還付及び還付加算金

充当

  1. 充当(11件)

土地処分益計上の期ずれにより前年度分が減額更正、後年度分が増額更正となった場合、前年度分の過誤納金を後年度分の延滞税に充当したことは適法であるとした事例

裁決事例集 No.41 - 1頁

 法人税法は、各事業年度ごとに確定する税額であるから、後年度分の本税の延滞税額について前年度分の過誤納金を充当したことは適法である。

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既に差押えをして滞納国税を確保しているにもかかわらず、更に充当をすることは重複処分とはならないとした事例

裁決事例集 No.43 - 1頁

 請求人は、原処分庁は既に差押えをして滞納国税を確保しているのであるから、更に充当をすることは重複処分となって違法であると主張するが、請求人には平成3年5月15日現在本件滞納国税が存在しており、たとえ本件差押えによって、原処分庁が既に本件滞納国税の徴収を確保していたものであるとしても、それにより本件滞納国税が完納されたというわけではない。また、充当は滞納国税につき差押えがなされているかどうかにはかかわりなく行われるものであり、かつ、差押えとは別個の規定に基づく内容を異にしたものであるから、本件充当を重複処分で違法であるということはできない。

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法人の欠損金の繰戻しによる還付金の充当適状日は、税務署長が還付の決定をした日であるから、同日までの日数に応じた延滞税を含む滞納国税への充当処分をしたことは適法であるとした事例

裁決事例集 No.47 - 16頁

 請求人は、法人の欠損金の繰戻しによる還付金の充当適状日は、請求人が還付請求をした日とすべきであるから、同日以後の延滞税を含めた滞納国税に還付金を充当したことは違法である旨主張するが、税務署長が法人税法第81条第6項の規定に基づき還付請求についての調査に基づいて還付の決定をした日を充当適状の日として、本件還付金の一部を当該日までの延滞税を含む滞納国税に充当した原処分は相当である。
 また、請求人は、原処分庁に対し口頭により、欠損金額の内容及び欠損金の繰戻しによる還付金の発生についての説明を行っていることから、滞納国税に係る納税の猶予の要件は充足しているので、延滞税の一部は免除すべきである旨主張するが、請求人は、納税の猶予の申請書を提出していず、納税の猶予の要件を満たしていないので、延滞税の免除の適用はない。

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原処分庁が、請求人が租税特別措置法(平成7年法律第55号による改正前のもの。)第70条の10第8項第1号の規定による取下書を提出しない時期に、請求人が相続税の本税として納付した額を、請求人にまったく連絡することなく、相続税に係る利子税に充当したのは違法であるとして、充当処分が取り消された事例

裁決事例集 No.57 - 21頁

 請求人が特例物納の一部取下書を提出したことから、第2回分納税額の納期限(当初納期限平成6年6月10日)及び第3回分納税額の納期限(当初納期限平成7年6月12日)は、租税特別措置法第70条の10第8項の規定により本件一部取下書を提出した平成9年7月8日の翌日から起算して1月を経過する日まで延長され、いずれも平成9年8月8日となる。
 一方、請求人が平成8年4月15日付で納付した相続税は過誤納金となるため、第2回及び第3回の分納税額にそれぞれ充当する場合の充当適状日は、当該過誤納金の生じた平成8年4月15日と当該分納税額の納期限である同9年8月8日のいずれか遅い日であるから、同9年8月8日となる。
 そうすると、原処分庁が平成8年4月15日を充当適状日とした当該充当処分は、充当適状日が法令の規定のとおり処理されていないこととなり、違法であるから取り消すことが相当である。
 また、請求人が平成9年7月15日付で納付した相続税は過誤納金となるため、第2回の分納税額に充当する場合の充当適状日は、同9年8月8日となる。
 そうすると、原処分庁が平成9年7月15日を充当適状日とした当該充当処分は、充当適状日が法令の規定のとおり処理されていないこととなり、違法であるから取り消すことが相当である。

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還付金の充当処分につき、充当に係る滞納国税は原処分庁の納税保証に関する手続に瑕疵がなければ不存在になっていたとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.60 - 43頁

