財産の換価等

公売公告

  1. 公売通知
  2. 公売財産の見積価額
  3. 公売公告(6件)
  4. その他

差し押さえられている自宅建物についての任意売却の申出を認めずに公売公告処分を行ったことが権利の濫用に当たるとはいえないとした事例

裁決事例集 No.74 - 491頁

 請求人は、原処分庁が任意売却の申出を認めずに請求人の居住用財産である本件建物の公売処分を強行したことは、権利の濫用に当たる旨主張する。
 しかしながら、差押財産を換価するときは、公売によって行うこととされており、納税者の居住用財産を換価する場合に、納税者の事情を考慮した換価手続を行わなければならない又は公売以外の方法により換価しなければならないとする法令上の規定は存在しない。そして、公売は、差し押さえた財産を買受希望者の自由競争に付し、その結果形成される最高価額により売却価額及び買受人となる者を決定するための一連の手続であり、強制換価手続である国税滞納処分の手続の公正を維持しながらも、なるべく高価で納税者に有利な売却を行うことをある程度まで制度的に保障しようとする手続であると解される。本件において、原処分庁が請求人からの任意売却の申出を認めずに公売を行ったことは、法令上の規定に従ったものであり、また、請求人の申出に係る任意売却による買受希望者が公売に参加し最高価で入札することもできたのであるし、さらに、強制換価手続において納税者の権利利益も保護しようとする上記の公売の趣旨及び目的に反する事実は見当たらないから、本件公売公告処分が権利の濫用に当たり違法又は不当ということはできない。

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売却決定日時及び買受代金の納付期限を変更する旨の公売公告処分に違法な点はないとした事例

裁決事例集 No.79

 国税通則法第105条第1項ただし書は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てがあったときは、その国税の徴収のため差し押さえた財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立てについての決定又は裁決があるまで、することができない旨規定しているところ、本件では、原処分庁が当初ないし第4次の各公売公告において、売却決定の日時を定めたのに対し、その都度請求人から不服申立てがなされ、同不服申立てについての決定又は裁決がなされる前に、予定されていた売却決定の日時が経過したため、売却決定が行われなかったものであり、その過程に何ら違法な点はない。そして、本件公売公告は、第4次公売公告等に対する不服申立手続についての裁決がなされた後、売却決定の日時等を変更する旨を公告したものであるから、適法である。
 これに対し、請求人は、異議申立てにより前回までの売却決定が中止されたことから、本件公売公告も違法であると主張するが、本件不動産の売却決定が行われなかったのは、上記のとおり、国税通則法第105条第1項ただし書の規定によるのであって、公売処分に違法性があるためではない。また、請求人は、前回までの売却決定の中止決定等がなされていないとも主張するが、このような場合に中止決定等をしなければならない旨の規定はない。
 また、請求人は、見積価額が低廉であるから本件公売公告が違法であるとも主張するが、本件見積価額公告及び決定処分はいずれも適法なものとして存在しているところ、本件公売公告は、売却決定の日時及び買受代金の納付期限を変更したものであり、見積価額の適否は、本件公売公告の適否に影響しない。

《参照条文等》
国税徴収法第95条第1項
国税通則法第105条第1項

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公売公告を行う際の調査不足及び財産調査の手続違法は、公売公告処分の取消事由には当たらないとした事例

平成23年10月12日裁決

《ポイント》
 この事例は、主たる主張として国税徴収法第95条第1項に規定する公売公告において「第三者が使用している」旨を記載したことの適否が争われたものであるが、その他に、権利関係の調査が不十分であること、また、調査手続に違法があるとして公売公告処分の取消しが求められ、それに対して財産調査が公売公告処分の要件とはならないことを理由に違法はないと判断したものである。

《要旨》
 国税徴収法第95条《公売公告》第1項が公売に先立って公売公告事項を公告しなければならない旨規定している趣旨は、公売に先立って、公売財産(公売に付す差押財産)を特定するとともに、売却決定日時や公売保証金の要否、買受代金の納付期限及び公売財産の権利関係などの買受人の負担等を広く周知することによって、公売財産の需要を喚起し、高価での買受申込みを誘引するとともに、買受希望者に対して入札するか否かの判断資料を提供することにあると解される。
 本件においては、公売財産上の賃借権等の権利の内容として、「第三者が使用している」旨の記載の程度については、本件公売公告処分の時点において、複数の第三者が本件各不動産の一部をそれぞれ使用しており、土地の所有権の移転について、第三者の一人は農地法第3条《農地又は採取放牧地の権利移動の制限》の許可を得ているにも関わらず、所有権の移転登記が経由されておらず、登記簿上の所有者は請求人のままであること、また、賃借権の設定について農地法第3条の許可がされていることからすれば、原処分庁は本件各不動産を使用する権原が明らかでなかったことにより「第三者が使用している」と記載したものと考えられ、その記載の程度が公売公告事項として適切でないということはできない。そうすると、その他の公売公告事項についても国税徴収法第95条第1項の規定に基づき適切に記載されていることから、本件公売公告処分に記載不備の違法はない。

