納税義務者

納税義務者

  1. 納税義務者(10件)
  2. 免税事業者
    1. 課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日

基準期間が免税事業者である場合の消費税法第9条第2項で規定する課税売上高の算出方法については、課税資産の譲渡等の対価の全額の合計額により算定することが相当であるとした事例

裁決事例集 No.52 - 145頁

 請求人は、消費税の基準期間の課税売上高の算出方法については、消費税法第9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)第2項で引用する同法第28条(課税標準)第1項において「課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税に相当する額を含まないものとする。」と規定されていることから、基準期間における課税売上高が3,000万円以下であるか否かの判定に当たっては、同法第4条(課税の対象)第1項の規定により、すべての事業者には消費税が課されているので、基準期間において免税事業者に該当する場合であっても、当該課税売上高の算定は税抜き価額で算出すべきである旨主張する。
 しかしながら、消費税法第9条第1項で規定する「課税売上高が3,000万円以下である者」に該当するか否かの判定に当たっては、

  1.  消費税の納税義務を規定する消費税法第5条(納税義務者)第1項の規定は、一般的に納税義務について定めたものであり、この規定のみによって直ちに個々の取引に対する消費税の課税関係が律せられるわけではなく、課されるべき消費税の有無は、同法第4条及び第5条の規定のみならず、同法第7条、同法第9条等の規定を含め、すべての関係規定を適用した結果により決まるものであり、本件の課税売上高の算定方法の解釈に当たっても関係条文を総合的に解釈して判断することが相当であること
  2.  消費税法第9条第1項の規定の適用があるか否かは、当該課税期間の開始前に既に確定しているのであり、同項の規定の適用がある場合には、その事業者が当該課税期間内に行う「個々の」課税資産の譲渡等のすべてについて消費税を納める義務が免除されていることが当該課税期間の当初から予定されていることからすると、課税資産の譲渡をした時に同法第4条及び第5条の規定によって成立する抽象的な納税義務は、同法第9条第1項の規定により成立と同時に免除されるものと観念することができ、消費税の納税義務は存在しないことになること
  3.  また、消費税法第9条第2項第1号において、同法第28条第1項で規定する「対価の額」を引用しているが、これは、本来の「対価の額」の原則的な定義は「対価として収受する一切の金銭又は金銭以外のもの若しくは権利その他経済的な利益の額=取引の全額」であることを明確にすると同時に、基準期間において課税事業者であった者については、当該期間は消費税が課されているので、当該課されるべき消費税の額を除外したところにより売上高を算定すべきであるとの観点等から、課税標準の計算規定を借用して規定しているものであること

等から、基準期間において免税事業者であった者については、課税資産の譲渡等の対価の全額の合計額により課税売上高を算定して判定することが相当である。

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事業年度開始の日における資本又は出資の金額が千万円以上である法人は、消費税の納税義務が免除されないとした事例

裁決事例集 No.59 - 351頁

 請求人は、免税事業者と課税事業者の区分は、基準を課税売上高によるものとしたため、原則として、その課税期間から2年間さかのぼって基準期間を設定したものであり、消費税法の基本構成は、基準期間の存在を前提とした課税期間であるから、基準期間のない法人に対して消費税法等の納税義務を生じさせることはあり得ない旨主張するが、その課税期間に係る基準期間がない法人であっても、課税資産の譲渡等を行っている限り、消費税法第5条第1項の規定により本来消費税等の納税義務が生じるのであり、同法第9条第1項本文の規定により例外的にその納税義務が免除されることになるとしても、同法第12条の2の規定により、基準期間のない法人のうち、当該事業年度開始の日における資本又は出資の金額が千万円以上である法人(新設法人)については、消費税の納税義務が免除されないことになる。

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消費税法第9条第1項の規定の適用により免税事業者となる者については、納税義務が発生しないことから、基準期間における課税売上高の計算上課されるべき消費税額等に相当する額は存在しないとした事例

