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附帯税

隠ぺい、仮装の事実等を認めた事例

  1. 延滞税
  2. 過少申告加算税
  3. 無申告加算税
  4. 不納付加算税
  5. 重加算税
    1. 重加算税の意義
    2. 過少申告加算税との関係
    3. 重加算税の賦課
    4. 隠ぺい、仮装の認定
      1. 隠ぺい、仮装の事実等を認めた事例(60件)
      2. 隠ぺい、仮装の事実等を認めなかった事例
    5. 請求人以外の行為

売買契約の内容を仮装して土地重課税の額を過少に申告した行為は仮装隠ぺいに該当するとした事例

裁決事例集 No.20 - 18頁

 建売業者に土地を譲渡するに当たり、当該業者と建物の工事請負契約書及び新築建物と土地を一括譲渡する売買契約書を取り交わし、これに基づいて租税特別措置法関係通達63(2)−4“新築した建物を土地等とともに一括譲渡した場合の対価の区分の特例”に定める142パーセント基準を適用して土地重課税の申告をした場合において、請求人が契約に係る建物を新築した事実は認められず、実際は土地だけの取引であること、請求人の代表取締役は土地重課制度の知識を有することから、本件建物に関する各契約書は、同通達に定める特例の適用を受けることによって土地重課税の一部を免れるため故意に作成されたものであると認めざるを得ず、本件建物に関する取引及び請求人の経理は、いずれも国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当するものであり、重加算税を賦課決定したことは相当である。

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未払金に計上した退職金は架空であるとして重加算税の賦課決定を相当であるとした事例

裁決事例集 No.24 - 13頁

 請求人がその事業を法人に組織替えをする際、引き続き法人に勤務する従業員に対し退職金を支給することとして、その額を必要経費に算入するとともに、未払退職金として法人に引き継いだ場合において、法人が当該未払退職金を支払っていないにもかかわらず、これを支払ったかのように仮装経理しているときは、もともと請求人に当該退職金を支払う意思があったとは認められないから、当初の未払退職金の設定行為そのものが事実を隠ぺい又は仮装したことに当たるとしてなした重加算税の賦課決定は相当である。

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第三者を介在させて買換資産を高価で取得し、その取得価額を基に圧縮損を計上したことは、国税通則法第68条の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例

裁決事例集 No.25 - 1頁

 請求人が買換資産である車両を請求人の代表者が事業の主宰者となっている甲社及び乙社から取得する際に、実際の取引当事者でないディーラーに協力を求めて、ディーラーから高価で買い入れたごとく架空の売買契約書を作成して、当該売買価額があたかも通常取引される価額であるかのように仮装し、これに基づいて圧縮限度額を過大に計算して損金の額に算入した上、過少に確定申告をした行為は、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当する。

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内容虚偽の契約書等を作成し、これを基に所得金額等を算定して申告したことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例

裁決事例集 No.26 - 8頁

 請求人は、譲渡物件を一括して譲渡したにもかかわらず、これを年を異にして譲渡した旨の契約書を作成し、さらに、受領した代金のうち2分の1を超える金額を譲受人からの借入金であるとする仮装の借用証書を作成するなど、真実の取引に基づかない契約書等を基に所得金額等を算定して申告していることは、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい又は仮装に該当する。

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居住の用に供していない土地建物の所在地に住民登録を移し、その住民票の写しを確定申告書に添付する等により居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けようとしたことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例

裁決事例集 No.27 - 1頁

 請求人は、従来から継続して貸借している現住所の建物を生活の本拠としており、また、不動産業者に本件物件の売却を依頼した後に、住民登録を本件物件の所在地に移していること等から、本件物件の所在地が請求人の生活の本拠たる住所となり得る余地がなく、このような状況下で、当該所在地に住民票上の住所を移転させ、その旨の住民票の写しを確定申告書に添付した請求人の行為は、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受ける目的でしたものとみるほかはないので、課税標準の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装に該当する。

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給与所得に当たる海外旅行の費用を福利厚生費に当たる国内旅行の費用のごとく仮装したことは、源泉所得税に関する事実の仮装に該当するとした事例

裁決事例集 No.27 - 8頁

 給与所得として請求人が源泉徴収義務を負う従業員慰安旅行の費用について、[1]実際は海外旅行であるにもかかわらず、国内旅行を行ったとする架空の書類を旅行社に作成させたこと、[2]上記[1]で作成させた架空書類に基づき、国内旅行を行ったとして、福利厚生費を計上する経理をしたこと、[3]原処分の調査担当職員に対し国内旅行を実施したと虚偽の説明をしたことは、単なる過失や記帳誤り等とは認められず、故意に源泉所得税に関する事実を仮装したものと認めるのが相当である。

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支払手数料及びロイヤリティについて、その支払義務がないにもかかわらず支払の事実を仮装したものとして重加算税を賦課した原処分は相当であるとした事例

裁決事例集 No.36 - 120頁

 請求人が支払手数料として計上した金額は、請求人の代表者の個人的投資行為に関連するものであって、請求人の業務に関連しないものであるから損金の額に算入することは認められず、また、コンサルティングフィ及びロイヤリティについても、それぞれ親会社の負担すべき費用及び支払義務のないものを損金の額に計上したものであり、損金の額に算入することは認められない。
 支払手数料及びロイヤリティについては、その支払義務のないものを支払義務があるかのようにその事実を仮装して損金の額に計上したものであるから、重加算税の賦課の対象としたことは相当である。

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いわゆる「つまみ申告」が国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい仮装行為に該当するとした事例

裁決事例集 No.37 - 16頁

 自らの事業により多額の所得を得、その所得を十分かつ正確に認識しながら、その認識した真実の所得をあえて秘匿し、それが課税の対象となることを回避することを意図し、実際の所得を把握できる関係書類等に依拠した申告をすることなく、殊更に関係書類に基づかずに所得金額を低く記載した内容虚偽の確定申告書、修正申告書を提出して申告する行為は、所得税の税額計算の基礎となる所得の存在を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づいて納税申告書を提出したことに該当する。

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売上除外等の不正行為は従業員が行ったものであり、請求人がその不正行為を知ったのは原処分調査時であるから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当しないとの主張を排斥した事例

裁決事例集 No.37 - 22頁

 請求人は、売上除外等の不正行為は従業員が請求人に無断で行ったものであり、請求人の代表者等は関与していなかったから、重加算税を賦課することは不当である旨主張するが、当該売上除外に係る簿外銀行預金の払戻しの状況、同預金の預金通帳や印鑑の保管状況、真正な売上げを記載した売上メモの保管状況等から、請求人の代表者等も売上除外行為を知っていたものと認められるから、重加算税を賦課したことは相当である。

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海外に送金した事業資金の一部をドル預金に設定し又は為替の売買等に運用し、その収益を会社益金に計上しなかったことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例

裁決事例集 No.38 - 7頁

 請求人が仮払金として海外に送金した多額の資金は事業資金等であって、代表者が管理・運用しており、請求人は、仮払金に係る運用収益が発生していることを十分に承知していたにもかかわらず、運用収益の発生事実を帳簿上明らかにせずに、これをあたかも代表者個人に帰属するものであるかのごとく処理して、当期の収益に計上していないのであるから、重加算税を賦課したことは相当である。

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存在しない借入金を相続税の課税価格の計算上債務控除して申告したことは、事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例

裁決事例集 No.39 - 8頁

 請求人が債務控除の対象となる債務に該当するとして申告した借入金は、[1]被相続人が借り入れたとする金員についての異動の形跡が認められないこと、[2]被相続人は、生前無職で、高齢かつ病弱であったものであり、一方、請求人は、貸金を業とする者であること、[3]請求人が主張する貸金返還請求訴訟は、相続税対策上提起されたことは疑いを入れる余地がないこと等の事実から、被相続人の借入金として存在したとは認められず、あたかもその借入金が存在するがごとく仮装して、相続税の課税価格の計算をして相続税の申告を行ったのであるから、重加算税の賦課決定をしたことは適法である。

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売上げの一部を隠ぺいしたことにより過大に繰り越された欠損金額があった場合には、これを損金の額に算入した事業年度において事実の隠ぺい又は仮装があったことになるとした事例

裁決事例集 No.39 - 22頁

 前々期の欠損事業年度において売上げの一部を隠ぺいにより脱漏させ、これに基づき翌期以降に欠損金を過大に繰り越す確定申告書を提出し、本件事業年度において欠損事業年度から繰り越されてきた架空の欠損金を損金の額に算入して過少な申告書を提出したのであるから、そのことは本件事業年度において税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装したことになるというべきである。

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6年前から居住の用に供していない土地建物の所在地に引き続き住民登録をしていたことを奇貨として、その住民票の写しを確定申告書に添付するなどにより居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けようとしたことは、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例

裁決事例集 No.40 - 16頁

 請求人は、本件建物にかつて居住していたとはいえ、6年前から譲渡の時まで、他人に貸し付けていたにもかかわらず、本件土地建物の所在地に引き続き住民登録をしていたことを奇貨として、その住民票の写しを確定申告書に添付し、また、本件建物の2階を請求人が占有使用していた旨を記載した借主の同意書を申告期限前に作成し、借主からその署名押印を拒絶されたにもかかわらず、その後の調査の際に、借主以外の者が署名押印したと認められる借主名の同意書を提出し、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けようとしたことは、事実の隠ぺい又は仮装の行為に該当すると認められるから、重加算税の賦課決定をしたことは相当である。

