税額控除等

課税仕入れ等の時期

  1. 仕入税額控除
    1. 課税仕入れ等の範囲
    2. 課税仕入れ等の時期(6件)
    3. 課税仕入れ等の税額の算出
    4. 仕入税額控除の不適用
    5. 簡易課税制度
  2. 貸倒れの場合の税額控除

消費税の課税仕入れの時期は、建物建築契約にあっては目的物たる建物の引渡日と、また、建物建設に関するコンサルタント契約にあっては役務の全部の提供を受けるのが完了した日と解するのが相当とされた事例

裁決事例集 No.58 - 276頁

 請求人は、本件課税期間に支払った建物建設工事に係る工事着手金及び当該建物建設工事に係るコンサルタント契約に基づいて支払った契約金等については、請求人において本件課税期間中に「建設仮勘定」に経理しており、このような経理を行った場合の消費税の課税仕入れの時期は当該建設仮勘定に経理した日と解すべきである旨主張する。
 しかしながら、請負契約の内容が建築工事等の物の引渡しを要するものであるときの課税仕入れを行った日とは、当該建築工事等の目的物を相手方から引渡しを受けた日と解すべきであり、また、請負契約の内容が設計、作業管理、その他の役務の提供を行うことを目的とするような物の引渡しを要しないものであるときの課税仕入れを行った日とは、当該請負契約で約した役務の全部の提供を受けるのが完了した日と解するのが相当である。
 本件建物建築工事の目的物たる建物の引渡しの日及び本件コンサルタント契約に基づく役務の全部の提供を受けるのが完了した日は、いずれも本件課税期間の翌課税期間に属する日と認められ、また、いずれの契約においても部分引渡しや報酬が役務の内容ごとに区分されその支払もそれぞれの部分ごとに完了した都度支払いをするなどとする契約も存しないことから、本件課税仕入れ額は本件課税期間に係る課税仕入れには該当しない。

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営業権の引渡しの日は、酒類の販売が可能となった酒類販売業免許の日とするのが相当とした事例

裁決事例集 No.60 - 594頁

 原処分庁は、請求人(コンビニエンスストア経営)が酒類小売販売の営業権を譲り受けた日は、営業権譲渡契約書に「営業譲渡期日は、酒類販売免許変更通知の日とする。」旨記載されていることから、請求人が税務署長から通知を受けた平成9年12月17日となり、営業権の譲り受けに係る消費税は、同日の属する課税期間の課税仕入れとなる旨主張する。
 しかしながら、[1]営業権の譲渡者は、請求人が経営する店舗内で平成9年12月31日まで酒類を販売していたこと、[2]請求人が営業権を資産に計上した日及び営業権の譲渡者が営業権の譲渡対価を雑収入に計上した日は、いずれも平成10年1月1日以後であること、[3]店舗内の酒類の在庫の引継ぎは平成10年1月1日に行われていることが認められるから、営業権の譲渡者が店舗内で酒類の販売をしていた平成9年12月31日以前に営業権の引渡しがあったとすることは相当でなく、請求人による酒類の販売が可能となった酒類販売業免許の日である平成10年1月1日を本件営業権の引渡しの日とするのが相当である。

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販売代理店契約の解除に伴う在庫品の返品に係る消費税額を、課税仕入れ等の消費税額から控除すべき時期は、代理店契約の末日を含む課税期間であるとした事例

裁決事例集 No.61 - 682頁

 請求人は、本件課税期間末日に終了した代理店契約に係る期末在庫品を仕入先へ引き渡したのは翌課税期間であるから、消費税等の計算に当たり、本件在庫品の課税仕入れに係る消費税額を翌課税期間の課税仕入れ等に係る消費税額から控除すべきである旨主張する。
 しかしながら、本件在庫品の引き渡し時期を請求人と仕入先とで定めた規定はないことから、本件代理店契約に基づく仕入れ取引の内容、請求人の経理処理、倉庫会社に対する荷渡指図書等関係資料、関係者の認識等を総合的に審理した結果、本件課税期間末日の午後12時の時点において本件代理店契約、保険契約等が終了し、同時に本件在庫品の所有権も相手方に移転したと解するのが相当であり、本件課税期間において本件在庫品に係る消費税額を課税仕入れ等に係る消費税額から控除すべきである。

