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土地等の譲渡収入
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
低額譲渡による土地の時価の算定に当たり不動産鑑定士の評価額を採用できないとした事例
裁決事例集 No.1 - 32頁
土地の譲渡価額は、不動産鑑定士の評価に基づいたものであるとしても、その根基が抽象的で具体性と合理性を欠いているときは、これを採用することができない。
昭和45年10月17日裁決
土地の売買代金圧縮額相当額の金員を請求人が取得したとする原処分庁の主張を排斥した事例
裁決事例集 No.29 - 76頁
不動産業を営む請求人が、本件土地の売買の仲介に当たり売買代金の圧縮額相当額の金員を売主に支払わず請求人が取得したと原処分庁は主張するが、売主は請求人から当該金員を数回に分けて受領したと申し立てていること、売主が当該圧縮額相当額について所得税の修正申告書を提出し当該所得税の納税資金を自ら調達していること等の事実が認められ、他に請求人が当該金員を取得したと認定するに足りる証拠はなく、この点に関する原処分庁の主張は採用できない。
昭和60年3月6日裁決
土地の売買に当たり、契約書上売買当事者以外の第三者を介在させることにより、譲渡価額を圧縮したものと認定した事例
裁決事例集 No.36 - 84頁
請求人及び請求人の代表取締役であるA(以下「請求人ら」という。)は、持分2分の1で共有する本件土地の譲渡先はE社であり、このことは、本件甲契約書(譲渡人を請求人ら、譲受人をE社、譲渡価額を148,247,190円とする昭和60年3月16日付の売買契約書)から明らかである旨主張するが、E社その他本件土地の売買取引に関係のある多数の者を調査したところによれば、E社は本件土地に係る売買の仲介人に依頼され、本件甲契約書及び本件乙契約書(譲渡人をE社、譲受人をD社、譲渡価額を207,744,390円とする昭和60年3月20日付の売買契約書)に譲受人及び譲渡人として押印したものであり、いわゆる名義貸しをしたにすぎず、本件甲契約書及び本件乙契約書は、Aが本件土地の譲渡利益を圧縮するために当該仲介人等に形式的な中間譲渡人を入れるように要求し、E社を形式的な中間譲渡人として作成されたものであって、本件土地は、請求人らが本件土地を直接D社に譲渡したものと認めるのが相当である。
昭和63年12月15日裁決
交換により取引の相手方に譲渡した資産の価額は、交換契約において確定している交換取得資産の価額を基として算定すべきであるとした事例
裁決事例集 No.37 - 117頁
請求人は、本件交換譲渡資産の譲渡の対価として、本件交換取得資産及び本件交換差金を取引の相手方から取得又は収受したものと認められるところ、本件交換譲渡資産の価額は、本件交換契約書の一部である付表に749,776,000円と記載されており、また、同額と評価した本件交換取得資産(受入れ交換差金を含む。)の価額も近隣類似土地の売買実例価額からみて相当であるから、本件交換譲渡資産は、その対価の額749,776,000円で譲渡としたものと認めるのが相当である。
平成元年3月6日裁決
不動産業を営む請求人が不動産の販売について、他の不動産業を介在させることによって、販売代金の一部を除外していたものと認定した事例
裁決事例集 No.37 - 128頁
[1]本件土地の売買交渉は、不動産業を営む請求人と最終取得者との間で行われ、その売買交渉により売買代金額を合意したものであり、[2]最終取得者及び仲介人は、請求人を本件土地の売主と認識して取引に臨んだことが認められる。また、[3]最終取得者が支払った土地代金は、すべて請求人が受領したことが認められ、しかも、[4]請求人の主張に係る中間に介在する不動産業者は、請求人の依頼を受けて自己の名義を貸したにすぎず、請求人と右業者との売買は架空の取引と認められる。さらに、[5]請求人と右業者との間の金銭借用書なる書面は、本件売買日以後に請求人が無断で作成したものと認められる。これらの事実によれば、本件土地は、請求人が最終取得者に対しその合意された売買代金額をもって譲渡したものと認めるのが相当である。
平成元年5月23日裁決