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いわゆる「つまみ申告」が重加算税の課税要件を満たすとした事例

裁決事例集 No.41 - 15頁

 認定事実を総合すれば、請求人は、自己の有価証券の継続的取引により多額の所得を得、しかもその所得があることを十分認識しており、かつ、申告の必要があることを十分認識していながら、それが課税の対象となることを回避するため、殊更それを除外して過少な所得金額を記載した内容虚偽の確定申告書を提出して本件雑所得のすべてを故意に秘匿したということができる。
 そうすると、請求人は、税額計算の基礎となるべき事実を隠ぺいしその隠ぺいしたところに基づいて納税申告書を提出したというべきである。

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本件二つの譲渡に関して、それぞれ、中間譲受人を介在させて事実を仮装し、その譲渡所得金額を隠ぺいしたと判断した事例

裁決事例集 No.44 - 72頁

 請求人は、本件譲渡物件は契約書に記載された金額で中間譲受人に譲渡した旨主張するが、[1]中間譲受人のうちの一人は、脳出血の後遺症で自宅療養を続けており、不動産取引に従事できる状況にはなかったこと及び言語障害があり、また、度々、喘息の発作を起こして、死亡する直前の1年間は特に激しく、そのため同人の妻が常時介護していたが、その間、不動産取引を行った事実は認められないこと、並びに[2]他の中間譲受人は、譲渡人である被相続人から連帯保証債務の免除を条件に、中間譲受人となることを依頼され、不正取引に加担していることを申述していること等からすると、中間譲受人を介在させて、取引の事実を仮装し、その譲渡所得金額を隠ぺいしたものである。

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居住の用に供していない譲渡物件の所在地に住民登録をしていた者が、納税相談時に担当職員に虚偽の申立てをする等し、申告書を作成させ提出したことは、隠ぺい又は仮装の行為に該当するとした事例

裁決事例集 No.45 - 24頁

 請求人は、購入直後の約1年間を除いて譲渡した本件家屋を居住の用に供していなかったにもかかわらず本件家屋の所在地に住民登録をしていたが、納税相談時に相談担当職員に対して、本件家屋の利用状況について、全所有期間を通じてその4分の3相当部分を居住の用に供していた旨の虚偽の申立てをして関係書類に虚偽の事実を記載させ、かつ、これを基礎として計算した申告書を作成させた上でこれを提出しており、このような請求人の行為は、隠ぺい又は仮装の行為に該当する。

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消費税施行前に販売した商品につき返品があったかのように仮装して、消費税額の還付を受けたことに対し、重加算税を賦課したことは適法であるとした事例

裁決事例集 No.47 - 46頁

 請求人は、原処分庁が、本件返品は課税仕入れとして計上が認められるとの相談担当者の回答を無視して更正を行ったもので、信義誠実の原則に反するものであるから重加算税の賦課決定は違法である旨主張する。
 請求人は、架空の取引である本件返品が課税仕入れに該当しないことを十分知りながら、架空の取引に係る対価の額30,000,000円を課税仕入れに係る支払対価の額に加算したところで、課税仕入れに係る消費税額を過大に計上して本件課税期間の消費税の確定申告書を提出し、過大に消費税の還付を受けたものと認められる。
 相談担当者は、請求人に対して、消費税の適用が開始される以前に販売した商品が返品された場合には、控除できない旨回答しており、請求人が主張するような事実も認められないから、国税通則法第68条第1項の規定に基づいてされた重加算税の賦課決定処分は適法である。

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ゴルフ会員権を買戻し条件付で譲渡(取得価格の10分の1で譲渡するとするもの)したこととし、譲渡費用を加えた損失金額につき、給与所得と損益通算して所得税の還付申告をしたことは、国税通則法第68条第1項の隠ぺい、仮装に当たるとした事例

裁決事例集 No.51 - 1頁

 請求人は、ゴルフ会員権(本件会員権)の売却により譲渡損失を生じさせれば損益通算ができることを承知の上で、本件会員権の売却、買戻しを行い、本件会員権の売買により、実質的な損失は生じていないことを十分承知しているにもかかわらず、計算書の作成をもって損失が生じたとして申告しているのであり、このことは、損益通算を行うための目的で本件会員権の譲渡取引があったかのような仮装をしたことに基づき申告したことにほかならないものである。そうすると、国税通則法第68条(重加算税)第1項に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するものというべきである。

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居住の用に供していない土地建物の所在地に住民票を移し、その住民票を添付して相続税法第21条の6の特例の適用を受けようとしたことが、事実の隠ぺい又は仮装に該当するとした事例

裁決事例集 No.51 - 12頁

 請求人は、請求人の夫から夫所有の土地建物の持分(本件資産)の贈与を受け、この贈与に係る贈与税について相続税法第21条の6(贈与税の配偶者控除)の特例を適用して贈与税の期限後申告をしているところ、請求人は本件資産を居住の用に供していないにもかかわらず、申告書に贈与の特例を適用する旨記載し、これに実際の住所とは異なる内容が記載された住民票を添付したものであるから、国税通則法第68条(重加算税)第2項に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときに該当する。

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各年分の収入金額は、請求書控え及び預金通帳で十分把握し認識することができたにもかかわらず、毎月の収入金額をすべて600,000円に圧縮し、その金額を上回る部分を除外したところで、過少な課税標準額を記載した内容虚偽の申告書を作成して提出した行為は、事実の隠ぺいに該当するとした事例

裁決事例集 No.54 - 83頁

  1.  請求人は、みなし法人課税を選択し、平成4年分までその適用を受けていたものである。
     みなし法人課税の制度は、所得が連年一定であれば、事業主報酬の金額を調整することにより、節税が可能であるものの、所得の変動が多い場合には、税額の負担割合は通常より高くなる可能性を含んでいる。
     したがって、この制度を選択するに当たっては、自己の事業を的確に予測する能力と通常以上の適正な記帳が必要となり、申告に当たっては高度な計算手続が要求される。
     ところが、請求人は、収入金額を定額の月600,000円としか記帳しないのみならず、4年間にわたって総収入金額を7,200,000円と記載した確定申告書及び所得税青色申告決算書を提出していたことが認められる。このことは、確かに請求人が主張するように二重帳簿ではないけれども、実際の総収入金額を計上した場合には、請求人の負担が高くなることを認識していたと認められる。
     しかも、計上した収入金額と実際の収入金額との差額の総収入金額に占める割合は、平成4年分22.2パーセント、平成7年分では34.2パーセントに達する。
     以上のことから、7,200,000円を超えた金額は、請求人の主張するような単なる計上ミスというより、売上除外とみるのが相当であり、請求人が4年間の長きにわたって行った経理処理は、過少の申告が発生することを認識して行っていたものと認められ、事実の隠ぺいに該当する。
  2.  収入金額の3割程度の給与所得控除相当額を収入金額から控除して記帳するものと誤解していたとの請求人の主張は、4年間の総収入金額が7,200,000円と一定であることからすると不自然であり、また、税務調査の際に、税務職員の質問調査を受忍して帳簿書類等を提示するのは、法に定められたことであるから、請求書控えや預金通帳を提示したことをもって仮装、隠ぺいがないとはいえない。
  3.  重加算税の賦課決定処分をするに当たり、その理由を納税者に説明しなければならない旨定めた法令の規定はなく、説明するか否かは調査権限を有する税務職員の合理的な判断に委ねられていると解するのが相当であるから、請求人の主張する違法はない。
     なお、本件調査は、所得税法234条の規定に基づく質問検査権の行使であり、行政手続法の適用除外に該当する。

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被相続人名義の普通預金等の存在を承知した上で、税理士にこれらに相当する金額を含めて納付すべき税額を計算させ、その後、同税理士から資料の提示を求められると、残高証明書等を所持していたにもかかわらず、ない旨の回答をし、本件預金等の存在を明らかにしないで本件確定申告書を作成、提出させた行為は、事実の隠ぺいに当たるとした事例

裁決事例集 No.56 - 34頁

 請求人は、本件各預金が被相続人の相続開始日現在において存在し、それが被相続人名義であることを承知した上で、M税理士事務所に勤務するT税理士に指示して、いったんは本件各預金とも思われる金額を含めて納付すべき税額を算定させ、その後、同税理士から当該金額に係る資料の提示を求められると、本件残高証明書及び本件各預金のうち定期預金証書を所持していたにもかかわらず、当該資料がない旨の回答をして、同税理士に本件各預金の存在を明らかにせずに本件申告書の作成を依頼し、同申告書をE税務署長に提出したことが認められる。
 請求人の上記行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい」に該当するから、本件重加算税の賦課決定処分は相当であり、請求人の主張には理由がない。

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請求人は、調査担当者から指摘されて提出した被相続人名義の有価証券等について、相続開始後にその利息及び償還金をすべて受領し、現金化して費消していることなどからすると、本件有価証券等の存在を知りながらこれを除外し、過少な相続税の申告書を作成・提出したものと認められ、当該行為は、事実を隠ぺいした場合に当たるとした事例

