収入金額

譲渡所得

  1. 資産の譲渡
  2. 収入すべき時期
  3. 収入金額の計算
    1. 配当所得
    2. 不動産所得
    3. 事業所得
    4. 給与所得
    5. 譲渡所得(29件)
    6. 一時所得
    7. 雑所得

現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、法人の受入価額ではなく出資による取得株式の時価であるとした事例

裁決事例集 No.2 - 8頁

 現物出資は金銭に代えて現物を提供して株式ないしは持分を得るという有償双務契約による譲渡であって、譲渡所得計算上の収入金額は、その資産の現物出資により取得した株式ないしは持分を時価とするのが相当である。

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仮換地指定変更を目的とする交換契約に基づき収受した金銭に係る所得は一時所得ではなく譲渡所得であるとした事例

裁決事例集 No.7 - 1頁

 請求人と相手方との交換契約はその後仮換地の指定変更があったので、実質上は、仮換地指定後の土地の交換であると認められる。したがって、請求人が仮換地の指定変更に伴い相手方から収受した金銭については、名目上整地費、擁壁費となっていても、その実質は、交換差金と認められ、その所得は譲渡所得に該当するものと解するのが相当である。

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建物の建築代金の支払に代えて引き渡した土地の譲渡価額について、請負契約書の金額によらず鑑定評価額によるのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.13 - 55頁

 本件土地は、建物建築の請負代金の現物決済として支払に充てられたものであるが、契約当時当事者双方とも土地価額の動向が予知できず、その現物決済として予定していた土地を当初予定の価額で他に転売することが不可能なことが明らかとなったので、請負人は請負に係る建物の質を下げて工事を施行せざるを得なかった事情があり、当該建物の新築工事は当初見積りのとおり施行されているとは認められない。したがって、当該現物決済に係る土地の譲渡所得の金額の計算上収入金額とすべき金額を請負契約書に記載された請負代金によるべきであるとした原処分は不相当であり、その金額は請求人が取得した建物の鑑定評価額によることが相当である。

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山林を造成して譲渡した場合の譲渡所得の収入金額とすべき金額の算定に当たり、共同造成地内の山林の売買価額を基礎とすべきであるとした事例

裁決事例集 No.18 - 49頁

 長期間所有していた山林を宅地造成して譲渡した場合の譲渡所得の収入金額とすべき宅地造成着手前の土地の価額について、原処分においては、当該土地の近隣地域等に所在する土地の通常の取引価額に各種の地域要因等を参酌して算定(1平方メートル当たり3,333円)しているが、本件の場合は、本件共同造成地内の山林を宅地造成着手直前に売買した事例があるので、これにより、当該土地の価額を算定(1平方メートル当たり3,939円)することが合理的である。

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固定資産を交換した場合の譲渡収入金額について、当該取得資産の状況類似地域における売買実例価額を基として算定すべきものであるとした事例

裁決事例集 No.20 - 116頁

 固定資産の交換は資産の譲渡に該当し、その譲渡益は譲渡所得の課税対象となり、この場合の収入金額は、交換により取得した資産の価額によるべきところ、その価額は所得税法第36条第2項の規定においてその資産の交換の時における価額とされており、その交換における価額とは、通常の売買価額、言い換えれば客観的交換価額をいうものと解される。本件の場合、交換先における交換取得土地の取得価額については、通常の取引価額よりある程度の買進みがあったと認められるので、本件譲渡収入金額は、交換先における交換取得土地の取得価額によるのは相当でなく、当該土地と価格事情がおおむね同一と認められる状況類似地域における当該年中の売買実例7件の売買価額の平均値に、本件交換の条件として交換先に負担させた土地埋立費用を交換差金と認めてこれを加算した価額とするのが相当である。

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借地権の無償返還と当該借地権に係る土地の低廉取得とはそれぞれの時価相当額による有償取引であるとした事例

