所得の種類

退職所得と認めた事例

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
    1. 退職所得と認めた事例(3件)
    2. 退職所得と認めなかった事例
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得

勤務先から、専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支給された一時金について、請求人が所得税基本通達30−2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当するとして、退職所得に該当するとした事例

裁決事例集 No.65 - 181頁

 原処分庁は、請求人が合併による役員改選により、存続会社の専務取締役から、合併後の法人の代表取締役に就任したことは、役員に再任されただけであって、実質的に退職したと同様の事情にあると認められないことから、合併時に役員退職慰労金として支給された一時金は、退職に基因して一時に受ける給与に該当せず、役員としての地位に基づき一時に受ける給与に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人の場合、代表取締役ではあるが、社長や専務等の役職はなく、会長や社長には他の取締役が就任し、社内の決裁権限もなく実質的に一時的かつ形式的な代表取締役就任と認められ、勤務の性質、内容に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とは認められないと判断されることから、所得税基本通達30−2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当し、専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支払われた一時金は退職所得に該当すると判断される。

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年金受給者が、厚生年金の給付水準の引下げに際し、将来の年金の総額に代えて受給した一時金は、勤務先を退職した年分の退職所得に当たるとした事例

裁決事例集 No.72 - 132頁

 所得税法第30条及び同法第31条の立法趣旨等を踏まえれば、厚生年金保険法第9章の規定により定められた厚生年金基金規約に基づき厚生年金基金から受ける一時金のうち、退職金としての性質を有している一時金、すなわち、1元の雇用主が払い込んだ掛金、保険料が給付の原資の大部分を占めているものであり、かつ、2退職金規程に定められた退職金に含まれる年金制度からの一時金であるなど、給与所得者であった者が退職日以後に過去の勤務に基づいて支給される一時金で加入員の退職に基因して支払われたと認められるものは、所得税法第31条第2号に規定する一時金で「加入員の退職に基因して支払われるもの」に該当し、税法上、退職所得として取り扱うと解するのが相当である。
 そして、厚生年金基金から支払われる年金のうち退職金としての性質を有している一時金に相当する部分(以下「一時金相当部分」という。)は、加入員、雇用主及び厚生年金基金の合意の下、一定年齢に達した際に、加入員の老後の生活の糧とするために、厚生年金基金に委託することにより、退職金の性質を持つ金員を年金という形式で加入員に分割して支払われるものとみることもできることから、一時金相当部分については、原則、退職時において退職所得としての権利が確定しているとして課税を行うべきものとみることもできるが、所得税法は、当事者の意思及び分割され年金として支払われる支払実態などにかんがみ、同法第35条第2項及び第3項の規定において公的年金等として雑所得である旨規定し、一時金相当部分は、それが分割され年金として支払われている限りは退職所得として課税せず、年金として支払われた年分において雑所得として課税するという、年金としての課税を行うものであると解される。
 そうすると、現に厚生年金基金から、退職金としての性質を有する一時金の一部を年金として支払を受けていた者が、自らの意思に基づき、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取ることを選択した場合にあっては、前述した老後の生活の糧とするために分割して受け取るという当事者の意思及び分割して支払われる支払実態など、年金として課税すべき考慮要素が消滅するから、当該一時金の本来の性質に基づき、退職所得として課税することが相当であると解される。
 したがって、所得税法第31条第2号に規定する「加入員の退職に基因して支払われるもの」とは、退職金としての性質を有する一時金が退職時に支払われた場合のみならず、この一時金の一部を年金として厚生年金基金から支払を受けていた年金受給者が、自らの意思により、今後年金として支払を受ける権利に代えて一時金として受け取った場合も含まれると解するのが相当である。
 本件の事実関係によれば、本件一時金は、A厚生年金基金規約に基づいてA厚生年金基金から支給される加算年金に対応する終身までの年金給付の総額に代えて支払われたものであり、また、加算年金の掛金は事業主が負担したものであり、さらに、本件一時金は、勤務先を退職し、加算年金の給付を受けている者しか受け取ることができず、請求人が自らの選択により一時金として受け取ったものと認められることからすれば、本件一時金は、所得税法第31条第2号に規定する退職手当等とみなすものとして、退職所得であると認めるのが相当である。
 そして、本件一時金は、請求人が平成7年にB社(現A社)を退職したことに伴い受け取った退職一時金と同一の勤務先における過去の勤務に基づいて支給されたものであり、一の支払者から二以上の退職手当等の支払を受けるのと同様の事情があると認められるから、同法施行令第77条の規定により、請求人の退職日の属する年分である平成7年分の退職所得と認めるのが相当である。

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契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し慰労金名目で支給された金員は、退職により一時に受ける給与というための要件を満たしているから、退職所得に該当するとした事例

平成23年5月31日裁決

《ポイント》
 この事例は、契約期間を満了して退職する期間契約社員に対し支給された慰労金名目の金員につき、その支払者が給与所得に該当するとして所得税の源泉徴収をしたものの、その支給基準、支給実態からみて、最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)で示された、退職所得に当たるというための三つの要件を満たしていると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、F社の期間契約社員就業規則によると、F社は、期間契約社員に対する退職金を支給しないこととされていることなどから、慰労金名目で支払われた金員(本件慰労金)に係る所得は給与所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、ある金員が、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるというためには、それが、まる1退職、すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、まる2従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、まる3一時金として支払われることの各要件を備えることが必要であると解されるところ、本件慰労金のうち、労働慰労金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、請求人が契約期間における出勤すべき日数の90パーセント以上を出勤し、勤務成績が良好な者に該当するとして、契約期間における勤務日数に応じて一時に支給されたこと、有給休暇手当金として支給された金員は、請求人が契約期間を満了して退職するという事実によって支給され、契約期間中に生じる有給休暇について請求人がこれを取得しなかったことを支給の根拠として一時に支給されたことからすると、本件慰労金は上記まる1ないしまる3の各要件をいずれも満たすものと認められることから、退職所得に該当する。

《参照条文等》
 所得税法第30条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭58.9.9第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)

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