附属設備等の取得価額は、本件各リース契約におけるリース期間中に支払うべき本件建物附属設備等に係るリース料の額の合計額によるべきである。
 そして、本件各リース契約におけるリース期間中に支払うべき本件建物附属設備等に係るリース料の額の合計額は、本件各月額リース料に、N社の見積金額に占めるリース不適格資産部分の見積金額の割合を乗じ、その算出した金額にリース期間の60月を乗じて算定するのが相当と認められる。
 そうすると、本件建物附属設備等の取得価額は次のとおりとなる。
(A) H店
a N社の見積金額は、別表3−3の丸8の金額であるところ、上記(2)のロの(イ)のとおり、当該金額のうち、別表11−1の丸2から丸5までの金額(別表3−3の丸2丸3丸4の4,156,350円部分及び丸6の700,000円部分と同一内容のもの。)は、いずれもリース不適格資産部分の見積金額である。
b そうすると、H店の本件建物附属設備等の取得価額は、別表11−1の13の金額となる。
(B) J店等
a N社の見積金額は、別表4のヲ、別表5のニ及び別表6のニの合計金額(131,237,500円)であるところ、上記(2)のロの(ロ)から(ニ)までのとおり、当該金額のうち、別表11−2の丸2から丸4までの金額(別表4のヘ、別表5のハ及び別表6のイと同一内容のもの。)は、いずれもリース不適格資産部分の見積金額である。
b 別表9−1のホのリース契約に係る月額リース料480,000円は、当該リース契約に係る売主がN社とY社の2社であることから、当該月額リース料に、当該2社の見積金額の合計金額に占めるN社の見積金額の割合を乗じた金額とするのが相当と認められ、これを前提とする当該リース契約に係るN社分の月額リース料相当額は、別表11−2の13の金額となる。
c そうすると、J店等の本件建物附属設備等の取得価額は、別表11−2の丸16の金額となる。
(C) L店
a N社の見積金額は、別表7のチの金額から同表のヘの金額を差し引いた金額(85,284,000円)であるところ、上記(2)のロの(ホ)のとおり、当該金額のうち、別表11−3の丸2の金額(別表7のロと同一内容のもの。)は、リース不適格資産部分の見積金額である。
b そうすると、L店の本件建物附属設備等の取得価額は、別表11−3の丸6の金額となる。
B 損金の額に算入できないリース料等
(A) 請求人は、別表10のとおり、本件各リース料を損金経理しているが、本件建物附属設備等(上記(2)のトの建物附属設備として計上したものを除く。)については、確定した決算において、請求人の意思に基づき減価償却資産として認識及び計上する経理処理をしていないこと並びに当該設備等について償却費の科目による費用計上をしていないことが認められることから、当該設備等について支払うべきリース料の額を償却費として損金経理したものとは認められないので、当該設備等の取得価額に見合う本件各事業年度のリース料相当額が、本件各事業年度の損金の額に算入できない金額となる。
 ただし、当該損金の額に算入できないリース料の算定に当たっては、請求人は、別表9−1のハのリース契約に係る月額リース料1,042,300円のうち、257,448円にリース期間の経過月数を乗じた金額のみをリース料勘定で損金経理しているので、当該月額リース料の金額1,042,300円から257,448円を差し引いた784,852円にリース期間の経過月数を乗じた金額(別表12のハの各欄上段の金額)は、減算項目として加味するのが相当である。
 したがって、本件各事業年度の損金の額に算入できないリース料は、別表12のトの各欄下段の金額と各欄上段の金額との合計額となる。
(B) 請求人は、別表9−1のハのリース契約につき、上記(2)のトの(ロ)のとおり、本件各事業年度において月額69,685円にリース期間の経過月数を乗じた金額(別表10のハの各欄上段の金額)を別途支払利息勘定等で損金経理しているところ、当該リース契約の書面には請求人の支払うべきリース料に含まれる利息に相当する項目及び金額の記載がなく、また、当該金額が利息である旨を証する資料も認められないことから、当該金額(別表12のハの各欄中段の金額)は本件各事業年度の損金の額に算入できない。
C 所得金額等
(A) 所得金額
a リース料等
 別表13−1の丸2及び丸3の各金額を所得金額に加算し、また、同表の丸8の各金額を所得金額から減算する。
b 営業雑収入
 別表13−1の丸4の金額を所得金額に加算し、また、同表の9の各金額を所得金額から減算する。
c 雑収入及び雑給与
 別表13−1の丸5の各金額を所得金額に加算し、また、同表の丸10の各金額を所得金額から減算する。
d 支払利息
 別表13−1の丸11の金額を所得金額から減算する。
e 消費税等清算差額
 別表13−1の丸6の各金額を所得金額に加算し、また、同表の丸12の各金額を所得金額から減算する。
f 事業税
 別表13−1の13の各金額を所得金額から減算する。
g 所得金額
 以上を前提として算定した本件各事業年度の所得金額は、別表13−1の丸16の各金額となる。
(B) 課税留保金額及びその税額
 別表13−1の丸19及び丸20の各金額となる。
(C) 納付すべき法人税額
 別表13−1の丸25の各金額となる。
D 重加算税の額
 上記イ及びロのとおり、請求人の行為は、隠ぺい又は仮装の行為に当たり、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているところ、別表12のトの各欄に記載の金額の合計額が重加算税の対象であることに基づき、請求人の本件各事業年度の法人税に係る重加算税の額を計算すると、別表13−1の丸31のとおり、平成13年7月期が○○○○円、平成14年7月期が○○○○円、平成15年7月期が○○○○円及び平成16年7月期が○○○○円となり、これらの額は、原処分の額をいずれも下回るから、本件法人税各賦課決定処分については、いずれもその一部を取り消すべきである。
(ロ) 本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の額
A 消費税の課税標準額等
(A) 課税標準額
 別表13−2の丸2の金額を課税標準額に加算し、また、同表の丸3の各金額を課税標準額から減算する。
(B) 消費税額
 別表13−2の丸6の金額を消費税額に加算し、また、同表の丸7の各金額を消費税額から減算する。
(C) 控除税額
別表13−2の丸10及び丸11の各金額を控除税額に加算し、同表の丸12の各金額を控除税額から減算する。
(D) 消費税等の額
 以上を前提として算定した消費税等の額は、別表13−2の丸21の各金額となる。
B 重加算税の額
 上記イ及びロのとおり、請求人の行為は、隠ぺい又は仮装の行為に当たり、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているところ、別表12のトの各欄に記載の金額(同欄中段の金額を除く。)の合計額が重加算税の対象であることに基づき、請求人の本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の額を計算すると、別表13−2の丸27のとおり、平成14年7月課税期間が○○○○円、平成15年7月課税期間が○○○○円及び平成16年7月課税期間が○○○○円となり、これらの額は、原処分の額をいずれも下回るから、平成17年9月20日付でされた平成14年7月課税期間の消費税等に係る重加算税の賦課決定処分については、その全部を取り消すべきであり、同日付でされた平成15年7月課税期間及び平成16年7月課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分については、いずれもその一部を取り消すべきである。
(4) その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る