附帯税

重加算税の賦課

  1. 延滞税
  2. 過少申告加算税
  3. 無申告加算税
  4. 不納付加算税
  5. 重加算税
    1. 重加算税の意義
    2. 過少申告加算税との関係
    3. 重加算税の賦課(6件)
    4. 隠ぺい、仮装の認定
    5. 請求人以外の行為

国税通則法第65条第3項に規定する調査には国税査察官の調査も含まれるとした事例

裁決事例集 No.3 - 1頁

 国税通則法第65条第3項に規定する「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税についての更正があるべきことを予知してされたもの」の意義は、正当な権限を有する収税官吏の当該納税義務者又は徴収義務者に対する所得税、法人税その他直接税に関する実地又は呼出し等の具体的調査により、当該所得金額等に脱漏があることを発見された後になされた申告を指すものと解されるから、国税査察官による請求人の法人税法違反けん疑のための調査により当初申告の所得金額に脱漏が発見された後に提出された修正申告書はこれに該当するので、当該修正申告書による増差税額に重加算税を賦課決定した原処分は相当である。

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別の意図で作成した仮装文書を誤って申告の際に使用し、過少申告した場合も重加算税を課し得るとした事例

裁決事例集 No.42 - 25頁

 請求人は、本件譲渡価額を十分承知しており、また、請求人は、事実を仮装した本件売買契約書を自ら作成し、本件物件譲渡に関し2種類の契約書が作成されていることについても十分承知していた。
 したがって、たとえ申告相談の際に本件売買契約書を取り違えて持参したという事情があったとしても、これに基づいて申告した本件においては、過少申告の意図をもって本件売買契約書を提示したか否かにかかわらず、国税通則法第68条第1項の要件を充足する。

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請求人が調査手続の違法のみを争った事件で、処分の内容も審理し、所得税の更正処分の一部及び重加算税の賦課決定処分の一部を取り消した事例

裁決事例集 No.47 - 56頁

  1.  調査担当職員の行為は、社会通念上合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認められないから、質問検査権の範囲を逸脱したものではなく、請求人の主張は採用できない
  2.  請求人は、その余の部分については明確に主張しないが、原処分関係資料に基づき、その当否について検討すると次のとおりである。
    1.  平成元年分の譲渡所得の金額についてみると、原処分庁は譲渡所得の特別控除額を控除していない。したがって、平成元年分の更正処分はその一部を取り消すべきである。
    2.  重加算税の賦課決定処分についてみると、請求人は、取引先は2社のみであるとして、両者のみに係る帳簿等を提出しているが、請求人には両社以外に7社の取引先がある。

 したがって、原処分庁が重加算税の賦課決定処分をしたことは相当である。
 しかしながら、原処分庁は、青色申告の承認取消しに伴い増加した所得以外の金額について、すべて重加算税の対象としているが、重加算税の対象所得金額は、収入金額を故意に除外していたと認められる7社の収入金額を限度とすべきである。
 そうすると、重加算税の賦課決定処分はその一部を取り消すべきである。

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請求人の従業員の行った不正経理行為は、請求人の行為と同一視されるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例

裁決事例集 No.69 - 18頁

 請求人は、本件不正経理行為については、[1]従業員が自己の窃盗又は横領行為の発覚を防止するために行った不正行為であること、[2]請求人が通常の調査をしても発見できない方法で本件売上等圧縮行為が行われ、また、記帳や現金管理を任せ切りにした事実もないこと、[3]請求人の取締役が従業員に対して本件棚卸圧縮行為を指示した事実はないことから、請求人に結果責任を課すべきではなく、課税主体である請求人の隠ぺい又は仮装行為に該当しない旨主張する。
 しかしながら、重加算税を課すためには、納税者において、過少申告を行うことの認識を有していることまで必要とするものではないから、隠ぺい又は仮装の行為は、納税義務者たる法人の代表者に限定されるものではなく、従業員を自己の手足として経済活動を行っている納税者においては、隠ぺい又は仮装行為が代表者の知らない間に従業員によって行われた場合であっても、その従業員の行為を納税者の行為と同一視することが相当である場合には、法人自身が当該行為を行ったものとして重加算税を賦課することができるものと解するのが相当である。そして、本件においては、[1]従業員は請求人の経理事務を担う重要な地位にいたこと、[2]不正経理行為は請求人の課税申告に直接反映していること、[3]不正経理行為は長期に及び、現金出納帳などの確認をすれば容易に把握できたと認められるところ、[4]請求人はそれらの確認を行っていないことを総合勘案すれば、本件不正行為は請求人の行為と同一視すべきと認められるから、本件重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