裁決事例集 No.56 - 45頁

 請求人は、調査担当者から申告漏れの株式が存在する旨の指摘を受けて、家の中を捜してみた結果、初めて被相続人が使用していたたんすの中にあったアタッシュケースの中から有価証券等を把握したのであるから、隠ぺい又は仮装の事実はない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、[1]株式の知識をもっていること、[2]相続開始後、被相続人の遺産を一括管理・運営していたこと、[3]本件株式・抵当証券の利息及び償還金をすべて受領し、現金化して費消していること、[4]定期貯金の満期を迎えたものについて、孫の名義に変えていること、[5]本件申告書提出後の所得税の確定申告において、配当金の支払通知書の写しをすべて保存していたにもかかわらず、申告済み株式に係る配当金のみを申告したことが認められ、以上によれば、請求人は、本件有価証券等の存在を知りながらこれを隠ぺいし、過少な本件申告書を作成・提出したもので、その行為は、相続税法第19条の2第5項及び国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺいに該当する。

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本件相続開始直後、請求人自らが被相続人名義の証書式定額郵便貯金を解約して、新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座に預入し、その存在を確知しているにもかかわらず、後に開設した相続財産管理口座には被相続人名義の通帳式郵便貯金を解約した金額のみを預入し、証書式定額郵便貯金を除外して相続税の確定申告をした請求人の行為は、事実を隠ぺいした場合に該当するとした事例

裁決事例集 No.57 - 36頁

 請求人は、被相続人名義の証書式定額郵便貯金(以下「本件定額貯金」という。)が申告漏れとなったのは単純なミスによるものであって、隠ぺいしたものではない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、[1]本件相続開始後に自ら本件定額貯金を解約し、その存在を確知していること、[2]本件定額貯金の解約を一両日中に実行したにもかかわらず、5箇所の郵便局で解約手続をとっていること、[3]被相続人名義の通帳式郵便貯金(以下「本件通帳式貯金」という。申告済み分。)の一部払戻金額に一致させた金額2,310,000円を新たに開設した請求人ら名義の通常郵便貯金口座から払い戻し、それを相続財産管理口座に預入していること、[4]同様の6,556,456円を請求人ら名義の上記口座から払い戻し、それを相続財産管理口座へ預入していること、[5]それ以外の請求人ら名義の上記口座からの払戻金は相続財産管理口座へ預入せず、うち、2,543,192円については費消していること、[6]本件申告をするに際して、本件通帳式貯金についてはその金額を相続財産として本件申告書に記載したが、本件定額貯金については記載しなかったことが認められる。
 加えて、請求人ら名義の通常郵便貯金は、それらの貯金の利息を除けば本件定額貯金と本件通帳式貯金の解約金のみをその預入源泉としており、請求人が相続財産を集約し、整理しようとするのであれば請求人ら名義の通常郵便貯金口座の全額を払い戻して残さず相続財産管理口座へ預入するのが簡単かつ自然であるにもかかわらず、上記のとおり、本件通帳式貯金の払戻金額に一致させた金額だけを請求人ら名義の通常郵便貯金口座から払い戻して相続財産管理口座に預入している。
 さらに、請求人は、請求人らに対する税務調査の際には本件通帳式貯金以外の郵便貯金の存在を否定し、後日になってそれを認めている。
 以上の事実からすれば、請求人は本件定額貯金について秘匿することを意図し、その意図に基づいて過少申告したことが認められ、請求人のかかる行為は、重加算税の賦課要件たる事実の隠ぺいに該当する。

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多額の不動産所得を申告すべきことを認識しながら、関与税理士に資料を提出せず、かつ、虚偽の説明をするなどして、過少な申告書を作成させて提出した行為は、重加算税の賦課要件に該当するとともに更正等の期間制限に係る偽りその他不正の行為に該当するとした事例

裁決事例集 No.57 - 50頁

 請求人は、多額の不動産所得を申告すべきことを認識しながら、関与税理士から不動産所得の金額について質問を受け、資料の提示を求められたにもかかわらず、同席者の虚偽の説明をあえて否定せず、あるいは自ら前年と同様である旨虚偽の説明をし、また、何らの資料も提示しないで多額の不動産所得のあることを秘匿し、税理士に過少な申告を記載した確定申告書を作成させて提出し、真実の所得金額の大部分を申告しなかったことが認められる。
 このことは、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、所得金額をことさら過少にした内容虚偽の確定申告書を提出した場合に該当し、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項に規定する事実の隠ぺい及び同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為をした場合に当たる。

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1. 請求人が架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、調査担当職員に帳簿書類の保存がない等の虚偽の答弁をしたことは、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に当たるとされた事例2. 更正処分により賦課される事業税の額を見込額で必要経費に算入すべきとの請求人の主張が排斥された事例3. 請求人が会計データを保存していたフロッピーディスクに不具合が生じ、出力不可能となったこと等を理由に帳簿書類等を提示しなかったことは、青色申告承認取消事由に当たるとされた事例

裁決事例集 No.58 - 107頁

 請求人は、税理士でありながら、総勘定元帳・決算書に虚偽の記載をして架空の必要経費を計上し、多額の所得金額を脱漏したばかりか、その能力を有しながら帳簿書類の備付け等をせず、また、原処分庁の調査担当職員に対し帳簿書類の保存はない等の虚偽の答弁をし、さらに、異議審理庁による調査の際にも虚偽の資料を提出するなどしている事実が認められる。これらの事実に照らすと、請求人は、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を仮装し確定申告書を提出したというべきであり、また、少なくとも申告当初から、真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的に隠ぺいすることをも予定しつつ、多額の所得金額を脱漏し、所得金額をことさら過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したというべきであって、本件確定申告書の提出は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、国税の課税標準等の計算の基礎となる事実について、隠ぺいしたところに基づき確定申告書を提出した場合に該当するから、原処分庁が国税通則法第68条第1項に基づいてした重加算税の賦課決定処分は適法である。

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請求人が開設者等として名義貸しした診療所の事業所得が記載された請求人名義の所得税確定申告書の効力及び隠ぺい仮装行為の有無が争われ、請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.60 - 96頁

 確定申告は、納税者の判断とその責任において、申告手続を第三者に依頼して納税者の代理又は代行者として申告させることもできるが、その場合であっても、納税者が第三者に申告手続を一任した以上、その者がした申告は納税者自身が行ったものとして取り扱うべきである。
 請求人は、平成5年分については、源泉徴収票を本来の当該診療所事業者(以下、「事業者」という。)らに渡し、平成6年分については、すでに勤務先の病院を退職しているにもかかわらず、確定申告書の用紙及び源泉徴収票を事業者らに渡しているのであって、請求人は、その確定申告手続の代行を事業者らに一任したものといわざるを得ない。
 請求人は、事業者らに依頼したのは、その給与所得の申告手続のみであり、本件事業所得の申告手続は依頼していない旨の主張もするが、請求人は、本件事業所得の金額も記載された平成6年分所得税の更正の請求書を提出している上、本件事業所得の申告により高額となった住民税を事業者らに負担させていること、さらに、所得税法第232条第1項の規定により財産及び債務の明細書を提出しなければならないのは総所得金額及び山林所得金額の合計額が二千万円を超える場合に限られるところ、請求人は、平成6年分の所得税について、本件事業所得の金額が加算されたことにより総所得金額が二千万円を超えたとして財産及び債務の明細書を提出していることからすると、やはり請求人は本件事業所得の申告手続についても事業者らに依頼していたというべきである。
 請求人は、当該診療所の実質的な経営者ではないにもかかわらず、事業者から開設者及び管理者となることを依頼されて、これを承諾し診療所の開設届を提出して、自ら本件事業所得が請求人の所得であるかのように装っただけでなく、請求人から確定申告手続の依頼を受けた事業者においても、本件事業所得が事業者自身の所得であることを承知の上、当該診療所の事業に係る収入及び経費の管理並びにこれらの入出金を請求人名義の銀行口座を使用して行い、請求人名義で発行された支払基金からの支払調書を添付して、本件事業所得が請求人の所得であるように装って、これに基づき還付金に相当する税額を過大に申告しているのであって、これらのことは、本件各年分において国税通則法第68条第1項に規定する場合に該当する。

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隠ぺい、仮装行為を認定し、重加算税を賦課したことが適法と判断した事例

裁決事例集 No.60 - 110頁

 請求人は、本件売上金が計上漏れとなったのは、請求人の事務員が本件売上金を請求人会社の代表取締役からの借入金として誤って経理処理をしたことによる旨主張する。
 しかしながら、(請求人の代表取締役名義の)個人預金口座に振り込まれた顧客からの売上代金をそれぞれ請求人貯金口座に振替入金しているが、平成8年1月18日に個人預金口座に入金された本件売上金は請求人の平成8年1月期の売上げに計上しないで、しかも、平成8年2月2日に請求人貯金口座に振替入金後、平成9年1月期において、これを請求人の代表取締役からの借入金として経理処理している。
 このことは、請求人が本件売上金が個人預金口座に入金されたことを奇貨として、平成8年1月期においてこれを売上げから除外し、平成9年1月期において借入金に仮装して経理処理したものと解するのが相当である。
 ところで、原処分は、請求人の平成10年1月期の修正申告により増加した所得金額を対象としているが、これは、請求人が、[1]平成8年1月期において本件売上金を売上げから除外し、[2]これに基づき、平成9年1月期以降に欠損金を過大に繰り越す確定申告書を提出し、[3]また、上記[1]の行為に基づき、平成10年1月期において、平成8年1月期から繰り越されてきた過大な欠損金を損金の額に算入して過少な所得金額の確定申告書を提出したのであるから、このことは、平成10年1月期において税額等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺい又は仮装したところに基づき確定申告書を提出したということができる。
 したがって、原処分庁が平成10年1月期を対象として重加算税の賦課決定をしたことは相当である。

