財産の換価等

その他

  1. 公売通知
  2. 公売財産の見積価額
  3. 公売公告
  4. その他(3件)

生命保険契約に基づく解約返戻金支払請求権が差し押さえられた後、約10年6か月後になされた取立権の行使及び配当処分の手続は適法であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 1115頁

 請求人は、会社倒産後は生命保険料の支払もできない状態になり、生命保険会社が未払いの保険料を立て替えていたにもかかわらず、差押えた本件債権を10年余りも解約執行せず放置したことから、解約返戻金が減少することとなったものであり、差押え直後に解約返戻金を滞納税額に充当しておれば、これほどの滞納税額にならなかったことから、本件配当処分を取り消し、差押え時点に遡って解約権を行使し配当処分をすべきである旨主張する。
 しかしながら、本件生命保険契約は、65歳の保険料払込満了後になっても、請求人が死亡した場合には、死亡保険金受取人からの普通死亡保険金支払請求ができる契約となっており、原処分庁は、解約権を行使して取立てを行う行為は、将来発生すると予測される受取人の普通死亡保険金支払請求の権利を奪うこととなり、受取人に影響を及ぼすおそれがあったことから慎重に行うこととし、請求人自らが円満に納付できるよう努力を行っていたにもかかわらず、請求人が原処分庁に連絡した事実はない。
 また、本件生命保険契約の解約返戻金が減少した理由は、請求人が保険料の支払いを怠ったためであり、その責任は請求人にあると言わざるを得ない。
 さらに、原処分庁が行った一連の徴収手続に違法性はなく、差し押さえた債権の取立てをしなければならない期間について規定した法律はないことから、請求人の主張には理由はない。

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差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとした事例(最高価申込者の決定処分・棄却・平成29年12月20日裁決)

平成29年12月20日裁決

《ポイント》
 本事例は、差押財産の公売において、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が差押財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、原処分庁に対して公売財産の購入希望者の存在を伝えていたにもかかわらず、原処分庁が当該購入希望者に公売に参加するように連絡(買受勧奨)をしなかった結果、当該購入希望者が公売に参加せず、請求人の期待した価額より低廉な価額で最高価申込者の決定処分(本件最高価決定処分)がされたとして、当該決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第104条《最高価申込者の決定》第1項は、徴収職員は、見積価額以上の入札者等のうち最高の価額による入札者等を最高価申込者として定めなければならない旨規定し、また、見積価額の決定につき、同法第98条《見積価額の決定》第1項は、国税局長は公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案するとともに、差押財産を公売するためのものであることを考慮しなければならない旨規定しており、国税徴収法は、これらの規定をもって、最高価申込価額が時価と比し著しく低廉となることを防止し、もって最低売却価額を保障しようとしたものと解される。また、国税徴収法には、公売公告は国税局の掲示場その他国税局内の公衆の見やすい場所に掲示して行う旨の規定(国税徴収法第95条《公売広告》第2項)は存在するものの、買受勧奨に関する規定は存在しない。
 これらのことからすると、最高価申込価額が時価より著しく低廉でない場合には、最高価申込価者の決定処分がその価額の点から違法になることはないから、買受勧奨がなかったことにより、最高価申込価額が公売財産の所有者等の期待する価額に達しなかったとしても、そのことによって最高価申込者の決定処分が違法となることはないと解される。したがって、買受勧奨の有無が、本件最高価決定処分の適法性に影響を及ぼすことはない。

《参照条文等》
 国税徴収法第95条、第98条、第104条

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売却決定処分に係る見積価額が時価より著しく低廉であり違法であるとの請求人の主張に対し、売却決定価額と時価(基準価額)とを比較し、低廉ではないと判断した事例(不動産の売却決定処分・棄却・令和元年7月2日裁決)

令和元年7月2日裁決

《ポイント》
 本事例は、売却決定価額の低廉性の判断においては、売却決定価額と時価(基準価額)を比較するのが相当であり、見積価額の低廉性の主張に対しても、結果として売却決定価額が著しく低廉でない限り、低廉による違法の認定はないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、請求人が所有する土地(本件土地)の時価については、少なくとも不動産販売会社による簡易査定価格を下回らないから、本件土地の見積価額(本件見積価額)は時価より著しく低廉であり、時価より著しく低廉な見積価額で公売された場合の売却価額は、見積価額が時価相当額であった場合と比べて当然に低廉となる旨主張する。
 しかしながら、公売財産の見積価額は、その財産の時価に相当する基準価額を求めた上、公売の特殊性を考慮し、基準価額からそのおおむね30%程度の範囲内の公売特殊性減価を行い算定することから、時価を相当に下回るのが通常であるところ、公売財産の見積価額が時価より著しく低廉であり、その結果、売却価額も時価より著しく低廉となった場合には、見積価額の決定が最低売却価額の保障をすることにあるという趣旨に反することとなるから、この場合の売却決定処分は違法になると解すべきである。本件では、本件土地の基準価額に公売特殊性減価(減価率20%)をした額を本件見積価額として決定し、本件土地の売却価額は、本件土地の時価と認められる本件土地の基準価額の約85%に相当する価額であったことから、時価より著しく低廉でないと認められる。

《参照条文等》
 国税徴収法第98条
 国税徴収法第113条第1項

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