財産の評価

取引相場のない株式

  1. 評価の原則
  2. 土地及び土地の上に存する権利
  3. 家屋及び庭園設備
  4. 動産
  5. 取引相場のない株式(25件)
  6. 出資の評価
  7. 預貯金
  8. 貸付金債権等
  9. 預託金制のゴルフ会員権
  10. 施設建築物の一部の給付を受ける権利
  11. 構築物

取引相場のない株式の相続税の評価額について、特定の上場会社を比準会社として計算した評価額は採用できないとした事例

裁決事例集 No.4 - 27頁

 請求人は、相続税財産評価に関する基本通達に定められている取引相場のない株式の評価方法である類似業種比準方式の業種は、その事業の内容が広範囲であるため比準の対象とするのは不適当であるから、上場会社のうちその事業の内容が評価会社と比較的類似していると認められる会社を比準会社として評価することが適当であると主張するが、請求人が主張する比準会社の事業内容は評価会社の事業内容に特に類似しているとはいえず、請求人の主張する比準会社を株価比準の基礎としなければならない特別の理由も認められないので、評価通達に定められている類似業種比準方式により評価したことは相当である。

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取引相場のない出資の評価において負債に含まれる未納法人税額は受取生命保険金から死亡退職手当金を控除して計算すべきであるとした事例

裁決事例集 No.23 - 189頁

 被相続人の死亡により本件会社(有限会社)が生命保険金を取得し、その生命保険金を原資として、被相続人に対する死亡退職手当金が支払われた場合において、仮決算を行わず、直前期末の資産及び負債を対象として純資産価額方式により本件会社の出資の価額を評価するに当たり、本件会社の負債に含まれる未納法人税額等の計算については、[1]相続税法の規定により当該退職金がみなす相続財産として課税の対象とされること、[2]課税時期において退職手当金の支給が未確定としても、将来支給の確定した日の属する事業年度には法人税法上当該退職金を損金として計算されることから、生命保険金から支払われた退職手当金を控除して算定するのが合理的であり、原処分は相当である。

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取引相場のない出資を純資産価額方式により評価するに当たり、割賦販売に係る未実現利益の金額は控除できないとした事例

裁決事例集 No.23 - 201頁

 取引相場のない割賦販売会社の出資の評価に当たっては、割賦販売に係る未実現利益の金額を負債として控除すべきであると請求人は主張するが、[1]割賦販売は、契約と同時にその効力が生じるものであり、原則として、その商品等を引き渡した時に法人税法上収益が実現しているものであること、[2]割賦基準は、法人税の課税上特例として認められているものであり、相続税における出資の評価に係る純資産価額の計算についてまで認められているものではないこと、[3]取引相場のない株式又は出資の時価を純資産価額により評価するに当たっては、相続開始時においてその法人に帰属している経済的価値を純資産として評価すべきものと解され、総資産価額から控除されるのは対外負債のみであること、[4]本件会社の直前期末の貸借対照表の負債の部に計上されている未実現利益引当金は、支払先の確定した対外負債ではないことから、未実現利益の金額を負債として控除することは相当でない。

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有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物に設置した附属設備は、工事内容及び賃貸借契約からみて有益費償還請求権を放棄していると認められるから、資産として有額評価することは相当でないとした事例

裁決事例集 No.39 - 380頁

 有限会社の出資の評価に当たって、賃借人である評価会社が賃借建物(工場)に施した附属設備の工事内容は、壁及び床の断熱工事、塗装工事、電気工事、水道工事、ホイストのレール工事等であるが、これら附属設備は、賃借建物の従たるものとしてこれに付合したことが明らかであり、かつ、それ自体建物の構成部分となって独立した所有権の客体とならないから、評価会社の資産として計上することはできないというべきである。もっとも、そうすると本件建物の所有者は、本件附属設備相当額を不当利得する結果となるから、評価会社は、建物所有者に対し有益費償還請求権を有するはずである。本件賃貸借契約によれば、建物内部改造費、造作、模様替えについて、借主は貸主に対してその買取り請求を一切行わないこと、原状回復は借主の費用負担において行うことが定められているので、評価会社は、有益費償還請求権を放棄したといえるから、本件附属設備の相続税評価額の計算に当たり、有益費償還請求権を有額評価することは相当でない。

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取引相場のない株式につき発行会社との間で譲渡価額を額面価額による旨を誓約している場合において、額面価額による評価は採用できないとした事例