裁決事例集 No.21 - 35頁

 請求人が、借地上にあった請求人の所有に係る本件貸家を地主に譲渡するとともに、本件借地権を返還し、他方、地主から本件譲受土地等を時価よりも相当低い価額で譲り受けた取引は、[1]双方の取引が同一時期に行われていること、[2]請求人が、本件借地権を無償で返還する特別な理由がないこと、[3]請求人は本件譲受土地に借地権を有していないにもかかわらず、その譲受価額は借地権を有していたと同様な低価額となっているところから、本件双方の取引は別個の贈与取引ではなく、それぞれの土地に係る借地権の価額相当額を相互に相殺した有償取引であると認めるのが相当である。

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借地人以外の第三者に対する貸地の譲渡が著しく低い価額の対価による譲渡に該当するものではないとした事例

裁決事例集 No.23 - 72頁

 借地人以外の第三者が貸地の底地を買うことは、貸地の地代収受権を取得することにほかならないものであり、投資利回りの点からも有利でないことから取引事例は極めて少なく、底地の価額は低くなるものであるにもかかわらず、原処分庁がこれを借地人が底地を取得する場合と同様に考えて一般的な借地権割合を基にその底地価額を評価したことは適当でなく、借地人でない第三者に底地を譲渡する場合に通常成立すると認められる底地価額として不動産鑑定士が評価した価額を時価とするのが適当であって、所得税法第59条第1項第2号の規定に該当するものであるとした原処分は相当でない。

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本件譲渡は、中間譲受人に利得させることを意図した不自然なものであり、実質的には、請求人から最終譲受人に対し直接なされたものであるとした事例

裁決事例集 No.27 - 88頁

 保証債務に係る求償権を行使するため、その求償先である中間譲受人に相応の売却利益を得させる必要上、本件資産を中間譲受人に譲渡したと請求人は主張するが、[1]請求人自らが売買の一切を実行し、同人が得ることが可能な売却利益をあえて求償権の行使を前提として債務者を中間譲受人として介在させることにより債務者にも得させるという不自然なものであること及び[2]本件資産の譲渡代金は、最終譲受人から直接請求人が受け取っており中間譲受人との間で何らの清算もされていないこと等から、本件資産は請求人から直接最終譲受人に譲渡されたものと認められる。

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本件譲渡は、中間譲受人が介在した事実はなく、被相続人から最終譲受人に対し、直接なされたものであるとした事例

裁決事例集 No.30 - 23頁

 請求人は、本件資産は、被相続人が中間譲受人に譲渡したもので、最終譲受人に譲渡したものではないと主張するが、最終譲受人が、買受代金として支払った金員を全額被相続人が収受していること及び最終譲受人に対して、被相続人の都合で売主を中間譲受人とした旨の念書が差し入れられていること等から、本件資産は、被相続人が直接最終譲受人に譲渡したものである。

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買主が売主に交付する金銭の額と買主が負担する売主の譲渡所得税相当額との合計額をもって土地の売買価額とする旨の特約条項付の売買契約に係る「売買価額」を一定の算式により計算し、その計算後の価額が著しく低い価額の対価の譲渡に該当するとした事例

裁決事例集 No.39 - 18頁

 買主が売主に交付する金銭の額と買主が負担する売主の譲渡所得税相当額との合計額をもって土地の売買価額とする旨の特約条項が付されている売買契約に係る当該譲渡資産の売買価額及び売主の短期譲渡所得の譲渡所得税額は、次の算式により計算される。
売買価格=交付する金銭の額+譲渡所得税額‥‥‥‥‥‥‥‥式1
譲渡所得税額=(売買価格−取得額−譲渡経費)×税率‥‥‥式2
式1を式2に代入すると、
譲渡所得税額=

交付する金銭の額−取得額−譲渡経費×税率‥式3
1−税率

 本件の場合、交付する金銭の額が取得費に満たないところから、式3の譲渡所得税額がマイナスとなり、交付する金銭の額に加算すべき金額と請求人が納付することとなる譲渡所得税額とが一致する数値は存在しないこととなる。
 結局、式1の交付する金銭の額7,700,000円に加算すべき金額は零という結果になるから、本件土地の売買価額は、交付する金銭の額の7,700,000円ということになる。
 他方、買主は、本件契約の日の3日後に、第三者に対し18,000,000円で本件土地を転売しており、その転売価額には特別な条件が付されているとは認められないこと等から、当該転売価額は、本件土地の客観的な交換価値を示すものということができ、本件土地の時価は、18,000,000円と認められる。
 そうすると、本件土地の売買価額は、7,700,000円であり、その結果、当該売買価額は、時価18,000,000円の2分の1未満となるから、本件譲渡は、著しく低い価額の対価による譲渡に該当する。したがって、所得税法第59条第1項の低額譲渡の規定を適用した原処分は、相当である。

