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その他
米国e州f市に所在する不動産について、その時価をe州遺産税の申告に当たりe州税務当局により是認された鑑定価額により評価した原処分を相当と認めた事例(平成22年3月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成28年2月4日裁決)
《ポイント》
本事例は、e州遺産税等の適正市場価額とは、相続税法第22条に規定する時価と基本的に同義の価額を指向するものであるとし、対象不動産の鑑定価額を基にしたe州遺産税の申告がe州税務当局によって是認されていることから、同鑑定価額は客観的交換価値を表すものであり、対象不動産の時価と認められると判断したものである。
《要旨》
請求人らは、米国e州f市に所在する不動産17物件(本件対象不動産)の価額について、f市財産税の算定の基礎となる財産税評価額(本件財産税評価額)は、財産評価基本通達(評価通達)5−2《国外財産の評価》に定める売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価した価額であるから、本件財産税評価額から借家権として当該価額に30%の割合を乗じた金額を控除した価額が、本件対象不動産の価額である旨主張する。
しかしながら、請求人らは、被相続人に係るe州遺産税について、e州認定の鑑定人による鑑定価額(本件鑑定価額)を本件対象不動産の価額として申告しているところ、米国内国歳入法等に規定するe州遺産税における財産の価額である適正市場価額と相続税法第22条《評価の原則》に規定する時価とは同義の価額を指向するものと認められること、本件鑑定価額の算定手順に別段不合理な点は認められないこと、e州遺産税の申告がe州税務当局により是認されていることから、本件鑑定価額は相続税法第22条に規定する時価と認められる。一方で、本件財産税評価額は、収益方式によって評価されており、売買実例価額と比較して大幅に低い価額であること、財産税評価額に関する公的報告書等においても、財産税評価額が相当低額であり市場価格との相関関係が見出せない状況である旨の指摘がされていること等から、相続税法第22条に規定する時価とは認められない。また、借家権の控除は認められるべきとする点については、本件対象不動産は評価通達に定める評価方法に準じて評価することができない財産であるから、借家権の控除に関してのみ評価通達に準じて評価することを許容すべき理由はない。以上のことから、本件対象不動産の価額は、本件鑑定価額によることが相当である。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達5−2
《参考判決・裁決》
平成10年12月8日裁決(裁決事例集No.56)
平成20年12月1日裁決(裁決事例集No.76)
相続財産のうち一部の不動産については、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当であるとした事例(平成24年6月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成29年5月23日裁決)
《ポイント》
本事例は、被相続人による各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、他の納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、各不動産について、財産評価基本通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められると判断したものである。
《要旨》
請求人らは、相続財産のうち一部の不動産(本件各不動産)については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情がないから、評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》を適用することはできず、評価通達に定める評価方法により評価すべきである旨主張する。
しかしながら、被相続人による本件各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、被相続人が、多額の借入金により不動産を取得することで相続税の負担を免れることを認識した上で、当該負担の軽減を主たる目的として本件各不動産を取得したものと推認されるところ、結果としても、本件各不動産の取得に係る借入金が、本件各不動産に係る評価通達に定める評価方法による評価額を著しく上回ることから、本件不動産以外の相続財産の価額からも控除されることとなり、請求人らが本来負担すべき相続税を免れるものである。このような事態は、相続税負担の軽減策を採らなかったほかの納税者はもちろん、被相続人が多額の財産を保有していないために同様の軽減策によって相続税負担の軽減という効果を享受する余地のないほかの納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、本件各不動産について、評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である。
《参照条文等》
相続税法第22条
財産評価基本通達6
《参考判決・裁決》
東京地裁平成4年3月11日判決(判時1416号73頁、税資188号639頁)
東京地裁平成5年2月16日判決(判タ845号240頁、税資194号375頁)
東京高裁平成5年3月15日判決(行集44巻3号213頁、税資194号743頁)
請求人らが相続税の申告において、不動産鑑定士の鑑定評価等(本件鑑定評価等)に基づいて評価額を算定した土地及び建物については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法に拠ることのできない特別の事情があるとは認められず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることから、評価通達に定める評価方法によるべきであるとした事例(平成26年12月相続開始の相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平成30年10月17日裁決)
《要旨》
請求人らは、本件鑑定評価等による鑑定評価額等をもって相続税の申告をした土地(本件土地)及び建物(本件建物)について、本件土地は、標準的な画地の地積の2倍以上の規模があり、標準的な画地に比して市場性が劣ることなど、本件建物は、老朽化が激しく、それぞれの敷地の最有効使用の観点から取り壊すべきものであることなどの減価要因があるが、評価通達には、これらの点を反映させる定めがないことから、評価通達の定める評価方法によって評価された原処分庁が主張する評価額(原処分庁主張価額)は本件土地及び本件建物の時価を超え、原処分には本件土地及び本件建物の価額を過大に評価した違法がある旨主張する。
しかしながら、地積規模の大きな土地であっても、土地の取引価格は、最終的には取引当事者の合意によって定まるものであることからすれば、当然に当該土地の取引価格が低下するものではなく、本件建物は、一般的な合理性を肯定され、適正な時価と推認される固定資産税評価額に依拠して評価されている。したがって、請求人らの主張するような事情をもって、本件土地及び本件建物に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性が失われているということはできないし、評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があると認めることはできず、本件鑑定評価等には客観的合理性を直ちに肯定することができない部分があることからすれば、評価通達の定める評価方法により評価した原処分庁主張価額が時価を超え、過大に評価している違法はない。
《参照条文等》
相続税法第22条
地方税法第341条、第403条
《参考判決・裁決》
東京高裁平成27年12月17日判決(税資265号順号12771)
東京地裁平成27年6月25日判決(税資265号順号12683)
平成29年4月7日裁決(裁決事例集107)