裁決事例集 No.39 - 401頁

 被相続人が所有する取引相場のない株式につき、当該株式の発行会社に対して「退職した場合には、会社の指示に従い、額面価額をもって所有する株式を譲渡する」という誓約書を提出していること等から、相続人としてその誓約書どおりに額面価額により相続した当該株式を譲渡せざるを得ない状況にあったとしても、当該誓約は、会社と従業員という特定の関係にある当事者間の契約であり、当該契約による譲渡価額は、被相続人の自由意思により決定された額とは認められないから、仮に、額面価額が唯一の処分可能価額であったとしても、その価額は、当該株式の客観的交換価値を表した価額とは認められない。
 相続税法第22条に規定する「時価」とは、利害関係のない当事者間における客観的交換価値と解されるから、当該制約された譲渡価額は、同条に規定する時価に当たらない。
 本件株式については、被相続人及び請求人らの所有形態からみて、配当還元方式により評価するのが客観的で合理的である。

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純資産価額の計算上、法人税額等相当額を控除しないとしても違法ではないとした事例

裁決事例集 No.51 - 638頁

 請求人らは、本件出資を純資産価額方式で評価するに当たっては、評価基本通達の定めに従って、法人税等相当額を控除して評価すべきであると主張するが、被相続人は全額借入金によりX社及びW社を設立し、W社を設立するに当たってX社の出資を著しく低額で現物出資することにより、相続税の課税価格を約9億円圧縮する結果を招いており、当該出資は、資産の運用により収益を得る目的でなされたものではなく、本件借入金と本件出資との差額に相当する課税価格を圧縮することにより、相続税の負担を不当に軽減する目的でなされたものと推認できるので、このような場合の出資の評価に当たっては、評価基本通達の定めによる法人税額等相当額を控除しないで行っても租税平等主義に反するものとはいえず、違法ではない。

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配当還元方式を利用することにより、相続税の負担の軽減を図る目的で本件株式を取得した本件のような場合には、実質的な租税負担の公平という観点から、配当還元方式を適用することはできないとした事例

裁決事例集 No.54 - 451頁

  1.  財産評価基本通達188−2に定める配当還元方式は、単に配当を期待する少数株主を対象とする特例的な評価方法であり、限定的に用いられるべき方法であるところ、請求人らの本件株式の取得から売却に至る一連の行為等から判断すれば、請求人らは、同基本通達で定める配当還元方式を利用することにより、相続税の負担の大幅な軽減を図る目的で本件株式を取得したものと推認されるので、このような場合には、実質的な租税負担の公平という観点から原処分庁が本件株式の価額の算定に当たり、配当還元方式が適用できないと判断したことは相当と認められる。
  2.  相続税法第22条に規定する時価とは、課税時期においてそれぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であると解されるところ、本件株式の発行会社は、各月末において客観的な時価による純資産価額を基に自社株式の1株当たりの単価を算定して各出資者に通知し、また、同社の株式の売買もこの価額で行われていることから、当該単価は、同社に出資する場合に適用される一般的な価額と認められるので、本件株式の評価に当たっては、課税時期に最も近い時期における本件株式の客観的な時価による純資産価額の1株当たりの単価を基に算定すべきである。

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財産評価基本通達の定めにより配当還元方式で評価されることを利用して贈与税の負担の軽減を図る目的で取得した本件株式については、時価純資産価額を基に評価するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.55 - 533頁

 贈与者が取引相場のない株式である本件株式を取得した目的は、事業から生じる配当を期待したものではなく、本件株式が財産評価基本通達の定めにより配当還元方式で評価されることを利用して贈与税の負担の軽減を図るものと解されるところ、かかる目的のために取得した本件株式については、単に配当を期待するにとどまる少数株主を対象とした特例的な評価方法である配当還元方式を適用すると実質的な租税負担の公平を著しく害することとなるから、本件株式の評価に当たっては、当事者等が客観的な交換価値と認識し、それが不特定多数の当事者間でも通常成立すると認められる価額である時価純資産価額を基に評価するのが相当である。

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取引相場のない株式を純資産価額によって評価する場合に、租税負担の公平の観点から特別な理由があると認められるときは、法人税額等相当額を控除せずに評価することが妥当であるとした事例

裁決事例集 No.55 - 556頁

 被相続人が本件出資の取得に際し、著しく低額な価額で現物出資を行ったことは、多額の評価差額を創り出し、これを形式的に財産評価基本通達185を適用して法人税額等相当額を控除して計算することにより、相続税の負担の軽減を図るためのものであると推認されるところ、この場合に法人税額等相当額を控除して評価することは、他の納税者との間の実質的な租税負担の公平という観点からして看過ごし難いといわざるを得ず、加えて、税負担の累進性を補完するとともに富の再配分機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨からしても著しく不相当というべきであるから、本件には、財産評価基本通達に定める原則的な評価方法によらないことの特別な理由があると認められる。
 したがって、本件出資は、法人税額等相当額を控除せずに評価することが妥当である。

