総則

送達の方法

  1. 納付義務の承継
  2. 災害等による期限の延長
  3. 送達
    1. 送達の場所
    2. 受取人
    3. 送達の方法(5件)
    4. 送達の推定
    5. その他
  4. 申請書の提出

郵便局に郵便物を留め置く手続をしている場合の送達の時期は、当該郵便局に郵便物が留め置かれた時に送達の効力が生ずるとした事例

裁決事例集 No.54 - 1頁

 国税通則法第77条第2項において審査請求をすることができる期間は、「異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内にしなければならない」旨規定されており、「送達があった日」とは、書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入り、その内容を了知し得る状態になったと認められる時をいうと解されており、送達を受けるべき者が現実に書類の内容を了知していなくても送達の効力が生じることとなる。
 郵便規則第90条によれば、郵便物の受取人があらかじめ当該配達を受け持つ郵便局に旅行その他の事由によって不在となる期間(30日を限度とする。)を届け出ている場合には、その期間の郵便物を当該郵便局に留め置くことになっているものの、受取人が当該郵便局に出向けばいつでも自由に受領できる取扱いとなっており、当該郵便局に郵便物が留め置きされた時以後、その郵便物は受取人がいつでも受領可能であることからして、受取人は当該郵便物をその支配下に置き、その内容を了知し得る状態になったものと認められるから、郵便物が郵便局に留め置かれた時に送達の効力が生ずるものと解される。

トップに戻る

住民票を異動したり、郵便受箱を撤去するなどした行為は、通知書の送達を回避することを意図してなされたものであり、請求人の住所は本件住所にあるとして、差置送達の効力を認めた事例

裁決事例集 No.54 - 4頁

 請求人は、平成8年3月14日にその住所を移転しており、本件通知書が送達された同月15日においては本件住所に請求人の住所はなかったのであるから、本件通知書の送達は無効である旨主張する。
 しかしながら、住所がどこにあるかについては、その場所に生活の本拠と認められるべき実質的な生活関係があるか否かによって判断すべきであるところ、具体的には、その者及び配偶者等家族構成員らの生活状況、その住所への移転目的その他の諸事情を総合的に勘案し、社会通念に照らして判断するのが相当である。本件は、請求人が住民票を異動したり、郵便受箱を撤去するなどした行為は、本件通知書の送達を回避することを意図してなされたものと認められ、請求人の住所は本件住所にあると認めるのが相当である。また、本件通知書は、透明なビニールケースに入れて密封した上、門柱に貼り付ける方法により送達されていることが認められるところ、同通知書はこれをもって請求人の了知し得べき状態に置かれたものとみるのが相当であり、かつ、同時点をもってその効力が生じたものと判断される。
 以上のことから、本件通知書は適法に送達されており、有効であると認められる。

トップに戻る

外国人であり日本で翻訳・通訳業に従事する請求人について、納税地特定のための住所の認定、各課税通知書及び繰上請求書を差置送達の方法で送達したことの適法性、請求人への繰上請求の適法性、差押処分の適法性などについて、請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.71 - 1頁

 本件においては、(1)請求人は、本件各課税処分を免れるために一時的に外国人登録上の住所のみを変更していたと推認することができ、請求人が本件住所以外に転居したとは認められないから、請求人の生活の本拠は本件住所であると認められ、(2)請求人が出国して本件住所にいなかったとしても、本件各課税通知書及び本件繰上請求書は、請求人の納税地である本件住所に差置送達されたことで請求人の支配下に入ったものといえるから差置送達は適法である、(3)調査担当職員が平成16年12月に請求人に対して調査額の提示を行った後に、請求人が、[1]原処分庁への連絡を絶って外国人登録を本件住所から他へ移し友人宅などを転々と移動していること、[2]請求人名義の銀行口座から短期間に多額の預金を引き出していること、[3]本件住所の不動産の請求人の区分所有権を弟名義に変更していることなどは、請求人が本件課税通知書に係る滞納処分の執行を免れるために行ったものであると認められ、またこれらの事実から、納期限まで待っていては、国税債権の満足な実現を図られないおそれがあり、国税通則法第38条第1項第5号に該当する、[4]国税徴収法第144条に規定する同居の親族でない者を捜索に立ち会わせたこと及び本件捜索調書謄本の納期限と本件繰上請求書に記載された納期限が異なっていたとしても、本件差押処分は、本件捜索により判明した資料に基づいて行われたものではなく、本件捜索以前に既に原処分庁が把握していた資料に基づいて行われたものであるから、本件捜索の適否が本件差押処分の適法性に影響を与えるものではない。

