延納及び物納

物納

  1. 延納
  2. 物納(11件)

延納申請が許可された相続税額につきなされた物納申請を却下した原処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.21 - 218頁

 当初申告に係る物納申請を延納申請に変更させ、かつ、更正の請求をなさしめたのは、相続税の減額を条件とした原処分庁の職員の指導によるものであるから、その減額が認められない以上、本件延納申請及び本件延納許可処分は無効であって、修正申告の際に再度申請した本件物納申請は、法定申告期限内に申請したものとみなすべきである旨の主張について、原処分庁の職員が請求人に対し、物納、延納の各申請並びに修正申告及び更正の請求について行った指導は、納税者が法の不知により不利益を受けないことなど一般的な指導の域を出ておらず、他に本件延納申請及び本件延納許可処分を無効ならしめるような事実があったとは認められず、これらはいずれも法令等の規定に基づく適法なものというべきであり、本件物納申請について法定期限内になされたものと認めるべき理由がないからこれを却下した原処分は相当である。

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物納申請財産である貸地は相続税法第42条第2項に規定する「管理又は処分をするのに不適当な財産」に該当するとした事例

裁決事例集 No.36 - 165頁

 物納申請財産である本件貸地は、当事者間に賃貸借契約書が作成されていないため、賃借人を特定することができないなど、その契約内容が不明確であること、また、本件貸地の一部を不特定多数の者が生活用の道路として使用しており、現に公共の用に供されていると認められることなどから、相続税法第42条第2項に規定する「管理又は処分をするのに不適当な財産」に該当すると認められるので、物納財産変更要求をした原処分は相当である。

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物納申請財産は、間口狭小、奥行長大の極端に不整形な土地であり、相続税法第42条第2項に規定する管理・処分不適当財産に該当するから、物納財産変更要求通知処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.51 - 658頁

 物納申請土地は、間口約2メートル、奥行約58メートルの東西方向に長く極端に不整形である上、隣地との高低差が約2メートルあり、単独で通常の用途に供することができない土地であることから、物納財産として管理又は処分をするのに不適当と認めるのが相当であり、したがって、物納財産の変更を求めてした原処分は適法である。

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物納申請土地は、いわゆる間口狭小のため単独には通常の用途に供することができない土地に該当するとして「管理又は処分をするのに不適当」と判断した事例

裁決事例集 No.53 - 456頁

 請求人は、本件物納申請土地について、売却可能と判断される価格として相続税法の規定に基づき課税を行う一方、これが売却できる見込みのない不動産であるとして物納を認めないのは不合理である旨主張するが、相続税の課税は、相続による財産の取得という事実につき担税力を認めて行われるものであり、一方、物納財産の適否は、国が物納された財産の管理又は処分により金銭納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保することができるかという観点から判断されるのであって、ある相続財産について、それが課税価格計算の基礎となった財産であるからといって、そのことから直ちに当該財産が物納財産として適するということにはならず、管理又は処分をするのに不適当とされることもあり得るというべきである。
 本件物納申請土地は、いわゆる間口狭小であって、建築基準法及び△△県建築安全条例によれば建築物の敷地として適していないことはもちろん、自動車の出入りも困難であることから駐車場への転活用も困難であること、そして、原処分庁は、物納財産の管理官庁である○○財務局との協議の結果、現状のままでは管理又は処分をするのに不適当と判断し、請求人に隣接地主との用地買取り交渉等所要の補完を求めたが、結局、補完できなかったことが認められる。
 したがって、本件物納申請土地は現状のままでは売却できる見込みのない不動産であり、管理又は処分をするのに不適当と判断せざるを得ない。

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非上場株式が「管理又は処分するのに不適当」と判断された事例

裁決事例集 No.55 - 615頁

 取引相場のない株式は、通常、売却できる見込がない場合が多いので、たとえ相続により取得した財産のほとんどが当該株式であり、かつ、当該株式以外に物納に充てるべき財産がないと認められるときであっても、物納制度の趣旨が相続税の納付の単なる手段であり、国がこれを換価し、その代金をもって財政収入に充てることにある以上、売却できる見込がない株式については、相続税法第42条第2項に規定する「管理又は処分をするのに不適当であると認める場合」に該当し、具体的に買受け希望者が見込まれる場合など一定の条件を満たすものについてのみ例外的に物納が許可されるものと解するのが相当である。
 相続税の課税は、相続による財産の取得という事実についてその財産的価値に担税力を認めて行われるものであり、一方、物納財産の管理又は処分の適否は、国が当該財産の管理又は処分により、金銭による納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保することができるか否かという観点から判断されるのであって、ある相続財産について、それが課税価格計算の基礎となった財産であっても、そのことから直ちに当該財産が物納財産として管理又は処分に適するということにはならず、管理又は処分をするのに不適当であるとされることもあり得ると解される。

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共有土地の持分の一部である財産の物納は、「管理又は処分をするのに不適当」と判断した事例

