所得の種類

所得の区分

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
    1. 所得の区分(7件)
    2. 取得価額の算定方法
    3. 不動産所得を生ずべき事業
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得

大規模なコンクリート基礎工事によって土地に固着された工場据付機械等の賃貸による所得は不動産所得に当たるとした事例

裁決事例集 No.10 - 16頁

 工場建物の敷地に約6トンに及ぶコンクリートをもって3台の圧延機及び熔解炉を定着させ、これに各附属機械を連結させた一個の有機的機能をもたせた工場据付機械は、経済的にみて独立の価値があるものと認められ、民法第86条“不動産、動産”の規定による土地の定著物の一種と認められるから、その賃貸料収入は不動産所得に係る総収入金額とするのが相当である。

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中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金は、不動産所得の収入金額に当たるとするとともに、当初申告で平均課税の適用をしていないことに「やむを得ない事情」があると認められないとした事例

裁決事例集 No.67 - 135頁

 請求人は、中途解約に伴い返還不要となった敷金及び建設協力金のうち不動産所得の収入金額とされるのは、賃料の減収による損失及び解約に伴う諸費用の実費弁償等としての補償額等に限定され、その余は一時所得に該当する旨、また、仮に不動産所得の収入金額となるのであれば、臨時所得に該当し平均課税の規定が適用される旨主張する。
 しかしながら、中途解約の合意内容等によると、返還不要の敷金及び建設協力金は、賃料の減収によって生ずる損失等、その後の不動産貸付業務に係る収益の減収に対する補償として取得したものと認められ、不動産賃貸業務の遂行によって生ずる収入金額に代わる性質を有するものであることから、その全額が不動産所得に係る収入金額であると認められる。
 また、当初の確定申告で、臨時所得に該当する金額がなかったのは、請求人が、税法の解釈を誤って、返還不要の敷金及び建設協力金を一時所得として申告したためであり、これは、客観的にみて納税者の責めに帰すことのできない事情とはいえず、「やむを得ない事情」があると認められないことから、平均課税の規定の適用を受けることはできない。

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自己の所有する農地を土砂の仮置き場として地方公共団体に使用させたことに伴い受領した損失補償金は、不動産所得に該当するとした事例

裁決事例集 No.67 - 154頁

  1.  不動産所得とは、所得税法第26条第1項において、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう旨規定され、その「貸付け」には、同項かっこ書において、地上権又は永小作権その他他人に不動産等を使用させることを含む旨規定されている。すなわち、所得税法第26条第1項の「貸付け」には、他人に不動産等を使用させる一切の場合を含むものとされている。
     これを本件についてみると、本件契約は、請求人が自己の農地を県に使用させるという内容のものであるから、本件契約に基づいて本件農地を使用させることも、所得税法第26条第1項の「貸付け」に当たる。
     そして、本件損失補償金は、県が本件農地を使用することによって生じる損失を「正当な地代又は借賃」をもって補償したものであることが認められる。
     そうすると、本件損失補償金は、請求人が本件農地を県に使用させたことによって得た所得であるといえるから、所得税法第26条第1項の「貸付けによる所得」に該当し、不動産所得に当たるとするのが相当である。
  2.  請求人は、本件契約は営利を目的とした継続的な土地使用契約でないので、本件損失補償金は不動産所得に該当しない旨主張する。
     しかしながら、所得税法第26条第1項の「貸付け」には、他人に不動産等を使用させる一切の場合を含むとされており、営利を目的とした継続的な土地使用契約に限っておらず、請求人の主張には理由がない。
  3.  請求人は、本件損失補償金は、土地使用について生じる損失の補償であるとともに、「休耕による減収補償」、「土地の返還後の地味回復に関わる経費」及び「収益回復までの収益減収に関わる補填費」などであって、地代のような単なる土地使用の対価でないことは明らかであり、休耕による減収補償等は、農家の事業収益若しくはそれに代わる収入と認めるべきものであって、地代収入などとは明らかに性質が異なるものであるから、不動産所得に当たらない旨主張する。
     しかしながら、本件損失補償金を算定するに当たり、請求人が主張するような要素が考慮されていることが認められるが、農地を使用させたことの対価を算定する際には、一般に、かかる要素が考慮されるべきものであり、そのことをもって、本件損失補償金が県に土地を使用させたことによる所得であることを否定するものではないから、請求人の主張には理由がない。
  4.  請求人は、本件農地の提供は、災害による河川の復旧工事に協力したものであって、もし請求人らが協力しなければ事業に重大な支障となり、土地収用法の適用もあり得たものであるから、本件農地の提供が公共工事のための半強制的な土地提供であることからすると、本件損失補償金は税負担の少ない一時所得とすべき旨主張する。
     しかしながら、本件農地の提供が公共工事のために半強制的な土地提供であったとしても、そのような土地提供に係る損失補償金を一時所得とする旨定めた法令の規定はないから、請求人の主張には理由がない。