トップに戻る

原処分庁に所属する職員が原処分に係る各通知書を歯科医院を営む請求人の自宅兼事業所に持参した際に、請求人が診療中であり対応することができないとして各通知書を受け取らなかった事情は、国税通則法第12条《書類の送達》第5項第2号に規定する「正当な理由」には該当しないとした事例

令和2年12月21日裁決

《ポイント》
 本事例は、国税通則法の送達に関する規定の趣旨を紐解き、その趣旨に照らせば、受送達者が診療中であったとしても、送達場所におり、原処分庁職員が交付送達のため来訪したことを現に認識していた場合には、(法が、その診療終了を待って出会送達をすることや、再度の送達を行うことまでを求めていると解することは困難であるとして)差置送達を行うことができると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、原処分庁に所属する職員が原処分に係る各通知書を自宅兼事業所に持参した際、歯科医師として診療中であり対応することができなかったから、国税通則法第12条《書類の送達》第5項第2号に規定する「正当な理由」に該当するため、原処分庁が差置送達を行ったことは同条に規定する差置送達の要件に該当しないから、原処分を取り消すべき違法がある旨主張する。
 しかしながら、差置送達は、書類の送達を受けるべき者等が送達すべき場所にいない場合、又はこれらの者が正当な理由がなく書類の受領を拒んだ場合に行うことができる送達方法であり、差置送達の制度が認められた趣旨に照らせば、請求人の診療中であるという事情は、国税通則法第12条第5項第2号に規定する「正当な理由」には該当しないと解すべきであるから、原処分庁による差置送達は法令上の要件を満たしたものであるから、原処分庁が差置送達を行ったことにつき、原処分を取り消すべき違法はない。

《参照条文等》
 国税通則法第12条第5項第2号

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成23年10月25日判決(税資261号順号11796)

トップに戻る

特定記録郵便により発送された処分に係る通知書は、配達完了の記録がされた日に納税者がその通知書を了知し得る客観的状態になり、送達されたものとなるとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・却下)

令和5年2月22日裁決

《ポイント》
 本事例は、処分に係る通知書が特定記録郵便により発送された場合には、その通知書は、その配達が完了した旨が記録された日に請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価でき、同日に送達されたと認められるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、原処分に係る通知書(本件通知書)を受け取った日からすれば、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間内にされたものである旨主張する。
 しかしながら、本件通知書は、特定記録郵便により請求人の住所に発送されているところ、本件通知書が返戻された事実はなく、当審判所の調査の結果によっても本件通知書が誤配達されたこと等をうかがわせる証拠は見当たらないことからすると、その配達が完了した旨が記録された日に送達を受けるべき請求人の住所に設置された郵便受箱に配達されたと認められ、同日に請求人の支配下に入ってその内容を了知し得る状態に置かれたものと評価できるから、本件通知書は、同日に請求人に送達されたと認められる。そうすると、本審査請求は、本件通知書が送達された日の翌日から起算して3月を経過した後にされたものであり、また、請求人が法定の不服申立期間内に本審査請求をしなかったことについて、国税通則法第77条《不服申立期間》第1項ただし書に規定する正当な理由があるといえる事情は認められないから、本審査請求は、不服申立てをすることができる期間を経過した後にされた不適法なものである。

《参照条文等》
 国税通則法第12条第1項、第77条第1項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和52年2月17日第一小法廷判決(民集31巻1号50頁)
 最高裁昭和55年1月11日第三小法廷判決(税資110号1頁)
 最高裁平成3年12月12日第一小法廷判決(税資187号334頁)

トップに戻る