申告及び納付

更正の請求の特則

  1. 申告
  2. 更正の請求の特則(12件)
  3. 連帯納付義務

相続税法第32条第3号の「減殺の請求があったことを知った日」とは減殺の請求が調停、判決等で解決した場合にはその解決した日とした事例

裁決事例集 No.11 - 67頁

 相続税法第32条第3号に掲げる「遺留分による減殺の請求があったこと」について、遺留分権利者が受贈者に対し減殺の請求を行えば足りると解すると受贈者が直ちにその請求に応じた場合はともかく、相手方がその請求に応じない場合には、その争いのため更正の請求の期間の制限を超えることによって、同号の適用の余地がなくなる場合が生ずることとなる。
 同法第32条は一たび確定した課税価格等が新たに生じた事由に基づき過大となった者に更正の余地を与えようとする特別規定であることから、減殺の請求が調停、判決等によって解決した場合にはその調停等の時を受贈者が更正の請求ができる期間の始期と解するのが相当である。

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遺産分割に係る訴訟上の和解が成立した場合において、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、当事者が合意して和解が成立した日と解するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.56 - 389頁

 請求人は、遺産分割に係る訴訟上の和解が成立した場合において、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、各当事者に対する和解調書の送達日であるから、その翌日から4月以内にした本件更正の請求は適法である旨主張する。
 しかしながら、訴訟上の和解とは、民事訴訟の継続中に裁判所で当事者が訴訟物である権利関係の主張について相互に譲歩することにより、訴訟を終了させることを約する民事訴訟法上の合意をいい、当事者双方が裁判官の面前で和解条項を確認し、これを双方が受け入れて、初めて成立するものである。そして、訴訟上の和解が成立すれば、これを調書に記載しなければならず、調書が作成されたときには確定判決と同一の効力が発生し、調書作成前に当事者が未だ調書が作成されていないことを理由に和解の効力発生前であるとして和解内容を変更することは許されていない。また、当事者に対する調書の正本の送達が意味をもつのは、具体的給付義務等が記載されているときに和解調書に基づき債権者が強制執行する場合であって、送達の有無は、和解の成立又は効力発生とは無関係といわざるを得ない。
 以上から、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、当事者が合意して和解が成立した日と解すべきであり、本件更正の請求は期限後になされた不適法なものである。

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相続開始後3年以内に遺産分割された土地について、租税特別措置法第69条の3(平成11年法律第9号改正前)の適用を受ける場合の更正の請求の期限は、当該土地の遺産分割の日から4か月以内であるとした事例

裁決事例集 No.65 - 788頁

 更正の請求による租税特別措置法第69条の3(平成11年法律第9号改正前)の適用は相続税法第32条の規定により、本件土地の遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内になされる必要があるところ、本件の更正の請求はこの期限を経過した後になされたものであるから、不適法である。
 請求人は本件土地についての遺産分割の日から4か月以内に行った修正申告において同条の適用を失念したことは同条第6項に規定する「やむを得ない事情」に該当するものと解するべきである旨主張するが、この「やむを得ない事情」とは、例えば、災害、交通や通信の途絶等、納税者の責めに帰すことのできない客観的事情によるものをいい、本件のように請求人が同条の適用を失念したことはこれに当たらない。

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更正処分の取消訴訟が提起されても、行政事件訴訟法第25条第1項により処分の効力、執行等を妨げないから、遺産分割が確定したことによる更正の請求の基礎となる総遺産価額は、当該更正処分により確定した額によるとした事例

裁決事例集 No.67 - 707頁

 遺産分割の審判の決定により未分割財産が分割確定したことによる相続税法第32条1号に規定する更正の請求とは、同法第55条の規定により未分割財産を法定相続分の割合に従って課税価格を計算して確定した納付すべき税額が、その後の遺産分割の確定に伴い過大となるという後発的事由に基づいて相続税額の是正を求めるものであるから、この規定に基づく更正の請求の基礎となる財産の価額は、申告の後に更正があった場合には、その更正により確定した財産の価額を基礎とすることになる。
 請求人は、第一次更正処分について取消訴訟を提起し、その判断がなされていないから、本件更正の請求の基礎となる総遺産価額は、申告書に記載した総遺産価額によるべきである旨主張する。
 しかしながら、行政事件訴訟法第25条第1項には、行政事件の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行または手続の続行を妨げない旨規定され、行政処分の取消しを求める争訟があっても正当な権限に基づく取消しがない以上有効な行為としてその効力を否定することはできないとされているから、第一次更正処分が、取消訴訟で取消されていない以上、有効な行為としてその効力は否定されないので、本件更正の請求の基礎となる総遺産価額は、第一次更正処分により確定した総遺産価額を基礎とすることになる。