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1. 現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、会社が所有する土地の価額は相続税評価額ではなく通常取引される価額によるべきであるとした事例2. 現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、法人税等の税額に相当する金額を控除すべきでないとした事例

裁決事例集 No.41 - 53頁

  1.  現物出資により取得した出資の価額を相続税評価通達に定める純資産価額方式に準じて算定する場合、その算定の基礎となる会社が所有する土地の価額は、相続税評価額ではなく通常取引される価額によるべきである。
  2.  現物出資はもともと会社の事業活動の継続を前提として行われるのであるから、現物出資により取得した資産の価額を純資産価額方式で算定する場合、相続税評価通達186−2に定める「法人税等の税額に相当する金額」は控除すべきではない。

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譲渡収入金額を底地部分と権利部分にあん分する場合の更地価額について、売買契約が解除され成立していない契約の契約金額によることは適当でないとした事例

裁決事例集 No.41 - 103頁

 譲渡収入金額のあん分の基礎となる底地割合について、請求人は、本件土地の取得(昭和62年9月)後2月経過後に締結した売買契約金額を更地価額として算定した割合を基とすべきであると主張するが、[1]当該売買契約は解除され成立していないこと、また[2]当該契約金額は本件土地を取得した後2月後の価額であるから本件土地の取得時における更地価額と認めるのは適当ではない。原処分庁が更地価額として採用した鑑定評価額は、請求人が本件土地の取得資金を借り入れる際に鑑定したもので、その鑑定に至った事情からみても当該鑑定価額を本件土地の更地価額と認めるのが相当である。

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現物出資により取得した出資の価額を純資産価額方式で算定する場合、法人税等の税額に相当する金額を控除すべきでないとした事例

裁決事例集 No.44 - 84頁

 譲渡所得の基因となる資産の現物出資により取得した株式等の評価は、現物出資が会社の事業活動の継続を前提としている以上、相続という包括的、かつ、無償な財産の承継を課税対象とするという相続税法における評価ではなく、現物出資した資産の評価額から、当該価額と会社の受入価額(帳簿価額)との評価差益に対する法人税等相当額を控除しない純資産価額によるのが相当である。

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請求人は、乙農地についてはB女の所有する丁農地と等価交換したものであると主張するが、実際は、交換取引が存在しないから、所得税法第58条の規定を適用することはできないとした事例

裁決事例集 No.44 - 181頁

 請求人は、請求人所有の甲農地を乙農地と丙農地に分筆して、丙農地についてはC男に譲渡し、乙農地についてはB女の所有する丁農地と等価交換し、その後、B女が交換により取得した乙農地をC男に譲渡したものであると主張するが、[1]各譲渡代金の決済状況、[2]各関係人の答述、[3]仲介人D男の所有する各契約書等のメモ書、[4]農地法及び登記簿上の関係書類等を総合すると、実際は、請求人が甲農地をC男に譲渡し、B女から丁農地を譲り受けたものと認められ乙農地と丁農地の交換取引は存在しない虚偽の取引であるから、所得税法第58条の規定を適用することはできない。

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本件有限会社に対する上場会社株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、その出資により取得した出資持分の価額であり、この価額は、本件有限会社の状況等に照らし、純資産価額によって評価するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.47 - 105頁

