財産の換価等

公売財産の見積価額

  1. 公売通知
  2. 公売財産の見積価額(6件)
  3. 公売公告
  4. その他

原処分庁の公売財産の見積価額を適正であると認定した上、見積価額が低廉であるとする請求人の主張がすべて排斥された事例

裁決事例集 No.56 - 443頁

 原処分庁の見積価格の決定に当たって基礎とした鑑定評価額は、[1]不動産鑑定基準により、本件土地の地域要因及び指定容積率から、中層ビルが標準的使用であること、[2]近隣地域における中層ビル敷地としての標準画地に、本件土地の間口、奥行、地積の個別格差率の相乗積を採用して算定していること、[3]地下鉄敷設による地上権阻害率を適用して算定していること、[4]借地権の付着する土地として、収益方式及び借地権相応分控除方式により算出した底地価格の平均値で底地価格を算定しており、それぞれ減価要因を考慮したものである。
 そして、本件鑑定評価額は、近隣地域4件の売買実例に基づく比準価格を算出し、市場動向や収益性の調整率を乗じて計算した標準画地価格から、上記減価要因となる金額を控除して算出されており、また、公売の特殊性を控除した見積価額であり、適正であると認められる。
 なお、[1]適正価格は2億4千万円であること、[2]隣接地の平方メートル当たりの単価は1千万円であること、及び[3]過去の鑑定評価等から見て安価である、とする請求人の主張はすべて認められない。

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再公売に係る公売財産の見積価額の決定は適正であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 611頁

 請求人は、再公売に係る公売財産の見積価額が不当に低い価額となっている旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が、先行公売に際して見積価額の決定に当たり基礎とした不動産鑑定士による鑑定評価額は、評価時点における客観的時価として適正であり、その後2回の公売が入札者がなく不成立となったことから、減価要因として時点修正及び新たに把握した個別要因等による減額を、鑑定評価額から控除したことは相当である。
 そして、これら減価額を控除した後の金額は、本件公売時点における客観的時価として適正であって、これから公売の特殊性を考慮して20%を控除した本件見積価額は相当であると認められる。

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公売不動産の見積価額を減額する改訂は適正であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 623頁

(1)本件見積価額と前回見積価額との開差は、原処分庁が本件公売財産を適正に評価した結果によって生じたものと認められる。
イ 本件の時点修正額は、本件公売財産の近隣にある本件公示地の価格を基準として、それぞれの算定時点の間における下落率(価額変動率)を基に算定されていることから、合理的かつ適正に求められた金額であり、原処分庁がこれを控除したことは相当である。
ロ 敷金の返還額は、本件公売財産の買受人の債務負担額となるから、これを控除したことは相当である。
ハ [1]本件土地については、第三者所有の建物があり、土地の利用、用途等が制約されるなど特殊な要因を含んだ市場性に極めて乏しい物件であると認められ、[2]過去10回の公売を実施し、見積価額を2度見直したにもかかわらず入札者がなかったことも、特殊な要因が影響したものと考えられることから、原処分庁が、これらの特殊な要因を考慮し、市場性減価額を控除したことは、合理的かつ適正なものといえる。
ニ 公売に当たっては、財産の所有者が任意に処分する場合よりも、市場性が極めて制限され、見積価額が低廉となるのが通例であるから、原処分庁が公売の特殊性を考慮したことは相当である。
なお、原処分庁は、公売の特殊性による減価率を前回見積価額の算定時の20%から30%に変更しているが、これは評価通達に定めた公売の特殊性の調整限度の範囲内において減額したものと認められる。
(2)請求人は、原処分庁が本件公売通知書に不適切な記載をしたために、過去10回の公売において入札者がいないという結果となったのであるから、これを根拠に本件公売財産を市場性に極めて乏しい物件であると判断したのは誤りであると主張する。
しかしながら、本件公売通知書は、本件公売財産の概要及び利用状況等を正確に記載していると認められるから、誤認等の生じる余地はないと考えられる。
(3)請求人は、原処分庁の見積価額の決定に係る評価算定基準に問題があるから、公売の特殊性を参酌する必要は認められない旨主張する。
しかしながら、原処分庁が決定した本件見積価額は、不動産鑑定士によって算定された本件鑑定価額を参考としており、請求人が主張する算定方法によって算定された評価額を基礎としたものといえる。そして、本件見積価額の算定に当たり、本件鑑定評価額から減価額を控除したことは、前記のとおり適正であるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(4)当審判所が、財産評価基本通達に定める路線価の下落率を用いて、本件土地の公売時点の時価を算定すると、17,115,837円となる。そして、この金額は、本件見積価額の算定過程において原処分庁が算出した本件土地の時価、すなわち、本件鑑定評価額から時点修正額、本件敷金及び市場性減価額を控除した後の金額(公売の特殊性による減価額を控除する前の金額)である16,950,000円とほぼ同額となる。
このことは、本件見積価額が本件土地の公売時の時価を反映し、同時に、原処分庁の本件公売財産の算定が適正に行われていたことを裏付けるものであるといえる。

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見積価額は適正に算定されており、また、公売の通知は不服申立ての対象となる処分には当たらないとした事例