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遺産分割審判に係る高裁決定を不服として許可抗告の申立て及び特別抗告が行われている場合における相続税法第32条の更正の請求をすることができる「事由が生じたことを知った日」は、当該高裁決定に係る文書が送達された日であるとした事例

裁決事例集 No.68 - 203頁

 請求人は、遺産分割に係る審判について即時抗告を行い、当該即時抗告に対する高裁決定を不服として許可抗告の申立て及び特別抗告を行ったものであるところ、許可抗告の申立て及び特別抗告には高裁決定の確定を遮断する効力はなく、当然の執行停止の効力もないことから、即時抗告に対する高裁決定により審判は確定し、審判の確定によって遺産分割の内容が終局的に定まることとなる。そして、即時抗告に対する高裁決定は、告知することによって効力を生じるから、この場合の相続税法第32条1号に規定する更正の請求をすることができる「事由が生じたことを知った日」は、即時抗告に対する高裁決定に係る文書が請求人に送達された日となる。

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調停により遺産分割が行われた場合における相続税法32条第1号の更正の請求ができる「事由が生じたことを知った日」は調停が成立した調停期日の日であるとした事例

裁決事例集 No.69 - 252頁

 請求人は、平成14年の調停期日では、遺産分割についての基本的な合意があっただけで、更正の請求のために相続税の課税価格を具体的に把握できるようになったのは調停調書が作成されてからであるから、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、調停調書の正本の作成日付である平成15年である旨主張する。
 しかしながら、家事調停手続きにより遺産分割がなされた場合には、[1]共同相続人間に遺産分割の調停が成立したことによって、課税価格は未分割のときのそれとは異なることになること、[2]調停期日において遺産分割の合意が成立したことによって、各相続人が取得する遺産の範囲が明らかになり、調停期日に出頭した各相続人はこれを認識し、分割後の課税価格が未分割のときのそれとは異なることとなったことを認識することからすれば、この場合の相続税法第32条に規定される「事由が生じたことを知った日」とは、特段の事情がない限り、遺産分割の合意が成立した調停期日の日と解するのが相当である。
 なお、家事審判法第21条第1項は、「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(審判)と同一の効力を有する。」と規定しているが、調停は、当事者間の合意によってなされるという私法行為としその性格とそれが裁判所においてなされ確定判決と同一の効力を有するという訴訟行為としての性格を併せ有するものと解されるから、当事者間の遺産分割の合意の内容が調停調書に記載される前においても、当事者間の合意が成立した調停期日の日には、相続税法第32条第1号に規定される当該財産の分割が行われて課税価格が相続分等の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったということができる。

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遺産分割審判手続中に相続分放棄証明書及び脱退届出を家庭裁判所に提出した納税者は、他の共同相続人間において遺産分割が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に相続税法第32条第1号の規定に基づき更正の請求をすることができるとした事例

裁決事例集 No.75 - 624頁

 本件のように相続税法第55条の規定に基づく相続税の申告書の提出後に共同相続人の一人が相続分放棄証書を添付して脱退届出書を家庭裁判所に提出し、その後他の共同相続人に対して審判の告知がされた場合において、相続税法第32条第1号に規定する「その後当該財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていた課税価格と異なることとなった」のがいつかを判断するに当たっては、上記の共同相続人の相続分放棄証書を添付した上での審判からの脱退届出書の家庭裁判所への提出行為の法的性質、法的効果のみならず、他の共同相続人についてはいつ最終的な遺産分割の合意が成立し、あるいはこれに代わる審判の効力が生じたか等を斟酌してなすのが相当であるところ、本件においては、請求人以外の共同相続人が複数であるとともに、審判の告知がなされるのは当該請求人以外の共同相続人に対してであること等を踏まえれば、たとえ共同相続人のうちの一人に相続分の放棄をした者があったとしても、他の共同相続人間で遺産分割が確定したときに、当該相続分の放棄をした者を含めて全体として最終的な遺産分割と同様の効果を生ずると判断するのが相当であり、本件において当該効果を生ずる事実が発生したのは、他の共同相続人に対して本件抗告の棄却決定がなされた時と解するのが相当である。

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更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものではないから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を欠くものであるとした事例