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財産評価基本通達185のかっこ書に定める「通常の取引価額」は、評価会社の帳簿価額よりも鑑定評価書の鑑定評価額によることが相当であるとした事例

裁決事例集 No.55 - 581頁

 財産評価基本通達185のかっこ書に定める「通常の取引価額」について、原処分庁は、本件建物は相続開始日の約2年前に取得され取得価額が明らかであることから、この取得価額を基に減価償却費相当額を控除した金額、すなわち評価会社の帳簿価額により評価するのが相当である旨主張し、請求人は、請求人が求めた鑑定評価書の鑑定評価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件鑑定評価額は、その価格時点を本件相続開始日とし本件建物の再調達原価を求めた上、これを減価修正し、更に借家権の割合を控除して貸家の用に供されているものとして算出されているところ、その鑑定根拠については当審判所が調査した結果、特に不相当と認められる要素はない。
 そうすると、本件鑑定評価額は帳簿価額よりも時価を反映したものとして、これをもって財産評価基本通達185のかっこ書にいう「通常の取引価額」と認めるのが相当である。

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課税時期が合併契約締結後合併期日までの間にある場合において、課税時期における株式の価額は、合併後の会社の純資産価額に影響されないとした事例

裁決事例集 No.57 - 504頁

 請求人らは、課税時期においては、本件合併契約は既に締結され、その後の合併諸手続を終え合併期日を待つ段階にあるから、本件株式の価額には合併という要素が反映されてしかるべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人らが本件株式を取得した課税時期においては、まだその合併の効力が生じておらず、また、本件合併契約が締結されたことによる影響を本件株式の評価に反映させるとする定めもないことから、本件株式の価額については、合併後の会社の株式の評価額に影響されることなく、課税時期現在における1株当たりの純資産価額により評価するのが相当である。

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人格のない社団に対する出資の評価については、企業組合等の出資の評価に準じて純資産価額方式によるのが相当であり、その場合、評価差額に対する法人税等相当額の控除を行うのは相当でないとされた事例

裁決事例集 No.58 - 241頁

 請求人らは、本件出資の評価について売買実例価額により評価すべきである旨主張するが、その価額は、譲渡人及び譲受人の双方が共に本件組合の組合員という限定された市場において成立した稀少な事例であり、しかも当該売買実例価額が客観的な交換価値を反映したものと認めるに足りる証拠もないので、この価額を本件出資の時価として採用することはできない。
 本件組合は、人格のない社団としての実体を備えていると認められるところ、評価通達には、人格のない社団の出資の評価方法についての定めがないことから、同通達5の定めにより、同通達に定める評価方法に準じて評価することになる。
 そこで、さらに具体的に本件出資の評価方法について検討すると、本件組合の財産及び債務は団体たる本件組合に帰属し、構成員たる組合員が個々の組合財産等について持分権や分割請求権を有していないことにかんがみると、本件出資の価額は、法人格を有する団体に係る株式や出資についての評価方法の定めを準用して評価するのが合理的であると認められる。
 そうすると、法人格を有する団体に係る株式や出資の評価方法については、評価通達169ないし196に定められているが、本件組合の事業目的や各組合員の有する議決権数からみて、企業組合、漁業生産組合その他これに類似する組合等に対する出資の評価方法を定めた評価通達196の定め(純資産価額方式)を準用して評価するのが、本件組合の性格に照らして最も合理的な評価方法であると認められる。
 なお、人格のない社団については、清算所得に対する法人税等の課税は行われないから、本件組合の純資産価額を計算するに当たっては、評価差額に対する法人税等相当額を控除することは相当でない。

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合併の際、被合併法人から上場株式を著しく低い価額で受入れ、作為的に評価差額を創り出した場合には、純資産価額方式による取引相場のない株式の評価上、その創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除することはできないとした事例

