その他の収益
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
土地の賃貸借に伴い地主に対して融資した貸付金の受取利息と支払地代を同額とした相殺取引を認容した事例
裁決事例集 No.22 - 114頁
本件取引は、請求人が15億円を返済期間60年の長期貸付けさせることと関連させて、貸付先が請求人に対し土地を期間も同じく60年、大型店舗建設を目的とし賃貸借するものであり、前者の利息債権と後者の賃料債権を同額とし、将来にわたり、これをその都度個々に取り立てるような意思は毛頭なく、全額相殺勘定によることを当然のことと考えていたものであることが明らかであり、本件取引の実情及び契約の細部等に若干の疑問点が認められるものの、いずれの点も前示判断を左右するものではないから、本件取引については受取利息の額を益金の額に算入するのであれば、他方の同額の相対立する支払地代の額も損金の額に算入すべきであり、その一方の受取利息の額のみを益金の額に算入した原処分は失当である。
昭和56年6月29日裁決
建物の建築による日影補償費等を建物の賃借予定者に負担させたことは建築主がその賃借予定者から経済的利益の供与を受けたことになるとした事例
裁決事例集 No.29 - 97頁
建物の建築による日影補償費等を建物の賃借予定者に負担させたことについて、建築主たる請求人は、契約書において賃借予定者が負担すべき旨を定めていることに基づいて負担させたものであるから、請求人が負担すべきものではなく、経済的利益の供与を受けたことにはならないと主張するが、日影補償費等は、本来土地の利用権者たる建築主が負担すべきものであるから、これを建物の賃借予定者に負担させたことは、同人から経済的利益の供与を受けたことになる。
昭和60年6月21日裁決
宝石の販売代金の一定割合の部分は買換え・買戻しの保証金として購入者から預かったものであるとする請求人の主張を退けた事例
裁決事例集 No.31 - 99頁
請求人は、宝石の販売価額のうちその10パーセント相当額は、購入者との契約によりその宝石の買換え・買戻し等の際に清算する保証金として預かっているものであるから、債務であって販売収入ではないと主張するが、その保証金分を含めた金額を販売価額として正札に明示し、購入者もそれを購入代金と認識しており、保証金分を収受しないで販売した事例はないことや清算の実態等を総合判断すると、宝石の販売価額の全額を販売収入であるとした原処分は相当である。
昭和61年6月30日裁決
香港子会社による第三者株式割当てにより、請求人が所有する当該香港子会社の株式の資産価値の一部が無償で他社に移転したことは、当該第三者株式割当てが請求人の株主と割当先との合意に基づくものと認められることから、法人税法第22条第2項に該当し、益金の額に算入されるとした事例
請求人は、本件増資は、本件新株割当てを行ったE社(香港に設立された請求人の子会社)と本件新株払込みをしたH社の間の取引にほかならず、請求人は、H社と何らの取引をしておらず、実質的にみて、請求人が保有していたE社株式の資産価値の一部がH社に移転したとしても、それは請求人の行為によるものではないから、法人税法第22条第2項に規定する「資産の譲渡」又は「その他の取引」に当たらないと主張する。
しかしながら、一般に株主は、株式を通じ、株式会社の資産を所有し、支配するのであり、清算を待つまでもなく、株式の移転を通じ、株式に表象された株式会社の資産価値を取得することができ、株式の価額は、額面金額ではなく、上場株式の場合は市場において定まる価額により、非上場株式の場合は、株式会社の資産の実態に基づいて評価される価額により定まると解される。
法人税法第22条第2項に規定する「取引」とは、その文言及び規定における位置付けから、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念として用いられていると解するのが相当であるから、請求人が何ら対価を得ることなく、所有していたE社株式の資産価値の一部を喪失し、H社がこれを取得した事実は、それが両社の合意に基づくと認められる以上、法人税法第22条2項に規定する無償による「資産の譲渡」又は「その他の取引」に当たると認められる。
平成16年3月30日裁決
請求人が裁判上の和解に基づいて受領した解決金は、株式の公開買付けの対象となった法人の不適切な会計処理に起因し、当該公開買付け等により請求人に生じた損害を当該法人の役員らが連帯して支払った損害賠償金と認められ、益金の額に算入されるとした事例(
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・
棄却・平成30年9月12日裁決)
《ポイント》
本事例は、裁判上の和解に基づく解決金の性質の検討に当たっては、和解調書に記載された条項の文言解釈が中心となることはもちろんであるが、一般法律の解釈と同様、文言とともにその解釈に資するべき他の事情、特に裁判上の和解であることからこそ、訴訟の経過等をも十分に参酌して、当事者の真意を探求してなされるべきであるとしたものである。
《要旨》
請求人は、法人(本件法人)の株式を公開買付け等(本件公開買付け等)により取得した際に算定した株式価額について、本件法人において不適切な会計処理があったことから過大に算定していたとして、本件法人の代表取締役ら(本件役員ら)を相手に訴訟(本件訴訟)を提起した後、裁判上の和解(本件和解)により本件役員らから受け取った解決金(本件解決金)は、本件法人の代表取締役から本件公開買付け等により取得した株式(本件株式)の売買代金の減額調整金として支払われたものであり、株式の取得価額を減額すべきものである旨主張する。
しかしながら、本件和解の和解調書の条項の文言は、本件解決金を支払うことになった理由を示したものであり、本件解決金が本件株式の売買代金の返還であるとの記載ではない。本件和解の協議においても、本件解決金が本件株式の売買代金の返還である旨の合意はなされていない。また、本件和解に至る経過等によると、本件訴訟の請求は損害賠償請求であり、
本件法人の代表取締役以外の株主からも取得した全ての株式の取得対価の過大支払額を損害額として請求するとともに、
株式の取得対価とは異なる損害額(調査委員会費用、追加監査費用及び課徴金の損害額)についても請求し、
本件解決金の支払義務を負う者として本件法人の代表取締役のほか本件法人の役員が含まれ、
実際に本件法人の役員も本件解決金の一部を支払っていることから、本件解決金は、本件法人の不適切な会計処理に起因し、本件公開買付け等により請求人に生じた損害を本件役員らが連帯して支払った損害賠償金と認められることから、本件解決金の額は、益金の額に算入される。
《参照条文等》
法人税法第22条