 本件有限会社に対する上場会社株式の現物出資に係る譲渡所得の収入金額について、請求人は、本件現物出資により取得した出資持分の価額については、[1]収益力を基準とし財産評価通達に定める類似業種比準方式に準じて評価すべきで、[2]仮に、原処分庁が主張するように、純資産価額によって評価するとしても、課税時期において時価に評価換えした価額と帳簿価額との評価差額に対する法人税等相当額を控除すべきであり、更に、[3]仮に、純資産価額(法人税等相当額を控除しない価額)によって評価するとしても、本件現物出資資産の時価を超える部分は、旧出資持分の含み益相当額であるから、所得税法施行令第84条第1項の「株主等として与えられた場合」に該当するから、課税すべきでなく、上記時価を限度とすべきである旨主張する。
 しかしながら、現物出資に係る譲渡所得の収入金額は、所得税法第36条第2項の規定により、その出資により取得した出資持ち分の価額となるが、[1]本件有限会社の状況に照らし、本件取得持分の評価に当たっては、会社資産の持分としての性格に重きが置かれるべきであって、純資産価額によることが相当であり、[2]会社の事業活動の継続を前提にしていると認められる現物出資に係る出資等の評価においては、会社の解散を前提として算定される処分価額によることは合理性がなく、簿価との評価差額に対する法人税等相当額を控除することは相当でない。また、[3]「株主等として与えられた場合」とは、株主等として付与された新株引受権に基づいて株式を引き受けた場合であり、請求人は、本件現物出資資産の所有者たる地位に基づいて本件取得持分を与えられたものであるから、その価額の全部が収入金額に算入されるべきである。

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不動産の売買価格の認定において、原処分庁が根拠とした関係人の答述等は内容に不一致が多く信ぴょう性がないとし、請求人の答述を採用し、原処分の一部を取り消した事例

裁決事例集 No.48 - 54頁

 請求人らは、本件物件の売買価格につき、真正の価格は57,000,000円であり、売買契約書上は5,000,000円を圧縮して52,000,000,円としたものであり、本件物件の賃貸に係る預り敷金の買主の引継分1,640,000円を加算した58,640,000円が本件物件の譲渡収入金額であると主張し、原処分庁は、請求人側の仲介人であるDホームのEの申述、買主側の仲介人とされているが真実の譲受人と認めるB社のFの作成したメモ等から、売買価額は85,000,000円であり、預り敷金4,040,000円を加算した89,040,000円が譲渡収入金額であると主張する。
 DホームのEは、売主側の仲介人であるにもかかわらず、その答述はあいまい、かつ、一貫性を欠いており、売買において主要な役割を果たしたB社のFのみが取引経緯につき明確な答述をし、同人のメモには売買価額が85,000,000円と記載されている。
 しかし、本件物件の実際の買主は売買契約書上のNではなく、B社のTと認められるところ、Fは、本件取引の架空の中間譲渡人Nを介在させたり、その後所在不明であるなど、Fの答述は信ぴょう性を欠き採用できない。また、売買代金の決済として85,000,000円を支払ったとする証拠書類は何ら存在せず、Fのメモも証拠として採用できない。
 したがって、本件物件の売買価額は、請求人の答述した57,000,000円と認定せざるを得ず、また、本件物件の譲渡に伴って最終買主に引き継がれた預り敷金の額は1,640,000円と認められるから、これらの合計58,640,000円が譲渡収入金額と認定される。

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本件土地について、賃貸借契約時に受領した金員は、借地権設定の対価ではなく、敷金であり、譲渡の和解時に土地の対価の一部に充当されたものであると認定した事例

裁決事例集 No.48 - 76頁

 請求人は、P地裁において、本件土地を8、000万円でGに譲渡する平成2年12月18日付の和解が成立したが、受領した金額は、本件土地を昭和53年にGに賃貸したときに借地権の対価として受け取った3,000万円を差し引いた5,000万円であるから、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円から3,000万円を控除した5,000万円であると主張するが、[1]昭和53年に作成された本件土地の賃貸借の覚書には敷金3,000万円を支払い、後日の本件土地の売買代金に充当する旨記載されており、[2]Gが所有している領収書には敷金である旨記載されており、[3]これが権利金であることを示す証拠書類がないところから、昭和53年に受領した3,000万円は借地権の設定の対価としての権利金とは認められず、敷金であったと認められるので、本件土地の譲渡収入金額は8,000万円である。

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不動産の譲渡について、中間譲渡人は存在せず、請求人から直接所有権移転登記上の譲受人に譲渡されたものであるとして、譲渡価額を認定した事例