裁決事例集 No.76 - 440頁

 相続税法第32条第1号は、同法第55条の規定により分割されていない財産について、民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと、及びその後当該財産の分割が行われたことをその要件としていることから、同号の規定に基づく更正の請求は、単に相続財産の分割が行われ、相続財産の分属が決まり、その結果に従って相続税の課税価格を計算すると申告又は更正若しくは決定に係る課税価格と異なることとなるというだけでは足りず、1当該分割が行われる前には遺産共有の状態にあった分割の対象とされた財産について、民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算された申告又は更正若しくは決定が行われていること、及び2当該申告又は更正若しくは決定において未分割財産とされていた財産が分割されたことが必要であり、1の申告又は更正若しくは決定がなされていない場合には、同条第1号の更正の請求の要件を満たさないこととなる。
 本件においては、本件遺言が無効である旨の判決が確定した最高裁判決により、すべての相続財産は遺産共有の状態、すなわち未分割の状態にあることが明らかにされたものと認められ、その後、審判によりその未分割の状態にあった財産の分割が行われたのであるから、最高裁判決により未分割の状態にあることが明らかになった相続財産について、相続税法第55条の規定に基づく申告又は更正若しくは決定がなされていたかどうかで、本件更正の請求が同法第32条第1号の更正の請求の要件である「相続税法第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと」を満たすか否かを判断すべきこととなる。この点、本件申告は、最高裁判決の前になされているものであって、本件更正の請求の直前における請求人の相続税の課税価格は、最高裁判決により未分割の状態にあった相続財産について相続税法第55条の規定に基づき民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って計算されていたものでないことは明らかである。したがって、本件更正の請求は、相続税法第32条第1号に規定する要件を欠くものである。

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「相続させる」旨の遺言の法的効果を前提として、未分割財産が分割されたことを事由とする相続税法第32条第1号の規定に基づく更正の請求は、その前提要件を欠くとした事例

平成23年12月6日裁決

《ポイント》
 この事例は、遺産の全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言があった場合には、被相続人の死亡の時に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はないから、相続税法第32条第1号の規定の適用の前提を欠くと判断したものである。

《要旨》
 請求人らは、本件遺言は相続分の指定をしたものにすぎず、当初申告における課税価格は、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づき本件遺言による指定相続分に従って計算したものであるから、請求人らを被告とする遺留分減殺請求訴訟において成立した本件和解により遺産分割が確定したとして、同法第32条《更正の請求の特則》第1号に規定する事由が生じた旨主張する。
 しかしながら、遺産全部を一部の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺産の分割の方法を定めた遺言であり、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、もはや当該遺産について再度の分割がなされる余地はなく、また、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることになるから、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定がなされたものと解すべきであるところ、本件遺言では、不動産8件を個別に掲記した上で、それらを含む一切の財産を「請求人らに各2分の1の割合で相続させる」旨記載されていること、他の相続人らには財産を相続させない旨の被相続人の意思が明確に表示されていることからして、本件遺言は、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定をしたものと解すべきであり、そうすると、本件被相続人の死亡の時に遺産全部について直ちに分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はない。
 したがって、相続税の申告書の提出時に本件被相続人の遺産の中に未分割のものはなく、相続税の課税価格が相続税法第55条の規定により計算されたものと認めるべき余地はないから、本件和解が、同条の適用があった場合に係る同法第32条第1号に規定する事由に該当しないことは明らかである。

《参照条文等》
 相続税法第32条第1号、第55条
 民法第908条

《参考判決・裁決》
 最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁)

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相続税法第35条第3項の規定に基づいて行われた増額更正処分は、その処分の前提となる更正の請求が同法第32条第1号の要件を満たしていないから違法であるとした事例

平成24年3月13日裁決

《ポイント》
 この事例は、共同相続人の総意により特定非営利活動法人に寄附された遺産中の財産は、共同相続人間で法定相続分の割合で分割されたとみるのが相当であり、その分割の前後で更正の請求をした者の課税価格は異ならないことなどから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を満たしておらず、これを前提とした同法第35条第3項の規定に基づいて行われた増額更正処分は違法であると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、本件相続財産の遺産分割に係る和解成立を内容とする民事調停法上の決定(本件民事調停決定)がなされたことを基因として請求人以外の共同相続人から提出された各更正の請求(本件各更正の請求)は、相続税法第32条《更正の請求の特則》第1号の事由に該当する適法なものであるから、請求人に対して同法第35条《更正及び決定の特則》第3項の規定に基づき行った本件更正処分は適法なものである旨主張する。
 しかしながら、相続税法第35条第3項の規定に基づく更正処分が適法になされるためには、前提として、他の共同相続人につき、同法第32条の規定による適法な更正の請求に基づく(減額)更正処分が行われなければならず、当該更正の請求が同条第1号に基づくものである場合には、まる1まず、同条第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づいて、未分割財産について、民法の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていること、まる2次に、当該未分割財産が分割されたこと、まる3そして、当該分割の結果に従って相続税の課税価格を計算すると上記まる1の課税価格と異なることとなったこと、という要件をいずれも充足する必要があるところ、本件各更正の請求についてみると、本件相続財産のうち、本件民事調停決定によりW会が取得することとなった財産(W会財産)以外の財産については、そもそも同法第55条が適用されていないから上記まる1の要件を満たさず、また、本件相続財産のうちW会財産については、同条の規定に基づいて法定相続分で課税価格が計算されており、本件民事調停決定をもって分割されたと認められるから、上記まる1及びまる2の各要件を満たすものの、本件民事調停決定によって法定相続分で分割されたとみるのが相当であるから、上記まる3の要件を満たさない。したがって、本件各更正の請求は、相続税法第32条第1号の事由に該当しない不適法なものであるから、本件更正処分は、同法第35条第3項の要件を満たさない違法なものである。

