納付義務の確定

後発的事由

  1. 納付すべき税額の確定方式
  2. 納税申告
  3. 更正の請求
    1. 請求期間
    2. 通常の事由
    3. 後発的事由(9件)
    4. 基礎となった事実関係に関する判決等
    5. やむを得ない理由
    6. その他
  4. 更正又は決定

調停により制限超過利息を残存元本に充当したことに伴い受取利息を減額したことは、更正の請求の後発的事由に該当しないとした事例

裁決事例集 No.22 - 1頁

 過年度の益金の額に算入した受取利息のうち、制限超過利息を本件調停により残存元本に充当したことに伴い受取利息の額を減額したことが、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正の請求ができる後発的事由に該当する旨の主張について、同項の規定は国税一般についての更正の請求の手続を一般的に定めたものであり、同項各号の一に該当することを理由として更正の請求がなされた場合には、個々の税法の課税要件の実体規定に基づいて課税標準等の変動をどのように取り扱うことが法律の規定に合致するか、その内容をよく吟味して判断すべきであるところ、現行の法人税法は、期間損益課税を建前とし、同法第22条第4項の規定により、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って各事業年度の所得の金額の計算をするものとされ、後発的事由が生じた場合には、その事由の発生した事業年度の特別損失として「前期損益修正」の項目で会計処理をすることになり、一般にこの処理が定着しているものとみられるから、このような会計慣行を前提とする法人税法においては、後発的事由が生じたとしても、過年度にさかのぼって所得の金額を修正すべきではないと解するのが相当である。

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裁判所の関与なくなされた当事者間の合意は、国税通則法第23条第2項第1号の更正の請求の事由(判決と同一の効力を有する和解その他の行為)には該当しないとした事例

裁決事例集 No.42 - 1頁

 国税通則法第23条第2項第1号の「判決と同一の効力を有する和解その他の行為」とは、国家機関としての裁判所がする私人間の紛争の法律的解決のための民事訴訟手続等におけるものを意味し、かつ、これに限定されている。

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本件の訴訟上の和解は、国税通則法第23条第2項第1号の更正の請求の事由には該当しないとした事例

裁決事例集 No.44 - 12頁

 本件和解は、申告に係る課税標準等又は税額等の基礎となる事実に異動が生じたといえる内容ではないから、国税通則法第23条第2項第1号に掲げる「和解」には該当しない。

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不動産売買契約の解除に伴う損失は当該契約解除のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例

裁決事例集 No.46 - 6頁

 国税通則法第23条第2項の各号に該当する後発的事由が発生しても、個々の税法の課税要件の実体規定に基づき、課税標準等の変動をどう処理すべきかその内容を検討し判断すべきであり、後発的事由が同項の各号に該当することのみをもって当然に更正の請求ができると解すべきでない。
 不動産売買契約の解除に伴う損失は、法人税法第22条第4項の規定による一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従い、当該契約解除のあった日の属する昭和54年4月期の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであるから、国税通則法第23条第2項の規定を適用し、当該売買契約が締結された昭和49年4月期にそ及して所得金額を減額修正すべきものではない。

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国税通則法第23条第2項第1号及び相続税法第32条第1号に定める更正の請求は、請求人にいずれか有利な規定を適用することはできないとした事例

裁決事例集 No.53 - 59頁

  1.  請求人は、本件更正の請求は、国税通則法第23条(更正の請求)第2項第1号及び相続税法第32条(更正の請求の特則)第1号の両規定に基づく請求であり、それらの請求ができることとなった日は本件和解の成立した日の翌日からであるから、その請求の期限は、国税通則法第23条第2項の規定によるのではなく、請求人の有利な相続税法第32条第1号の規定によるべきである旨主張する。
     しかしながら、国税通則法第23条第2項第1号に規定する更正の請求事由と相続税法第32条第1号に規定する更正の請求事由は、その請求事由を異にしていることが認められ、また、相続税法第32条第1号に規定する更正の請求の特則は、相続税法特有の事由であることから、国税通則法第23条に規定する更正の請求の期限後においても後発的事由に基づき更正の請求を認めるために特例的に設けられた特別規定であることからみても、これらの規定は、それぞれ異なった事実関係において適用されるべきものであり、両規定に基づく更正の請求ができると解するのは相当といえない。
  2.  請求人は、本件土地を相続財産から除外すべきであると主張するが、本件土地を相続により取得した財産であるとした当初申告を是正するための更正の請求は、国税通則法第23条第2項第1号の規定に基づくものであり、本件更正の請求は、請求期限を徒過してなされた不適法なものであるから、相続税の課税価格の計算に当たっては、本件土地が相続により取得した財産であることを争い得なくなったことになる。

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不動産売買契約の和解に伴う損失は、当該和解のあった日の属する事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入すべきものであって、国税通則法第23条第2項の規定により、そ及して所得金額を減額修正することはできないとした事例