裁決事例集 No.61 - 623頁

 請求人は、免税事業者の行う取引であっても、非課税取引以外は全て課税の対象であるから、課税資産の譲渡等の対価の額には、課されるべき消費税額等に相当する額が含まれており基準期間の課税売上高は3,000万円以下となることから、本件課税期間は免税事業者である旨主張する。
 しかしながら、消費税法第9条第1項は同法第5条第1項に規定された課税要件としての納税者の範囲を限定するものであり、発生した消費税の納税義務を免除することを規定したものではないから、同法第9条第1項の規定の適用により免税事業者となる者については、たとえ課税資産の譲渡等を行ったとしても納税義務が成立せず課されるべき消費税額等に相当する額は存在しないから、本件課税期間は免税事業者とはならない。

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課税期間開始前2年以上の間に営業収入はなかったとしても、多額の課税仕入れが発生しているから、消費税法基本通達1−4−8の適用はなく、本件課税期間は、消費税法施行令第20条に規定する「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」に当たらないとした事例

裁決事例集 No.64 - 531頁

 請求人は、過去2年以上にわたりゴルフ場の開業準備中であったのであるから消費税法基本通達1−4−8《過去2年以上課税資産の譲渡等がない場合の令第20条第1号の適用》の取扱いによるべきであると主張する。
 しかしながら、同基本通達は休眠会社が事業を再開した場合などについて、新設法人と同様に、消費税法施行令第20条第1号に規定する「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」に含めて取り扱う旨定めたものであり、同基本通達が2年以上にわたって「課税資産の譲渡等」のみならず「課税仕入れ等」がなかった場合を要件としているのは、課税期間開始前2年以上の間、営業収入は発生していなくとも、開業準備のための課税仕入れ等がある場合には、当該課税期間は「事業を開始した日の属する課税期間」に当たらないことを明らかにしたもので、当審判所においても相当な取扱いであると認めることができる。
 本件の場合、請求人は平成7年7月課税期間以降継続して本件ゴルフ場を開業するために土地の取得、造成工事等の準備を進め、平成11年4月に開場したことが認められ、この間、いったん事業を休業し平成11年7月課税期間中に事業を再開したという事実はないこと、また、その準備期間中に多額の課税仕入れが発生していることから、請求人の平成11年7月課税期間は上記基本通達の取扱いが適用される場合に当たらないものと認められる。

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免税事業者に該当するか否かを判定する際の課税売上高は、請求人が基準期間の確定申告において選択した課税売上高の算出方法によるのであり、それ以外の方法で算出した場合に課税売上高が3,000万円以下となるとしても、そのことは更正の請求をすることができる事由に該当しないとした事例

裁決事例集 No.67 - 735頁

 請求人は、委託販売における課税資産の譲渡等の対価の算定を総額主義の方法によるか純額主義の方法によるかは、納税者の選択に委ねられているものと解され、そして、純額主義の方法によれば、本件課税期間に係る基準期間の課税売上高は3,000万円以下であり、本件課税期間においては、免税事業者となるから、本件更正の請求を行ったものであり、このことは、国税通則法第23条第1項第1号に該当するから、その全部を取り消すべきであると主張する。
 しかしながら、請求人は委託販売手数料を損益計算書上で国内旅行売上高とは区分して経理していると認められるものの、消費税等の申告に係る基準期間の課税売上高の算定根拠に国内旅行売上高の額を含めたこと、また、課税仕入れに係る支払対価の額として国内旅行に係る仕入高について航空会社等に支払う総額を記載していることからみて、消費税法基本通達10−1−12が定める総額主義の方法を選択したものと解される。
 したがって、請求人は、自ら選択して採用した総額主義の方法に基づいて本件基準期間の申告書及び本件課税期間の申告書を作成したものと認めるのが相当であり、総額主義の方法によって計算すると、本件基準期間の課税売上高は3,000万円を超えることは明らかであるから、請求人は、免税事業者に該当しない。
 また、いったん総額主義の方法を選択適用して申告した場合には、仮に、その後において受託販売手数料を対価として消費税額を計算した結果、課税売上高が3,000万円以下となって免税事業者に該当するとしても、課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことにはならず、又は当該計算に誤りがあったとはいえないので、更正の請求をすることができる場合に当たらないとするのが相当である。
 すなわち、納税者に一定事項の申告及び選択等を条件としてその規定の適用を受けることを委ねている場合においては、いったん自由な意思でこれらの規定に従い、かつ、適法な計算に基づいて消費税法第45条の規定に従って申告書を提出し、税額を確定させた後において、その一定事項の申告及び選択等の内容を変更することを理由に更正の請求をすることはできないものと解される。