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代理権のない請求人の父に請求人名義の署名・押印をさせ、提出させた本件各修正申告書は無効で重加算税の取消しを求めるとの請求人の主張を認めず、請求人の父の納税申告手続全般にわたる代理権の存在及び同人による隠ぺい仮装行為を認定した事例

裁決事例集 No.60 - 119頁

 請求人は、調査担当職員が、請求人から代理権を授与されていない請求人の父をして、本件修正申告書に請求人名義の署名、押印をさせ、これを提出させたものであるから、本件修正申告書は無効である旨主張する。
 しかしながら、請求人と請求人の父は、平成6年分以降、農業者年金を受給するため、農業所得の申告者の名義を請求人の父から請求人に変えたものの、農作業の従事の状況等確定申告に係る農業所得の金額の計算も、請求人の父が従前と変わらず行っているものというべきであり、さらに、請求人の父は、調査担当職員に対し、請求人名義の貯金通帳を提示し、請求人の各年分の所得税の確定申告書を町役場に赴いて作成、提出し、各年分の確定申告が過少申告となっていたことを自認し、請求人に迷惑を掛けたくないとして、請求人名義の署名、押印をしたこと、本件調査の全過程において請求人の父が対応していたこと、請求人は、農業について父に任せている旨述べたことからすれば、請求人の父は、請求人から、農作業及び確定申告に限って任されていたものとは考えられず、むしろ、農業に係る作業、申告に係る計算並びに確定申告及びその修正までを含めた税務上の全般の事務を任されており、請求人に代わってこれらを行っていたと認めるのが相当であるから、請求人の父が本件修正申告書に請求人名義で署名、押印をして、これを原処分庁に提出した行為の効果は、請求人に帰属するというべきである。
 重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置であり、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、その合理的解釈としては、隠ぺい、仮装の行為に出た者が納税義務者本人でなく、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の計算に変動を生ぜしめた者である場合を含むものであり、かつ、納税義務者が納税申告書を提出するに当たり、その隠ぺい、仮装行為を知っていたか否かに左右されないものと解すべきである。
 これを認定した各事実に照らし判断すると、請求人の父の行った一連の行為は、国税通則法第68条に規定する隠ぺい、仮装に該当するというべきである。

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公表の預金口座とは別に請求人名義の預金口座を開設して公表外で管理し、そこに売上金の一部を入金していたことなどから隠ぺい行為を認定した事例

裁決事例集 No.60 - 134頁

 請求人は、売上計上漏れがあったとして修正申告書を提出しているが、重加算税の賦課決定に対して、[1]売上計上漏れに係る預金口座は本人名義であり、二重帳簿は作成していないこと、[2]税金をごまかす意思はなく単に小遣い稼ぎをしようとしたものであること、[3]調査担当職員に公表外預金口座はないと申述したのは、調査時点では当該預金口座は解約済であったこと、[4]関係書類を全て破棄したとするが、調査担当職員はその事実を確認していないことを理由として、隠ぺい仮装の事実はない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、[5]得意先に対する請求書を自ら作成して売上金の一部を当該預金口座に入金しており、売上金であることを十分認識していながら記帳担当者に報告していなかったこと、[6]その結果として納税額が過少になることを認識していた、[7]公表の預金口座とは別に請求人名義の預金口座を開設して公表外で管理し、そこに売上金の一部を入金していたことが認められることから、請求人は故意に売上金の一部を隠ぺいしていたというべきであり、原処分は相当である。

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請求人が行った「ゴルフ会員権を会員権業者を介して知人に譲渡した取引」は、請求人が譲渡損失を作り出して所得税の軽減を図ることを目的とした仮装取引であると認められるから、重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.61 - 47頁

 請求人は、会員権業者を介在させたゴルフ会員権を請求人の知人へ譲渡した本件取引において、請求人が知人の購入代金を立て替えるとともに担保として会員権を預かっていたとしても、何ら不自然なことはなく通常の取引であるから、仮装取引の認定は誤っている旨主張する。
 しかしながら、[1]本件一連の取引後も、本件会員権は、その名義も保管形態もその取引前と変わらず請求人名義のまま同人によって保管され、請求人が本件ゴルフ場でメンバーとしてプレーし、年会費の支払いも請求人が負担していたことから、譲渡の実体を認めることができないこと、[2]取引の相手方である知人は、当該取引を実体のないものと認識していること、[3]請求人が立替金と称して支出した現金は、売却代金として請求人に還流したものであって、本件の一連の取引は経済的合理性に反するものであることから、本件会員権の譲渡に係る一連の行為は、譲渡損失を作り出して所得税の還付を受けるためになされた仮装行為と認めるのが相当である。

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超過勤務に係る従業員給料をあえて外注工賃に科目を仮装し、外注工賃勘定として計上していたことなどから隠ぺい行為を認定した事例

裁決事例集 No.61 - 62頁

 請求人は、本件給料については、外注工賃に科目を変えていたため、経理担当者が単純に誤って源泉徴収を行わず、消費税及び地方消費税の申告の際にも、本件給料を課税仕入れとしていたものである旨主張する。
 しかしながら、本件給料の経理に当たり、意図的に科目を偽り、外注工賃として継続的に処理することが企図されているのであるから、むしろ、本件給料について所得税の源泉徴収が行われず、あるいは課税仕入れとして税額控除の処理がなされることは、請求人において当然に予定されていたものとみるのが自然であって、当審判所の調査によっても、代表者が経理担当者に対して、税務上は本件給料を外注工賃勘定から給料手当勘定に訂正計上し、真実の給料支給の額に見合った源泉所得税を納付するなど、適法に処理するよう特段の指示をしたというような形跡もうかがわれない。
 そうすると、経理担当者の単純な誤りによって、法定納期限までに源泉所得税が納付されず、また、消費税及び地方消費税の申告が過少申告となっていたとする請求人の当該主張は、採用することができない。

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売上げを除外する意図の下に事実を隠ぺいし、これに基づき納付すべき税額を過少に記載して、内容虚偽の確定申告書を提出したものと認定した事例

裁決事例集 No.61 - 74頁

 請求人は、重加算税は故意に脱税の目的で積極的な不正行為をもって所得税をほ脱している場合に課されるものであり、売上げを除外した資金で取得した事業用資産の取得価額等を立証できなかったために修正申告した場合は、積極的な不正行為があったとはいえず、重加算税を賦課すべきでない旨主張する。
 しかし、請求人は、売上除外に係る売掛帳及び請求書控等を別管理として関与税理士に提出せず、代金決済後に破棄し、除外売上金の決済手段として受領した約束手形又は小切手の一部を公表外預金口座で取り立てていることなどから、賦課要件となる事実を隠ぺいし、これに基づき納付すべき税額を過少に記載して、申告書を提出したものと認められ、国税通則法第68条第1項の規定に該当する。
 なお、請求人は、原処分庁が除外売上金の使途について立証責任を負っているのであるから、事業用資産が存在しないこと又は個人的に費消したことを明らかにすべきである旨主張するが、除外売上金で事業用資産を取得していたか否かについては、その支出の支払先等が明らかになってはじめてその当否が判断できるのであるから、請求人が修正申告と異なる必要経費の存在を主張するからには、請求人自らがその必要経費に関し具体的な立証を行うべきである。

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課税仕入れに計上した取引は架空であるとした事例

裁決事例集 No.63 - 45頁

 請求人は、本件仕入れ等は事実であり修正申告書を提出したのは本意でなく、隠ぺい又は仮装により課税仕入れに計上したとする重加算税等の賦課決定処分は取り消すべきであると主張する。
 しかしながら、本件仕入れ等の仕入先は請求人の代表者が実質的に経営していた法人であり、仕入を計上した時点でその仕入先は営業を停止し同社の工場も閉鎖されていたこと、仕入先の元従業員は、同工場が閉鎖された際に請求人の代表者が仕入先の重要書類や機械等を持ち出したと申述していることからすると、請求人が本件仕入れ等をするのが不可能であったと認められ、請求人は架空の本件仕入れ等を記載した納品書等をもって課税仕入れに計上し、消費税等の還付を受けたものと認められる。

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請求人が専従者給与を支給したとして事業所得の金額の計算上必要経費に算入したことに隠ぺい・仮装の事実があったとして行った重加算税の賦課決定処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.63 - 63頁

 請求人は、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する仮装、隠ぺいの事実は全くなく、重加算税の賦課決定処分は違法であり取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人の妻が本件期間において請求人の事業に従事した時間がきん少であったことは、配偶者である請求人にとって明白な事実であり、請求人は、請求人の妻が専ら請求人の事業に従事していないこと及び本件専従者給与が本来請求人の妻に支給されるものではないことを十分認識した上で、請求人自身が開設したと認められる同人の管理する請求人の妻名義の預金口座に専従者給与相当額を振込み、請求人の妻に本件専従者給与を支払ったとして請求人の事業の必要経費に算入して所得金額を過少に計算し、確定申告を行ったものというべきであり、このことは、租税を不当に免れる目的をもって、故意に課税標準額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことに該当することは明らかである。
 また、請求人が請求人の妻に支払ったとする本件専従者給与は、支給された側の請求人の妻自身も知らないものであり、請求人の妻の知らない口座に振り込むなどして請求人が実質的に預金等を管理し、運用を図っていたものと認められることからしても、請求人の妻への仮装の本件専従者給与の支給を作出したものであることは明らかである。
 したがって、原処分庁が、国税通則法第68条第1項の規定に基づき行った各年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分は適法である。