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建物等の譲渡に当たって当事者間で引渡しの日を定めていたとしても、当該建物等の売買契約を締結した日に代金決済及び所有権移転登記等が完了しているのであれば、当該売買契約を締結した日が当該建物等の譲渡の時期であるとした事例

裁決事例集 No.73 - 519頁

 請求人は、本件建物等の課税仕入れの時期について、1消費税法基本通達9−1−13ただし書において、事業者が建物その他の固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときはこれを認める旨定めていること及び2ビジネスホテル業は関係諸官庁の営業許可なしでは営業できないことから、本件建物等の引渡しの日については、本件確認書及び本件合意書で定めた日である旨主張する。
 しかしながら、1請求人は、本件売買契約書を締結した日に本件不動産(上記建物及びその敷地)の売買代金の全額を売主へ支払い、同日、所有権移転登記を了しているばかりか、本件不動産の購入資金の借入先(債権者)との間において債務者及び根抵当権設定者をいずれも請求人とする根抵当権設定契約書兼代物弁済予約証書を作成するとともに本件不動産に根抵当権の設定登記を行っていることが認められること及び2本件売買契約書、本件確認書及び本件合意書のいずれにも旅館業の営業許可が下りなければ契約の効力が生じないとする旨の約定がなく、本件売買契約が旅館業の営業許可を受けることを停止条件とする契約であるとは認められないことから、本件不動産の引渡しは、本件売買契約書の契約日に完了していると認めるのが相当である。
 また、本件合意書記載の合意が当事者間において真意でなされたとしても、前述した本件事実関係の下においては、本件不動産は、本件合意書に記載された引渡しの期日よりも前に引渡しが完了していることが認められることから、本件のように引渡しの日について合理的と認められる日が存在している場合には、本件不動産の引渡しの時期についての当事者間の合意があるからといって課税仕入れの時期を左右し得ないものというべきである。

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請求人が取得したマンションの売買代金の支払日、所有権移転登記をした日、抵当権が設定された日、合鍵等の引渡しの日等によれば、当該マンションは本件課税期間より前に引渡しを受けたものと認められるから、当該マンションの取得は本件課税期間の課税仕入れには該当しないと判断した事例

平成22年11月8日裁決

 事業者が、国内において課税仕入れ等を行った場合は、当該課税仕入れ等を行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除対象仕入税額を控除するところ、不動産に係る課税仕入れを行った日については、引渡しのあった日と解するのが相当であり、引渡しの有無については、登記の有無、代金の支払状況などの客観的な取引実態によって引渡しが完了し、その取引に係る経済的効果が実現しているか否かにより判断すべきであるところ、請求人が取得したマンションの売買代金の支払日、売買を原因として所有権移転登記をした日、抵当権が設定された日、合鍵等の引渡しの日等によれば、当該マンションは本件課税期間より前の平成19年9月28日に引渡しを受けたものと認められるから、当該マンションの取得は本件課税期間の課税仕入れには該当しない。

《参照条文等》
 消費税法第30条第1項、第2項
 消費税法基本通達9−1−2、9−1−13、11−3−1

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請求人が取得した賃貸用建物は課税期間内に引渡しを受けているから消費税の仕入税額控除を認めるべきであるとした事例

平成24年7月24日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人が注文者として締結した工事請負契約により取得した賃貸用建物(本件建物)は、本件課税期間内には共同住宅として使用できる状態にはなく、工事が完了していたとは認められないから、請求人が本件建物の引渡しを受けた日の属する課税期間は本件課税期間ではないこととなり、本件建物の取得費用に係る消費税額を本件課税期間の消費税の計算において課税仕入れに係る消費税額として控除することはできない旨主張する。
 しかしながら、本件課税期間内に本件建物の大部分は完成しており、請求人は、本件課税期間内に、まる1権利保全のために所有権保存登記をしていること、まる2金融機関との間で本件建物に抵当権を設定して自己の所有物として処分していること、まる3本件建物の工事請負業者に対し請負代金の全部の支払を終えたことなどを併せ考えれば、本件建物の工事に若干の工事が残存して未完成であったとしても、本件課税期間内に本件建物が完成し引渡しがあったものと同視できるから、請求人が本件建物の引渡しを受けた日の属する課税期間は、本件課税期間であると認めるのが相当である。

《参照条文等》
 消費税法第30条第1項

《参考判決・裁決》
 東京地裁昭和55年6月12日判決(判タ428号208頁)

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