裁決事例集 No.48 - 88頁

 請求人は、本件不動産はHに譲渡したものであり、Hが所有権移転登記上の譲受人であるK株式会社に譲渡したものであると主張するが、[1]請求人が売却したと主張するHは所在が不明であること、[2]K株式会社の担当者は、本件不動産の売買には請求人が立ち会っており、Hを知らないと申述していること、[3]K株式会社は、本件不動産の取得代金を小切手で支払っており、当該小切手を現金化したのは、裏書人名、現金の使途及び預金等からみて請求人であると認められることから、本件不動産は請求人から直接K株式会社に譲渡されたものと認められる。
 したがって、K株式会社の支払総額に基づき本件不動産の譲渡価額を認定すべきである。

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喫茶店を経営していた土地建物の譲渡時に喫茶店の営業権等の売買も行われたとの請求人の主張に対し、営業権等は売買されていなかったと認定し、譲渡価額全額が土地建物の対価であるとした事例

裁決事例集 No.49 - 123頁

 請求人は、本件土地建物の所在地域においては、飲食店等を譲渡する場合、その土地建物のほかに営業権の存在を認め、付随して譲渡する慣習があるとし、本件土地建物は、いわゆる「居抜き」と呼ばれるそのままの状態で譲渡したもので、売買当事者は請求人の喫茶店の営業に営業権を認めて、営業権の対価を含めて売買をしたとし、本件土地建物は180,000,000円、営業権は50,000,000円、什器備品等は20,000,000円で売買したものであると主張する。
 しかしながら、売買価額が180,000,000円と記載された契約書(甲契約書)と同じく250,000,000円と記載された契約書(乙契約書)があるところ、次により、乙契約書に記載された内容が真正の契約と判断され、同契約書に記載された250,000,000円は、その全体が本件土地建物の譲渡の対価と推認される。

  1.  譲渡代金の総額が250,000,000円であるところ、甲契約書と営業権50,000,000円の領収書の金額を合計しても230,000,000円であるのに対し、乙契約書の金額は250,000,000円であること。
  2.  乙契約書には、売買物件として本件土地建物のみが表示されていること。
  3.  乙契約書が真正と異なるのであれば、仮に作り替えるという約束があったとしても、請求人が同契約書に署名押印することは不自然であること等。

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譲渡の対価として代替地及び建物の交付の要求に対し、譲受人は代替地を購入して建物を建築して渡していることから、譲渡収入の金額は、代替地と建物建築価額の合計額になるとした事例

裁決事例集 No.49 - 202頁

 請求人は、本件譲渡土地の収入金額は、M社に譲渡した際の売買契約書に記載した263,000,000円であり、この価額は不動産鑑定評価額271,841,000円に照らしおおむね妥当であるとし、また、代替資産の取得価額263,000,000円は、本件不動産鑑定評価額302,470,000円及び建物の建築価額97,349,000円の合計額399,810,000円に比べ開差はあるが、これは、取引上の駆け引きに請求人が秀でていたことによるものであり、正当な取引額というべきであると主張する。
 しかし、請求人は、本件譲渡において、代替地の取得を希望したが、代替地を自分で直接購入することはせず、また、交渉の過程で代替地の面積が本件譲渡土地の面積より不足する分を別途建物を建築して引き渡すことを条件とし、さらに、金銭の負担を一切しないで本件代替資産を取得しており、このことは、本件譲渡土地の譲渡の対価として本件代替資産を取得したことにほかならない。
 本件代替地の価額は、M社がB社から取得した価額455,300,000円とみるのが相当であり、本件建物の価額は設計料と建築費用の97,340,000円であるから、本件譲渡土地の譲渡収入金額は、この合計額の552,640,000円となる。

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本件土地の買主をG社、売買価額を17,130万円と認定した本件更正処分及び重加算税の賦課決定処分は適法であるとして、請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.50 - 35頁

 請求人は、本件土地を昭和62年10月8日Fに9,935万円で譲渡したにもかかわらず原処分庁は、請求人が同月31日G社に17,130万円で譲渡したとして収入金額を過大に認定しているので、本件更正処分及び重加算税の賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、原処分関係資料等及び本件土地取引に関与した関係者の答述によれば、次の事実が認められる。