 国税通則法第46条第5項及び国税徴収法第152条には、税務署長等が換価の猶予をする場合には担保を徴さなければならない旨規定されており、国税通則法第50条には、担保の種類として第3号に土地が、第6号に税務署長等が確実と認める保証人の保証が掲げられている。
 また、国税通則法施行令第16条第2項は、担保として土地を提供しようとする者は、抵当権を設定するために必要な書類を国税庁長官等に提出しなければならない旨、同条第3項は、保証人の保証を担保として提供しようとする者は、納税保証書を国税庁長官等に提出しなけれならない旨規定している。
 これを本件についてみると、次のとおりである。
 原処分庁は、請求人から約束手形の提供を受けて換価の猶予をしていたが、その後、さらなる担保として土地の担保の提供において必要とされる抵当権設定登記承諾書等の書類の提出を受けて換価の猶予期間を延長したこと、及び本件訴訟においてこれらの書類の真偽について争われたが真正に作成されたものと認定されたことから、原処分庁のした抵当権の設定に係る手続は適法に行われていると認められる。
 また、本件判決において抵当権設定行為が否認されたのは、物上保証人が抵当権を設定するに際して請求人から債務の免除を受けるなどの経済的利益を受けていないことによるものであって、納税保証書を徴さなかったことではないのであるから、原処分庁の手続上の瑕疵によるものとは認められない。
 なお、納税保証書は担保提供者たる請求人の意思により提出するものであると解されるところ、既に担保の提供を受けている原処分庁が徴さなければならない理由も認められず、物上保証人による滞納者の租税債務の負担を証する合意書を徴さなければならないとする法令上の規定もない。

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還付金等の充当処分が違法であるとの主張を排斥した事例

裁決事例集 No.60 - 54頁

 請求人は、平成9年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分が審査請求中であり、充当適状に至っていないから、当該重加算税に平成10年分の所得税の純損失の繰戻しによる還付金等を充当した本件充当処分は違法である旨主張するが、通則法第105条第1項は、国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、その目的となった処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない旨を、また、課税処分と充当処分とは、それぞれ別個の目的及び法律効果を有する独立した行政処分であり、その間に違法性が承継されるものではないから、請求人の主張には理由がない。

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本件充当処分時において、滞納国税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されておらず、また、本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分が無効とは認められないとして、滞納国税に対する還付金の充当処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.61 - 13頁

 請求人は、本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分には重大かつ明白な瑕疵が存在しており無効であるから、本件更正処分等に係る滞納国税に還付金を充当した本件処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、課税処分と充当処分とは、同一の効果を実現するための一連の手続きを構成するものでなく、それぞれ別個の目的及び効果を有する独立した行政処分であるから、仮に、課税処分が違法であるとしても、それが取り消されるか、又は無効でない限り、充当処分が違法となるものではないところ、本件充当処分時において、本件更正処分は取り消されておらず、また、本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分は、いずれも無効な処分と認められないため、本件充当処分は適法である。

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共同相続人が連帯納付責任を果たしてなお不足がある場合のみに納税保証人に納付義務が発生する旨の規定はなく、納税保証人に生じた還付金を、その保証に係る国税に充当することを制限する規定は存しないから、本件充当処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 35頁

 請求人は、滞納者の共同相続人が相続税法第34条の連帯納付の責任を果たしてもなお不足がある場合のみ、自己の相続税の納税保証人としての納付義務が発生するから、請求人の所得税還付金を納税保証に係る相続税の滞納国税に充当した処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第52条において、納税保証人に対して国税を納付させるための要件が規定され、また、同法第57条において、還付を受けるべき者につき納付すべき国税があるときは、還付金を国税に充当しなければならない旨規定されている一方で、租税法上、共同相続人が連帯納付責任を果たしてなお不足がある場合のみに納税保証人の納付義務が発生する旨の規定はなく、連帯納付義務について本来の租税債務と別個に確定手続をとることは予想されていないからといって、共同相続人が連帯納付の責任を果たしてなお不足がある場合にのみ納税保証人の納付義務が発生するとは解されない。

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充当処分は税務署長の裁量行為であり、納税者個々の生活状況に配慮して行う必要があるとの請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.69 - 10頁

