申告及び納付

連帯納付義務

  1. 申告
  2. 更正の請求の特則
  3. 連帯納付義務(12件)

相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、他の共同相続人に徴収手続を行うことができ、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行えないというものではないとされた事例

裁決事例集 No.55 - 608頁

 相続税法第34条第1項の相続税の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の納税義務の確定という事実が発生していれば法律上当然に生ずるものであり、格別の確定手続を要するものではない。
 また、連帯納付義務は、民法上の連帯保証債務に類似するものと解するのが相当であり、滞納者に徴収手続を尽くした後でなければ、共同相続人に徴収手続を行うことができないというものではない。
 したがって、各相続人の一部にその相続税額を滞納した者がある場合には、国税徴収に当たる所轄庁は、その他の相続人に対して、その相続により受けた利益の価額に相当する金額を限度として連帯納付義務の履行を求めることができる

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相続税法第34条第1項の連帯納付義務には、補充性がなく、告知は不要であり、本件連帯納付義務は徴収権の消滅時効等により消滅していないとされた事例

裁決事例集 No.56 - 396頁

 相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、[1]格別の確定手続を要せず、納税の告知がないからといって、連帯納付義務が発生しないということにはならないこと、[2]本来の納税者と連帯納付義務者との間に生ずる求償関係が不可能であるか否かを考慮すべきものではないこと、[3]連帯の免除、更改により連帯納付義務が消滅したとの主張には理由がなく、また、[4]延納により徴収権の消滅時効は停止しているので、時効は完成していないこと等、請求人の主張がすべて排斥されたほか、[5]連帯納付義務の性質は民法の連帯債務と異なり、通則法第5条第3項の納付責任に類似すると解され、民法の連帯債務の規定をそのまま適用するのは妥当でない。

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相続税法第34条第2項の連帯納付義務には補充性は認められず、また、連帯納付義務者に対する差押処分は、財産の選択を誤った国税徴収法第49条に反するものとはいえないとされた事例

裁決事例集 No.56 - 435頁

 請求人は、本来の納税義務者に対して強制的な徴税の執行を行うことなく、自己の相続税を完納した請求人に対して本件差押処分を行ったことは、違法、不当である旨主張する。
 しかしながら、連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために相互に各相続人に課した特別の責任であり、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定という事実に照応して法律上当然に生ずるものであるから、連帯納付義務につき格別の確定手続を要するものではなく、各相続人の固有の相続税の納税義務が確定すれば、国税の徴収に当たる所轄庁は直ちに連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことができると解され、本来の納税義務についての履行責任を連帯納付義務者に補充的に負わせるものではない。
 また、請求人は、差押物件として未分割の相続財産を選択するよう要望していたが、原処分庁が事業用の貸駐車場を差し押さえたのは、裁量権の著しい濫用である旨主張する。
 しかしながら、原処分庁が本件差押物件の方が換価が容易であるとして行った原処分には合理性があり、事業用の貸駐車場を選択しなかった本件差押処分は、裁量権の著しい濫用とはいえない。

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相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、各相続人の固有の相続税の納付義務の確定に伴い法律上当然に確定し、直ちに連帯納付義務者に対し徴収手続を行うことができ、また、補充性が認められないから、本来の納税者に対する徴収手続を尽くさないでされた連帯納付義務についての督促は不当であるとの請求人の主張には理由がないとした事例

裁決事例集 No.59 - 344頁

 請求人は、原処分庁が滞納者に対する滞納処分を十分に行っておらず、誠実な職務を遂行しているとはいえないこと及び本件滞納国税の負担を請求人に一方的に求め、租税負担の公平性を阻害していることから、本件督促処分は不当である旨主張する。
 しかしながら、相続税法第34条第1項に定める連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために相互に各相続人に課した特別な責任であり、その確定は各相続人の固有の相続税の納付義務の確定という事実に照応して法律上当然に生じるものであるから、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、直ちに連帯納付義務者に対して徴収手続を行うことができ、また、国税徴収法第32条以下に規定されている第二次納税義務のような、本来の納税義務者に対する滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って滞納国税の納税義務を負担するという補充的な性格を持つものではない。
 したがって、原処分庁が請求人に対し本件滞納国税に係る連帯納付義務の履行を求め徴収手続を進めたとしても、これが本来の納税者である滞納者に徴収手続を尽くした後でなければできないというものではないことから、請求人の主張には理由がない。