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請求人が返還を求めている土地を使用(占有)している者から受領した金員について、請求人が本件土地を自ら使用収益することができなくなったことの対価として支払われたものとするのが相当であることから、所得税法施行令第94条第1項第2号の規定に該当するとして、不動産所得の総収入金額とした事例

裁決事例集 No.70 - 87頁

  1. 争点
    (1)請求人が、その所有する土地を権原なく使用(占有)する者から損害賠償金として金員を受領している場合に、それが課税所得に該当するか否か。(争点1)
    (2)請求人に対する課税処分が違法であることを理由に督促処分の取消しを求めることができるか否か。(争点2)
  2. 請求人の主張
    (1)争点1について
     E社は、請求人とE社との間の本件土地に係る賃貸借契約が終了したにもかかわらず、長年にわたり使用(占有)し続けている。そのため、請求人は、本件土地を自由に使用することができない状況となり、多大な損害を被り、また、長年にわたり重い身体的負担を負い、心身に対して深刻な損害を受けている。本件金員は、E社が本件土地を明け渡すまでの間、請求人がE社から受けている損害に対する賠償金である。
     したがって、本件金員は、所得税法第9条第1項第16号に規定する非課税所得の損害賠償金に該当するから、本件金員を不動産所得の総収入金額であるとしてされた、本件課税処分は違法である。
    (2)争点2について
     上記(1)のとおり、本件課税処分は違法であるから、本件課税処分に基づく本件督促処分は違法である。
  3. 審判所の判断
    (1)争点1について
    イ 所得税法第9条第1項第16号、同法施行令第30条及び第94条の趣旨は、損害賠償が他人の被った損害を補てんし、損害がないのと同じ状態にすることを目的とするものであって、その間に所得の観念を入れることが酷であるから、これを非課税所得とし、他方、損害賠償金の名目で支払われたとしても、そのすべてが非課税所得になるわけではなく、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、喪失した所得(利益)が補てんされるという意味においてその実質は所得(利益)を得たのと同一の結果に帰着すると考えられるから、それを非課税所得としないとするものである。
    ロ これを本件についてみると、[1]請求人は、E社に対して、損害賠償金を請求するに当たって、本件土地をE社が使用(占有)することによる経済的損失に対する損害賠償の部分と精神的苦痛に対する損害賠償の部分とを明らかにしないで請求していること、[2]E社は本件和解において合意した賃貸借契約期間満了後も継続して本件土地を駐車場として使用し、請求人に対して、その使用の対価と称して本件金員を支払っていること、[3]請求人は、E社が支払う上記[2]の対価を損害賠償金として受領し、その増額を数度にわたり要求していること、[4]E社は、請求人に対して、本件和解に基づく賃貸借契約期間中は月額15万円を支払い、当該賃貸借契約期間満了後も毎月の送金を継続し、その金額を徐々に増額して、平成13年5月以降は月額35万円としていること、及び[5]E社は請求人の損害賠償金の増額要求に対して、送金している金額が周辺の土地事情からみても決して低い額ではない旨回答していることが認められる。
     上記[1]ないし[5]のとおり、本件金員の支払を求めた請求人の請求方法、本件金員の額及びその金額の変遷、本件金員の支払態様、支払者であるE社の認識などの事実を総合すると、請求人がE社から支払を受けている本件金員は、請求人がその心身に受けた損害を賠償するためのものでも、資産に加えられた損害につき支払を受ける見舞金でもなく、請求人の本件土地に対する使用収益を妨げて請求人の得べかりし利益を喪失させて生じさせた経済的損害を賠償するためのものであると認めるのが相当である。
     そうすると、本件金員は、損害賠償金ではあるが、本来所得となるべきもの又は得べかりし利益を喪失した場合にこれを賠償するためのものであるから、喪失した所得(利益)が補てんされるという意味においてその実質は所得(利益)を得たのと同一の結果に帰着すると考えられ、それは課税所得となるものというべきである。
    ハ そして、所得税法施行令第94条の規定によれば、本件金員は、請求人の業務の遂行により生ずべき不動産所得に係る収入金額に代わる性質を有するものというべきである。
    ニ 以上のとおり、本件金員は、所得税法第9条第1項第16号に規定する非課税所得の損害賠償金には該当せず、請求人の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入されることから、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
    (2)争点2について
     本件課税処分が適法であることは、上記(1)のとおりであり、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件督促処分は、本件滞納国税がその納期限である平成16年9月30日までに完納されなかったことから、国税通則法第37条第1項の規定に基づいて行われたものと認められるので、本件督促処分は適法である。

