所得計算の特例

事業廃止の場合の必要経費

  1. 交換の特例
  2. 低額譲渡
  3. 譲渡代金の回収不能
  4. 保証債務の履行
  5. 事業廃止の場合の必要経費(2件)

事業は廃止されたものとは認められないから所得税法第63条の必要経費の特例の規定は適用できないとした事例

裁決事例集 No.34 - 33頁

 被相続人の病院事業を相続した請求人らが、当該病院事業を廃止するため、事業廃止に伴う入院患者に対する転院の通告あるいは通院患者に対する事業所閉鎖の通知等必要な業務を行わず、当該事業の発展を図るため、病院を人格なき社団に改組した場合には、被相続人の事業が直ちに廃止されたものと認められないから、現実に退職者がいないのに退職金の名目で支払われた金員は、所得税法第63条に基づいて被相続人の事業所得の計算上必要経費に算入することはできない。

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被相続人の税理士業務は、同人の死亡により所得税法第63条に規定する事業の「廃止」があったとした事例

平成25年7月5日裁決

《要旨》
 原処分庁は、被相続人の死亡により、同人の税理士業に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入した未払退職金は、その支払債務が発生、確定しておらず、また、事業税等は、所得税法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》に規定する事業の「廃止」があったとはいえないから、いずれも必要経費に算入することはできない旨主張し、請求人らは、被相続人の死亡により、未払退職金については、被相続人の税理士事務所の従業者は退職しており、また、事業税等については、被相続人の税理士業は廃業となり同法第63条の規定が適用されることから、いずれも必要経費に算入される旨主張する。
 しかしながら、未払退職金については、被相続人の死亡当時、未払退職金発生を根拠付けるような労使慣行が成立していたとはいえず、被相続人の死亡により未払退職金の支払債務が発生、確定していたとはいえないから、必要経費に算入することはできない。また、事業税等については、被相続人の死亡により関与先との間の委任契約が税理士である子に承継されることなく終了していること、被相続人の税理士登録が抹消され、子の税理士名簿に登録された事務所の所在地が被相続人の事務所内であることを表記しないものに変更されたことからすると、子は、被相続人の税理士業務を承継し、被相続人と同一内容の事業を行っていたとは認められず、このような被相続人の死亡後の法律関係及び事実関係を社会通念に照らして判断すれば、被相続人の税理士業は廃業したものと認められ、所得税法第63条の規定が適用されることから、必要経費に算入されることとなる。

《参照条文等》
 所得税法第63条

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