土地の譲渡に当たり、架空の契約書及び架空の土地付建物の販売代理契約書を作成することにより、譲渡価額を過少に申告していたとした事例
請求人は、本件土地を譲渡するに当たりa契約書、b契約書及び土地付建物の販売代理契約書を作成しているが、a契約書及び土地付建物の販売代理契約書は請求人の依頼により作成された架空の契約書と認められ、本件土地の譲渡がb契約書により行われたにもかかわらず、架空の契約書を作成することにより、本件土地の譲渡価額の一部を販売代理報酬のごとく装い収益に計上し、本件土地の譲渡にかかる収益の額を過少に計上したことが認められる。
平成5年4月30日裁決
原処分庁の認定した土地の譲渡価額は過大であるとした事例
原処分庁は、国土利用計画法に係る土地売買等の届出の経緯、譲受人の取引銀行に対する融資申込みの状況、請求人の従業員の説明、譲渡代金及び建物請負代金の決済状況により、本件土地の譲渡価額は、472,226,000円(坪当たり700,000円)であると認定したが、譲受人の代表者の答述及び帳簿書類の記載事実等に照らし、本件土地の譲渡価額は、請求人の主張のとおり、不動産売買契約書に記載された404,766,000円(坪当たり600,000円)であると認めるのが相当である。
平成5年6月17日裁決
請求人が、代表者の借地権に係る立退料として代表者が受領したものである旨主張する金員は、請求人が譲渡した本件不動産(借地権と建物)の譲渡価額に含まれるとした事例
- 請求人は、本件金員93,383,000円は、代表者の借地権に係る立退料であって、請求人に帰属するものではない旨主張するが、[1]本件不動産の譲渡価額は、当初、請求人と買主の間で本件金員を含む価額で合意していたこと、[2]国土法に基づく届け出は、[1]と合意価額でされたこと、[3]市長の指導により予定価格を変更したこと、[4]契約書は、変更後の価格で作成したが、当初の合意価額との差額は別途支払う旨の確約書が差し入れられていること、[5]本件金員は、代表者が受領し、領収書を発行しているが、市長の指導があった後、契約当事者を変更する合意があったとは認められないこと等からすると、本件不動産の譲渡価額は、当初に合意された価額が不変であったと判断される。
そうすると、本件不動産の譲渡価額は、本件金員を含む1,134,000,000円となる。 - また、請求人は、借家人である代表者に当然支払われるべき立退料があるはずである旨の主張をするので、立退料の損金認容につき判断する。
代表者は本件建物に永年居住していたのであり、請求人が本件建物を譲渡するという請求人の事情により、これを明け渡すこととなったのであるから、何らかの支払があっても特に異とするにはあたらない。
しかし、[1]本件金員は約1億円と多額であるところ、これを立退料として支払うという明確な意思は、代表者による買主からの受領まで認めることはできないこと、[2]その金額は、国土法に基づく市長からの指導による引下げ額と同額であり、これを立退料として支払うべき合理的な説明がなされていないこと等からすると、本件金員は単に市長の指導に基づく引下げ分を給付したものにすぎず、本件金員の立退料としての支払を相当とするものではない。
また、請求人は、購入したマンションを権利金等なく賃貸していること及び引っ越し費用を負担していることからみても、これをもって立退料相当の経済的利益の供与は終了していると考えても不自然ではない。
平成7年3月15日裁決
本件土地の譲渡価額は、請求人の主張する不動産売買契約書(甲契約書)に基づく金額ではなく、これとは別に存在する不動産売買契約書(乙契約書)が真正なものと認められるから、同契約書上の金額から実測により減額された金額を差し引いた金額とするのが相当であるとした事例
本件土地の譲渡価額について、請求人は、不動産売買契約書(甲契約書)のとおり3,966万円であると主張するが、甲契約書とは別に、譲渡価額を5,020万円とする不動産売買契約書(乙契約書)が存在するところ、[1]買主代表者のメモに実測に基づき54万円を減額する旨の記載があり、5,020万円から同額を差し引くと4,966万円となること、[2]買主の帳簿上、本件土地の支払代金として4,966万円が支払われていること、[3]仲介手数料の額が4,966万円に見合うものと認められること及び[4]買主の代表者の答述によると、甲契約書は仲介業者から裏契約の話を持ちかけられて作成したものであることから乙契約書が真正なものと認められるので、本件土地の譲渡価額は乙契約書に基づく4,966万円とするのが相当である。