《参照条文等》
 相続税法第32条、第35条第3項

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遺留分権利者が遺留分減殺を原因とする土地の共有持分移転登記請求訴訟によって同土地の共有持分権を取り戻したことは、遺留分義務者の相続税法第32条第3号の更正の請求事由に当たるとした事例

平成25年1月8日裁決

《ポイント》
 本事例は、遺留分権利者が遺留分減殺請求の目的物について現物返還と価額弁償とを同時に求めていた場合において、遺留分義務者から現物返還が行われたことは、相続税法第32条第3号の更正の請求事由に当たることなどを初めて明らかにしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人以外の共同相続人ら(本件遺留分権利者ら)が、遺産である土地(本件土地)について、まる1請求人に対して、遺留分減殺請求訴訟において、価額弁償の請求をしながら、同時に、まる2本件土地について請求人の債務に係る譲渡担保権に基づき所有権移転登記を受けていたK社に対して、共有持分移転登記請求訴訟において、現物返還の請求として所有権一部移転登記手続の請求をしており、K社が当該請求を認諾(本件認諾)したという事実関係の下、請求人が本件認諾を事由としてした更正の請求(本件更正の請求)は、相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)第32条《更正の請求の特則》第3号事由(遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁済すべき額が確定したこと)に該当しないものである旨主張する。
 しかしながら、本件認諾は、K社が、本件土地に設定されていたK社の譲渡担保権に基づく所有権移転登記について、本件遺留分権利者ら各共有持分10分の1の所有権移転登記手続をすることを認めたものであり、また、本件認諾の前に、請求人が本件遺留分権利者らの遺留分割合が各10分の1であると認めていたことからすると、本件遺留分権利者らは、本件認諾により、本件土地の遺留分に係る各共有持分の登記を回復することができたものと認められる。そして、民法第1040条《受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等》第1項本文の規定は、遺留分権利者が、遺留分減殺請求によって目的物を取り戻して登記を回復することができた場合に、これに加えて価額弁償の請求も認めるものと解することはできないことからすると、本件遺留分権利者らは、本件認諾の後本件土地に係る価額弁償を請求することはできないから、本件認諾の日に、本件土地について遺留分に相当する共有持分権を取り戻すことが確定し、これにより、請求人が遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定したというべきである。したがって、本件更正の請求は、相続税法第32条第3号に規定する事由に該当するものである。

《参照条文等》
 相続税法第32条第3号

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相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、請求人が訴訟当事者である判決に限られるとした事例

平成25年8月22日裁決

《要旨》
 請求人は、共同相続人Eが原告となって提起した、相続財産として申告していた貸付金のうち原告の法定相続分に相当する金員の支払を求める貸金請求訴訟において、当該貸付金の存在を認めることはできないとして原告の請求を棄却する旨の判決(本件判決)が確定し、本件判決は相続税法施行令(平成17年政令第37号による改正前のもの)第8条《更正の請求の対象となる事由》第1号に規定する判決に該当するから、相続税法(平成16年法律第147号による改正前のもの)第32条《更正の請求の特則》第5号の規定に基づいて行った更正の請求を認めるべきである旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第23条《更正の請求》第2項第1号は、判決が確定したことを要件としており、同号に規定する判決は、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるものと解されるところ、相続税法施行令第8条第1号が、平成15年度税制改正により相続税法第32条の更正の請求の特則事由として追加された改正趣旨は、同号の事由が、国税通則法第23条第2項の規定により、期限なしに更正の請求ができる事由であることから、税額の減額には対応できるが、その影響で他の相続人の税額が増加することとなる場合の増額の処分を可能とする規定が国税通則法にはないため、相続税法第32条においてこれを更正の請求の特則事由として特記することにより、相続税法第35条《更正及び決定の特則》第3項の規定による他の相続人に対する増額処分も可能とするためであると解されることからすれば、相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する判決と同義のものといえるから、更正の請求をする者が訴訟当事者である判決に限られるものと解される。これを本件についてみると、本件判決は、共同相続人Eが提起した貸金請求事件の判決であり、請求人が訴訟当事者ではない判決であるから、請求人にとって相続税法施行令第8条第1号に規定する判決には該当しない。

《参照条文等》
 相続税法第32条
 相続税法施行令第8条第1号
 民事訴訟法第115条

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