申告及び納付

申告

  1. 申告(4件)
  2. 更正の請求の特則
  3. 連帯納付義務

法定相続人である請求人が、自己のために相続の開始があったことを知った日は、遺留分減殺請求をした日ではなく、被相続人の死亡を知った日であるとした事例

裁決事例集 No.44 - 296頁

 請求人の場合、相続の開始があったことを知った日は平成2年7月8日の被相続人が死亡した日であり、また、同年10月29日に遺留分減殺請求権を行使し、同年11月28日には遺産分割の協議が成立するなどしており、遺産分割協議の成立後、法定申告期限までの期間は、一般的な相続税の申告に必要な準備期間に比し著しく短いとは認められず、法定申告期限である平成3年1月8日までに相続税の申告をすることが不可能であるとはいえない。

トップに戻る

相続人以外の者が市街化調整区域内の農地の特定遺贈を受けた場合において、受遺者の責めに帰さない事情により当該農地が非農地化されたときには、農地法上の許可を受けていなくても、非農地となった時点において所有権移転の効力が生ずるというべきであるから、受遺者については、その非農地化の事実を知った日をもって相続税法第27条第1項に規定する「相続開始があったことを知った日」と解すべきであるとした事例

裁決事例集 No.61 - 604頁

 農地法上の許可等は法定条件であるとはいえ、農地の場合、農地法上の許可等のない限り、所有権移転の効力は生じないのであるから、この意味においては、停止条件付遺贈と同様に考えることができるのであって、本件遺贈は、当該条件が成就したときからその効力が生じるというべきである。
 遺贈の目的である土地が農地であるか否かは、現況により判断すべきであることからすれば、少なくとも受遺者の責めに帰さない事情により非農地となった以上、農地法上の許可等を受けていなくても、非農地となった時に所有権移転の効力が生ずるというべきであり、同法に、違反転用に対する処分が規定されているからといって、所有権移転の効力が否定されるものではない。
 本件の場合、客観的な使用状況に照らすと、遅くとも平成3年2月15日までには非農地になっていたと考えられ、その経緯からすると、同日に所有権移転の効力が生じたというべきである。
 そして、請求人は、平成3年10月には非農地化した事実を知ったのであるから、請求人について相続税法第27条第1項に規定する「相続開始があったことを知った日」は、平成3年10月となる。
 そうすると、本件決定処分は、国税通則法第70条第3項に違反し、違法である。

トップに戻る

被相続人の全財産を書面によらない死因贈与により取得したとする請求人の権利は、和解成立前においては、法定相続人から撤回される可能性が極めて高く、極めてぜい弱なものであったといえることから、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、和解により当該死因贈与契約の一部の履行が確定した日であると判断した事例

平成25年6月4日裁決

要旨
 原処分庁は、請求人と相続人との間に死因贈与(本件死因贈与)契約の効力に係る争いがあっても、相続税法上、租税債権の成立を妨げるものではなく、また、死因贈与の効力発生時期は贈与者の死亡時であり、死因贈与には民法第554条《死因贈与》により遺贈の規定が準用されることなどからすると、請求人が被相続人の死亡を知った日が、相続税法第27条《相続税の申告書》第1項に規定する「相続の開始があったことを知った日」であるので、請求人が提出した申告書(本件申告書)は期限後申告書である旨主張する。
 しかしながら、本件死因贈与は、書面によらないものとみるのが相当であり、書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは各当事者が自由に撤回することができる(民法第550条《書面によらない贈与の撤回》)ところ、実際、相続人は、請求人から相続人に対して被相続人の有していた預貯金の支払を求める訴訟(本件訴訟)において、本件死因贈与契約を撤回する旨主張していた。そうすると、本件訴訟に係る和解(本件和解(訴訟上の和解))の成立前の時点においては、被相続人の全財産を本件死因贈与により取得したとする請求人の権利は、極めてぜい弱なものであるといえることから、本件和解の成立前において請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったものとは認められない。そして、本件和解により、請求人は預金の一部についてのみ本件死因贈与により取得することとなったものであるところ、このことは、相続人が、被相続人がその全財産を請求人に死因贈与する旨の本件死因贈与契約について、その一部を撤回したものとみるのが相当であり、本件和解により、当該一部撤回後の本件死因贈与の履行が確定したと認めるのが相当である。したがって、請求人が自己のために相続の開始があったことを知ったのは、その履行が確定した本件和解の日というべきであるから、本件和解の日の翌日から10日以内に提出された本件申告書は、期限内申告書である。

《参照条文等》
 相続税法第27条
 民法第550条、第554条

《参考判決・裁決》
 大津地裁平成18年2月27日判決(税資256号順号10333)
 東京地裁昭和55年5月20日判決(裁Web)
 最高裁平成18年7月14日第二小法廷判決(裁Web)

トップに戻る

死因贈与契約に基づき権利を取得した請求人らが、自己のために相続の開始があったことを知った日は、「相続債権者・受遺者に対する債権申出催告の公告に係る請求申出期間満了日」ではなく、「被相続人の死亡を知った日」であるとした事例

令和2年12月14日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人らが被相続人と生前締結した死因贈与契約について、被相続人の相続開始日に、請求人らが死因贈与契約に基づく権利を取得することが確定していたので、請求人らが自己のために相続の開始があったことを知った日は、「(相続人が不存在であったために行われた相続財産管理人による)相続債権者及び受遺者への請求申出の催告に係る公告の請求申出期間満了日」ではなく、「被相続人の死亡を知った日」であるから、請求人らが提出した相続税の申告書は期限後申告書であるとしたものである。

《要旨》
 請求人らは、被相続人と生前締結した死因贈与契約について、相続人不存在の場合、相続債権者・受遺者に対する債権申出催告の公告に係る請求申出期間満了日以前は、当該契約に基づく権利は未確定であり、相続税法第27条《相続税の申告書》第1項に規定する「その相続の開始があったことを知った日」は当該催告期間満了日となるから、その翌日から10月を経過する日までに提出した相続税の申告書は期限内申告書である旨主張する。
 しかしながら、請求人らは、被相続人に係る相続開始日に、死因贈与契約に基づく権利を取得することが確定し、自己のために相続開始があったことを知ったのであるから、被相続人の死亡を知った日の翌日から10月を経過する日までに相続税の申告書を提出しなければならなかったところ、当該経過する日までに相続税の申告書を提出しなかったのであるから、請求人らが提出した相続税の申告書は期限後申告書である。

《参照条文等》
 相続税法第27条

《参考判決・裁決》
 大阪高裁平成5年11月19日判決(訟務月報41巻3号449頁)
 平成25年6月4日裁決(裁決事例集 No.91)

トップに戻る