平成7年12月21日裁決
建物の譲渡価額の算定に当たり、リゾート地内に所在する特殊仕様の建物であることから鑑定評価を依頼し、この鑑定評価額を時価相当と判断した事例
請求人は、本件建物の譲渡価額は、一般市場における時価として適正なものである旨主張し、原処分庁は、本件建物は取得の日から5年半しか経っておらず、再取得価額は取得価額と同一であるから、その再取得価額に定率法により償却を行った場合の未償却残高が本件建物の時価である旨主張する。
しかしながら、本件建物はリゾート地内にあり、同地内の不動産売買に関しては土地付建物に市場価値があり、建物だけでは売買の対象とならず、また、本件建物の用途が社員研修所又はモデルハウス等であって特殊性が認められるため、本件建物の価額を求めるためには、建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における市場価額から建物評価額を算出し、さらに本件建物自体の用途等の特殊性を考慮する必要がある。そうすると、原処分庁及び請求人が主張する価額算定方法には合理性が認められないので、当審判所で、不動産鑑定士に、本件建物自体の特殊性を前提にした鑑定を依頼し、提出された鑑定書について鑑定経緯等から検討したところ、相当と認められるので、当該鑑定評価額が本件建物等の「適正な時価」を示すものであると認定できる。
平成16年3月16日裁決
請求人の行った土地の売買取引について、請求人と最終取得者との間で売買契約が成立しているとは認められないとした事例(
平成24年11月1日から平成25年10月31日までの事業年度の法人税の更正処分、
平成24年11月1日から平成25年10月31日までの事業年度の法人税に係る重加算税の賦課決定処分、
平成24年11月1日から平成25年10月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分、
平成24年11月1日から平成25年10月31日までの課税事業年度の復興特別法人税に係る重加算税の賦課決定処分、
平成25年11月1日から平成26年10月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、
平成25年11月1日から平成26年10月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、
平成25年11月1日から平成26年10月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに重加算税の賦課決定処分・
棄却、
一部取消し、

全部取消し・平成29年8月21日裁決)
《ポイント》
本事例は、請求人と中間取得者は、当該土地について売買する旨合意し、売買契約を締結したと認められ、また、中間取得者と最終取得者の売買契約も有効に成立しているものと認められるから、本件土地取引は請求人と中間取得者との間で有効に成立しているとしたものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人の行った土地の売買取引(本件土地取引)について、最終取得者の妻が中間取得者の担当者とは会っていない旨の申述をしていること等を理由として、請求人が中間取得者に売却した事実は認められず、最終取得者に対し売却されたものである旨主張する。
しかしながら、中間取得者には、本件土地取引について包括的に委任していた者がおり、同人主導の下、請求人と中間取得者は、当該土地について売買する旨合意し、売買契約を締結したと認められる。また、最終取得者は中間取得者を売買契約の相手方と認識し、かつ、当該土地の売買代金が中間取得者に支払われていることからすれば、中間取得者と最終取得者の売買契約は有効に成立しているものと認められる。したがって、本件土地取引は有効に成立しているから、原処分の一部を取り消すべきである。
《参照条文等》
法人税法第22条第2項、第37条第8項