裁決事例集 No.60 - 546頁

  1.  被相続人らは、あらかじめA社の子会社であるB社の営業譲渡を行わせ、これにより形骸化した同社の株式すべてをを買収した上、C社を吸収合併する方法によってC社が保有する有価証券のうち、A社の株式を時価に比して著しく低い価額で受け入れ、もってA社の株式の帳簿価額をおよそ20分の1に圧縮し、評価通達に定める純資産価額計算上の評価差額を創り出したものである。
  2.  このような特異な取引が行われたのは、被相続人らがD社の指導の下で、同社の企画を実行したもので、被相続人らの行為は、被相続人の保有するA社の株式についての相続対策を行う目的のみで行われたものであることは明らかである。
     評価差額に対する法人税等相当額を控除するのは、個人事業者が個々の事業用資産を直接所有している場合と株式の保有を通じて会社の資産を間接的に保有している場合との均衡を図るものであるが、本件のように租税負担の軽減を図って作為的に評価差額を創り出した場合まで、当該評価差額に対する法人税等相当額を控除することは同通達の趣旨を著しく逸脱するものであって、このような保有形態を利用していない一般の納税者の租税負担を考慮すれば、課税公平の観点からみても、看過し難いものである。
     そうすると、本件株式については、評価通達に定める方法によって評価することが著しく不適当となる特別の事情があると認められることから、評価通達6の定めにより合併によって創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除せずに計算した金額が相続税法22条の「時価」に当たると解するのが相当である。請求人らは、客観的価値としての株式の時価を算定するに当たって、法人税等相当額を控除するのは当然であると主張するが、評価差額に対する法人税等相当額を控除して評価するのは、むしろ特殊な条件下における価額を求めるものであるから、かかる事態を本件株式の評価上考慮すべき理由はない。

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上場株式等の現物出資及びその低額受入処理という相続税回避行為に係る非上場株式を純資産価額方式により評価するに当たり法人税等相当額を控除することは相当でないとした事例

裁決事例集 No.62 - 380頁

 請求人は、本件出資及び本件株式の純資産価額方式による評価について、評価基本通達の定めに従って、法人税額等相当額を控除して評価すべきである旨主張するが、本件のように、ことさら評価差額を人為的に作出して相続税の軽減を図っているような場合に、評価基本通達を形式的、画一的に適用し、法人税額等相当額を控除することは、評価基本通達の趣旨に沿わないのみならず、このような計画的な行為を行うことのない納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、又、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税法の立法趣旨に反する著しく不相当な結果をもたらすこととなるから、評価基本通達によらないことが相当と認められる特別な事情があるとして、法人税額等相当額を控除しないで計算したものをもって当該出資及び当該株式の時価とみるのが相当である。

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財産評価基本通達188の規定に基づき株主区分の判定を行うに当たり、発行済株式数から控除する株式は、同188−3及び同188−4に定める株式に限られず、むしろ同188の定めにおける発行済株式数に、議決権を有しないこととされる株式及び議決権のない株式は、当然に含まれないとした事例

裁決事例集 No.67 - 633頁

 請求人らは、取引相場のない株式の評価方法を財産評価基本通達188に基づいて判定(株主区分の判定)するに当たり、単位未満株式は、発行済株式数から控除すべき株式を定めた同188−3及び同188−4に含まれていないから、発行済株式数から単位未満株式を控除せずに、その判定をすべきである旨主張する。
 しかしながら、株主区分の判定について、株式の保有割合を基とした会社支配の可否を基本的な考え方としているのは、商法第240条が株主総会の決議要件である発行済株式数に議決権のない株式等を算入しない旨を規定していることと符合させたものと解することが相当である。そうすると、同178における原則的な評価方法に対して設けられた同188の特例的評価方法についても、会社支配に関係する株式について比較すべきであり、株式の保有割合を判定する場合における発行済株式数についても、議決権を有しないこととされる株式及び議決権のない株式は、当然に含まれないと解すべきものである。
 また、上記の商法の改正経緯と財産評価基本通達の整備状況から、限定的に財産評価基本通達188−3及び188−4が定められたと解することは相当ではなく、課税実務上、必要な範囲で発行済株式数から控除される株式を明示したものと解すべきである。
 そうすると、株式の保有割合の判定において、発行済株式数に自己株式及び単位未満株式を含めることは、商法がこれらの株式について議決権を有しないこととした趣旨に照らしてみると、株主総会の決議における株主の議決権割合ともそごを来すことにもなり合理性が見出されないから、むしろ、同通達188−3及び188−4に定める株式と同様に、発行済株式数から控除することが相当であると認められる。
 したがって、株主区分の判定において、単位未満株式については、議決権のない株式であることから発行済株式数から控除すべきであり、請求人らの主張は採用できない。

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取引相場のない株式の発行会社と店頭登録株式の発行会社との合併等の契約締結後、それぞれの期日までの間に課税時期がある場合において、取引相場のない株式についての評価額は、店頭登録株式の取引価格を合併比率等により調整した価額ではなく、財産評価基本通達に基づき評価した価額によるべきであるとした事例