 請求人は、充当処分は裁量行為であると解され、処分権者が充当処分を行うに当たっては、納税者個々の生活状況に配慮する必要があるとし、本件充当処分には、請求人の経済的な貧窮の訴えについて正しく認識しないで行われている違法がある旨を主張する。
 しかしながら、国税通則法第57条第1項及び第2項の規定は、その文理上、還付金等と納付すべきこととなっている国税とが同一の納税者について存在し、かつ、これらが充当適状にある場合には、納税者の意思にかかわりなく、還付金等を納付すべき国税に充当することを税務署長に義務付けているものと解するべきであり、裁量行為ではないから、請求人の主張は採用することができない。

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滞納国税につき分割納付中になされた充当処分を適法とするとともに、委託納付は行政処分に当たらないとした事例

裁決事例集 No.70 - 1頁

 請求人は、自己の滞納国税を納付するため国税通則法第55条の規定に基づき約束手形1葉を納付委託するとともに、本件納付誓約書に基づき毎月分割納付を履行している最中であるにもかかわらず、原処分庁が、一方的に本件充当処分及び本件各委託納付を行ったのは、権利の濫用である旨主張する。
 しかしながら、本件充当処分は国税通則法第57条第1項の規定に基づくものであり、同項は、税務署長に対し、還付金等と納付すべきこととなっている国税とが同一の納税者について存在する場合に、還付金等を納付すべきこととなっている国税に充当することを義務付けるものである。また、納付委託により事実上納税が猶予されている滞納国税について、還付金等の充当を制限する旨の法律上の規定はないことから、本件充当処分について原処分庁がその権利を濫用したとは認められない。
 また、委託納付とは、納税者が、税務署長に対し、その受領すべき還付金等により未納の国税等の納付を委託したものとみなされ、同委託に基づき税務署長が同還付金等を同未納国税等に収納する手続を行うことをいい、これにより、法律上当然にその委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなされる。そうすると、納付委託の効果は、法律上擬制される納税者自らの委託に基づくものであって、税務署長等による公権力の行使によるものではないから、「国税に関する法律に基づく処分」には該当しない。したがって、本件各委託納付に対する審査請求は不適法なものである。

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財団不足の場合においても、財団債権である未納国税に対して破産手続開始決定後に確定した還付金等を充当することができるとした事例

平成23年8月2日裁決

《ポイント》
 この事例は、財団不足の場合においても、破産手続によらずに、破産手続開始決定後に確定した還付金等を国税通則法第57条の規定により、財団債権である未納国税に充当することができるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、財団不足の場合に財団債権となる租税債権に還付金等の充当をすることは、財団債権者間の優先順位を変更することとなるので、最優先の財団債権である破産手続費用、破産管財人報酬の全額支払が確実になり、各財団債権者に対するあん分支払額が確定するまで還付を留保し、その後、破産管財人からあん分支払額が通知されてから、その通知額に従い充当処理を行うべきである旨主張する。
 しかしながら、破産債権は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使できないが、財団債権は、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権であり、破産債権に先立って弁済されるものであるから、破産債権に優先して満足を受けられる債権である。これに財団不足の場合であるか否かを問わず、破産債権となる租税債権に還付金等を充当することができることを併せて考えると、財団債権となる租税債権に還付金等を充当できると解するのが相当である。
 ところで、委託納付とは、納税者が、税務署長等に対し、その受領すべき還付金等により未納の国税等の納付を委託したものとみなされ、同委託に基づき税務署長等が同還付金等を同未納国税等に収納する手続を行うことをいい、これにより、法律上当然にその委託納付に相当する額の還付及び納付があったものとみなされるところ、委託納付の効果は、法律上擬制される納税者自らの委託に基づくものであって、税務署長等による公権力の行使によるものではなく、「国税に関する法律に基づく処分」には該当しないことから、本件各委託納付に対する審査請求は不適法なものである。

《参照条文等》
 国税通則法第57条第1項
 地方税法附則第9条の10第1項
 破産法第2条第7項、第100条第2項2号、第152条

《参考判決・裁決》
 大阪地裁平成15年2月14日判決(税資253号順号9283)

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