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株式等
相続人らの名義の株式等について、相続財産と認定した事例
裁決事例集 No.41 - 290頁
相続人らの名義の株式について、被相続人が生前配当金等の法定果実を収受していたこと、各名義人の印鑑が被相続人自身の取引に使用されていた印鑑と同一であること、及び各名義人はこれらの株式等の取得の時期に取得資金を有していたとは認め難いことから、被相続人の財産と認めるのが相当である。
平成3年3月29日裁決
有価証券及び貸付金債権が請求人らの相続財産であるとした事例
裁決事例集 No.42 - 155頁
[1]本件有価証券は、本件覚書により被相続人から被相続人が会長であったE社に贈与されており、請求人らの相続財産となるものではない旨、及び[2]被相続人のF社に対する本件貸付金債権は、本件覚書により被相続人がF社に対して放棄しているので、請求人らの相続財産となるものではない旨の請求人らの主張について、認定事実に基づき判断すると、[1]本件有価証券は、被相続人がその配当金を受領していることから、相続開始前においては被相続人により管理運用されていたものであり、本件有価証券中、(a)請求人が相続開始前に売却した贈与株式は、当初覚書(本件覚書が作成される前に作成されたもの)の記載等から、同人が被相続人から贈与により取得した後に売却したものと認めるのが相当であって、贈与株式の価額は、相続税法第19条“相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額”の規定により請求人が取得した相続財産に加算すべきであり、また、(b)遺贈株式は、当初覚書の文面等から、被相続人と請求人A男及びB女(A男とB女を併せて「分家」という。)間において遺贈株式は被相続人の相続開始後分家の所有とする旨の合意がなされていると認められるので、A男及びB女に対し死因贈与がなされたと認めるのが相当であり、[2]本件貸付金債権は、相続開始日現在F社の借入金勘定に計上されていること及び当初覚書にはその帰属配分についての記載がないことから、請求人らに対する未分割の相続財産とするのが相当である。
平成3年7月23日裁決
本件株式は、すべて被相続人固有の資金によって取得され、かつ、すべて同人名義で保護預かり又は登録されていることから、被相続人に帰属するものと認められるとした事例
本件株式は、被相続人名義ではあるが請求人に帰属する金員を被相続人に預託し、被相続人が運用した結果形成された請求人固有の財産であり相続財産ではない旨主張するが、本件株式の取得資金は、被相続人が所有していた土地及び建物の売却代金を原資としており、また、請求人が預託したとする金員の一部は、請求人名義の貸付信託に充てられていることから、当該株式は相続財産であると認められる。
平成4年12月15日裁決
相続開始直前に行われた本件株式の売買は、仮装の売買と認められ、本件株式は相続財産であるとした事例
相続開始直前にされた被相続人名義の本件株式の売買については、[1]売買に伴い作成された覚書によれば、譲受人は、被相続人から買戻しの申出があれば、直ちに応じなければならないとされていること、[2]譲受人は、請求人(相続人)の知人であり、本件株式の取得代金を請求人から無利息で借り入れており、事実上何らの負担もないこと、[3]株式の引渡しが行われていないこと、[4]売買単価が額面価額であり、過去の被相続人から請求人への譲渡の際の価額からみても不自然であることなどから、相続税を不当に軽減させる目的のため、被相続人、請求人及び譲受人の三者が通謀して行った仮装の取引と認められ、本件株式は相続財産に属する。
平成6年5月30日裁決
株式は祖母から死因贈与により請求人が既に取得したものであり、被相続人の相続財産を構成しないとした事例
原処分庁は、請求人名義の株式は請求人の父である被相続人が亡母(請求人の祖母)の相続により取得したものであることから、被相続人の相続財産である旨主張する。
しかしながら、本件株式は、祖母が被相続人らのために相続財産として残す意図はなかったものとうかがえるところ、請求人の陳述及びxの答述によれば、祖母は請求人に対して本件株式の購入目的を告げており、死期の近づいた祖母は、購入していた本件株式等を4つに分け、請求人ら自分の孫にあててxに預けたこと、そして、xは祖母の死亡後1か月を経過したころ、請求人に引き渡したことが認められたことからすると、遅くともその時までに、祖母と請求人との間において、祖母が死亡したら本件株式を贈与する旨の死因贈与契約が成立していたと認めるのが相当であり、本件株式は、請求人の固有財産となる。
したがって、本件株式が被相続人の相続財産に当たるとした原処分庁の認定には事実誤認があることから、本件株式の価額を相続財産の課税価格から差し引くべきである。
平成10年3月31日裁決
請求人ら名義の関係会社の株式は相続財産と、請求人ら名義の定期預金は請求人らが生前に贈与により取得したものと認定した事例
- 請求人ら名義の関係会社の株式は、[1]株式の取得資金のすべてを被相続人が負担していること、[2]株式申込証に押印されている印影は、毎回同じで、その印影に係る印章は、被相続人が普段所持し使用していたものであること、[3]株式の配当金は、被相続人が受け取っていたことが認められることから、被相続人に帰属する株式と認めるのが相当である。
- 請求人ら名義の定期預金は、[1]被相続人は、本件定期預金を請求人らに贈与する意思があったと推認されること、[2]本件定期預金にほぼ見合う金額の贈与税の申告と納税がなされていること、[3]請求人らは、贈与税の申告等について少なからず承知していたこと、[4]請求人らは、相続開始前に被相続人から本件定期預金の通帳を受け取っていると推認されることからすれば、本件定期預金の贈与がなかったとまではいえない。
平成11年3月29日裁決
