ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.44 >> (平4.12.2、裁決事例集No.44 23頁)

(平4.12.2、裁決事例集No.44 23頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、不動産賃貸業を営む者であるが、平成2年分所得税について、法定申告期限後である平成3年3月16日に別表1の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書を提出した。
 その後、請求人は、平成3年6月24日に別表1の「更正の請求」欄のとおり更正の請求をしたところ、原処分庁は、平成3年11月18日付で別表1の「更正」欄のとおり、更正の請求の一部を認め更正をした。
 請求人は、この処分を不服として、平成3年12月6日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、更に、更正の請求の一部を認め平成4年3月6日付で別表1の「異議決定」欄のとおり異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分についてなお不服があるとして、平成4年3月23日に審査請求をした。

トップに戻る

2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、全部の取消しを求める。
イ 請求人は、平成2年分所得税の確定申告において不動産所得、配当所得及び雑所得の申告を行い、配当及び公的年金等に係る源泉徴収税額の還付金の額に相当する税額の還付を受けた
ロ その後、別表2及び別表3の配当の申告を失念していたので、この配当に係る源泉徴収税額の還付金の額に相当する税額の還付を受けるべく平成2年分の所得税の更正の請求を行ったところ、原処分庁は、別表2の配当については、請求人の請求を認めたものの、別表3の配当(以下「本件配当」という。)については、請求人の更正の請求を認めないで更正をした。
 しかしながら、本件配当についても更正の請求を認めるべきであり、原処分は違法である。

トップに戻る

(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次のとおり適法である。
イ 本件配当について調査したところ、次の事実が認められる。
(イ) 本件配当は、租税特別措置法(平成3年法律第69号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第8条の5《確定申告を要しない配当所得》第1項に規定する昭和61年1月1日以後に内国法人から支払を受けるべき配当等であり、1回に支払を受けるべき金額が50,000円(配当等の計算の基礎となった期間が1年以上であるときは100,000円)以下であるもの(以下「少額配当等」という。)に該当すること。
(ロ) 請求人は、本件配当を配当所得の金額に含めないところで、平成2年分所得税の確定申告書を提出していること。
(ハ) 原処分庁は、別表2の配当は少額配当等に該当しないことから請求人の更正の請求を認め、本件配当は少額配当等に該当することからこれを認めないところで更正を行ったこと。
ロ ところで、措置法第8条の5第1項の規定によれば、少額配当等を有する居住者等(居住者及び国内に恒久的施設を有する非居住者をいう。以下同じ。)は、昭和61年以後の各年分の所得税について、その少額配当等に係る配当所得の金額を除外したところにより、総所得金額を計算して確定申告することができることとされている。
ハ また、措置法第8条の5第2項の規定によれば、同条第1項に規定する少額配当等を有する居住者等の昭和61年以後の各年分の所得税について、税務署長が国税通則法第25条の規定による決定(当該決定に係る同法第24条又は第26条の規定による更正を含む。)をする場合において、その少額配当等の配当所得の金額及びこれに係る配当控除の額は、課税標準等及び税額等には含まないものとしてこれを行なうこととなっている。
ニ したがって、少額配当等に係る配当所得の金額を含まないで確定申告書を提出した場合においては、少額配当を有する居住者等が、確定申告をすることなく、配当所得の支払の際に源泉徴収がなされた税額により、少額配当等に係る配当所得の課税関係を終了させる方法を選択したこととなる。
ホ 国税通則法第23条《更正の請求》第1項の規定によれば、課税標準等若しくは税額等の計算が法律の規定に従っていなかったこと、又は当該計算に誤りがあった場合等に更正の請求ができることとされているが、少額配当等に係る配当所得の金額を含めないところで確定申告したことは、これに該当しない。
ヘ 請求人が主張する本件配当は、いずれも少額配当等であり、また、請求人は、少額配当等である本件配当を配当所得の金額に含めないところで平成2年分所得税の確定申告をしているのであるから、本件配当を含めないで更正を行ったものである。

トップに戻る

3 判断

(1) 本件配当について、更正の請求が認められるか否かに争いがあるので、調査・審理したところ、次のとおりである。
イ 本件配当が少額配当等に該当すること及び請求人が本件配当を配当所得の金額に含めないところで平成2年分所得税の確定申告書を提出していることについては、当事者間に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
ロ ところで、少額配当等を有する居住者等は、昭和61年以後の各年分の所得税について、措置法第8条の5第1項の規定により、少額配当等に係る配当所得の金額を除外したところにより総所得金額を計算して確定申告をすることができることとされている。
ハ また、国税通則法第23条第1項の規定によれば、課税標準若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと、又は計算に誤りがあったことにより、申告書に記載した還付金の額に相当する税額が過少であるとき、又は申告書に還付金の額に相当する税額の記載がなかった場合には更正の請求をすることができることとされている。
ニ 前記イないしハの事実等を基に判断すると次のとおりである。
 前記ロ及びハのとおり、少額配当等の申告については、少額配当等を有する居住者等の任意の選択にゆだねられており、その居住者等が少額配当等の申告について、その配当等の金額を除外したところにより確定申告書を提出している以上、措置法第8条の5第1項の規定を適用したものとして取り扱われることとなる。
 請求人の確定申告書は、前記イのとおり、少額配当等に該当する本件配当を配当所得の金額に含めないところで提出されており、たとえ請求人が、本件配当を配当所得として申告することを失念し、本件配当を配当所得に含めないで確定申告書を提出したものであったとしても、この申告書は、措置法第8条の5第1項の規定を適用し、少額配当等である本件配当を除外したところにより提出されたものとして取り扱われることとなる。
 そうすると、請求人の確定申告書に本件配当に係る配当所得の金額が含まれていないことは、国税通則法第23条第1項に規定する「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」という場合には該当しない。
 したがって、原処分庁が、請求人の更正の請求について、別表2の配当に係る部分の請求を認め、本件配当は請求人の課税標準等に含まれないとして本件配当を含めないところで更正を行ったことは相当である。
(2) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所において調査・審理したところによっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る