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建物賃貸借契約の合意解約に伴う残存期間賃料は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、不動産所得の総収入金額に当たるとした事例

裁決事例集 No.78 - 114頁

 請求人は、本件建物を処分する方法として、本件建物を売却し、その敷地について利用権を設定するとともに、請求人が支払うべき敷金及び保証金の精算をするという一連の取引を、まる1本件合意解約、まる2本件借地権付区分所有建物売買契約、まる3本件土地賃貸借契約という3つに分割して行ったものであるから、上記各契約を独立した取引と解釈すべきではなく、一連の取引として一体として捉えるべきであり、そうすると、本件建物賃貸借契約の合意解約に伴い生じた本件残存期間賃料は譲渡所得と見るべきであり、不動産所得には該当しない旨主張する。
 しかしながら、上記まる1ないしまる3の各契約はいずれも別個の契約であり、各契約を一個の契約であると認めるべき特段の事情があるとも認められない。本件残存期間賃料は、建物賃貸借期間を20年とし、賃貸借期間中は契約解除をなし得ない旨定めていた本件建物賃貸借契約につき、両当事者の合意により、賃貸借契約期間の満了を待たずして本件建物賃貸借契約を合意解約することに伴い、その合意解約の約定において確認された残存期間賃料に相当するものである。そうすると、本件残存期間賃料の性質は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、本件残存期間賃料は不動産所得に該当する。

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請求人が買い受けた不動産の売買代金の支払に代えて引き受けた債務の免除は、請求人の経済的利益に当たるから、不動産所得の総収入金額に算入するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.78 - 131頁

 請求人は、債務者をT、連帯保証人を請求人及びSとした本件債務承認弁済契約が約定どおりに履行されなかった平成7年12月末日において、約定利率の年14%について契約変更があったと解すべきであり、このことは、その後の交渉において、R社から年5.7%、年1%の遅延損害金の利率が提示されていることからも明らかであること、そして、請求人とR社との交渉の結果、遅延損害金の額は最終的に1,000,000円で確定し、請求人はこれを支払っているから、債務免除による経済的利益は生じていない旨主張する。
 しかしながら、本件債務承認弁済契約に係る遅延損害金の約定利率は、求償債務残元金が完済されるまで一貫して年14%であったことは明らかである。また、請求人がR社に1,000,000円を支払い、R社がTに対して有する遅延損害金の残額を免除したことにより、本件債務承認弁済契約上の債務者であるTの債務が消滅したものと認められる。そして、当該遅延損害金の債務免除によりTの債務が消滅すると、請求人が本件引受債務の履行を引き受けたことにより、Tに対して負っていた債務者の債務を履行するという債務も消滅することになり、債務者Tの債務を履行するという請求人の債務は、請求人の金銭的負担を必要とする債務であるから、この債務の消滅は請求人において経済的利益を受けたものと認められ、請求人が受けた経済的利益の額は、Tが免除された遅延損害金の額と同額である。
 したがって、請求人がR社に1,000,000円を支払ったことにより、R社がTに対して有する遅延損害金の残額を免除し、これにより請求人にこれと同額の経済的利益が生じたことは明らかである。
 そして、請求人が本件土地建物の売買代金の一部に代えて本件引受債務の履行を引き受け、その結果、経済的利益を受けたこと、請求人が本件建物を継続して賃貸の用に供していたことからすれば、請求人は不動産の貸付けに関連して当該経済的利益を享受していたと認められるから、当該経済的利益は不動産所得の付随収入として不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入されることになる。