裁決事例集 No.55 - 623頁

 本件物納申請財産は、共有持分の一部であり、国において管理又は処分をするのに不適当な財産である。また、原処分庁は、請求人からの却下処分の猶予の要請に基づき、遺産分割の推移を相当期間見守っていたが、なお協議分割が整わない状態が続いたことから、本件却下処分を行ったものであり、請求人が主張するような違法・不当な点はない。
 また、本件却下処分に伴い、請求人の相続税は滞納となったことから、国税通則法第37条第1項の規定に基づき行われた督促処分は適法である。
 なお、物納申請却下処分及び督促処分に対する異議決定の内容を不服とする審査請求は、国税通則法第76条第1号の規定により認められないから、これら審査請求は不適法である。

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物納申請土地は、無道路地であったり、市道に接してはいるがのり地やがけ地であったり、あるいは、物件の所在も特定できないものであり「管理又は処分をするのに不適当」な財産に当たると判断した事例

裁決事例集 No.61 - 614頁

 請求人は、相続税を金銭で納付する資力がないからこそ物納申請したのであり、本件物納申請土地以外に物納できる財産がないにもかかわらず、却下処分をしたことは不合理である旨主張するが、物納制度は、物納申請財産を国に帰属させるのが目的ではなく、相続税の納付の単なる手段であり、国がこれを換価し、その代金をもって財政収入に充てることを目的としているものと解されるから、物納財産は、管理又は処分を通じて金銭納付があったと同等の経済的利益を確保し得るものでなければならないから、たとえそのような事情があったとしても、右の目的を達成できない財産である以上、却下はやむを得ないというべきである。
 また、請求人は、本件物納申請土地について、一方で相続税の規定に基づき課税を行い、もう一方で物納を認めないとするのは不合理である旨主張するが、相続税の課税は、相続による財産の取得というその財産的価値に担税力を認めて行われるものであり、一方、物納財産の管理又は処分の適否は、これらを通じて、金銭による納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保できるかという観点から判断されるのであって、ある相続財産について、それが課税計算の基礎となった財産であっても、そのことから直ちに物納財産として管理又は処分に適するということを意味するものではなく、管理又は処分をするのに不適当であるとされることもあり得るというべきである。
 本件物納申請土地は、無道路地であったり、市道に接してはいるがのり地やがけ地であったり、あるいは、物件の所在も特定できないものであることから、原処分庁が管理又は処分をするのに不適当な財産であると認定したことは相当であると認められる。

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物納申請がされた土地(分譲マンションの底地)について、相続税法第42条第2項ただし書にいう「管理又は処分をするのに不適当である」ものとは認められないとした事例

裁決事例集 No.64 - 505頁

 本件物納申請土地(分譲マンションの底地)については、賃貸借契約に、借地権譲渡の事前承諾条項がなく、かつ、借地権譲渡に当たり承諾料を徴さない旨の条項があることをもってしても、社会通念に照らし契約内容が貸主に著しく不利な貸地には当たらないと認定でき、相続税法第42条第2項ただし書にいう「管理又は処分をするのに不適当である」とは認められないので、同項ただし書を適用してなされた本件変更要求処分は違法である。

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物納申請財産が、管理又は処分をするのに不適当な財産であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 833頁

  1.  相続税の物納制度は、国税を金銭で納付するという原則に対して、相続税が財産課税であるという特殊性を考慮して設けられた特例的な制度であるということができ、物納申請財産を国に帰属させることは真の目的ではなく、相続税の単なる納付手段であり、国がこれを換価し、その代金をもって財政収入に充てることが真の目的であるといえる。そこで、物納申請財産は、その収納が金銭納付に代わるものである以上、国が物納された財産の管理・処分を通じて金銭の納付があった場合と同等の経済的利益を確保し得るものでなければならない。
  2.  請求人は、原処分庁が本件物納申請土地について物納財産として不適当であると認定したことに対し、この理由は相続税法基本通達42−2に例示がないもので、相続税法第42条2項ただし書の解釈適用を誤ったものであり違法である旨主張する。
     しかしながら、本件物納申請土地内には、現に農業用水の取水の用に供されている流水路があり、その実質において地役権等の用益権が設定されている土地と同様の状況にあると認められ、また、当該流水路は、一部についてはヒューム管が埋設されているが、他の部分についてはなんら整備がされておらず、農業用水路として利用する上で、維持・整備のための新たな費用を要すると認められる。
     そうすると、本件物納申請土地は、その管理又は処分をするために費用を要し、このことは、国税の納付の趣旨に反することになり、管理又は処分をするのに不適当な財産であると認めるのが相当であり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
  3.  請求人は、本件物納申請土地の評価額については、その立地、利便性、利用性及び換価性等の諸条件を織り込んだものとなっており、原処分庁が、金銭で納付があった場合と同等の経済的利益を確保できないとして、一つの課税とその納付手続において一物二価を主張することは、相続税法の予定する解釈に沿っておらず、また、本件物納申請土地は、その周辺の土地の売買実例もあることから、売却可能な土地である旨主張する。
     しかしながら、物納は、金銭による納付の例外として特に認められているものであるから、物納申請に係る財産が管理又は処分をするのに不適当であるか否かの判断に当たっては、当該財産の物納を受け、国がこれを管理又は処分をすることにより、金銭で国税の納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保することができるか否かという観点から判断されることになる。
     本件物納申請土地は、市街化調整区域内に所在し、また、土地のほぼ中央部に高圧線が架設されていることから、その開発及び利用におのずと制限を受けることとなり、国がその管理又は処分を通じて金銭で納付があった場合と同等の経済的利益を確保することは困難であると認められる。
     また、ある相続財産について、それが課税計算の基礎となった財産であっても、そのことから直ちに当該財産が物納財産として管理又は処分に適するということを意味するものではなく、管理又は処分をするのに不適当であるとされる場合もあり得るというべきである。
  4.  請求人は、原処分庁が本件物納申請土地について、有効活用するためには整地が必要であること及び現状においてはその用途は極めて限定されると主張することに対し、原処分庁が本件物納申請土地の活用等についてまで判断すべきではなく、原処分庁の主張は、独断に基づくものである旨主張する。
     しかしながら、物納制度は、国が物納された財産の管理・処分を通じて、金銭による国税の納付があった場合と同等の経済的利益を確保し得るものでなければならないと解されるところ、本件物納申請土地が、将来、国が予定する管理又は処分に耐える財産に当たるか否かについて、管理官庁との協議を行うことには理由がある。そして、管理官庁との協議結果を踏まえ、本件物納申請土地は、管理又は処分をするのに不適当なものに該当するとしたことは相当と認められる。

