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調査審理の範囲
申告内容と齟齬する事由を取消事由として主張することは許されるとした事例
請求人は、信用保証協会からの債務免除益につき、同協会が代位弁済した日の翌日以後の損害金は仮計算によって算出されたものであるから、債務免除益に該当しない旨主張する。(請求人は、この免除損害金を雑収入としたところで、確定申告を行なっていた。)
しかしながら、損害金は本件委託契約書第6条(求償権の範囲)に基づいて計算され、かつ、残高通知書に損害金残高として記載されて請求人に通知され、請求人は、各事業年度の決算に当たり、残高通知書の総求償権残高により借入金を計上し、また、損害金を支払割引料として損益計算書に計上していたと認められる。そして、一般に、債務の免除は、債務者の意思にかかわりなく、債権者の債務者に対する一方的な意思表示によってなされるものであり、当該意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものであるから、信用保証協会が損害金残高から本件土地の譲渡代金のうち元金の弁済に充てた後の残高を控除した金額を減免額として請求人に通知し、これを請求人において受領した以上、この部分は債務免除益となるものである。
平成14年1月24日裁決
審査請求人の主張事由は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものであるとして、その主張を排斥した事例
譲渡担保財産である滞納者の居宅の公売公告処分に対し、譲渡担保権者である請求人は、本件滞納者の生活に係る事情を考慮すべきことを理由として、その取消しを主張する。
ところで、審査請求は、違法又は不当な処分によって侵害された不服申立人の権利利益の救済を図るものであることから、自己の法律上の利益に関係のない違法を審査請求の理由とすることはできないと解するのが相当である。
そして、請求人にとって本件滞納者の生活に係る事情は、請求人に何ら直接的な影響をもたらす事柄ではないから、請求人が当該事情の考慮を求めることは、自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものにほかならず、審査請求の理由とすることのできない理由を主張するものである。
平成18年12月26日裁決
異議審理手続において異議審理庁が原処分の理由を追加した事案で、原処分庁の手続に違法、不当がないとした事例(平成21年分及び平成22年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成26年8月1日裁決)
《要旨》
請求人は、異議申立てに係る審理は、争点主義を採用し、納税者が違法であると主張している争点についてだけ審理・判断を行うべきであるのに、異議審理庁が異議決定において、新たに、原処分では争いがなかった請求人の不動産所得の金額を算定し、総所得金額が原処分を上回るから原処分は適法であるとして棄却したことは、原処分を取り消すべき不当な事由に当たると主張する。
しかしながら、審査請求の対象は原処分であり、裁決は、原処分が違法又は不当であるときにこれを取り消すものであるところ、異議申立ての審理・判断に仮に瑕疵があったとしても、それは原処分に対する不服申立手続において生じた原処分後の事情であって、そのことによって原処分それ自体が違法又は不当となることはないから、原処分を取り消す理由とはなり得ない。なお、原処分は、行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》に規定する理由の提示に欠けるところはなく、また、原処分庁が原処分の理由と異なる理由を審査請求で主張することにつき、これを制限する法令はなく、審判所がこれを審理することは、当事者の主張(争点)を審理の対象とするものであるから、争点主義的運営にも反するものではない。
《参照条文等》
行政手続法第14条
法律の規定に不備がある旨の主張は採用できないとした事例(平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・棄却)
《ポイント》
本事例は、先物取引等の全取引期間における損益の通算を認めないなどの現行の法律の規定には不備がある旨の請求人の主張は採用できないとしたものである。
《要旨》
請求人は、原処分について、国税に関する法律に基づいて実施された処分であることを認める一方、先物取引や株式の譲渡取引の各損益が、各取引を実施した全ての期間の損益を通算してそれぞれ赤字となる場合には、先物取引の差金等決済に係る損失や上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除が認められる3年を超える期間であっても通算をそれぞれ認めるべきであり、また、先物取引の損益と株式譲渡の損益の間でも通算を認めるべきであるから、このような取扱いのない現行の法律には不備がある旨主張する。
しかしながら、審判所は、原処分庁が行った処分が違法又は不当なものであるか否かを判断する機関であって、その処分の基となった法令自体の適否又は合理性を判断することはその権限に属さないことであるので、請求人が主張する点については、当審判所の審理の限りではない。