裁決事例集 No.67 - 679頁

 請求人は、相続開始時において、既に合併契約及び株式交換契約が締結されている非上場会社のB社株式及びC社株式(いずれも取引相場のない株式)の価額は、合併及び株式交換の相手会社のD社株式(店頭登録株式)の相続開始時の取引価格を基にそれぞれ合併比率及び株式交換比率を適用して合理的に算定することができるので、財産評価基本通達で定められた評価方式により難い特別の事情がある旨主張する。
 しかしながら、一般に、合併若しくは株式交換の一方の当事者が非上場会社である場合、まず、当該取引相場のない株式の価額を算定した上で、相手会杜の市場価格(取引価格)と比較するなどして合併比率若しくは株式交換比率を算定することとなる。この場合に当該取引相場のない株式の価額を算定する目的は、客観的交換価値を算定するためのものではなく、あくまでも合併比率若しくは株式交換比率を算定するためのものであり、評価時点における当事者の思惑が介在する余地も考えられるから、このようにして算定された合併比率若しくは株式交換比率が必ずしも純粋に株式の時価を反映しているとはいえず、また、合併比率若しくは株式交換比率に沿った価額で株式の取引がなされるとも言い得ない。
 本件において、合併比率若しくは株式交換比率を算定するに当たって採用した株式の評価方法は、評価時点や比準割合などに問題があり、算定された価額が適正に時価を示していると評価し得るか疑問があるから、これにより算定された本件合併比率及び本件株式交換比率も、適正に時価が反映されたものとも言い切れず、また、合併比率及び株式交換比率に基づく価格に市場価格が従うとも限らないと認められるから、請求人の主張する評価方式が、財産評価基本通達による以上の合理性があるとも、同通達により難い特別の事情があるとも認められない。

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取引相場のない株式を純資産価額方式により評価する場合において、評価会社が負担した弔慰金については、相続財産とみなされず、実質上の二重課税とはならないので、負債に計上する必要はないとした事例

裁決事例集 No.67 - 696頁

 取引相場のない株式の課税時期における1株当たりの純資産価額の計算を行う場合、退職手当金等も弔慰金も、課税時期において確定している債務ではないから、本来、評価会社の純資産価額を算定するについての負債とはならないものである。
 しかしながら、退職手当金等については、相続税法第3条第1項第2号の規定により相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に算入されて課税されるため、評価会社の純資産価額の計算において負債に計上しなければ、相続税において実質上の二重課税が生じることになるので、退職手当金等を負債として計上する必要があり、財産評価基本通達186において、負債に含まれるものとして取り扱われているものであり、この取り扱いは当審判所においても相当と認められる。
 これに対して、相続税法基本通達3−18ないし3−23の区分により弔慰金とされたものについては、退職手当金等と異なり相続財産とはみなされず、実質上の二重課税とはならないので、弔慰金を負債に計上する必要はない。したがって、弔慰金を負債に計上することはできないと解するのが相当である。
 また、請求人らは、株式の評価に当たり弔慰金を負債に計上しないと、弔慰金の給付を非課税としている労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠く旨主張するが、本件においては、弔慰金そのものを課税の対象としたものではなく、課税の対象となる株式の評価に当たり弔慰金に相当する金額を考慮して(相続する株式の価値を減少させて)算定するか否かという相続財産の評価の問題であるから、弔慰金を負債に計上せずに株式を評価することは、労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠くものとはいえない。

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取引相場のない株式の評価を類似業種比準方式で行うに当たって、評価会社の1株当たりの配当金額及び利益金額を最大5年間までさかのぼって算定すべきである旨の請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.70 - 353頁

 請求人は、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)は法律ではないから納税者を拘束するものではなく評価通達を基になされた本件更正処分は違法である、仮に評価通達によるとしても、利益、損失の変動の激しい法人においては、評価会社の業績を最大限5年間さかのぼって評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、評価通達に定められた相続財産評価の一般基準が合理的なものであり、かつ、評価通達により難い特別の事情が存しない限り、評価通達の定めるところにより相続財産を評価することが違法ということはできないというべきであり、請求人の主張には理由がない。また、評価通達における類似業種比準方式は、株式の価格形成の基本要素として考えられている3要素(配当金額、利益金額、純資産金額)を比準要素とし、標本会社の数値と評価会社の数値を同一の基準により算定するなど所定の措置を講じることにより、評価上の恣意性の排除、評価の統一性、画一性、安全性の担保に配意したものであるところ、評価会社の数値のみを課税時期の直前5年間の業績を基に算定するとすれば類似業種比準方式の合理性自体が失われるおそれがある等のため、請求人の主張には理由がない。

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取引相場のない株式の評価を純資産価額方式で行うに当たって、評価会社が土地収用に伴い取得した代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額ではなく財産評価基本通達の定めにより評価した価額によるのが、また、評価会社が保有する上場会社が発行した非上場の優先株式の価額は、その上場会社の株式の価額ではなく払込価額により評価した価額によるのが相当であるとして、請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.71 - 606頁