《参照条文等》
 国税徴収法第95条

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見積価額が低廉であることを理由として公売公告処分の取消しを求めることはできないとした事例(まる1公売公告処分、まる2見積価額公告・まる1棄却、まる2却下・平成26年8月21日裁決)

平成26年8月21日

《要旨》
 請求人は、原処分庁が行った公売公告処分(本件公売公告処分)について、当該公売に係る公売財産(本件公売財産)の見積価額が低廉であるから、本件公売公告処分は比例原則に違反し違法である旨主張する。
 しかしながら、見積価額公告は、法令上、公売公告処分の後にされることが予定されているところ、かかる見積価額公告の内容いかんによって公売公告処分の適否が左右されることはないと解され、見積価額の適否は、公売公告処分の取消しを求める審査請求において取消理由となり得ない。したがって、請求人は、本件公売財産の見積価額が低廉であることを理由として本件公売公告処分の取消しを求めることはできない。

《参照条文等》
 国税徴収法第95条第1項、第99条第1項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決(民集18巻8号1809頁)

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見積価額の適否は、公売公告処分の適法性には影響しないとした事例(公売公告処分・棄却・平成30年10月22日裁決)

平成30年10月22日裁決

《ポイント》
 本事例は、見積価額は、公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されている上、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることとされていることから、見積価額の適否は、公売公告処分の適法性には影響しないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、公売財産に係る見積価額が低廉であるから、公売公告処分(本件公売公告処分)は違法であり取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、見積価額は、徴収法第95条《公売公告》第1項に規定する公売公告事項ではなく、公売公告とは別個独立に公告されることが予定されている上、見積価額の公告は、公売公告がされた後においてもすることができることとされている。この点、本件公売公告処分と見積価額公告は同時にされたことが認められるものの、徴収法の定めに鑑みると、法的には、別個独立の公告が同時にされたものと評価するほかないものである。そうすると、見積価額の適否は、徴収法上、見積価額公告の後に行われることとなっている最高価申込者の決定処分又は売却決定処分の違法事由を構成し得るものの、公売公告処分の適法性には影響せず、本件公売公告処分の違法事由を構成し得ないというべきである。したがって、請求人は、公売財産に係る見積価額が低廉であることを理由として本件公売公告処分の取消しを求めることはできない。

《参照条文等》
 国税徴収法第95条第1項、第99条第1項

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成28年1月14日判決(裁web)

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公売公告処分は、原処分庁が分割納付誓約期間内に公売に付したという時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断した事例(公売公告処分・全部取消し)

令和5年8月21日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人の自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による請求人への影響等の諸般の事情をも考慮すると、公売に付した時期の判断において、その裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、差押財産を公売に付すべき時期については、国税の徴収の所轄庁の合理的な裁量に委ねられていると解されており、請求人が所有する各不動産(本件各不動産)の公売公告処分(本件公売公告処分)は、公売に付すべき時期について裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから、違法又は不当な処分ではない旨主張する。ところで、換価に関する時期の判断に当たっては、滞納者の個々の実情を踏まえ、国税の効果的な徴収に向け、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等諸般の事情をも考慮して判断することが相当と解されるところ、本件は、請求人には自主納付による完納の見込みがないこと、本件各不動産の換価額として相応の金額が見積もられていたこと、本件各不動産の公売が必ずしも請求人の事業の継続を不可能にするものではないことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法である。
 しかしながら、原処分庁の裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らし合理性を欠く場合には不当と判断すべきであるところ、本件は、請求人が提出した分割納付誓約書の誓約期間(本件分割納付誓約期間)内に、納付計画どおりの自主納付をする蓋然性が高く、また、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産を直ちに換価することで、換価額の下落の回避又は換価額の相対的な価値の維持ができたなどの徴収上有利となる事情がない。また、原処分庁の徴収担当職員が、本件分割納付誓約期間内に本件各不動産が公売に付されることはないとの請求人の期待を排斥しなかったことにより、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なくなり、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったことなどの事情があり、これらの事情を考慮すれば、本件公売公告処分は、公売に付する時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であるといえる。

《参照条文等》
 国税徴収法第95条第1項、第96条

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成30年9月6日判決(金融法務事情2119号86頁)

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