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被相続人が所得金額をことさら過少に申告した行為が国税通則法第70条第5項及び同法第68条第1項に該当し、被相続人の国税の納付義務を承継した請求人らが更正処分及び重加算税の賦課決定処分の対象となることを認めた事例

裁決事例集 No.63 - 86頁

 請求人らは、被相続人には偽りその他不正の行為は存在しないから法定申告期限から3年を経過して行われた更正処分は違法であり、また、被相続人には仮装、隠ぺいの事実はないから重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、被相続人は、各月分の収入金額等を記載した書類から真実の所得金額を申告すべきことを十分認識しながら、当初からこれを過少に申告する意図の下、同書類上に印をするなどして特定した月分の合計金額のみを収入金額として記載した確定申告書を提出し、真実の所得金額の大部分を申告しなかったものと認められ、被相続人のこの行為は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をした上、その意図に基づき所得金額をことさら過少にした内容虚偽の確定申告書を提出した場合に該当するから、被相続人の国税の納付義務を承継した請求人らに対する更正処分及び重加算税の賦課決定処分は適法である。

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虚偽の仲介契約書を作成し、取引先の関係者に対する受注謝礼金を販売手数料に仮装していたと認定し、重加算税の賦課は適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 102頁

 請求人は、本件送金額につき、正当な取引価額に上乗せして本件取引先から支払を受けた預り金を返金したものであり、それを売上及び販売手数料にしたとしても課税標準額に影響せず、また、本件仲介契約書は、不慣れな担当者が社内説明のために作成したもので、脱税の目的のために作成されたものではないから、本件金員に係る重加算税の賦課(原処分)は違法である旨主張する。
 しかしながら、本件取引に係る売買契約書、当時の取引担当者の答述等によると、請求人は、本件送金額について、本件取引の仲介の対価でなく、本件取引先の関係人個人に対して支払われる謝礼金であるとの認識を持ちながら、虚偽の仲介契約書を作成することにより、あたかも販売手数料を支出したかのように装って損金経理し、その結果、確定申告において交際費課税を免れたものと認められ、請求人のこれらの行為は、隠ぺい又は仮装の事実に基づいて納税申告書を提出していたときに該当するため、原処分は適法である。

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直近5年分の売上除外割合等に基づき推計の方法で算定された各年分の売上除外額について、隠ぺいの事実を認め、重加算税賦課決定処分を適法とした事例

裁決事例集 No.65 - 35頁

 請求人は、原処分庁が仮装、隠ぺいについて故意の存在を立証することなく重加算税を賦課していること、本件修正申告書が本件調査において推計の方法により算定された売上除外金額に基づいて提出されたものであることから、本件賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、請求人の妻は、売上金、売上伝票等からほぼ正確な売上金額を把握していたにもかかわらず、従業員に仮にレジを締めさせその後の売上を除外するなどの方法により、売上金額を過少に記載した日計表を作成していた旨申述しており、当該申述は従業員の申述とも符合し信ぴょう性が認められる上、請求人は、平成2年以降継続して公表外給料を支払っていたこと及び直近5年分の売上除外割合等により推計の方法で算定された本件各年分の売上除外額について、その事実を認めて修正申告書を提出していることを併せ考えると、直近5年分と同様に、従業員に仮にレジを締めさせ、その後の売上を除外した日計表を作成し、それに基づき過少申告していたと認めるのが相当である。そうすると、請求人は、売上を除外する意図の下に事実を隠ぺいし、これに基づき納付すべき税額を過少に記載して、内容虚偽の確定申告書を提出したものと認められ、請求人のこれらの行為は、国税通則法第68条第1項に該当する。
 また、同項には、その適用に当たって推計による課税標準等を除くことが規定されていない以上、課税標準等が実額計算によるものか推計計算によるものかを問わないものと解するのが相当である。

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請求人に帰属する歯科医業に係る所得を、請求人の親族に帰属するがごとく装うために親族名義の確定申告書及び決算書を税務署長に提出したことが、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装に当たると判断した事例

裁決事例集 No.67 - 57頁

 本件事業は、請求人の親族の名義で行われているが、当該親族は、医院の経営に関与せず、毎月定額の報酬を受領しているのみで、本件事業から生じた収入金額を費消したとは認められず、一方、請求人は、本件事業の遂行上生じた収入金額を請求人名義の預金口座に入金し、この金員を費消していることから、請求人が本件事業を経営し、その収益を享受していると認められるので、本件事業の遂行上生じた所得は、請求人に帰属すると認められる。
 請求人は、収入金額の一部を隠匿し、また、架空の経費を計上することにより所得金額を過少に申告したことに加え、本件事業の遂行上生じた所得が自己に帰属するにもかかわらず、親族に帰属するがごとく装うため同人に秘して、同人名義の所得税の確定申告書及び所得税青色申告決算書を税務署長に提出したことは、本件各年分において税額を免れる意図の下に事実を隠ぺいし、又は仮装したところに基づき申告したものと認められる。

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隠ぺい行為と評価できる状況を是正する措置が採られた前後の期間があるにもかかわらず、是正する措置を採らなかった期間分について、隠ぺい行為と評価できる事実に基づき申告書を提出した場合に、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 No.69 - 31頁

 請求人は、前回対象期間と同じく、本件期間においても、車検代行手数料が請求人の益金の額になるものであることを十分認識しながら、顧客から収受する車検費用(自賠責保険料、自動車重量税および請求人の収益である車検代行手数料の合計額)の大半が顧客からの預り金であること、また車検代行手数料を請求する請求書と主たる事業収入である整備売上げの請求書とが別葉で収受の形態が異なることなどの取引の特異性を利用し、意図的に、これを収受した事実を請求人の経理処理に反映することなく、収益の額に計上したかったものであり、このことは隠ぺい仮装と評価すべき行為を行っていたものと認めるのが相当であるところ、請求人は、本件申告書を提出するまでに過少の状況を是正しようとすればそれが可能であったのに、上記隠ぺい仮装により生じた状況を是正するための具体的な方策及び措置をとった事実はみとめられず、よって、本件申告書は隠ぺい仮装したところに基づき提出されたものと認めるのが相当である。

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本件相続税の申告に際し、当初から財産の過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしており、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 No.69 - 46頁

 請求人は、[1]被相続人の預貯金の通帳、印鑑等の保管場所及びその金額を請求人の妻から聞いて知っていたこと、[2]被相続人の死亡の2日前に、請求人の妻に現金出金を指示して2,000万円を引き出していること、[3]本件申告の約2か月前ころのほぼ同一時期に、本件相続財産である被相続人の他の預貯金6口座とともに残高証明を入手し、その後まもなくの時期に、本件定期預金の存在を依頼した税理士に知らせないまま、本件定期預金の漏れを是正する再三の機会があったにもかかわらず是正しないまま同税理士を含めて他の共同相続人と遺産分割協議をなし、本件申告に至った事実が認められ、本件定期預金が被相続人の相続財産として存在すること、および本件定期預金が申告書に記載されていないことを十分認識していたことが認められる。このことは、請求人が、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがいえる特段の行動をしたものであり、その意図に基づいてなした請求人の本件過少申告行為は、国税通則法68条第1項の重加算税の賦課要件である「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたこと」に当たる。

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納税者と関与税理士との間において、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例

裁決事例集 No.70 - 34頁

 請求人は、航空貨物運送に関する清算業務等に係る経費を繰上計上したこと及び割戻料収入の計上を繰り延べたことに関して、証ひょう書類を改ざんした事実など、国税通則法第68条第1項に規定する隠ぺい又は仮装の事実はなく、法人税の重加算税賦課決定処分は違法である旨主張する。
 ところで、国税通則法第68条第1項の「事実を隠ぺいする」とは、納税者がその意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠匿しあるいは脱漏することをいい、「事実を仮装する」とは、納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、事実をわい曲することをいうと解され、また、納税者が納税申告を第三者に委任し当該第三者が隠ぺい・仮装行為に基づく申告をした場合において、納税者と当該第三者との間において、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められれば、納税者に対する重加算税の賦課要件を充足するものというべきである。
 そうすると、請求人の代表者は、関与税理士に平成15年3月期(以下「本件事業年度」という。)の所得金額の操作を依頼し、関与税理士は、この依頼に基づき、平成16年3月期の当該費用をあたかも本件事業年度の経費であるかのごとく、事実を仮装した上で繰上計上し、また、割引料収入が本件事業年度の収益となるべき事実を隠ぺいした上で、当該割引料収入を平成16年3月期の収益に繰り延べたものであり、請求人と関与税理士との間において、当該経費及び割引料収入に係る事実を隠ぺい又は仮装することについての意思の連絡があったものと認められる。
 したがって、請求人が、関与税理士を介して、当該経費を繰上計上したこと及び当該割引料収入の計上を繰り延べた上で、本件事業年度の法人税の確定申告書を提出したことは、国税通則法第68条第1項の規定に該当することとなり、請求人の主張には理由がない。

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所得税の申告に際し、あたかも土地を有償により譲渡したかのように事実を仮装し、その仮装した事実に基づき架空の譲渡損益を計上し、納付すべき税額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことが重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 No.70 - 73頁