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請求人は注文主から建築工事の全体を請け負っているから、当該工事に係る収入金額の全額が消費税の課税売上高であるとして、当該工事に係る自己の実質収入金額は設計・監理料のみであるとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.68 - 217頁

 請求人は、本件工事に係る自己の実質の収入金額は、設計・監理料のみであるから、本件各基準期間の課税売上高は3,000万円以下で、本件各課税期間に係る消費税の納税義務がない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、建築工事の全体を請け負っているものと認めるのが相当であるから、請求人の本件工事に係る収入金額の全額が課税売上高となり、設計・監理料のみを課税売上高とする請求人の主張は、採用することができない。

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請求人は被相続人の事業を承継しているので、納税義務は免除されないとした原処分が適法とした事例

裁決事例集 No.69 - 335頁

 請求人は、[1]被相続人名義預金に振り込まれた売上代金は、被相続人の妻が全額受け取ったこと、[2]被相続人の事業廃止届を提出したこと、[3]被相続人の雇用していた従業員は、本人の意向を確かめた上で改めて請求人の事業に勤務させたことから、被相続人の事業を承継していない旨主張する。
 しかしながら、消費税法第10条の相続により事業が承継されたか否かについては、請求人及び被相続人が営んでいた労働者の派遣業において、事業遂行上不可欠な要素である取引先及び取引先に派遣する塗装工が、被相続人から請求人に承継されているか否かで判断するのが相当であると解されるところ、取引先に関しては、[1]被相続人の事業を行う上で一身専属的な性質を有するものは必要でないこと、[2]請求人は被相続人の取引先との取引を継続していること、[3]請求人と取引先との取引条件は、被相続人が取引していた時と変更されていないことから、被相続人から請求人に承継されていると認めるのが相当である。また、取引先に派遣する塗装工に関しては、[1]被相続人の相続に際し、被相続人が取引先に派遣していた塗装工を請求人が解雇した具体的事実はないこと、[2]請求人は、塗装工を継続して取引先に派遣していること、[3]請求人が取引先に派遣している塗装工の雇用条件は、被相続人の事業に従事していた時と変更されていないことから、実態として、被相続人から請求人に承継されていると認めるのが相当である。
 そうすると、本件においては、事業遂行上の要素である取引先、取引先に派遣する塗装工が共に本件被相続人から請求人に承継されているので、請求人は消費税法第10条第2項に規定する、相続により被相続人の事業を承継した相続人に該当すると認められ、請求人に納税義務があるとしてされた原処分は相当である。

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公演に係る主要な事項は請求人個人が行っていること、入場券の販売代金の取扱いは過去に請求人個人が行っていたとする公演時のものと異ならないことなどから、事業者は人格なき社団ではなく請求人個人であるとした事例