 請求人らは、相続により取得した取引相場のない株式の価額を純資産価額方式で算定するに当たって、評価会社が土地・建物等の収用等に伴って取得した代替資産については租税特別措置法第64条の2の規定を適用したことにより算出されるその資産の取得価額を、また、上場会社の発行した非上場の無額面株式(優先株式)についてはその上場会社の上場株式と同様に評価した価額を、それぞれ基として評価すべきであると主張する。
 しかしながら、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)185は、1株当たりの純資産価額を課税時期において評価会社が所有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額を基礎に計算する旨定めるとともに、この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する旨定めている。この家屋等についての取扱いは、純資産価額の計算において、課税時期の直前に取得又は新築し、通常の取引価額が明らかなものについてまで、わざわざ、評価通達に基づく評価替えを行うことは時価の算定上、適切でないと考えられることによるものであり、当審判所においても相当と認められるところ、本件代替資産は新たに取得又は新築されたものであること及び租税特別措置法第64条の2の規定からすれば圧縮記帳後の価額は法人税法に関する法令の規定を適用する場合のものであることが認められ、これらのことからすれば、請求人らが主張する本件各代替資産の圧縮記帳後の価額をもって、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である客観的な交換価額を示すものであると認めることはできない。
 また、評価通達には、本件優先株式に直接適用できる評価方法は定められていないところ、評価通達5によれば、評価通達に定めのない場合は、類似する資産の評価方法に準じて評価することとしている。この点に関し、原処分庁は、本件優先株式は平成14年7月4日付国税庁課税部資産課税課情報第10号ほか1「資産税関係質疑応答事例について(情報)」(以下「本件情報」という。)に掲げた内容と同様のものであるから、本件情報に基づいて本件優先株式を評価していることが認められるところ、当審判所においてもこの本件情報に基づく評価方法を不相当とする理由があるとは認められないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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類似業種比準方式における1株当たりの利益金額の計算上、匿名組合契約に係る分配金は非経常的な利益ではないから法人税の課税所得金額から控除すべきではないとした事例

裁決事例集 No.75 - 594頁

 類似業種比準方式における、匿名組合員である評価会社の「1株当たりの年利益金額」については、1評価通達が、「1株当たりの年利益金額」の計算を法人税の課税所得金額を基礎としていることについては合理性があること、2法人税の取扱いでは、匿名組合員が分配を受ける匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額は、匿名組合の営業者の計算期間の末日の属する匿名組合員の各事業年度の益金の額又は損金の額に算入されること、3匿名組合から分配を受ける損益は、匿名組合契約が継続する限り毎期発生することが予定されており、臨時偶発的に発生するものではないことからすると、「1株当たりの年利益金額」を計算する上で、匿名組合契約に係る損益の額を非経常的な損益として除外すべき理由は認められない。
 そして、本件事業は航空機リース事業であって、本件A匿名組合契約に係る損益が、最終計算期間以外の計算期間については航空機の賃貸による損益であり、最終計算期間における分配金については、賃貸物件である航空機の売却による収益を含むというように、計算期間によって損益の発生の源泉が異なるという性質を持っているとしても、このようなリース事業は、リース物件の売却によってはじめて契約期間を通した収支が確定するものであり、そもそもリース物件の所有、賃貸及び売却が一体となった事業である。つまり航空機の売却は、K社をその優先的売却先として本件A匿名組合契約の締結時に予定されていたものであるから、一般的な固定資産の売却とは異なり、当該航空機の売却が臨時偶発的なものとは言い難い。また、本件A匿名組合契約に係る最終分配金額は、航空機の賃貸による収益と航空機の売却による収益という収益の発生の源泉が異なる部分により構成されているとしても、本件会社にとって匿名組合契約に係る出資に対する利益の分配という性格が異なるわけではないから、その利益の一部を取り出して非経常的な利益と判断すべき理由は認められない。

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贈与財産である取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する場合において、当該株式の発行法人が有する営業権の価額は財産評価基本通達の規定により評価することが相当であるとした事例