 本件両土地に係る売買代金等の決裁は、金融機関からの請求人の妻及び長女名義の借入金によりそれぞれ行われているところ、当該借入金は、請求人名義の当座預金から振り出された小切手により預け入れられた定期預金を担保として借り入れられたものであり、さらに当該借入金は、請求人が、請求人の預金が化体した請求人の妻名義の定期預金を解約するなどして返済している。そうすると、本件両土地の売買代金等の決裁は、単に請求人が自己の資金を請求人の妻及び長女名義で使用した取引で還流させることにより創出したものであり、本件両土地の売買に関して代金の授受はなかったものと認められより預け入れられた定期預金を担保として借り入れられたものであり、さらに当該借入金は、請求人が、請求人の預金が化体した請求人の妻名義の定期預金をる。また、本件両土地の取引については、請求人自らの意思のみに基づき本件土地合意書を作成し、かつ本件両土地の購入代金に係る金融機関との借入れ、返済の事実関係を請求人がすべて現出させ、さらに本件両土地の管理状況等も取引の前後において変化がなく、乙土地の収益を自己の所得として確定申告していることが認められる。
 したがって、請求人は、あたかも本件両土地を有償により譲渡したかのように事実を仮装し、その仮装した事実に基づき架空の譲渡損益を計上し、納付すべき税額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したものと認められる。
 よって、本件過少申告行為は、国税通則法第68条第1項の重加算税の賦課要件である「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたこと」に当たる。

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相続税の申告に際して、相続財産である被相続人名義の投資信託を申告しなかった行為について、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしており、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 No.72 - 41頁

 納税者が申告に際し、自己が依頼した税理士に対して必要資料等を秘匿した場合も、「当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした場合」に当たると解される。
 本件において、請求人は、相続税申告書の作成依頼先である税理士から資料の提出を指示されていたのであるから、同税理士に相続財産を示す適切な資料を提供するべき立場にあり、また、請求人は本件被相続人の相続財産として本件投資信託が存在したことを確実に認識していたと認められ、かつ、四半期ごとの本件投資信託の取引残高報告書の送付、本件投資信託の名義変更、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成という各出来事ごとに、同税理士に対して、本件残高証明書を渡す機会があったと認められるから、本件残高証明書を同税理士に渡さなかった請求人は、同税理士に提出した資料に係る財産が相続財産のすべてであり他にはないかのように装うことによって、同税理士をして本件投資信託を漏らして過少な相続税額が記載された本件当初申告書を作成させたものと認められる。
 したがって、請求人は、当初から財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものというべきであって、重加算税の賦課要件は充足されている。

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所得税の重加算税の賦課決定について、納税申告書の提出等の時点において、納税者が課税庁等に対し、自己が行った隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件には何ら影響しないとした事例

裁決事例集 No.73 - 64頁

 請求人及び請求人の親族が本件物件を居住の用に供していないにもかかわらず、請求人は本件特例を適用する意図を持って、本件物件に居住しているAらの住民登録のみを異動させた旨自認し、また請求人及びEの住民登録を本件住所に異動し、住民票の除票等を本件確定申告書に添付することにより、本件物件を自己の居住用と仮装したことが認められ、これらの行為は、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」に該当する。
 なお、請求人は、本件譲渡所得に関する相談の際に、Eが本件相談担当者に対し、請求人及び請求人の親族が本件物件に居住していなかったこと及び本件特例を適用するために請求人及びEの住民登録を本件住所に異動したことを説明しているから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺい又は仮装」の事実はこの時点でなくなったものであると主張する。
 しかしながら、重加算税については、「隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した」という国税通則法第68条第1項所定の課税要件を充足することにより成立するのであり、たとえ、納税申告書の提出時点において、納税者が課税庁等に対し、その隠ぺい又は仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件に何ら影響を与えるものではないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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リース取引物件の内容仮装は、隠ぺい又は仮装の行為に当たるとした事例

裁決事例集 No.73 - 79頁

 請求人は、N社が施行した建築工事等に係る本件建物附属設備等の見積金額を同社から調達する器具・備品等の見積金額に上乗せさせる方法で、リース取引の目的とする資産の全てが器具・備品等であるかのように事実を仮装した内容のリース会社用各見積書等を同社に作成させることにより、リース不適格資産(リース取引により売買があったものとされる資産)をリース適格資産(リース取引により賃貸借があったものとされる資産)に仮装し、その内容で各リース会社とリース契約を締結してリース料を損金の額に算入し、また、消費税の仕入税額控除をしていたものである。
 したがって、請求人の行為は、国税通則法第68条第1項にいう「課税標準の計算の基礎となる事実に一部を仮装した」ことに該当するというべきである。
 また、請求人は、リース取引の目的とした資産の金額に本件建物附属設備等の金額が含まれていること等を知りながら損金算入や仕入税額控除に及んだのであって、隠ぺい又は仮装の故意があることは明らかであり、それ以上に請求人が過少申告を行うことの認識まで有していることは重加算税の賦課要件ではないから、税金を不当に軽減する意図はなかったから故意がないとする旨の請求人の主張には理由がない。

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委託した工事が課税期間中に完了していないことを認識していたにもかかわらず、工事業者に対して課税期間中の請求書の発行を依頼した上、工事が課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出していた場合に、税額の基礎となる事実を仮装していたものと認定した事例

裁決事例集 No.75 - 93頁

 請求人が工事業者に依頼した請求書は納品書を兼ねていること、請求人において契約した工事は、通常、完了する前に当該工事に係る請求書を受け取ることはないことなどを併せ考えれば、本件各請求書については、請求人における経理処理上、単に工事業者に対する金銭の支出の基準となる書類であるのみならず、本件各工事が完了したかどうかの判定の基準となる書類、すなわち、消費税の課税仕入れの帰属時期を確定する際の必要かつ重要な証ひょう類でもあったと認められる。
  請求人の本件各現場担当者が本件各工事の担当者に本件各請求書の発行を依頼した目的は、請求人における経理処理上、本件各工事の完了時期の判定基準となる書類である本件各請求書を平成17年3月31日までに徴することにより、同日までに本件各工事を完了したものとして処理し、請求人の平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度における本件各工事に係る予算を消化することにあったと容易に推認できる。
  これらのことからすると、本件各現場担当者が、本件各工事が明らかに完了していないことを認識していたにもかかわらず、本件各工事業者に対し、本件課税期間中の日付の請求書の発行を本件各工事に係る予算を本件事業年度内に消化させようとする明確な意図に基づいて依頼したことは、本件各工事が平成17年3月31日までに完了してなかった事実を同日までに完了したごとく仮装したものと認めるのが相当である。
  そして、請求人は、受領した本件各請求書が本件各工事の完了日を仮装したものであるとの認識のもと、これに基づき本件各工事について課税仕入れを行った日が本件課税期間中にあったものとして消費税等の納付すべき税額を算出し、過少申告となる本件確定申告書を提出したものと認められる。

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請求人が行った屋号による取引は仮名取引であり、当該取引を収入金額とせず過少に納税申告書を提出していた事実は、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

裁決事例集 No.75 - 105頁

 請求人は、K等の屋号による取引については自分の取引であると認めていない旨主張するが、ダンボール箱の仕入数量と請求人屋号での使用数量の開差からして請求人が請求人屋号以外で露地果物Uの取引を行っていることは明らかであり、請求人屋号による取引に係る出荷伝票とK等の屋号の取引に係る出荷伝票の筆跡は同一であると認められるほか、請求人はM社からの仕入口座を2口座に分けて取引を行っている理由について合理的な説明をしないこと及び請求人は、当審判所に対して、仮名取引はないとはいえない旨答述していることなどを総合して判断すると、K等の屋号による取引は請求人が行った取引であると認められる。
  そうすると、K等の屋号による取引は請求人が行った仮名による取引と認められ、その売上げを請求人の収入金額とせず、過少に納税申告書を提出していた事実は国税通則法第68条第1項及び第2項に規定する課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに該当する。

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請求人の事業、取引の内容を詳細に認定した上で、関係者の供述の信用性の有無を判断し、隠ぺい・仮装の事実を認めた事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しなかった金属スクラップの売却収入及び産業廃棄物等の収集運搬収入について、これらの取引の原始記録となる計量伝票や請求書の控えなどの保存の重要性を認識していなかったため、これらの原始記録を所得税の確定申告書の作成前に誤って処分したものであり、請求人には隠ぺいはない旨主張する。
 しかしながら、請求人及び請求人の子であり事業専従者であるHは、金属スクラップの売却収入に係る精算書及び仕切書並びに産業廃棄物等の収集運搬収入に係る請求書の控えを確定申告前に故意に廃棄し、収入の事実を隠ぺいしていたものと認められる。

《参照条文等》
国税通則法第68条第1項

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請求人は、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものといえるので、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことにつき、重加算税の賦課要件を満たすとした事例

平成23年6月3日裁決

《ポイント》
 この事例は、無申告加算税に代えて課される重加算税につき、最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決と同様の法令解釈を行うとともに、法定申告期限までに納税申告書を提出しなかった請求人の行動を総合勘案し、その賦課要件を満たすと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、法定申告期限までに所得税並びに消費税及び地方消費税(消費税等)の各確定申告書を提出しなかったことについて、所得税については申告する意思があってその準備をしていた、消費税等については、経理業務の委託先が申告してくれるものと誤認していた、などとして、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
 しかしながら、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない場合であっても、納税者が、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当であるところ、請求人は、法定申告期限から7年を経過すれば所得税等の納付から免れることができるとの認識を持った上、請求人の経理業務の委託先から確定申告手続の税理士への委任の要否を問われて、これを断り、連年にわたり多額の収入金を得ていながら無申告を続けていたことなど、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものといえるから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことについては、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例