裁決事例集 No.54 - 46頁

 法人の所得の計算につき、法人税法第22条第4項は法人の当該事業年度の収益の額及び費用、損失の額について、いわゆる権利確定主義を採っており、それが一般に公正妥当と認められる会計処理の基準であるから、法人の所得の計算については、当期において生じた損失は、その発生事由を問わず、当期に生じた益金と対応させて当期において経理処理すべきものであって、その発生事由が既往の事業年度の益金に対応するものであっても、その事業年度にさかのぼって損金として処理しないというのが一般的な会計処理であるということができる。
 本件和解によって本件譲渡物件に係る譲渡代金が減額されたとしても、その損失額は、本件和解のあった日の属する平成7年10月31日から平成8年9月30日までの事業年度の損金の額に算入すべきものであり、本件事業年度の経理処理及び納税義務には何ら影響を及ぼさないことになるから、本件更正の請求は、課税標準等又は税額等が過大であるとの更正すべき実体要件を欠くものといわざるを得ない。

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後発的事由(判決)に基づく更正の請求に対して、請求人が申告当時、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予想し得たとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例

裁決事例集 No.59 - 1頁

 国税通則法第23条第1項に規定する期限徒過後に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えに対する判決により当該事実が申告と異なることとなった場合、納税者において、申告当時に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを予測し得た場合においては、同条第2項第1号に規定する判決には当たらないと解すべきである。
 これを本件についてみると、請求人は、相続財産である宅地及び建物を単独相続するに当たり、未分割の相続財産である本件小作権を将来解約する場合には、これに係る本件補償金を相続人全員に分配することを他の相続人らに約束し、さらに本件補償金を受領した当時においては、これを他の相続人らに分配する意思があったにもかかわらず、それを誠実に履行しなかったために、他の相続人らから本件小作権に係る遺産分割の調停の申立て及び不当利得返還請求等各訴訟が順次提起され、本件判決が確定して、本件補償金のうちの他の相続人らの相続持分に相当する金員を支払ったものであると認められる。
 そうすると、本件補償金に係る譲渡所得の確定申告時である平成3年3月の時点において、請求人は、本件補償金は他の相続人らにも分配しなければならないことをすでに認識していたこと及び本件小作権に係る訴訟が係争中であったことなどからみると、請求人は、本件補償金のうち、自己の相続持分に相当する金額のみが自己に帰属するものであることを十分に認識していた上、仮に、本件補償金の全額が自己に帰属するものとしてこれに係る譲渡所得の確定申告をすれば、後日、当該申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変更を来すことを確定申告時には十分に予測し得たものと認められるから、本件判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決には当たらないといわざるを得ない。
 したがって、本件判決を理由として本件更正の請求はできないから、本件通知処分は適法である。

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国税通則法第23条第2項ないし同法施行令第6条に規定のない納税者の主観的な事由は、同項の後発的事由に該当しないとした事例

裁決事例集 No.60 - 8頁

 請求人らは、無道路地に誤って付された路線価に基づき相続税の申告をしたため納付すべき税額が過大となったのであるから、請求人がこの誤りを知ったことをもって通則法第23条第2項に規定する後発的事由による更正の請求を認めるべきである旨主張する。
 しかしながら、通則法第23条第2項においては、第1号及び第2号で判決、和解、更正、決定といった外部的ないし客観的な事由を規定し、同項第3号の「やむを得ない理由があるとき」をこれらに類するものとしていることなどから、納税者の主観的な事由をもって、同項の後発的事由に該当すると解釈することはできないというべきである。したがって、「本件土地に平成9年分以降路線価が付されていないことを請求人が知った」という主観的な事由は、通則法第23条第2項のいう「後発的事由」に当たらないから、請求人の主張には理由がない。

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ゴルフ会員権を購入した者からの届出債権が破産債権として債権表に記載されたことは国税通則法第23条第2項第1号に該当するとしてなされた更正の請求につき、当該届出債権は不法行為に基づくものであるから、同号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」には該当しないとした事例

裁決事例集 No.61 - 1頁

 請求人(破産管財人)は、破産前の請求人(ゴルフ会員権販売代行業)を介して会員権を購入した会員がその購入代金相当額を裁判所に届け出、その届出債権が破産債権として確定した旨請求人及びゴルフ場経営会社双方の債権表に記載され、確定判決と同一の効力を有することになったこと(破産法第241条、第242条、第287条)は国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当する旨主張するが、当該届出債権は会員からの不法行為による損害賠償に基づくものであるから、当該届出債権を裁判所に届け出た行為をもって、請求人と当該ゴルフ場経営会社との間で締結された会員募集業務委託契約等、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の存否、効力等を直接審判の対象とした訴えがされたと見ることはできないため、そもそも、その事実は国税通則法第23条第2項第1号に規定する「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に該当せず、請求人の主張には理由がない。

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