贈与税の課税財産の範囲

資産の低額譲受け

  1. 贈与財産の範囲
    1. 資産の低額譲受け(5件)
    2. その他
  2. 贈与事実の認定
  3. 課税財産

調停調書に基づき解決金の支払により土地を取得した場合であっても解決金の金額がその土地の時価より著しく低いときには低額譲受に当たるとした事例

裁決事例集 No.59 - 226頁

  1.  相続税法第7条の規定は、法律的には贈与契約によって財産を取得したものではないが、経済的には時価より著しく低い価額で財産を取得すれば、その対価と時価との差額について、実質的に贈与があったとみることができるので、この経済的実質に着目して、税負担の公平の見地から課税上は、これを贈与とみなす趣旨のものと解される
  2.  このような規定の内容及び趣旨からすれば、被相続人の相続財産を不当に減少させることとはならないとしても、財産の取得が著しく低い対価によって行われた場合に、その対価と時価との差額については、実質的に贈与があったとみなして本規定が適用されることとなる。
  3.  本件取得日における本件土地の時価は、13,284千円であると認められ、請求人は本件解決金の額4,000千円を支払って本件土地を取得しているのであるから、請求人の土地の取得は「著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合」に該当し、請求人は、時価と本件解決金との差額9,284千円を本件相続人から贈与により取得したものとみなされることとなる。

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請求人が父から売買契約により譲り受けた土地の対価は、当該土地の時価に比して著しく低い価額であると認められ、相続税法第7条の規定により贈与があったものとした事例

裁決事例集 No.61 - 533頁

 相続税法第7条は、著しく低い価額で財産の譲渡を受けた場合においては、法律的には贈与といえないとしても、経済的には対価と時価との差額について実質的に贈与があったと同視することができるため、この経済的実質に着目して、課税負担の公平の見地からその差額について贈与があったものとみなして贈与税を課税する趣旨のものと解されるところ、請求人及び原処分庁の主張する時価額はいずれも採用できない。
 そこで、当審判所において、公示価格を基に土地価格比準表に準じて地域要因及び個別的要因等の格差補正をして本件土地の時価額を算定したところ、その価額は45,661,363円と算定された。
 そうすると、本件土地の時価と売買価額との差額は18,501,363円に達するものであることから、本件土地の売買価額は、相続税法第7条に規定する著しく低い価額の対価であると認めるのが相当である。

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賃貸料が当該土地に係る固定資産税と同額であることなどから、請求人は、貸家建付地である当該土地を著しく低い価額の対価で譲り受けたと認められるとした事例

裁決事例集 No.63 - 508頁

 請求人は、父から譲り受けた本件土地の持分部分(請求人の持分を除いたもの)には、父が所有し、請求人の夫が賃借している建物があること、請求人の所有持分について賃貸借契約を締結し、父が賃貸借料を支払っていることから、請求人が譲り受けたものは底地である旨主張する
 しかしながら、本件土地の持分の譲渡者と本件建物の所有者とは同一人であるから、同部分に父が借地権を有していたとは認められず、また、請求人に支払われている賃貸借料は固定資産税額と同額であるから、請求人と父との間の貸借は使用貸借と解すべきである。
 そして、本件土地は貸家の用に供されている土地であるから、その価額につき、国税局長が定める財産評価基準書で示されているその土地に係る借地権割合とその貸家の借地権割合との相乗積を当該更地価額に乗じて計算した金額を、その更地価額から控除した価額とすることを不相当とする理由は認められないから、これらを基に本件土地の貸家建付地価額を算定すると、本件譲受価額は当該貸家建付地価額に比して著しく低い価額の対価と認めるのが相当である。

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土地建物の譲受価額が相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価」に当たるとしてなされた原処分は違法であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 576頁

 原処分庁は、本件土地の譲受けは、相続税法第7条にいう「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に該当すると主張するが、譲渡人(請求人の祖母)は高齢となり、借入金を弁済するために譲渡したものであり、一方、請求人は自身の将来のことを考えて金融機関から取得資金を借り入れて本件土地を取得したものであること、売買価額は固定資産税評価額を参考に、利用形態を考慮して決定したこと、譲渡人は本件土地を相続により取得し、長期間保有していたものであること、[4]建物の譲受対価の額と本件土地の譲受対価の合計額は、これらの不動産の相続税評価額の合計額を上回っていることを総合勘案すると、本件土地の譲受は相続税法第7条に規定する「著しく低い価額の対価」による譲受けには該当しないとするのが相当である。

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譲り受けた土地建物の時価について請求人及び原処分庁が算定した価額は採用できないとして、審判所が依頼した鑑定価額等を基に土地建物の時価を算定した事例

平成24年8月31日裁決

《要旨》
 請求人がその親族から本件土地及び本件建物を譲り受けたこと(本件譲受け)について、請求人は、本件譲受けの価額が時価であるから、本件譲受けは相続税法第7条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合》に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当しない旨主張し、原処分庁は、本件土地及び本件建物の時価は、原処分庁の依頼に基づく鑑定評価額(原処分庁鑑定額)であり、原処分庁鑑定額と本件譲受けの価額を比較すると、本件譲受けは、同条に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁鑑定額は、合理的に鑑定されたものとは認められないから、これを本件土地及び本件建物の時価と認めることはできない。他方、当審判所の依頼に基づく本件土地の鑑定評価額は合理的に鑑定されたものと認められるからこれを時価と認めるのが相当であり、また、本件建物については、一般的に合理性が認められる固定資産評価基準に従って算定された固定資産税価格が適正な時価と認められる。したがって、本件土地及び本件建物の時価はこれらの合計額であると認められ、当該合計額は原処分庁鑑定額を下回るものの、当該合計額と本件譲受けの価額とを比較すると、本件譲受けは、相続税法第7条に規定する「著しく低い対価」での譲受けに該当すると認めるのが相当である。

《参照条文等》
 相続税法第7条

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成19年8月23日判決(判タ1264号184頁)

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