平成23年4月19日裁決

《ポイント》
 この事例は、重加算税の賦課要件である「隠ぺい又は仮装の行為」の該当性の判断に当たり、平成12年7月3日付課消2−17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2の4(ローマ数字)の5の趣旨を明確にした上で、その該当性を認めたものである。

《要旨》
 請求人は、基準期間の課税売上高は、当該課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実ではないから、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているかのように装った同期間の修正申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件である隠ぺい又は仮装行為に当たらず、また、平成12年7月3日付課消2−17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の第2の4(ローマ数字)の5の定め(本件留意事項)に準じて解釈すれば、本件は「重加算税を課すべきこととならない」ときに該当するから、重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実の隠ぺいとは、売上除外、証拠書類の廃棄等、課税要件に該当する事実の全部又は一部を隠すことをいい、事実の仮装とは、架空仕入れ、架空契約書の作成、他人名義の利用等、存在しない課税要件事実が存在するように見せかけることをいうと解するのが相当であるところ、請求人が免税事業者であるか課税事業者であるかは、消費税等の納税義務者に該当するか否かという課税要件事実そのものであり、不正に消費税の還付を受けるため、免税事業者であるにもかかわらず課税事業者であるかのように装って確定申告書を提出した行為は、重加算税の賦課要件を充足する。
 なお、本件留意事項は、基準期間の隠ぺい又は仮装行為が、客観的にみて課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装行為と評価できない場合には、重加算税の賦課要件を満たさないことに留意すべき旨を定めたものにすぎないと解すべきであり、基準期間の課税売上高の仮装行為が、課税期間の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の仮装に該当すると評価できる本件は、本件留意事項が定める場合とは前提を異にするというべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項
 平成12年7月3日付課消2−17ほか5課共同「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」

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役務の提供等の完了前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行った行為は、事実を仮装したものと認めた事例(1平23.2.1〜平24.1.31の事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、2平23.2.1〜平24.1.31の課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の賦課決定処分・1棄却、2一部取消し・平成26年10月28日裁決)

平成26年10月28日裁決

《要旨》
 請求人は、翌期の経費として計上すべき修繕工事等の費用及び備品等の購入費用を当期の経費として計上したことについて、単なる経理処理の誤りで、修繕工事等の一部は事業年度末までに役務の提供が完了しており、また、修繕工事等の費用及び備品等の購入費用が翌事業年度に支払われていることなどからすると、帳簿書類の虚偽記載等には該当しないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する事実を仮装したものではない旨主張する。
 しかしながら、事業年度末までに役務の提供が完了していないにもかかわらず、修繕工事等の役務の提供や備品等の引渡しの完了より前に請求書の発行を受ける等、通常と異なる処理を行うことにより故意に事実をわい曲した請求人の行為は、事実を仮装したものと認められる。なお、修繕工事等の一部は事業年度末までに役務が完了していることから、当該完了部分については、事実を仮装したものとは認められない。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項

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請求人の法定申告期限経過前の行為及び調査に対する虚偽答弁、虚偽証拠の提出を総合判断すると、本件では、隠ぺい仮装があったと認めることができ、無申告加算税に代わる重加算税の賦課要件を充足すると認定した事例(1平成18年分〜平成24年分の所得税の各更正処分、2平成18年分、平成20年分及び平成22年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、3平成19年分、平成21年分、平成23年分及び平成24年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分、4平20.1.1〜平22.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分、5平23.1.1〜平24.12.31の各課税期間の消費税及び地方消費税の各決定処分並びに重加算税の各賦課決定処分・1345棄却、2一部取消し・平成27年10月30日裁決)

平成27年10月30日裁決

《要旨》
  請求人は、法定申告期限までに所得税の確定申告書を提出しなかったのは請求人の税知識の不足により失念していたからであり、請求人は外国人研修・技能実習制度の送出し機関であるK社の従業員であるから、原処分庁の前回の調査結果に従って、K社から証明書の交付を受けた上で給与所得等に係る所得税の期限後申告書を提出しているなどとして、当該期限後申告書の提出並びに原処分庁の今回の調査に基づく更正について、重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
 しかしながら、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在しない場合であっても、納税者が当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされると解するのが相当であるところ、請求人は、自身が事業主体であったにもかかわらず、1当該事業から生ずる収入を、K社の肩書が付された口座に振込入金させた上で毎月ほぼ全額を現金で出金し、金員の流れを容易に把握できないようにすることによって、K社に帰属するものであると装い、2多額の事業収入を得ていながら5年間にわたり無申告を続け、3原処分庁の前回調査を受けても、K社に内容虚偽の証明書を作成・提出させるなどの工作を行って、事業主体は飽くまでK社にあり自身は給与を得ていたと装うなどしていることからすると、請求人は、当初から課税標準等及び税額等を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたといえるから、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかったことについては、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)

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相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査においても根拠のない答弁を行った納税者について、国税通則法第68条に規定する重加算税の賦課要件を満たすとした事例(平成23年8月相続開始に係る相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分・一部取消し、棄却・平成27年10月2日裁決)

平成27年10月2日裁決

《要旨》
  請求人らは、被相続人の子名義の定期預金11口(本件各定期預金)は被相続人が生前に被相続人の子供ら(本件子供ら)に贈与したものであり、これを申告しなかったことにつき、隠ぺい又は仮装行為は存しない旨主張する。
 しかしながら、被相続人の妻(本件妻)は、本件各定期預金を相続財産と認識しながら、これを関与税理士に告げず、本件各定期預金の記載がない遺産分割協議書を添付して相続税の過少申告を行い、その後の税務調査においても、本件各定期預金が、被相続人の生前既に贈与されたものであるなどとする根拠のない申述をして、真実の相続財産を隠ぺいする態度を貫こうとしたものである。このような行為は、当初から相続財産を過少に申告することを意図した上で、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告を行ったものと認められる。また、本件子供らは、相続財産の調査、申告を本件妻に委任していたが、本件各定期預金のうちそれぞれの名義の定期預金が相続財産であることを認識しながら、これを関与税理士に告げず、本件妻とともに相続税の過少申告を行っており、かつ、本件子供らに受任者である本件妻の選任及び監督に過失がないと認められる特段の事情はないから、本件子供らは、本件各定期預金の全部の隠ぺいがあったと認められる。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項

《参考判決・裁決》
 神戸地裁平成14年1月10日判決(税資252号順号9046)

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相続財産である現金の申告漏れについては、過少申告の意図を外部からもうかがい得る請求人の行為の結果としてなされたものと認定した事例(平成24年10月相続開始に係る相続税の過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成28年4月19日裁決)

平成28年4月19日裁決

《ポイント》
 本事例は、相続財産である現金の申告漏れについて、請求人は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められるとして、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」によると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、関与税理士に対し、現金の存在及びその大まかな額の分かる資料を提出しており、申告すべき現金の額について関与税理士の税務的な判断に任せていたことから、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」といわれるような行為はなかった旨主張する。
 しかしながら、請求人は、被相続人の財産を管理しており、相続開始日における多額の現金が相続財産に当たることを知っていたことなどから、当初から現金を過少に申告することを意図し、その意図に基づき多額の現金の存在につき関与税理士に敢えて秘匿し、手元に残っていた現金は存在しない旨を示す書面を関与税理士に提出するなどして、その結果、関与税理士に現金を過少に記載した申告書を作成させて原処分庁に提出したものである。したがって、請求人は、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたものと認められるから、現金に関する申告漏れについては、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」によるものと認められる。

《参照条文等》
 国税通則法第65条第1項、第68条第1項
 国税通則法施行令第28条第1項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例(平成21、22、24年分の所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成21年1月1日から平成24年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却・平成28年9月30日裁決)

平成28年9月30日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、消費税等の負担を免れるため、長年にわたり、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することにより、同職員をして販売金額を過少に記載した収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたとして、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。

《要旨》
 請求人は、自身が下書用の収支内訳書を作成した行為は単なる過少申告行為であり、隠ぺいしようという確定的な意図の下に行った申告ではなく、隠ぺい又は仮装に該当する行為はないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する重加算税の賦課要件は満たされない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、消費税等の負担を免れるため、7年間という長期間にわたり、農産物及び肉用牛(農産物等)の販売年間取引実績表等によってその販売金額の合計額が1千万円を超えていることを認識していたにもかかわらず、その合計額が1千万円を超えないよう、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することによって、同職員をして農産物等の販売金額を過少に記載させ、その合計額がいずれも1千万円以下となる収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたものと認められる。したがって、請求人は、当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認められるのであるから、国税通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすというべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項及び第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)
 平成23年6月3日裁決(裁決事例集No.83)

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消費税の課税を免れるため売上金額を調整した行為が事実の隠ぺい又は仮装に当たるとした事例(1平成21年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分(再調査決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの。以下2及び4において同じ。)、2平成22年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、3平成23年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、4平成25年分から平成27年分までの所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の賦課決定処分、5平成21年1月1日から平成27年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分、6平成23年分の所得税及び平成23年1月1日から平成23年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分・1全部取消し、26棄却・平成30年12月4日裁決)