  1.  昭和62年10月8日の売買契約書に記載されている本件土地の地積は、同月10日に実測した面積であり、また、Fは、本件土地に係る短期譲渡所得の申告をしているものの、ごく一部しか納税しておらず、行方不明であること。
  2.  [1]売主側の仲介業者であるLは、本件土地の隣接地が坪当たり1,100万円で売れたので売却を勧め、請求人の夫であるJとG社側の仲介業者であるEの間に入り4〜5回交渉の上、坪当たり1,000万円と決めた。[2]Eは、Lからの依頼によりG社が坪当たり1,000万円で本件土地を購入する旨の売買契約を昭和62年10月10日W銀行の応接室で締結し、G社の代表者○○から受領した小切手8,265万円と現金8,865万円をKに渡した。[3]売買契約に立ち会った銀行員であるAは、昭和62年9月下旬にJから坪当たり1,000万円で売却するので、根抵当権の解除と売買契約時の立会いの依頼があり、立ち会った際に勘定した現金は1〜2千万円程度の少額ではなく、小切手は預金、現金はJが持ち帰った旨答述していること。

 以上の事実によれば、請求人は、Fを本件土地の買主として介在させ、更に、Fを売主とする虚偽の売買契約書を作成したのであるから、請求人がG社に本件土地を17,130万円で譲渡したと認めるのが相当であるので、本件更正処分等及び重加算税の賦課決定処分は正当である。

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本件土地の譲渡収入金額は126,160千円であり、また、G社と本件土地の売買契約の事実がないので、当該契約解除に伴う違約金の支払いがないと認定した事例

裁決事例集 No.50 - 56頁

  1.  請求人は、F社から受領した123,372千円のうち、20,000千円はG社との売買契約の解除に伴う違約金であって、本件土地の譲渡収入金額ではない旨主張するが、[1]請求人とF社との間で作成された本件土地の売買価額を126,160千円とする契約書が存在すること、[2][1]の契約書は、請求人が内容を確認した上で署名・押印したものである旨答述していること、[3]請求人は、F社から123,372千円を受領したことを自認していること、[4]G社は、請求人から本件土地を購入したことも、違約金を受領したこともない旨答述していることから、本件土地の譲渡収入金額は126,160千円であり、また、G社と本件土地の売買契約の解除に伴う違約金の支払事実がないと認定して、分離短期譲渡所得金額を24,183千円とした本件更正処分は適法である。
  2.  原処分庁は、請求人が不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した借入金の支払利子のうち、平成2年4月に購入したP市S町所在の貸家(本件貸家)の使用開始までの期間の支払利子は、必要経費に算入できない旨主張するが、[1]請求人は、昭和62年頃から不動産賃貸業務を行っていること、[2]本件貸家の取得も不動産賃貸業務の遂行上行われていること、[3]借入金1億円は、本件貸家の取得のためと認められるので、本件貸家の使用開始までの支払利子5,630千円は、不動産所得の必要経費に算入するのが相当であり、不動産所得の金額は△5,766千円となる。
  3.  以上の結果、請求人の総所得金額は△1,504千円(事業所得4,262千円、不動産所得△5,766千円)となるから、課税短期譲渡所得金額は22,679千円となり、この金額は、本件更正処分額を下回るので、本件更正処分の一部を取り消すべきである。

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不動産の譲渡による収入金額を認定した事例

裁決事例集 No.54 - 162頁

 原処分庁は、請求人が譲受人から売買代金とされる4,500万円を受領していることなどから、本件物件の譲渡価額が4,500万円であるとし、一方、請求人は当該金額の中には、過去の譲受人及び同人の父に対する貸付金の一部の返済金(500万円)が含まれている旨主張するので、当審判所が、本件物件が譲渡されるに至った経緯等を調査したところによれば、請求人が主張するとおり、当該金額の中には、過去の金銭貸借等の精算部分が含まれていると解釈せざるを得ないことから、本件物件の譲渡価額は、4,000万円であるとするのが相当であって、4,500万円であるとした原処分は、その全部を取り消すのが相当である。