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請求人が不動産業者との間で締結した不動産売買契約は、「土地及び建物」と「賃貸人の地位」について別個に認識し、それら2つの財産を当該不動産売買契約の目的としたとみるのが相当であり、請求人が受領した売買代金の一部は、「賃貸人の地位」の譲渡の対価として受領した金員であると認められ、貸付けに起因する所得であることから不動産所得に該当するとした事例

令和3年10月8日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が不動産売買契約に伴い受領した売買代金について、当該不動産売買契約に定められた契約条項の内容や、契約前後の請求人及び売買契約の対象となった不動産の借主の事情を把握し、当該売買に係る契約解釈を的確に行い、請求人が受領した売買代金の一部について「賃貸人の地位」の対価として受領したと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、賃貸していた不動産の賃借人が送金した金員(本件解約金相当額)は、当該不動産を含む不動産(本件不動産)の売買契約(本件売買契約)に基づく売買代金に含まれており、本件不動産の対価として請求人が譲受人から受領したものであるから譲渡所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件売買契約は、その特約条項によれば、本件不動産の所有権のみならず、本件不動産の賃貸借契約(本件賃貸借契約)に基づく賃貸人たる地位や、本件賃貸借契約の解約申入れに基づき賃借人から支払われる本件解約金相当額を受領する地位も移転させる趣旨のものと認められるところ、①本件解約金相当額の性質は、本件賃貸借契約に基づく中途解約金であること、②本件賃貸借契約が合意解約され、本件解約金相当額が支払われることが本件売買契約の締結より前に確定していたこと、③本件売買契約に付された不動産の価格が解約金とは別に形成されていたこと、及び④本件売買契約における売買代金から本件解約金相当額を除いた金額に相当する価格が、本件不動産の転売価格と均衡することが認められた。これらの諸事情からすると、本件売買契約は、本件解約金相当額を含む売買代金総額の全てを本件不動産の譲渡対価とする趣旨のものであったとは解し難い。また、本件売買契約の前に本件賃貸借契約が合意解約され中途解約金が支払われることが確定していた本件では、「賃貸人の地位」の交換価値が、本件不動産そのものの交換価値から独立した「本件解約金相当額を受領する地位」の価値として客観的に把握することができた。これらのことからすれば、請求人と譲受人は、売買された不動産と「賃貸人の地位」について、それぞれ別個の価格を認識し、それら2つの財産を本件売買契約の目的としたとみるのが相当であり、本件解約金相当額は、請求人が「賃貸人の地位」の対価として受領した金額であると認められる。そして、本件解約金相当額が、本件賃貸借契約が合意解約されることを前提として「残賃貸借期間の賃料の補償」として支払われることが確定したものであり、本件賃貸借契約に基づく賃貸人の地位に包含されるものであることからすると、請求人が受領した本件解約金相当額は、不動産の貸付けに起因して発生した所得であるといえ、不動産所得に該当する。

《参照条文等》
 所得税法第26条第1項
 所得税法第33条第1項

《参考判決・裁決》
 福岡高裁平成30年11月27日判決(税資268号順号13213)
 平成24年8月2日裁決(裁決事例集88)

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