延納及び物納

延納

  1. 延納(10件)
  2. 物納

将来において担保を提供する旨の誓約書の提出は相続税の延納申請の要件である担保の提供に該当しないとした事例

裁決事例集 No.21 - 213頁

 相続税の延納申請に当たって、遺産分割調停中のため本件土地の抵当権設定に必要な書類の提出に代えて、将来、当該土地を担保に提供する旨の誓約書を提出したとしても、延納許可は例外的な措置であり、国税徴収確保のためその要件は厳正に解すべきところ、当該誓約書は国税通則法第50条に規定する担保に該当せず、かつ、土地及び建物について担保提供する場合には、同法施行令第16条第2項の規定により、抵当権を設定するに必要な書類を提出することがその要件とされており、請求人が提出した当該誓約書は、担保提供の要件を満たしたとはいえないから、本件延納申請につき却下処分をした原処分は適法である。

トップに戻る

相続税延納分納額の滞納を理由とした延納許可取消処分が適法であるとした事例

裁決事例集 No.63 - 601頁

 請求人は、本件延納許可取消処分に係る通知書に記載の金額にそごがあり、納税者の死命を制する重要な法定文書である本件延納許可取消通知書はずさんなものであるから本件延納許可取消処分は違法である旨主張する。
 確かに本件取消し処分に係る通知書の一部に誤りが認められるところ、記載全体に照らせば、上記金額も単なる記載誤りであるこことは明らかであり、当該通知書により通知すべき「延納許可取消額」を含むその他の事項は正しく認識することができると認められるから、当該通知書に上記のような記載誤りがあったとしても、本件取消処分を取り消すほどの重大な瑕疵があったとはいえない。
 請求人は、現在のようにバブル崩壊後の地価の大幅な下落の時期に、滞納を理由に延納許可を取消しすることは、過酷な処分であり、税務署長に許容される裁量権の範囲を逸脱した著しく不合理なものである旨主張する。
 しかしながら、本件延納許可取消処分に手続上の瑕疵は存しないところ、原処分庁が、請求人からの弁明を受けて、分納税額を早期に完納する見込がないと認定し、本件取消処分を行ったことは相当である。
 確かに、請求人の納税のための資金繰りが困難な事情は認められないわけではないが、原処分庁は、これらの事情を考慮して、請求人からの延納条件変更申請に対し、分納期限の延長、再延長又は再々延長の措置をそれぞれ講じていることが認められることから、原処分庁が請求人の資金繰りの実情を無視した過酷な処分を行ったとする請求人の主張には理由がない。

トップに戻る

所有権の帰属につき係争中の不動産は相続税延納担保として不適格であるとしてされた延納申請却下処分は、適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 492頁

 請求人らは、延納申請に係る担保として提供した財産(土地)は、担保として適当であり、原処分庁が行なった相続税に係る延納申請却下処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、延納の担保として提供される財産は、その担保に係る相続税額を確実に徴収することができる金銭的価値を有するものでなければならず、延納許可が取り消された場合に、国税通則法第52条第1項の規定に基づき、滞納処分の例により換価し、その換価代金を国税に充当することが困難と考えられる事情を有する財産は、延納の担保としては適当でないと解するのが相当である。
 本件担保物件は、その所有権の帰属につき訴訟において係争中の物件であって、仮に、原処分庁が本件担保物件を本件延納申請の担保として受け入れ、抵当権を設定したとしても、訴訟の結果によっては、当該抵当権によって本件担保物件を公売等で換価し国税に充当することができないおそれがあることは明らかである。

トップに戻る

原処分庁が、弁明を聴取した上、滞納状況、弁明の内容、納付事績等を基に検討した結果、延納許可に係る税額を完納する見込みがないと判断し、相続税の延納許可を取り消したことは適法であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 800頁

 請求人らは、本件各延納許可に係る分納期限までに分納税額を納付できないことには、相続財産のほとんどが底地であり売却が進まなく、納付資金がないなど、やむを得ない事情があるにもかかわらず、請求人らが本件土地の売却によって本件相続税を納付しようと努力しているときになされた原処分は違法であり、かつ、請求人らの納税姿勢をそぐ不当なものである旨主張する。
 しかしながら、請求人らは本件各延納許可に係る分納税額を滞納しており、原処分庁は、弁明を聴取した上、滞納状況、弁明の内容及び請求人らの納付事績等を基に本件各延納許可の取消しの適否について検討した結果、滞納となっている本件各延納許可に係る税額を完納する見込みはなく、延納の条件に違反していると認めて、原処分を行ったものであり、原処分庁の判断は相当で、原処分は適法であり、違法又は不当な点はない。