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相続税法34条4項の連帯納付義務は、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて法律上当然に生じるもので、特別の確定手続を要するものではなく、その範囲は、受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきであるとした事例

裁決事例集 No.63 - 586頁

 相続税法第34条第4項の連帯納付義務は、贈与税の徴収確保を図るため、贈与者に課した特別の履行責任であって、受贈者の贈与税の納税義務の確定という事実に基づいて、法律上当然に生じるものであるから、特別の確定手続を要しない。また、連帯納付義務の範囲は、本来の納税者である受贈者が負っている本税及び延滞税のすべてについて、贈与した財産の価額を限度として負担すべきである。

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相続税法第34条の連帯納付責任に基づく督促処分が適法であるとした事例

裁決事例集 No.66 - 289頁

  1.  請求人は、本来の納税義務者Aに対する延納許可から延納許可取消しまでの間に、原処分庁が適切な徴収手続をとらず、連帯納付義務者である請求人に多大な本税、利子税及び延滞税の負担を課していることは徴収権の濫用に当たる旨主張する。
     しかしながら、連帯納付義務は、相続税の徴収の確保を図るために課された特別の責任なのであるから、本来の納税義務者が現に十分な財産を有し、同人から固有の相続税の徴収を図ることが極めて容易であるにもかかわらず、原処分庁が同人又は第三者の利益を図り、あるいは、連帯納付義務者に損害を与える目的をもって、恣意的に、本来の納税義務者からの徴収を行わず、連帯納付義務者に対してその義務の履行を求めたという事情の存する場合には、徴収権の濫用があると評価できる余地もあると解されるが、延納の制度は、法が納税者の自発的な納税を本来の姿と考え、これを容易にするため当該措置を認めているものであり、延納等の措置を講ずることによって任意の納付の履行が期待できる限り原処分庁がこれを認めようとするのは当然のことである。
     したがって、延納を認めたことで結果的に本来の納税義務者の財産によって相続税の全てを納付することが不能になったとしても、そのことをもって原処分庁が故意に恣意的な徴収手続を行なったとまではいえず、原処分庁が請求人に対し連帯納付義務の履行を求めたとしても、徴収権の濫用に当たるとはいえない。
  2.  請求人は、原処分庁が連帯納付義務に係る賦課決定通知書を送付していないから、請求人の連帯納付義務は確定していない旨主張する。
     しかしながら、相続税法第34条第1項に規定される連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため相互に各相続人等に課した特別の責任であり、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずると解されているから、本件相続の共同相続人であるAの相続税の納税義務が有効に確定している以上、請求人の連帯納付義務は、格別の手続を要することなくAの納付義務の確定に照応して確定している。
  3.  請求人は、原処分庁が行ったAに対する延納の許可から延納許可の取消しまでの徴収手続に違法があるとして、請求人の連帯納付義務は消滅している旨主張する。
     しかしながら、延納の許可と連帯納付義務は異なる租税法規を根拠とするものである上、相続税法、国税通則法及び国税徴収法のいずれにも、請求人が主張するような延納の許可に関する違法等の存在によって連帯納付義務が消滅する旨を規定した条文は存在しない。
     むしろ、連帯納付義務は、法が相続税の徴収を確保するために各相続人等に課した特別の責任であること、延納の許可に当たって十分な担保を徴していても、担保価値の変動によって担保物を処分しても相続税が徴収できなくなる可能性があることを鑑みれば、原処分庁は、延納の許可の際に徴した担保を処分して徴収を確保する方法と、連帯納付義務者にその履行を求めて徴収を確保する方法を併存的に有していると解するのが相当である。

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相続税法第34条の連帯納付義務に基づく督促処分及び差押処分が適法であるとした事例

裁決事例集 No.69 - 300頁

 請求人は、相続税の連帯納付義務について、[1]請求人に対する時効中断措置が講じられていないから、徴収権の時効が完成していること、[2]連帯納付義務の通知を滞納発生から10年以上放置したこと、及びその間バブル崩壊により本来の納税義務者から徴収不能となったことの責任を請求人に転嫁するものであることから、連帯納付義務の督促処分及び差押処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、[1]相続税の連帯納付義務は、自らが負担すべき固有の相続税の納税義務のほかに負う特別の責任であり、国税通則法第8条の規定の適用はなく、本来の納税義務者に対する時効中断の効力は連帯納付義務者にも及ぶこと、[2]相続税の連帯納付義務について告知を要する旨の法令はなく、連帯納付義務に係る通知の遅延よって、請求人に対する処分が違法となるものではないことから、本件連帯納付義務の督促処分及び差押処分はいずれも適法である。

