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所得税法の特例

肉用牛の売却による農業所得の課税の特例

  1. 不動産所得及び事業所得等の特例
    1. 新築貸家住宅の割増償却
    2. 社会保険診療報酬の所得計算の特例
    3. 土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例
    4. 肉用牛の売却による農業所得の課税の特例(3件)
    5. 特別税額控除及び減価償却の特例
  2. 譲渡所得の特例
  3. 株式等に係る譲渡所得等の特例
  4. 住宅借入金(取得)等特別控除
  5. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  6. 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
  7. タックスヘイブン対策税制
  8. 寄附金特別控除

農業を営んでいない者は、肉用牛の売却による農業所得の課税の特例(いわゆる肉用牛の免税制度)を適用することはできないとした事例

裁決事例集 No.72 - 288頁

 請求人は、本件農地において米を栽培するため、Fに耕作及び収穫の作業を委託しているから、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》の規定による特例(以下「本件特例」という。)の適用要件である「農業を営む個人」に該当する旨主張する。
 しかしながら、措置法第25条に規定する肉用牛を売却した個人が本件特例を適用するに当たっては、当該個人は「農業を営む個人」であることが要件とされているところ、「農業を営む個人」とは、自らが栽培の方法等を決定し、栽培し又は他人に栽培させ、その栽培に係る利益又は損失を自己に帰属することを継続的に行う者であると解するのが相当である。
 これを本件についてみれば、1本件農地における米の栽培について、農作業の時期、栽培する米の銘柄、苗や肥料の購入及び出荷先等の重要な意思決定はFが自ら行っており、請求人が決定しているとは認められないこと、2本件農地における米の栽培に係る収入や経費については、請求人の各年分の所得金額の計算上一切計上されておらず、本件農地における米の栽培に係る収入や経費はすべて自分のものであるとのFの答述からしても、本件農地から収穫された米の収益及び当該米の栽培に係る費用は、Fに帰属しているものと認められること、そして、3本件農地における米の栽培はFが自ら栽培方法等を決定しており、同人は、請求人に対して、このこと及び収穫した米の数量等の報告は行っていないことなどから、請求人からの委託を受けて行っているものとは認められず、また、4上記のとおり、本件農地における米の栽培はFが自己の計算と危険において継続的に行っているものと認められ、請求人が各年分においてFから受け取った2俵の米は、本件農地の面積に相当するP市内における水稲の標準的な小作料と同程度であることから、当該2俵の米は、Fが請求人から本件農地において米を栽培するよう依頼を受け、その小作料として給付しているものと認められる。
 以上を総合すれば、本件農地においては、Fが継続して米の栽培をし、その栽培に係る利益又は損失を自己に帰属させていると認められ、請求人は本件農地をFに貸し付けていると認められるから、請求人は本件農地において農業を営んでいないと認められる。
 したがって、請求人は、本件特例の適用を受けるための要件である「農業を営む個人」には該当しないから、請求人に対して本件特例の適用を受けることはできないとした原処分は適法である。

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請求人が行った肉用牛の売却取引が租税特別措置法第25条に規定する農業協同組合に委託して行う売却には当たらないと判断した事例

平成24年1月24日裁決

《ポイント》
 租税特別措置法第25条第1項第2号に規定する農業協同組合に委託して行う売却とは、委託者(農家等)が受託者(指定農協等)に売買契約の成立過程に係る業務につき相当の裁量を与え、受託者が肉用子牛の売却代金の回収等のみならず、販売先の勧誘、承諾等に関与して行う売却であると解される。
 この事例は、請求人が行った肉用牛の売却取引が、同号に規定する農業協同組合に委託して行う売却に当たるか否か判断したものである。

《要旨》
 請求人は、請求人が行った肉用牛の売却取引が、租税特別措置法第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》第1項第2号に規定する農業協同組合に委託して行う売却に該当することから、同条に規定する肉用牛の免税制度が適用される旨主張する。
 しかしながら、請求人がa市農業協同組合に売却を委託したとする取引について、a市農業協同組合が請求人から委託を受けたのは売却代金の回収業務のみであり、当該売却取引の主要部分である子牛購入の申込みの勧誘及び申込みに対する承諾など売買契約の成立過程における業務にa市農業協同組合は関与していなかったと認められることから、当該取引は農業協同組合に委託して行う売却には当たらない。

《参照条文等》
 租税特別措置法第25条第1項、4項(平成23年法律第82号による改正前のもの)
 国税通則法第70条第5項(平成23年法律第114号による改正前のもの)

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租税特別措置法第25条第1項の規定の適用について、免税対象となる所得金額の計算方法が争われた事例(平成25年分から平成27年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成30年1月22日裁決)

平成30年1月22日裁決

《ポイント》
 本事例は、租税特別措置法第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》第1項の規定の適用に当たり、売却損が生じた肉用牛を除外して免税対象飼育牛の売却に係る所得の金額を計算することは許されないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)第25条《肉用牛の売却による農業所得の課税の特例》第1項に規定する課税の特例(本件特例)の適用に当たり、免税の対象となる事業所得の金額は、売却損の生じた免税対象飼育牛(売却損牛)を含めずに計算すべきである旨主張する。
 しかしながら、同項の規定の文理に照らし、同項に規定する「その売却により生じた事業所得」の金額の計算上、売却損牛に係る収入金額及び必要経費を除外してこれを計算することが許容されていると解する余地はなく、したがって、当該事業所得の金額を計算するに当たっては、個々に売却損が生じたか否かにかかわらず、全ての免税対象飼育牛が対象とされるべきである。

《参照条文等》
 租税特別措置法第25条第1項
 租税特別措置法施行令第17条第4項

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