裁決事例集 No.68 - 285頁

 請求人は、[1]本件公売財産の見積価額は低廉であり、本件見積価額の決定(公告)処分は違法、不当であること、[2]本件公売通知は、滞納国税の一部納付後の残額を免除するという徴収担当職員の約束があったにもかかわらず、何ら免除されないままなされたこと、及び請求人の意思を確認することなく一方的になされたことから、違法、不当であること、を主張する。
 しかしながら、原処分庁が本件公売財産の見積価額の算定の基礎とした本件鑑定評価額は、取引事例比較法により査定した本件土地の更地価格から本件建物の取壊し等費用相当額を控除して算定しており、この評価方法を不相当とする理由があるとは認められない。また、原処分庁が本件鑑定評価額から10%の減額をしたのは、本件鑑定評価額の鑑定時と公売予定月とに隔たりがあり、その間に価格変動があったため、本件鑑定評価額を公売予定月の価格に時点修正したものであると認められるから時点修正による減額は相当である。さらに、本件鑑定評価額から上記時点修正による減額をした後の金額から、更にその20%を減額しているが、これは公売の特殊性に伴う調整として行われたものと認められ、この調整を不相当とする理由があるとは認められない。したがって、本件公売財産の見積価額は適正に算定されたものと認めるのが相当である。
 そして、請求人はその主張する売却価額について具体的な説明及びこれを証する証拠を提出していないことから、その売却価額は請求人の希望する価額に過ぎないと認めるのが相当であり、また、公売財産の見積価額は客観的な時価を下回るのが通例であることからすれば、低廉であることをもって本件公売財産の見積価額を直ちに違法であるとすることはできないところ、上記のとおり本件公売財産の見積価額は適正なものと認めるのが相当である。
 また、公売の通知は、国税局長が公売した場合において、滞納者に対して最後の納付の機会を与えるため、公売の日時、場所、公売保証金の金額、買受代金の納付の期限等、公告すべき事項等を通知するものにすぎず、それ自体として納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、行政処分には当たらないと解されており、本件公売通知は国税通則法第75条第1項に規定する国税に関する法律に基づく処分に該当しない。

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見積価額の低廉性は公売公告処分の違法事由には当たらないとした事例

平成23年12月14日裁決

《ポイント》
 この事例は、見積価額の低廉性は公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、国税徴収法第95条《公売公告》第1項に規定されている公売公告すべき事項に見積価額の決定が含まれていないとしても、原処分庁は、公売公告と見積価額の公告を同日、一体のものとして実施しており、実務上も両者は一体のものとして扱われているから、見積価額が著しく低廉である場合には、公売公告処分の違法事由となる旨主張する。
 しかしながら、税務署長は、差押財産を公売に付するときは、公売の日の少なくとも10日前までに公売公告しなければならないとされ、公売財産が不動産であるときは、税務署長は、公売の日から3日前までに見積価額を公告しなければならないとされているが、公売財産の見積価額は、公売公告事項とされていない。このことからすれば、見積価額公告は、公売公告の後にされることが予定されているということができ、見積価額の決定も公売公告の前に予定されていると解することはできない。そして、後にされた行政行為に何らかの瑕疵があったとしても、そのことゆえに先行の行政行為が違法となることはないと解されるから、見積価額が仮に低廉であったとしても、そのことが公売公告処分の取消原因にはならないと解するのが相当であり、また、そのように解したとしても、公売財産の所有者等は、見積価額が低廉であることを理由に、その後の売却決定の取消しを求める不服申立てをすることを妨げられないので、公売財産の所有者等の権利が害されるともいえない。

《参照条文等》
 国税徴収法第95条第1項、第98条、第99条第1項

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当初の基準価額から再公売による市場性減価及び公売特殊性減価の上算出した見積価額による最高価申込者決定処分について、減価は徴収法基本通達の範囲内で行われており、合理性を欠くものとは認められないことから、見積価額が時価より著しく低廉であるとは認められず、最高価申込者決定処分も違法なものとはいえないとした事案(最高価申込者決定処分・棄却・令和元年9月19日裁決)

令和元年9月19日裁決

《要旨》
 請求人は、請求人が所有する土地(本件土地)の最高価申込価額(本件最高価申込価額)は、請求人が任意売却を申し入れた際の金額や本件土地の近隣の土地の販売価格よりも低廉であるため、最高価申込者決定処分は違法である旨主張する。しかしながら、本件最高価申込価額と同額の公売時見積価額は、国税徴収法(平成30年3月法律第7号による改正前のものをいう。)第98条《見積価額の決定》第1項や国税徴収法基本通達第98条関係2《公売財産の評価》、同3《見積価額の決定》、同通達第107条関係1−2《見積価額の変更》を根拠として、不動産鑑定士による鑑定評価額を基に、期間経過に伴う価格変動を時点修正し、公売において需要がなく公売が不成立となった事実を根拠に市場性減価し、公売が強制売却であること等による公売特殊性減価した上で算出されたものであり、算出過程に不合理な点は認められないから、本件最高価申込価額も公売財産の時価より著しく低廉であるとは認められない。

《参照条文等》
 国税徴収法第98条、第104条第1項、第107条第1項
 国税徴収法基本通達第98条関係2、3
 国税徴収法基本通達第107条関係1−2

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