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相続により受けた利益の価額が確定していないから連帯納付義務はいまだ発生していないとする請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.71 - 626頁

 請求人は、遺留分減殺請求権を行使して本件土地建物の共有持分12分の1について所有権移転登記(以下「本件登記」という。)をしているが、[1]本件登記は、請求人が遺留分の権利保全を行ったにすぎず、具体的な遺留分額はいまだ確定していないから、本件相続によって請求人が受ける利益は確定しておらず、請求人には本件滞納国税に係る連帯納付義務はまだ発生していないこと、[2]仮に、本件登記をしたことが直ちに「相続等によって得た利益」であり、相当額の受けた利益の価額があるとしても、いまだ具体的遺留分額の最終確定と清算処理がなされていない現時点においては、少なくとも本件土地建物に設定された根抵当権に係る本件被相続人関連債務のうち請求人の法定相続分相当額は請求人の負担として債務控除がなされなければならず、かかる債務控除を一切行わないまま、単純に本件土地建物の持分価額をもって請求人の得た利益と即断して本件督促処分をしていることから、本件督促処分は違法であると主張する。
 しかしながら、遺留分減殺請求権の行使は、受贈者又は受遺者に対する裁判外の一方的な意思表示で可能であり、また、その意思表示がいったんなされた以上、法律上当然に減殺の効力が生じるものと解されるところ、本件においては、請求人が遺留分減殺請求権を行使したことにより、本件相続開始時にさかのぼって、本件土地建物の各12分の1の持分を取得したものと認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。次に、「相続により受けた利益の価額」とは、相続税法第34条第1項が相続税の徴収の確保を図るため、相互に各相続人等に課した特別の責任であるという趣旨に照らせば、相続又は遺贈により取得した財産の価額から相続税法第13条の規定による債務控除の額並びに相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいうと解するのが相当であり、また、相続税法第13条の規定による控除すべき債務は、同法第14条第1項の規定により確実と認められるものに限るとされているところ、本件においては、実際に請求人の負担に属する部分の債務の金額があるとする証拠はないことから、相続税法第13条の規定による確定した債務控除の額はないものと認められ、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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相続税の連帯納付義務についての督促処分前に行われた当該相続税を担保するための抵当権の抹消に当たり、その判断に誤りがあるとしても、当該督促処分が権利の濫用に当たるとはいえず、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の規定により連帯納付義務が免責されることもないとした事例

裁決事例集 No.75 - 633頁

 請求人は、本件相続税の延納担保であった本件担保不動産の売却代金から本件相続税を徴収することができたはずであるにもかかわらず、差替担保の設定や本件相続税の徴収をすることなく本件担保不動産に設定されていた本件抵当権を解約したことに重大な過失があるから、原処分庁が行った本件相続税の連帯納付義務についての本件督促処分は権利の濫用に当たると主張する。
  しかしながら、相続税の本来の納税義務者に対する徴収手続と連帯納付義務者に対する徴収手続が、本来的に別個独立の手続であることからすれば、国税当局が本来の納税義務者に対する徴収手続を適正に行わなかった結果、本来の納税義務者から徴収することができなくなったという事実があったとしても、その事実は相続税の連帯納付義務の存否又はその範囲に影響を及ぼすものではないから、国税当局が他の相続人等に対し連帯納付義務の履行を求めて徴収手続を進めたとしても、これをもって徴収権の濫用と評価することはできない。もっとも、相続税の連帯納付義務は、法が相続税の徴収を確保するために、相続人等に課した特別の責任であることからすれば、本来の納税義務者が現に十分な財産を有し、同人から滞納に係る相続税を徴収することが極めて容易であるにもかかわらず、国税当局が本来の納税義務者又は第三者の利益を図る目的をもって恣意的に本来の納税義務者からの徴収を行わず、相続税法第34条第1項の規定に基づき、他の相続人等に対して滞納処分を執行したというような場合には、他の相続人等に連帯納付義務の履行を求めることが形式的には租税法規に適合するものであっても、正義公平の観点からみて徴収権の濫用に当たると評価すべき場合もあり得ると解される。
  本件においては、本件相続税の滞納者又は第三者の利益を図る目的をもって、差替担保の提供を受けず、必要額の支払も受けずに、恣意的に抵当権の抹消手続を行ったと評価すべき事実は認められないから、仮に抵当権の抹消の際の判断に誤りがあり、請求人が主張するとおりの事実によって本件相続税の徴収が図られなくなったとしても、そのことをもって本件督促処分が権利の濫用に当たるものということはできない。
  請求人は、民法第504条の類推適用又は国税通則法第41条第2項の適用により、連帯納付義務が免責される旨主張するが、相続税法、国税通則法及び国税徴収法のいずれにも民法第504条の準用又は類推適用による相続税の連帯納付義務の消滅を根拠付ける趣旨は見当たらず、連帯納付義務者はその徴収手続において本来の納税義務者と別個独立した関係にある点からも、同条を連帯納付義務者に類推適用することは相当でなく、また、国税通則法第41条第2項は、納税者に代わって国税を納付した者はその取得した求償債権の限度で納付した国税の担保たる抵当権につき国に代位することができる旨を規定するだけで、国に対して抵当権の保存を義務付けるものと解することはできないから、請求人の主張には理由がない。