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本件土地の売買に際し、請求人は確定申告した売買代金以外にも金銭を受領した事実があるとしてなされた更正処分について、その事実を認めるに足りる証拠はないとして、その全部を取り消した事例

裁決事例集 No.54 - 180頁

 原処分庁は、本件土地の売買に関する契約書として、売買価額を25,113,000円とする契約書(以下「甲契約書」という。)、売買価額を45,180,000円とする契約書(以下「乙契約書」という。)及び売買価額を60,240,000円とする契約書の3通が存在するが、本件土地の買受人の代理人の答述及び売買代金の支払等が記録されたメモ等の内容から、本件土地の売買価額は乙契約書に基づく45,180,000円と認めるのが相当である旨主張する。
 しかしながら、次の事実等を照らし合わせると、乙契約書が真に本件土地の売買を表すものと認定することはできない。

  1.  乙契約書は、作成時期が明らかでない上、仲介手数料は異なった金額が二段書きされているなど不自然な箇所がある。
  2.  本件土地の買受人の代理人の答述等は、その時々により内容が異なっており信用ができず、また、提出されたメモ等の記載内容も真実のものか疑わしいと言わざるを得ない。
  3.  本件土地の売買代金について検証できる部分は、25,113,000円だけであり、現金で支払ったとされる20,067,000円については証拠がない。

 以上から、請求人が本件土地の売買に際し、甲契約書記載の売買代金以外の金銭を受領した事実は認められず、また、ほかにもその受領の事実を認めるに足りる証拠はないので、本件土地の譲渡価額は、請求人が確定申告した25,113,000円であると認められる。
 よって、請求人の平成2年分の分離短期譲渡所得の金額は、申告に係る分離短期譲渡所得の金額と同額であるから、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。

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土地建物の譲渡に際し、架空の中間譲渡人を介在させて譲渡収入金額の圧縮を計ったとして、最終買受人の購入価額を譲渡収入金額と認定した原処分を相当と認めた事例

裁決事例集 No.55 - 108頁

 請求人は、本件土地建物を14,000,000円でG社に譲渡したものであり、さらに、G社がSに33,000,000円で譲渡したものである旨主張するが、[1]G社に譲渡したとする売買契約書は、後日、契約日付をさかのぼって作成されたものと認められること、[2]請求人がSから33,000,000円を受領した事実は明らかであり、その受領した金銭の全額を新たに取得した土地建物の取得資金に充てていることが認められることから、請求人は、G社を本件土地建物の中間譲渡人として介在させて、実体のない取引を仮装したものであり、実質は請求人が本件土地建物を33,000,000円でSに譲渡したものと認められる。

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不動産の譲渡に際して収受した未経過固定資産税等相当額は、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるとした事例

裁決事例集 No.64 - 152頁

 請求人は、土地の譲渡に際して買受人から収受した、売却後の期間に対応する未経過固定資産税等相当額について、固定資産税等が期間コストの性質を有することを前提に、収受した金員は、実質的には立替金の清算であり、担税力を有するものではなく、このことは、未経過固定資産税等相当額について不当利得返還請求権が発生することからも裏付けられるとして、譲渡所得の総収入金額に算入すべきでない旨主張する。
 しかしながら、固定資産税等は、賦課期日である毎年1月1日現在において、固定資産台帳に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後に所有者の異動が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではないから、賦課期日後に当該資産の所有者となった者は、固定資産税等の納税義務を負担するものではなく、また、譲渡人は、譲受人に対して未経過固定資産税等の求償権を取得するものでもない。そうすると、未経過固定資産税等相当名目での金員の授受は、当事者間の契約によって初めて生じる債権債務関係に基づいてなされるものであり、その性質は売買条件の一つにほかならず立替金の清算とはいい得ない。
 また、当該資産の所有関係の変動が当事者間の契約に基づいて生じた場合に、固定資産税等名目の金員の授受について、何らの取決めもなされないのであれば、当事者の意思解釈としては、そのような名目での金銭のやり取りはしない趣旨であることが通常であると思われるから、そのような場合に、当事者の合理的意思解釈に反して、不当利得返還請求権が発生する余地はない一方、固定資産税等名目の金員の授受を行うとの取決めがなされるのであれば、その授受は、まさに契約に基づいて行われるものであるから、固定資産税等名目で譲渡の際に授受された金員の性質が不当利得返還請求権の性質を有することもありえない。