トップに戻る

相続税の延納許可取消処分は、相続税法第40条第2項に定められた弁明を聞く手続を経ずになされたもので違法であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 818頁

 本件の事実関係において、相続税法第40条第2項に規定するあらかじめ弁明を聞く手続を適法に行ったといえるか否かについて判断すると、同項の趣旨に照らせば、原処分庁が弁明の聴取に当たり、聴取を受ける者において、それが延納許可取消しの判断のための弁明の機会であるとの認識を持ち得るような仕方をせず、その結果として、聴取を受ける者が同項の弁明であるとの認識を持たないまま、原処分庁において事情聴取をしたとしても、そのような事情聴取をもって同項に規定するあらかじめ弁明を聞く手続を行ったということはできないと解されるから、原処分庁が原処分に当たって適法に弁明を聞く手続を行ったと認めることはできない。
 したがって、原処分は、相続税法第40条第2項に定められた弁明を聞く手続を経ずになされたものであるから、同項に違反し違法である。

トップに戻る

延納許可期間の計算の基礎となる取得財産の価額のうちに占める不動産等の価額の割合が再度の遺産分割協議によって増加しても延納許可期間は変更されないとした事例

裁決事例集 No.69 - 324頁

 請求人は、[1]当初分割協議書は他の共同相続人と按分すべきであった立替金100百万円及び割引債券6口を請求人の取得財産とした重大な瑕疵があり、錯誤によるものであるから、当初分割協議書を基になされた本件更正処分は誤っており、税務署長は、通則法第24条の規定によって、再分割協議書に基づく、本件嘆願書にのっとった正当な更正処分をする義務があること、したがって、[2]本件延納許可処分は、誤った本件更正処分の内容(不動産等の割合0.45)に基づくものであるから、本件延納許可処分は、正当な再分割協議書に基づく本件嘆願書の内容(不動産等の割合0.508)にしたがって、延納許可期間を15年に変更するべきであること、を主張する。
 しかしながら、[1]当初分割協議書には立替金100百万円及び割引債券6口が記載されていることは請求人も自認するところであり、当初分割協議書は本件相続人らの署名押印がなされていることで有効に成立しており、当初分割協議書に基づく本件更正処分に何ら違法とすべきものは認められない。そして、原処分庁が本件嘆願書によって通則法第24条に規定する更正を義務づけられるものではないから、本件更正処分は適法なものであることが認められる。また、[2]請求人の相続税の額は、本件更正処分の額をもって確定しており、本件延納許可処分の前提となる本件更正処分の違法を理由に、本件延納許可処分の変更を求めることはできない。そして、延納許可期間及びその算定の基礎となる基準については、相続税法第38条及び相続税法施行令第14条第3項の規定に基づき、延納を許可する時までに納付すべき税額の確定した相続税額の計算の基礎となった財産の価額を基準として計算することとなり、本件更正処分における不動産等の割合は0.45であるから、延納許可期間を5年とした本件延納許可処分は適法である。

トップに戻る

相続税の延納許可の取消処分は、聴取した弁明に係る事情を考慮して行われた適法な処分であるとした事例

裁決事例集 No.71 - 641頁

 請求人は、[1]延納の許可の取消しに当たっては、弁明に係る滞納せざるを得なかった事情を十分考慮して行うべきであること、[2]本件延納許可の取消しは、請求人の弁明の内容を十分検討することなく無視・忘却し、形式的なものとして扱っているというべきであり、弁明の聴取の手続が行われたとはいえないことを主張する。
 しかしながら、[1]弁明の聴取は、延納の許可を受けた者から、延納税額の滞納その他延納の条件に違反したこと及びその後の資力の状況の変化等について、その存否及びその事情を聴取することにより、取消しを決定する判断の資料とするために行うものであるが、弁明の聴取が行われた場合に、その聴取した内容に拘束されるものではないところ、本件においては、弁明の聴取の手続は適正に行われていると認められること、延納許可に係る税額についての滞納は一時的なものとは認められないこと、具体的な納付計画の提出がないこと、納税資金調達の根拠となる土地の売却についても内容が変遷していることからすれば、原処分庁が、延納許可に係る税額について滞納があり、今後の納付見込みがないことを理由に、相続税の延納許可を取り消したことは適法であると認められる。そして、[2]延納許可を取り消すに当たっては、聴取した弁明の内容に拘束されるものではなく、また、本件滞納せざるを得なかった事情が本件延納許可の取消処分の適法性に影響を与えるものとは認められないから、弁明の聴取の手続が行われたとはいえない旨の請求人の主張には理由がない。