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相続税法第34条第6項に規定する連帯納付義務の納付通知処分が適法であるとした事例(連帯納付義務の納付通知処分・棄却・平成26年6月25日裁決)

平成26年6月25日裁決

《要旨》
 請求人は、本来の納税義務者には滞納相続税を納付できる十分な資力等があり、同人から徴収することが極めて容易であるにもかかわらず、原処分庁が請求人に対して恣意的に相続税法第34条《連帯納付の義務等》第6項に規定する連帯納付義務の納付通知処分を行ったことは徴収権の濫用に当たる旨主張する。
 しかしながら、同法第34条第1項に規定する連帯納付義務は補充性を有しないのであって、連帯納付義務者は第二次納税義務等のように本来の納税義務者に滞納処分を執行しても徴収すべき額に不足すると認められる場合に限って納付義務を負担するというものではない。したがって、原処分庁が徴収手続を怠った結果、本来の納税義務者から滞納相続税を徴収することができなくなったという事実があったとしても、同人又は第三者の利益を図る目的をもって恣意的に当該滞納相続税の徴収を行わず、他の相続人に対して徴収処分をしたというような事情がない限り、徴収権の濫用には当たらない。本件の場合、このような事情は認められないことから、請求人の主張は採用することができない。

《参照条文等》
 相続税法第34条

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和55年7月1日第三小法廷判決(民集34巻4号535頁)

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相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の納付通知処分・棄却)

令和5年6月21日裁決

《ポイント》
 本事例は、連帯納付責任限度額の算定において、相続登記に係る登録免許税は、連帯納付の通知処分時までに現実に納付した税額だけを相続等により取得した財産の価額から控除することが相当であることを明らかにしたものである。

《要旨》
 請求人は、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の納付通知処分(本件通知処分)について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から1相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに2相続税申告等のための税理士報酬及び本件通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張する。
 しかしながら、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当である。そして、相続税法基本通達34−1(本件通達)において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法第13条に規定する債務控除の額のほか、相続等により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、1相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬及び登録免許税等の各見積額は請求人に現実に支払義務が生じたものとは認められず、2税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないことから、請求人の主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできない。

《参照条文》
 相続税法第34条第1項
 相続税法基本通達34-1

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相続税法第34条第1項が規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から控除すべき金額は、相続等により財産を取得することに伴って現実に支払義務が生じた金額と解することが相当であるとした事例(連帯納付義務の各納付通知処分・棄却)

令和5年6月21日裁決

《ポイント》
 本事例は、連帯納付責任限度額の算定において、相続登記に係る登録免許税は、連帯納付の通知処分時までに現実に納付した税額だけを相続等により取得した財産の価額から控除することが相当であることを明らかにしたものである。

《要旨》
 請求人らは、原処分庁がした相続税の連帯納付義務の各納付通知処分(本件各通知処分)について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり、相続等により取得した財産の価額から1相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬、登録免許税及び印紙税等の各見積額並びに2相続税申告等のための税理士報酬及び本件各通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないため違法である旨主張する。
 しかしながら、相続税法第34条第1項に規定する「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当である。そして、相続税法基本通達34−1(本件通達)において、「相続等により受けた利益の価額」とは、相続等により取得した財産の価額から、相続税法第13条に規定する債務控除の額のほか、相続等により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、1相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬等の各見積額は請求人らに現実に支払義務が生じたものとは認められず、2税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、本件通達に定める債務控除の額等のいずれにも該当しないことから、請求人らの主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続等により取得した財産の価額から控除することはできない。

《参照条文等》
 相続税法第34条第1項
 相続税法基本通達34-1

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