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過少に計上された売上げには隠ぺい仮装が認められ、他方で、推計の方法により否認した経費には隠ぺい仮装は認められないとした事例

平成25年2月25日裁決

《要旨》
 請求人は、過少申告の原因は単なる計算誤りであり隠ぺい仮装の行為はない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、出面帳に毎日の業務及び売上金額等を記載し、また、預金通帳で入金状況をチェックしてその入金状況を更に出面帳に記すなどし、日頃から収入の管理に努めており、自己の収入金額を正しく把握していたものと認められるところ、7年にわたりほぼ連続して、各収支内訳書の「上記以外の売上先」欄のみ過少に記載することにより多額の収入を申告せず、さらに、調査当初において過少である理由について曖昧な説明に終始していたものである。そうすると、請求人は、作為的に収入金額を過少に記載した各確定申告書及び各収支内訳書を提出して多額の収入を意図的に申告せず、更には調査当初において過少申告の意図を隠そうとしていたものと認められる。したがって、請求人の過少申告は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で行われたものといえるから、重加算税の賦課要件を満たすと認めるのが相当である。もっとも、必要経費については、本人所得率を基に算出した必要経費の額が、当初申告額を下回る年分と上回る年分があり、このような必要経費の額の動きをみると、特段、請求人において必要経費を過大に計上しようとした意図を推認することはできず、他に必要経費につき、請求人に同意図を認めるに足りる証拠もないから、必要経費部分に関する請求人の過少申告行為は、重加算税の賦課要件を満たさない。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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重加算税の額の基礎となる税額は、過少申告加算税の基礎となるべき税額から、その税額の基礎となるべき税額で隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額を控除した税額となるところ、控除後の税額は零となることから、過少申告加算税の額を超える部分の金額は違法であるとした事例(平22.7.1から平23.6.30までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成28年2月4日裁決)

平成28年2月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が当初申告において組合損益に架空経費を計上し、これを基に組合損益の分配額を計上していたが、更正処分においては、組合損益の分配割合は零と認定され、この分配割合の変更については隠ぺい又は仮装の事実はないことから、重加算税の基礎となる税額は零と計算されるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、組合事業に係る組合損益の分配割合につき、更正処分においては当該組合事業に係る不動産の登記名義の割合を用いて算定しているところ、重加算税賦課決定処分においては、架空雑費(本件雑費)の金額を各組合員の出資金額の割合を用いて算定しており、計算方法の一貫性を欠くと主張する。
 しかしながら、請求人は本件雑費を含む組合損益を本件雑費の割合(本件雑費割合)に応じて各組合員に分配した損益分配表に基づいて申告したのであるから、原処分庁が本件雑費を各組合員に割り付けるに当たり、本件雑費割合をよりどころとしたこと自体は何ら不合理ではない。
 もっとも、国税通則法第68条《重加算税》第1項括弧書及び同法施行令第28条《重加算税を課さない部分の税額の計算》第1項の規定により、重加算税の計算の基礎となる税額は、増差税額全体から隠ぺい又は仮装されていない事実のみに基づいて更正があったものとした場合の納付すべき税額を控除して算出するとされているところ、損益の分配割合に誤りがあったことについては、隠ぺい又は仮装は認められないため、1「更正処分に基づく増差税額全体」から2「損益の分配割合に誤りがあったことのみに基づいて更正があったものとして算出した税額」を控除して計算することとなるが、12は同額であることから、重加算税の計算の基礎となる税額は零円となる。したがって、増差税額の全部が過少申告加算税の賦課対象となり、これを前提に請求人の加算税額を計算すると原処分額が過大となるから、当該過大部分は違法である。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項
 国税通則法施行令第28条第1項

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