裁決事例集 No.76 - 336頁

 財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に定める営業権の評価方法の合理性について検討すると、まず、平均利益金額の算定に当たって、所得税法及び法人税法の定めに従って算出した「所得の金額」を基としているのは、各企業の主観に基づく会計処理基準によって算出された利益によることなく、各企業について統一的に所得金額の計算基準を定めている所得税法及び法人税法によって計算された所得によることとし、算定方法の客観性を確保するためと解される。次に、平均利益金額から一律50%減じることは、過去の収益に基づく平均利益金額から将来の収益を推算する方法を採用していることから、将来における競争相手の出現、需給の変化等の企業がもつ将来における危険率を見込んだ評価の安全性に対する配慮であると認められる。さらに、企業者報酬を減ずることは、企業の規模に応じて適当と認められる企業者報酬を控除することで、客観的に見て企業者の労力によってもたらされる収益を除外するものと解され、総資産価額に基準年利率を乗じた金額を控除することは、投下資本の働きによる収益を除外するためのものであるから、これによって算出された超過利益金額は、将来の超過収益力を示すものと認められる。したがって、この超過利益金額を、財産評価一般に採用される一般的な利回りである基準年利率を基に資本還元した価額は、営業権の価額を示すものと認められる。更に、課税時期を含む年の前年の所得の金額が低い場合には営業権の価額をこの金額により評価することとされており、評価の安全性に配慮していることが認められ、当審判所も評価通達に定める方法を相当と認める。
 請求人らは、評価通達に定める営業権の評価方法は、その計算要素である1営業権の持続年数が異常に長いこと、2平均利益金額を求める期間が3年と短いこと、3総資産価額に乗ずる率が低いこと、4基準年利率を基とした複利年金現価率は妥当ではないことから、所要の補正を行った上で本件営業権の評価を行い、本件株式の時価を評価すると1株当たりの価額は1,817円となり、原処分庁算定の価額は時価を超えるから、本件の場合、評価通達により難い特別な事情がある旨主張する。しかしながら、本件営業権の評価に当たって、評価通達において定められた各計算要素について請求人らが主張する補正をすべき理由はなく、請求人らの主張する補正をして算出した価額が本件株式の時価であるとはいえない。したがって、評価通達の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情がある場合とはいえず、請求人らの主張には理由がない。

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請求人が相続により取得した取引相場のない株式は、「同族株主以外の株主等が取得した株式」には該当しないことから、配当還元方式で評価することはできないとした事例

平成23年9月28日裁決

《ポイント》
 本事例は、取引相場のない株式の評価に当たり、同族関係者の範囲について、法人税法施行令第4条第6項の規定の適用を受けることから、「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、評価会社であるJ社は、同族株主がおらず、また、J社の株主であるK社は請求人の同族関係者ではないから、請求人とその同族関係者の議決権割合が15%未満となるので、請求人が本件被相続人からの相続により取得したJ社株式(本件株式)は、配当還元方式により評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、まる1K社の設立経緯、資産内容、人的・物的実体及び株主総会や取締役会の開催状況からすると、K社の出資者がJ社の経営や意思決定に関心や興味を有していたとは考え難く、また、まる2K社の出資者は、いずれもJ社の役員等であり、J社を退社した後は、K社の出資者たる地位を失うことになっていたこと並びにK社の出資者及び出資の譲受人は本件被相続人にその決定権があったものと認められることからすると、K社の出資者がJ社の代表取締役であった本件被相続人の意に沿った対応をすることが容易に認められること、まる3そして、K社は、本件被相続人死亡後開催されたJ社の取締役を選任する重要なJ社の株主総会において、K社が所有しているJ社の株式に係る議決権を、K社の出資者でも役員でもない請求人(本件被相続人の妻)に委任していることからすれば、K社は本件被相続人に代表されるJ社の創業家の強い支配下にあり、K社の出資者は、同社の意思決定を、いずれも、本件被相続人及び請求人に代表されるJ社の創業者一族の意思に委ねていたものと認められるから、K社の株主総会等における議決権の行使についても、J社の創業者一族の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意していた者と認めるのが相当である。そうすると、請求人は、法人税法施行令第4条《同族関係者の範囲》第6項の規定により、K社の株主総会において全議決権を有し、かつ、K社の唯一の出資者であるとみなされることから、同条第3項により、K社を支配していることとなって、同条第2項により、K社は請求人と特殊関係にある法人に該当するので、請求人の同族関係者に該当することとなる。そうすると、J社における請求人とその同族関係者の議決権割合は15%以上となるから、本件株式を配当還元方式で評価することはできない。

《参照条文等》
 相続税法第22条
 法人税法施行令第4条第6項
 財産評価基本通達188

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成17年1月19日判決(訟月51巻10号2629頁)

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純資産価額の計算上、評価会社の資産・負債には、期限未到来のデリバティブ取引に係る債権・債務は計上できないとした事例

平成24年7月5日裁決

《ポイント》
 本事例は、評価会社が保有する期限未到来のデリバティブ取引に係る債権・債務の性質を明らかにした上で、同社の1株当たりの純資産価額の計算上、当該債権・債務を考慮することはできないと、初めて判断したものである。