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他の土地に囲まれ公道に通じていない物納申請財産について、物納を許可する上で、みなし道路指定のある第三者所有の私道の通行を承諾する旨の第三者からの承諾書は不要であるとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.71 - 659頁

 請求人は、本件物納財産(他の土地に囲まれ公道に通じていないもの)を許可する上で、本件私道は、隣接する居住者はもとより不特定多数の人が自由、安全、容易に通行している道路であり、民法第210条によれば公道と認められること、また、本件私道は建築基準法第42条第2項に規定する道路でもあることから、通行を許可する旨の私道所有者の承諾書は必要ない旨主張する。
 しかしながら、建築基準法第42条第2項に規定するいわゆるみなし道路指定がされた私道は、その私道内での建築等及び私道の廃止・変更が制限される結果、その反射的利益として通行することができるにすぎないのであり、その私道を通行する者に通行権が認められているわけではない。そのため、私道の所有者に通行者の通行を受忍するにつき著しい損害を被る事情が存する場合等においては通行の制限が加えられることが許される場合もあり得ることから、その私道を自己が欲するとおりの態様や利用目的で通行することを日常的に必要不可欠とする場合には、私道所有者の承諾等により通行権を得る必要がある。また、その私道は他人の所有地であるから、その私道にガス管や水道管を埋設するに当たっては、その土地所有者の了解を得る必要があることはいうまでもないところである。そうすると、国が物納財産を管理又は処分するためにその私道の利用が必要不可欠である場合にも、その私道の所有者にその土地の通行及び使用についての承諾を得る必要があるというべきである。これを本物件についてみると、本件私道を利用することが同物件を管理又は処分する上で必要不可欠であると認められるから、原処分庁が本件承諾書の提出を求めたことは相当であり、請求人の主張は理由がない。

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税務署長等は、物納手続関係書類の提出を求めることができ、その提出がない場合には、物納財産の特定を欠き、またその権利関係等が明らかにされないこととなり、物納申請財産は管理又は処分するのに不適当な財産となるとした事例

裁決事例集 No.71 - 674頁

 請求人は、原処分庁が求める物納申請に係る必要書類はすべて提出しているから、その提出がないことを理由としてなされた物納申請却下処分は、取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、税務署長等は、物納申請書の提出があった場合、相続税法第41条に規定する物納の要件に該当するか否か、及び同法第42条第2項に規定する物納申請財産が管理又は処分するのに適当な財産であるか否かについて調査を行い、許可又は却下の処分をすることになるところ、その物納申請財産の適否の判断に当たっては、物納申請財産の特定や、その財産に係る権利関係等が明らかにされていなければないことから、その調査の一態様として、物納申請者に対し、[1]物納申請に係る財産を特定するために必要な書類及び[2]物納申請財産に係る権利関係等を明らかにするために必要な書類の提出及び補完等を求めることができると解される。そして、これらの必要書類の提出等の要請に対して、物納申請者が、正当な理由なく応じなかった場合には、当該物納申請は、物納財産の特定を欠き、あるいはその権利関係等が明らかにされない結果、物納申請財産が管理又は処分するのに不適当な財産となるから、却下することは相当であると解される。
 本件は、原処分庁が提出を求めた必要書類には合理的理由が認められ、これに対して、請求人はその一部しか提出しておらず、その提出された必要書類も不備なものであり、他の提出されない書類についても提出されないことについて正当な理由は認められず、各物納申請財産は管理又は処分するのに不適当な財産となるから、物納申請の却下処分は適法である。

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