裁決事例集 No.77 - 469頁

 平成15年及び平成16年に「Rの会」の名称をもって行われた伝統芸能の催しは請求人が主催したとして所得税の確定申告を行っているところ、平成17年及び平成18年に行われた本件公演は、1会場の手配、出演料の支払といった主要な事項、入場券の販売代金の取扱いは、平成16年までに行われた催しと異ならないこと、2公演の際に来場者に配付されたパンフレットの「あいさつ文」には請求人の個人名のみの記載があること、3請求人は、本件公演の出演者であるところ、本件公演が請求人以外により主催されたとした場合に、通常支払われることとなる出演料を受領していないこと及び4本件公演により発生した損失の額を、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費の額に算入していることからすれば、本件公演の主催者と平成15年及び平成16年に行われた催しの主催者は同一であると推認される。
 また、Rの会代表S(請求人)名義の普通預金からのすべての出金を請求人自らが行っていることに加えて、出金に必要な印鑑についても請求人のものであることからすると、当該預金の管理は請求人が行っていたと認めるのが相当であり、さらに、当該預金の帰属が請求人からRの会に移転したとすれば請求人に交付されるべき当該預金の残高相当額を受領した形跡がないことからすると、当該預金は請求人に帰属していたと推認することができる。
 そうすると、本件公演の主催者が平成15年及び平成16年に行われた催しの主催者である請求人からRの会に変更されたと認めることはできず、本件公演は、請求人が行っていたというべきであり、請求人が本件公演に係る資産の譲渡等に係る対価を享受していると認められるから、請求人が行った課税資産の譲渡等であるとするのが相当である。
 請求人は、人格なき社団であるRの会が本件公演を行った旨主張するが、人格なき社団に当たるというためには、団体としての組織を備え、そこには多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、そして、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確立しているものでなければならないと解されるところ、当審判所の調査において、Rの会の事務局長であると自認するNが、Rの会の規約、総会の議事録及び活動を証する資料について、その存在を明確に示すことができないこと並びにRの会の唯一の財産であるとする預金をNが管理していたとは認められないことからすると、Rの会が人格なき社団であるとは到底認めることはできず、請求人の主張は採用することができない。

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請求人が提出した消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第4項に規定する消費税課税事業者選択届出書は、事業者ではない者が提出したものであり、同項の適用は認められないと認定した事例(平24.1.1〜平24.12.31の課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分・棄却・平成27年6月11日裁決)

平成27年6月11日裁決

《要旨》
 請求人は、課税期間(本件課税期間)の開始の日の前日までに、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第4項に規定する同条第1項本文の適用を受けない旨の届出書(本件選択届出書)を提出しているから、本件課税期間において納税義務は免除されず、消費税及び地方消費税(消費税等)の還付を受けることができる旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件選択届出書を提出した日の属する課税期間において、消費税法上の事業者ではなく、本件選択届出書は、事業を行う個人以外の個人から提出されたものであって、その届出の実体的効果は、本件選択届出書が提出された時から生じていないというべきである。したがって、請求人は、本件課税期間において消費税を納める義務が免除される事業者であるから、本件課税期間における消費税等の還付を受けることはできない。

《参照条文等》
 消費税法第9条第1項、第4項

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信用を出資の目的とした出資の額は消費税法上の出資の金額に含まれ、請求人は消費税法上の新設法人に該当するため消費税等を納める義務が免除されないとした事例(消費税及び地方消費税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・平成29年6月15日裁決)

平成29年6月15日裁決

《ポイント》
 本事例は、信用を出資の目的とした出資の額は消費税法第12条の2《新設法人の納税義務の免除の特例》第1項に規定する「出資の金額」に該当するとしたものである。

《要旨》
 請求人は、消費税法第12条の2《新設法人の納税義務の免除の特例》第1項に規定する「事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額」について、消費税法に定義規定が置かれていないから会社計算規則第30条《資本金の額》第1項の規定を借用すべきであり、これを借用すると信用を出資の目的とした出資(以下「信用出資」という。)は資本金概念に含まれないから、当該課税期間において消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を納める義務はない旨主張する。
 しかしながら、関係法令の規定からすると、請求人が受け入れた信用出資は消費税法第12条の2第1項に規定する「出資の金額」に該当するものと解され、当該信用出資の額は1千万円以上であることから、請求人は当該課税期間において消費税等を納める義務を免除されない。

《参照条文等》
 消費税法第9条第1項、第12条の2第1項
 行政書士法第13条の21第1項
 会社法第580条第1項、第622条第1項、第666条
 会社計算規則第30条第1項

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