平成30年12月4日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、消費税の課税事業者にならないようにする目的で、各取引先に対する売上金額を集計した表を調整して、事業所得の売上金額を1,000万円以下に減額して所得税等の申告をしたとして、国税通則法第68条《重加算税》に規定する「事実の隠蔽又は仮装」に当たるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、各取引先に対する各月の売上金額等を集計した年次の集計表(本件年次集計表)は決算時のメモでありこれに基づく申告等を行っていないのであるから、各年次の本件年次集計表の作成は税額計算の基礎となる事実についての隠ぺい又は仮装に当たらない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、消費税等の課税事業者にならないようにする目的で、売上金額を1,000万円以下に減額して所得税等の申告をすることとし、本件年次集計表において、丸印や下線を付すなどして売上金額の合計が1,000万円以下になるように調整したものと認められ、このような調整は、調整後の金額のみ申告すれば足りるかのように装うとともに、消費税等の納税義務が無いかのように装うという隠ぺい又は仮装と評価すべき行為であり、請求人は、当該調整後の金額を収支内訳書に転記して所得税等の申告をしたものと認められ、このような事実は、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する「事実の隠蔽又は仮装」に当たる。
 なお、平成21年分の所得税については、偽りその他不正の行為により売上に加算されなかった金額を上回る必要経費の認容により、同年分の偽りその他不正の行為に係る所得金額は零円となり、請求人は、国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項第1号に規定する偽りその他不正の行為により所得税を免れたものとはいえないことから、同年分の重加算税の賦課決定処分(再調査決定により過少申告加算税相当額を超える部分が取り消された後のもの)については5年を超えて行うことはできず、本件はこれを超えていることからその全部が取り消されるものである。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項及び第2項
 国税通則法第70条第1項第3号及び第4項1号

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過去の事業年度における仮装経理について、修正の経理を行わず、当事業年度の実際の材料仕入高を水増しした材料仕入高により帳簿書類を作成したことは、仮装に該当するとした事例(平成21年8月1日から平成22年7月31日まで、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成24年8月1日から平成25年7月31日まで、平成25年8月1日から平成26年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分、平成21年8月1日から平成22年7月31日まで、平成22年8月1日から平成23年7月31日まで、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の重加算税の各賦課決定処分、平成23年8月1日から平成24年7月31日まで、平成26年8月1日から平成27年7月31日まで及び平成27年8月1日から平成28年7月31日までの各事業年度の法人税の過少申告加算税の各賦課決定処分、平成27年8月1日から平成28年7月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分並びに平成21年8月1日から平成22年7月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分・棄却・平成31年3月1日裁決)

平成31年3月1日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、材料仕入高の水増し計上について、過去の事業年度における仮装経理の「修正の経理」として行った旨主張するが、当該仮装経理の金額を任意の金額で各事業年度に分けて材料仕入高を水増し計上することによって損金に算入したものであって、「修正の経理」の手続によらずに行ったものであるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、請求人が各事業年度の損金の額に算入した材料仕入高は、過去の事業年度における仮装経理の「修正の経理」であるから、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)第68条《重加算税》第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する事実はない旨主張する。
 しかしながら、請求人の代表取締役は、各事業年度において、実際とは異なる水増しした材料仕入高により帳簿書類が作成されていたことを認識していたと認められ、当該認識の下で請求人が水増しした材料仕入高を帳簿書類に計上したことは、行為の意味を理解しながら故意に事実をわい曲したものということができ、仮装したものというべきであるから、国税通則法第68条第1項に規定する「隠ぺいし、又は仮装し」に該当する。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項、第70条第4項、第74条の9第4項
 法人税法第37条、第130条第2項
 行政手続法第14条第1項

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当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例

平成31年4月23日裁決

《ポイント》
 本件は、平成26年分ないし平成28年分については請求人が、正当に申告すべき収入金額等を認識した上で、真実の所得金額よりも大幅に少なく偽った所得金額を申告する目的で、メモを作成し、そのメモに基づいて所得金額を大幅に偽った収支内訳書を作成して過少申告行為を継続的に行っていたものであり、これら一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動と認めることができるとした一方、平成25年分については、上記特段の行動が認められないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、外注費に相当する金額は請求人の収入金額を構成しないとの誤解により収入金額を過少に申告したものであるから、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」た事実はない旨主張する。
 しかしながら、請求人は3年間にわたり、多額の所得を継続的に過少に申告しており、作成したメモの状況とあいまって、当初から所得を過少に申告する意図があったと認められる。そして、請求人の事業における関係書類の作成及び外注先への支払の状況を踏まえれば、請求人は収入及び外注費のおおよその金額を認識していたと認められるところ、平成26年分においては、当該認識に沿う主要な売上先に係る売上金額及び外注費等の実額が記載されたメモを作成し、また、その後の平成27年分及び平成28年分においては、申告準備段階において事実とは異なる申告すべき金額を記載したメモを作成し、これらを相談会場に持参し、真実の所得を大幅に下回る金額を記載するなど所得金額を少なく偽った収支内訳書を作成し、所得税等の申告をしていたものである。これら一連の行為は、請求人が外部からうかがい得る特段の行動をしたものと評価することができ、重加算税の賦課要件を満たすものである。もっとも、平成25年分はメモの作成は認められず、収支内訳書の記載状況からするとその過少申告の形態がこれ以外の各年分と異なることが認められるから、重加算税の賦課要件を満たすとはいえない。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項及び第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認定した事例(平成23年分から平成29年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分及び平成23年課税期間から平成29年課税期間の消費税等の各重加算税賦課決定処分・棄却・令和2年2月19日裁決)

令和2年2月19日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、事業所得の金額を正確に把握していたにもかかわらず、収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した所得税等の確定申告書を長年にわたり継続的に提出し続け、調査の際にも、調査担当者に対し、帳簿書類の存在を秘し、事後的に作成した虚偽の帳簿書類を複数回提示したことなどが認められ、これらの一連の行為によれば、請求人は、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。

《要旨》
 請求人は、確定申告書に誤りがあったのは勘違いや集計誤りを原因とするものにすぎず、故意に多額の所得を脱漏したのではなく、また、請求人に対する調査(本件調査)の際に請求人の行う事業(本件事業)に係る帳簿書類を隠したこともないから、国税通則法第68条《重加算税》第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件事業において収入に係る帳簿書類の作成・保存、経費に係る支払、収入が入金される口座の管理等を自ら行うなどしていることからすれば、事業所得の金額を正確に把握していたといえ、それにもにもかかわらず、請求人は、7年もの長期間にわたって収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した確定申告を継続的に提出し続けていたものと認められる。そして、請求人は、調査に際しても真実の総収入金額が容易に判明する帳簿書類の存在を秘しただけではなく、事後的に虚偽の帳簿書類を複数回作成し、本件調査の担当者に提示するなどしており、このことは真実の所得の調査解明に困難を伴う状況を作出し真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、隠蔽のための具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価せざるを得ない。以上のような請求人の一連の行為によれば、請求人が、当初から所得を過少に申告する確定的な意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたような場合などに該当する。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項及び第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(民集48巻7号1379頁)
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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請求人が不動産の売買取引及び不動産の売買の仲介取引に関し、各取引の存在を把握し当該所得金額等も含め申告すべきことを認識しながら、これを申告しないことを意図し、これらを除外した収支内訳書の下書を作成して、それを提示して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたことなどから、隠蔽又は仮装が認められるとした事例(平成29年分から令和2年分の所得税及び復興特別所得税に係る重加算税の各賦課決定処分、平成29年1月1日から令和2年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税に係る重加算税の各賦課決定処分・棄却)

令和5年2月8日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が、一部の取引に係る所得金額等を申告すべきことを認識しながら、意図的にこれを除外した収支内訳書の下書を作成して税務相談し、その結果に基づき確定申告をしたことなどの諸事情から、国税通則法第68条第1項及び第2項に規定の事実の隠蔽又は仮装が認められるとして、同条該当性を認めたものである。

《要旨》
 請求人は、主たる業務である不動産賃貸の仲介の収支を管理する業績管理表実績と題する表(本件業績管理表)は、請求人の事業全部に係る帳簿書類ではないことから、同表に不動産の売買取引(本件売買取引)及び不動産の売買仲介取引(本件売買仲介取引)に関する記載がないとしても内容虚偽の帳簿書類の作成に当たらず、これらの取引の申告をしないことを意図したものではないから、国税通則法(通則法)第68条《重加算税》第1項及び第2項に規定する事実の隠蔽又は仮装に当たらない旨、また、これらの取引の申告をしない意図をうかがい得る特段の行動もしていない旨主張する。
 しかしながら、本件売買取引に関しては、請求人は、同取引の帳簿書類たる売買計算表を作成して利益を把握しており、同表により算出した本件各売買取引に係る所得金額等も含めて申告すべきであると知りながら、これを申告しないことを意図して、本件業績管理表のみに基づいて、本件売買取引に係る収入金額等を除外した内容虚偽の収支内訳書の下書を作成し、税務署での申告相談に、本件売買取引に係る書類を一切持参せず、対応した職員に同下書を提示して相談した上で、その結果に基づいて、所得金額等を意図的に過少に記載して確定申告をしたと認められるから、通則法第68条各項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。また、本件売買仲介取引に関しては、請求人は、仲介手数料収入についての申告の必要性を認識していたと推認できること、本件売買仲介取引に関する収支の記録が存在しないのは、本件売買仲介取引に係る所得金額等を申告する意図がなかったことに起因すると認められること、前記申告相談の際に、対応した職員に対し、本件売買仲介取引に係る所得について何も明らかにしていないこと、調査の当初の言動は、本件売買仲介取引を隠蔽する意図に基づくものと推認できることからすると、当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったと認められ、同各項に規定する隠蔽又は仮装が認められる。

《参照条文等》
 国税通則法第68条第1項及び第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(民集49巻4号1193頁)

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