源泉徴収

その他

  1. 給与等
  2. 退職給与
  3. 配当所得
  4. 報酬、料金等
  5. みなし配当
  6. 著作権の使用料
  7. 匿名組合契約等の利益の分配
  8. その他(3件)

請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約の当事者が、当該子会社ではなく請求人であるとはいえないとした事例(1平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、2平成25年4月1日から平成26年3月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分、3平成25年6月から同年12月までの各月分及び平成26年2月から同年8月までの各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分・12棄却、3全部取消し・平成28年7月6日裁決)

平成28年7月6日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人の子会社が複数の外国法人と締結した契約に係る契約書はいわゆる処分証書に該当し、作成の真正に争いがなく他に特段の事情も認められないことからすれば、契約当事者を請求人であるとすることはできないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人の子会社(本件子会社)が複数の外国法人と締結した商材の販売(本件事業)に係る契約(本件契約)について、1請求人と本件子会社との間で締結した本件子会社の名義を借用する契約(本件許諾契約)に基づき、請求人が本件子会社の名義を使用して本件事業を行い、その収益を請求人に帰属させていること及び2請求人と本件子会社との間で締結された業務委託契約(本件業務委託契約)に基づき、本件契約に定められた本件子会社の業務を請求人の従業員が実際に行っていること等を理由として、本件子会社は名目上の契約者にすぎず、請求人が実質的な契約当事者である旨主張する。
 しかしながら、本件契約に係る契約書は、いわゆる処分証書に該当し、他に特段の事情がない限り、作成者によって記載どおりの行為がなされたものと認めるべきであるところ、本件子会社は事業を営む実体のある法人であり、その法人格を否認する特段の事情は認められず、本件契約の当事者が本件子会社であることを他の契約当事者が合意した上で本件契約を締結したことが認められ、あえて契約当事者を請求人であるとする特段の事情も認められない。また、本件許諾契約及び本件業務委託契約は、本件契約とは当事者が異なる別個の契約であり、それぞれの契約の締結には合理的な理由があると認められるから、これらの契約の存在を度外視して、本件契約と本件許諾契約及び本件業務委託契約をいわば不可分一体のものとみて、本件契約の当事者が請求人であるとすることはできない。

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和45年11月26日第一小法廷判決(裁Web)
 最高裁昭和32年10月31日第一小法廷判決(民集11巻10号1779頁)

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非居住者である請求人が行っている国内不動産の貸付けが所得税法上の事業に該当するとはいえないから、当該不動産の賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得には該当せず、源泉徴収の免除の要件を満たさないとした事例(平成27年7月30日付の非居住者に対する源泉徴収の免除証明書を交付できないことの通知処分・棄却・平成28年12月20日裁決)

平成28年12月20日裁決

《ポイント》
 本事例は、非居住者に適用される源泉徴収の免除に関する規定(平成26年法律第10号による改正前の所得税法第214条第1項第3号)における「事業」の意義は、所得税法の他の規定における事業と同一の概念に解するのが相当としたものである。

《要旨》
 請求人は、所得税法に「事業」についての一般的な定義規定が置かれていないことからすれば、所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第214条《源泉徴収を要しない非居住者の国内源泉所得》第1項第3号にいう「事業」とは、家事活動に対する経済活動を意味するものにすぎず、請求人が国内で不動産を貸し付けている以上、当該貸付けにより支払を受ける不動産の賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、所得税法は、居住者の所得金額を計算するに当たって、事業から生ずる所得と、事業に至らない所得とを明確に区分して規定しており、これらの規定は非居住者にも準用されているところ、非居住者に適用される源泉徴収の免除に関する規定における「事業」の意義についても、所得税法の他の規定における事業と同一の概念に解するのが相当であって、これと異なる解釈をすべき理由は見当たらないから、所得税法第214条第1項第3号に規定する「事業」の意義については、所得税法における事業の概念をそのまま当てはめることが妥当である。そして、所得税法における事業の意義については、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、その取引に費やした精神的肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴、社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断されるべきものと解するのが相当であるところ、請求人による不動産の貸付けの規模や態様からすれば、社会通念上事業といい得る経済活動とみることは困難である。したがって、請求人による不動産の貸付けは、所得税法上、事業とはいえないことから、請求人が当該貸付けにより支払を受ける賃貸料等は、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当しない。

《参照条文等》
 所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第161条第3号、第164条第1項第3号、第212条第1項、第214条第1項第3号

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源泉徴収に係る所得税の算出において、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないと判断した事例(1平成29年10月、平成30年3月、平成30年6月、平成30年7月、平成30年11月、平成31年1月から令和元年10月まで、令和元年12月から令和3年7月まで、令和3年9月、令和3年10月及び令和3年12月から令和4年3月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(平成30年6月、平成30年7月及び令和元年5月の各月分については各訂正告知処分及び不納付加算税の各変更決定処分後のもの)2平成30年1月及び令和元年11月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分・12一部取消し、棄却)

令和5年8月15日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人がインド法人に支払った金員は「技術上の役務に対する料金」と認められるものの、請求人と支払先法人との間で、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないとして、源泉徴収に係る所得税の算出においてグロスアップ計算を認めなかったものである。

《要旨》
 請求人は、インドに所在する外国法人3社(J社、K社、L社)に対して支払った各金員(本件各支払金)について、1J社はインドの法律に基づき設立されたリミテッド・ライアビリティー・パートナーシップであるから請求人の支店的な存在であり、支払った金員は、J社の維持・管理に必要な資金の送金又は給与で、業務を委託した対価ではないこと、2請求人とK社との契約(本件K社契約)によれば、支払った金員はソフトウエアの譲渡対価であること及び3L社に支払った金員はウェブサイト及びアプリケーションのデザインの対価であり、デザインはコンピュータプログラムとは関係ないことから、それぞれ、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約(日印租税条約)第12条第4項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、1インドの法律上、J社は、請求人とは別個の法的主体であり、かつ、請求人と協働でソフトウエア開発業務を行っていると認められることから、当該開発業務に係る役務は、日印租税条約第12条第4項に規定する「技術的性質の役務」に該当すること、2本件K社契約は、請求人がK社に対してソフトウエアの開発の支援を依頼し、K社は当該開発に関して定義された範囲の業務を行い、対価の最終支払までに当該定義された範囲の業務の全てを完了させ、当該開発に関する全てのソフトウエア等を請求人に引き渡す旨定めた契約であり、これらの業務に係る役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当することからソフトウエアの譲渡対価ではないと認められること、及び3同項は、「技術上の役務に対する料金」についてその範囲をプログラミングサービスの提供に限定しておらず、L社が行った役務は、同項に規定する「技術的性質の役務」に該当すると認められることから、本件各支払金は、同項に規定する「技術上の役務に対する料金」に該当する。
 ただし、原処分庁は、K社に対する支払金の額について、源泉徴収の対象となるものの支払額が税引手取額で定められているものとして源泉徴収に係る所得税の額を算出する計算(グロスアップ計算)により当該所得税の額を算出しているところ、原処分庁がグロスアップ計算の根拠として掲げる本件K社契約の条項は、本件K社契約の履行に際し、契約違反や第三者からの訴訟等に備えて契約書に盛り込まれる条項であり、請求人が源泉徴収に係る所得税を負担することを合意したものとは認められないから、K社に対する支払金について当該所得税の額をグロスアップ計算により算出することは認められない。

《参照条文等》
 所得税法第161条第1項、第162条第1項、第212条第1項
 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約第12条

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