所得計算の特例

保証債務の存否

  1. 交換の特例
  2. 低額譲渡
  3. 譲渡代金の回収不能
  4. 保証債務の履行
    1. 保証債務の存否(2件)
    2. 保証債務の履行のための譲渡
    3. 求償権の行使不能
    4. 対象資産の範囲
    5. 所得金額の計算
    6. 申告手続
  5. 事業廃止の場合の必要経費

自己の名義による他人のための借入金債務について、所得税法第64条第2項の規定の適用上同項に規定する保証債務と同視し得るものとした事例

裁決事例集 No.20 - 128頁

 請求人が、自己所有の土地を譲渡して得た代金により、B農協から自己名義で借り入れた債務を弁済した場合において、同債務の借入れについて、[1]請求人は、農業協同組合法の規定により農業協同組合が組合員以外のものに融資することはできないこととされているため、A法人の設備資金等に充てるための融資を受けるに当たり、自己がB農協の組合員であることから自己名義で借り入れるに至ったこと、[2]請求人は、当該借入金の担保のため本件土地に根抵当権を設定し、その後これを売却しその代金により本件借入金に係る債務を弁済していること、[3]請求人は、借入れ後直ちにこれをA法人に貸し付け、かつ、これに伴い利ざやその他の金利に相当する金銭等を収受していないこと、[4]A法人は、請求人からの借入れについて、B農協から直接借り入れた場合と同様の経理処理をしていることなどの事実が認められる場合には、請求人の前記債務は、請求人がA法人の債務を補償することに代えて自己名義で借り入れた債務というべきであるから、所得税法第64条第2項の規定の適用については、これを同条項にいう保証債務と同等のものと認めるのが相当である。

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請求人の主張する保証債務の存在を認めなかった事例

裁決事例集 No.60 - 296頁

 請求人は、保証債務が存在していたことは、[1]本件譲渡の話が進んだ平成3年12月に作成した返済予定表及び返済予定表を基に作成替えした連帯借用証書があること、[2]債権者から貸金の返還訴訟等を提起され判決等を受けたこと、[3]保証債務を借入金7,000万円及び譲渡代金3,700万円で返済したこと及び[4]債権者、主たる債務者等の陳述書等があることからも明らかであり、本件譲渡代金は、その全額が直接保証債務の履行に充てられていないが、最終的には本件譲渡代金が保証債務の履行に充てられており、本件特例が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、[5]返済予定表及び連帯借用証書は、本件土地の譲渡の話が平成5年5月にまとまっていることからすると、いずれも日付をさかのぼって作成されたものであり、その連帯借用証書も保証人欄の氏名が追加記載されるなど、その信憑性に欠けるものであること、[6]判決等は、訴訟が欠席裁判であり本件借入金の存在を実質審理されたものではなく、保証債務の存在を仮装するためのものと認められること、[7]保証債務を履行するための借入金については、その調達先が原処分段階から二転三転しており、その決済を現金と主張するのみで具体的に裏付ける証拠書類がないこと及び[8]関係人のいずれの陳述も具体的な証拠書類に基づくものではないことからすると保証債務が存在していたとは認められない。
 したがって、請求人のその余の主張を判断するまでもなく本件特例は適用できない。

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