トップに戻る

処分禁止の仮処分の登記が付着した担保申請物件は延納申請に係る担保として不適格であるとした事例

裁決事例集 No.73 - 453頁

 請求人は、本件担保申請物件に係る処分禁止の仮処分の登記は所有権の4分の1のみについてされたにすぎず、その余の4分の3に係る価額でも担保価値としては十分であるから、担保として適格である旨主張する。
 しかしながら、相続税の延納担保として提供される財産は、その担保に係る相続税額を確実に徴収することができる金銭的価値を有するものでなければならず、かつ、延納許可が取り消された場合に、滞納処分の例により換価することが困難と考えられる事情を有する財産は、延納の担保としては適当でないと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、本件担保申請物件には処分禁止の仮処分の登記があるところ、仮に、当該仮処分権者が保全すべき登記請求権に係る登記をした場合には、原処分庁のした抵当権の設定登記又は延納が不履行になって公売した場合の買受人の所有権移転の登記は抹消されることになることから、抵当権も所有権も権利の実現が不確実で不安定な状態にあると認められる。
 したがって、たとえ数額上担保価値の算出が可能であり、当該仮処分の登記が所有権の一部のみについてされていたものであったとしても、本件担保申請物件は、事実上極めて換価が困難な財産といわざるを得ないから、担保物件として不適当なものである。

トップに戻る

弁明の機会が付与されていないから弁明手続は違法である旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.73 - 464頁

 請求人は、原処分庁がした「相続税延納取消しに対する弁明を求めるためのお知らせ」(以下「本件通知書」という。)の差置送達が効力が生じていないこと理由として弁明の機会が付与されていない旨を主張する。
 しかしながら、1原処分庁は、請求人に弁明の機会を与えるために平成16年6月8日付で第1回通知を請求人の自宅にあてて送付したが、受取人不在による保管期間満了を理由に返送されたこと、2そのため、原処分庁は、同月23日及び同年8月18日の二度にわたり、請求人の自宅を訪れたものの、いずれも請求人は不在であったことが認められ、当該事実は、国税通則法第12条第5項第2号に規定する書類の送達を受けるべき者等が送達すべき場所にいない場合に該当すると認められる。
 そうすると、本件通知書は、適法に差置送達されたものというべきであり、請求人は、これに対して弁明の期限までに弁明をしなかったのであるから、本件における弁明手続は適法にされたというべきである。

トップに戻る

担保物の一部に対する強制換価手続が相続税法第40条第2項に規定する「強制換価手続が開始されたとき」に該当するとした事例(相続税の延納許可の取消処分・棄却・平成26年11月25日裁決)

平成26年11月25日裁決

《要旨》
 請求人は、原処分庁が行った延納許可の取消処分(本件取消処分)について、相続税法第40条《延納申請に係る徴収猶予等》第2項の「延納税額に係る担保物につき国税徴収法第2条《定義》第12号に規定する強制換価手続が開始されたとき」とは、延納許可に係る担保物全てについて強制換価手続が開始されたときをいうことから、複数の担保物の一部のみに強制換価手続が開始されたことをもってなされた本件取消処分は適切な弁明聴取を欠いた違法な処分である旨主張する。
 しかしながら、延納許可に係る担保物の一部について第三者による強制換価手続が開始された場合においても、弁明の聴取を行っていては、当該強制換価手続によって担保物の一部が換価され、延納税額等の徴収を確保できなくなるおそれがあることから、相続税法第40条第2項に基づき、弁明を聴取することなく延納許可を取り消すことができる。したがって、適切な弁明聴取が行われたか否かについて判断するまでもなく、本件取消処分が適切な弁明聴取を欠くことを理由に違法な処分であるとはいえない。

《参照条文等》
 相続税法第40条

トップに戻る