《要旨》
 請求人は、贈与を受けた本件株式の評価に当たって、財産評価基本通達185《純資産価額》に定める純資産価額方式の計算上、本件株式の発行会社である本件評価会社が行っている、いわゆるスワップ取引及びオプション取引(本件各取引)のうち、直前期末現在において金利支払日又は権利行使期日が未到来の取引(本件未到来取引)に係る各取引額相当額を、本件評価会社の資産及び負債に計上すべきである旨主張する。
 しかしながら、純資産価額方式の計算上、「評価会社の各資産」とは、課税時期において現実に評価会社に帰属していると認められる金銭に見積もることができる具体的な経済的価値を認識できる全てのものをいうと解され、また、「評価会社の各負債」とは、課税時期までに債務が成立し、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しているものをいうと解されるところ、本件各取引は、各金利支払日が到来して、又は権利行使期日にオプションが行使されて初めて、取得する財物の価格より支払う対価の額が少なければ利益又は純資産として、その逆であれば損失又は負債として、個々の取引の経済的価値が認識されるものであることからすると、本件各取引は、本件評価会社が取得する資産が米ドルであることから、金利支払日又は権利行使期日が未到来の各取引についてその価値を認識しようとしても、その価値は、認識しようとした時点の為替レートに基づいて仮に決済又は取引が成立した結果の理論値(予測値)としていわば抽象的に認識されるにとどまるほかなく、具体的な経済的価値を認識した、あるいは、確実な債務であるということはできないから、本件株式の純資産価額の計算上、本件未到来取引に係る各取引額相当額を「評価会社の各資産」又は「評価会社の各負債」に計上することはできない。

《参照条文等》
 相続税法第13条第1項、第14条第1項、第22条

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「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達により、被相続人から土地を借り受けている同族法人の株式の評価上、純資産価額に計上される当該土地の価額の20%に相当する金額は、土地保有特定会社を判定する際の「土地等の価額」に含まれるとした事例

平成24年10月9日裁決

《ポイント》
 本事例は、「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達に定める自用地としての価額の20%相当額が、土地保有特定会社の判定の際の「土地等の価額」に含まれることを初めて判断したものである。

《要旨》
 請求人らは、借地権が設定されている土地について、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合には、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達(相当地代通達)の5《「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の借地権の価額》により、当該土地に係る借地権の価額は零として取り扱われることとなるから、同通達の8《「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価》及び「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達により、当該土地を借り受けている同族法人の株式の評価上、当該土地の価額の20%に相当する金額は、同法人の純資産価額に含められるとしても、それは借地権の価額ではなく、財産評価基本通達189《特定の評価会社の株式》の(3)のイに定める土地保有割合を算定する際の「土地等の価額」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、相当地代通達5及び8の取扱いは、借地権が設定されている土地を前提としており、設定された借地権の存在を否定することなく、課税の各場面における借地権の価額の多寡を定めているものであり、相当地代通達8により純資産価額に算入される自用地としての価額の20%に相当する金額を借地権以外の価額と解することはできず、また、当該20%に相当する金額を当該「土地等の価額」から除外するとの特段の定めもないことから、当該20%に相当する金額は、借地権の価額として当該「土地等の価額」に含まれるものと解するのが相当である。

《参照条文等》
 「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」5、8
 「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」

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相当の地代を支払っている場合の借地権は、贈与財産である株式の純資産価額の計算上、株式の発行会社の資産の部に算入するとした事例(平成24年分贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成27年3月25日裁決)

平成27年3月25日裁決

《ポイント》
 本事例は、同族会社に土地を貸し付けている当該同族会社の同族関係者が、当該同族会社の株式を贈与した場合においても、相当地代通達6の注書の適用があるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、実父(父H)から贈与により取得した同族会社(本件同族会社)の株式(本件株式)の評価に当たり、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60直資2-58ほか)(60年通達)の6の注書及び「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」(昭和43直資3-22ほか)は、いずれも相続税の課税上のみの取扱いであるから、20%の借地権相当額を本件同族会社の純資産価額に算入すべきではない旨主張する。
 しかしながら、60年通達の6の注書は、生前贈与の場合にも及ぼすべきであると考えられるところ、より一般的にいうなら、同族会社の株式を贈与する同族関係者からみて、相当程度年下の第1順位の推定相続人が受贈者である場合には、当該会社に借地権が設定されている土地の所有者との関係次第で、60年通達の注書の取扱いにより借地権相当額を当該会社の純資産価額に算入すべき場合があるということになる。本件においては、本件株式の贈与者である父Hが所有する土地を、相当の地代を収受して父Hが同族関係者となっている本件同族会社に貸し付けている状況において、本件株式を同人の実子である請求人に贈与していることから、本件株式の評価に当たり、借地権の価額を本件同族会社の純資産価額に算入することは相当である。

《参照条文等》
 「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60直資2-58ほか)
 「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」(昭和43直資3-22ほか)

《参考判決・裁決》
 福岡高裁宮崎支部平成19年2月2日判決(税資257号 順号10627)
 平成26年4月22日裁決(裁決事例集95)

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