貸金庫内に保管されていた株券は、貸金庫の開閉状況、株券の管理・処分の決定方法等の状況からみて、本件被相続人名義分も含めて、その全部が、本件被相続人の被相続人である父親の未分割遺産であるから、そのうち本件被相続人の法定相続分相当のみが本件被相続人の相続財産であると認定した事例
原処分庁は、貸金庫内に保管されていた甲社株券のうち、本件被相続人の父母名義分に係る本件被相続人の法定相続分相当及び本件被相続人名義の全部は、本件被相続人の相続財産であるから、請求人が本件被相続人から遺贈により取得した財産である旨主張する。
しかしながら、貸金庫内に保管されていた甲社株券は、貸金庫の開閉状況、貸金庫内に甲社株券とともに保管されていた甲社株券以外の株式の売却譲渡及びその代金の帰属先の決定が、相続人の協議により行われており、当該株式名義人単独では行われていないこと、本件被相続人が貸金庫保管の株券については自由に出し入れを行えなかったこと等を総合すると、本件被相続人名義分も含めて、その全部が本件被相続人の被相続人である父親に係る未分割遺産と認めるのが相当である。
そうすると、請求人は、名義いかんを問わず、貸金庫内に保管されていた甲社株券のうち、本件被相続人の父親の相続に係る本件被相続人の法定相続分相当のみを本件被相続人から遺贈により取得したものと認められる。
平成13年2月7日裁決
被相続人以外の者の名義である財産について、その財産の原資の出捐者及び取得の状況、その後の管理状況等を総合考慮して、相続開始時において被相続人に帰属するものと認定した事例
《ポイント》
ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められるものであれば、当該財産は、相続税の課税対象となる。
この事例は、被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かについて、その名義のみならず、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係等を総合考慮して判断したものである。
《要旨》
請求人らは、請求人ら名義の各有価証券及び各預貯金等(本件請求人ら名義財産)について、これらの全部が請求人ら固有の財産である旨主張する。
しかしながら、預貯金や有価証券等の財産の帰属を判断するためには、その名義が重要な要素となることはもちろんであるが、それら原資の負担者、取引や口座開設の意思決定を行った者、その手続を実際に行った者、その管理又は運用による利得を収受している者などの諸要素、その他名義人と管理又は運用をしている者との関係等を総合的に考慮すべきであるところ、本件請求人ら名義財産については、本件被相続人の妻である請求人G名義の一部の財産を除き、原資の負担者は、本件被相続人であったと認めるのが相当であること、取引や口座開設等の手続の遂行者は、実質的に本件被相続人であったと認めるのが相当であること、本件被相続人自身又は本件被相続人が請求人Gを通じて、管理していたと認めるのが相当であること、本件請求人ら名義財産の基となった財産の運用については、本件被相続人の指図によって行われていたとみるのが相当であること及び本件請求人ら名義財産の基となった請求人らの名義の上場株式のうち、配当金に係る利得を享受し得る立場にあったのは、本件被相続人であったと認められることからすれば、いずれも本件被相続人の相続財産と認めるのが相当である。ただし、本件請求人ら名義財産のうち請求人G名義の一部の財産については、同人の所得から形成されたものと認められ、また、同人によって運用されていたものと認められるから、請求人G固有の財産であると認めるのが相当である。
《参考判決・裁決》
東京地裁平成18年9月22日判決(税資256号順号10512)
千葉地裁平成8年7月15日判決(税資220号91頁)
共同相続人間等で争われた株主権確認請求訴訟に係る控訴審判決の理由中の判断で示された事実等に基づき被相続人が相続開始日現在において有していた出資口数を認定した事例
《ポイント》
本事例は、報告文書の中でも実質的証拠力が高いとされている領収書等について、それに記載されたとおりの事実が存在しない理由を説示した上で、当該領収書等の実質的証拠力を否定したものである。
《要旨》
本件有限会社の出資(本件出資)のうち被相続人が有していた口数につき、請求人らは、被相続人は当初500口を有しており、その後、被相続人の先妻の有していた300口のうち150口を法定相続し、さらに、二女に50口を譲渡した結果、被相続人が相続開始時に有していたのは600口であった旨主張し、他方、原処分庁は、本件有限会社の定款及び家庭裁判所に提出された後見事務報告書等によれば、被相続人が相続開始時に有していたのは900口である旨主張する。
しかしながら、真正に成立したと認められる被相続人の先妻の遺産に係る遺産分割協議書によれば、被相続人の先妻が有していた本件出資は330口であり、この全部を被相続人が相続したものと認められること、また、旧有限会社法第19条《持分の譲渡、社員の先買権》第2項によれば、社員がその持分の全部又は一部を社員以外の者に譲渡する場合には社員総会の承認が必要であって、この手続を欠く譲渡は無効であるところ、請求人らの主張する上記譲渡の当時、二女は当該会社の社員ではなく、また、同社において社員総会の承認がなされたと認めるに足りる証拠は見当たらないことからすれば、被相続人が二女から50口分の金員を受領した旨の記載のある領収証の存在をもって、被相続人が二女に50口を譲渡したと認めることはできない。他方、原処分庁が主張する定款及び後見事務報告書等に記載されている900口には、被相続人が請求人らから70口を譲り受けたとする口数が含まれていると認められるところ、当該譲受けを認めるに足りる証拠はない。以上によれば、相続開始時において被相続人が有していた本件出資の口数は、当初有していた500口と先妻から相続した330口の合計830口と認められる。