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等価交換でも譲渡所得が生じるとした上で、総収入金額に算入すべき金額を認定した事例

裁決事例集 No.65 - 190頁

 資産の譲渡とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいうものであり、売買のほか交換や代物弁済などによる資産の移転が含まれると解されるから、資産の交換は、譲渡所得の課税の対象となる。
 資産の交換の場合、交換により取得した資産の額、すなわち交換に係る対価の額と交換により譲渡した資産の取得の時の価額との差額が、当該譲渡資産を所有していた間に生じた値上がり益となるから、当該譲渡資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にその値上がり益について譲渡所得課税が行われるものであって、交換に係る対価が金銭であるかそれ以外のものであるかによってその結論が異なるものではない。
 本件土地改良区の換地設計基準により土地評価処理要領に定める本件評定価格は、近傍類似の取引価格及び地域における農業収益価格を調査・検討し、農家への意向調査などをした上で算定されており、さらに、土地改良区によって一筆ごとに現地確認などの調査をした上で各土地の等位格付が定められたものであることが認められるから、その価格算定要素及び土地の個別事情が考慮された客観的かつ具体的なものということができる。
 したがって、本件交換に係る譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額は、本件評定価格を基に算定するのが合理的である。

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外国市場で売却した株式代金の売却約定時の邦貨換算は同日の対顧客電信買相場(TTBレート)により、代金決済時の邦貨換算は先物為替予約レートによるのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 206頁

 L証券が本件株式を外国証券会社に保護預かりしていないこと等から判断すると、L証券は本件株式の売却について委託の取次ぎ、委託の媒介及び代理を行ったとは認められない。同証券は本件株式に係る売却代金の受渡日の為替予約と売却代金の国内受入れから請求人の銀行口座への振込み並びに源泉分離課税の手続及び実行の国内事務を行っていたに過ぎない。
 したがって、本件株式の売却に係る譲渡所得については、源泉分離課税の適用はできない。
 外貨で表示されている上場株式等の譲渡の対価の額を邦貨換算するには、外貨の所有者にとってその外貨によって取得しえる邦貨の額であるとするのが妥当であるから、売却約定日時点におけるTTBレートによるのが相当である。一方、代金決済においては、請求人は実際に先物為替予約レートによって換金し、邦貨を得ているのであるから当該レートにより換算するのが相当である。

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代償分割により、共同相続人の一人が所有する土地を他の相続人に交付したことによる譲渡所得の収入すべき金額は、その土地の時価によるべきとした事例

裁決事例集 No.68 - 92頁

 代償分割債務を履行するために資産を無償で交付した場合における譲渡所得の収入すべき金額は、その代償分割の目的となる資産を交付した時におけるその資産の価額によると解されるところ、その場合の価額は、その交付の時における客観的な交換価値、すなわち時価をいうものと解することが相当である。
 請求人は、地価の下落を理由として修正した路線価を基に、本件土地の管理状況及び他の相続人への金銭債務の支払額を考慮して本件土地の価額を算定しているが、その算定方法は客観的な時価を求めるにおいて合理的な根拠を欠くものである。また、原処分庁が採用した公示地及び基準地は、その用途地域、建ぺい率及び容積率は本件土地と異なっていることが認められるから、本件土地の価額を求めるための基礎としては合理性を欠くものである。
 よって、請求人及び原処分庁の主張する価額はいずれも時価であるということはできない。
 そこで、当審判所が、取引内容が明確で、かつ、資料の正確性が確保されている3取引事例を選定し、これに相当と認められる不動産鑑定評価基準及び土地価格比準表等を参考として、不動産鑑定評価における取引事例比較法と同様の手法により価格を試算し、これらを平均した金額は本件土地の譲渡時における価額と認められるところ、当該価額を基に本件譲渡所得の金額を計算すると、本件更正処分の額を上回るので、本件更正処分は適法である。

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