第二次納税義務

その他

  1. 第二次納税義務の通則
  2. 清算人等の第二次納税義務
  3. 共同的な事業者の第二次納税義務
  4. 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務
  5. 事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務
  6. その他(9件)

国税徴収法第38条の第二次納税義務の告知処分に至る手続に違法があり、また、納付相談の要請を了解したにもかかわらず、この了解事項を一方的に破棄して告知処分を行ったことは、信義則に反するとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 No.58 - 324頁

 請求人は、本件告知処分は、滞納会社に対する滞納処分の手続が十分に行われていたとはいえず、法律的な瑕疵があり、また、徴収担当職員は納付相談の要請を了解していたにもかかわらず、原処分庁がこの了解事項を一方的に破棄し、本件告知処分を行ったことは信義誠実の原則に反する旨主張する。
 しかしながら、国税徴収法第38条に規定する第二次納税義務の告知処分は、同条に規定する第二次納税義務のいずれの要件にも該当する場合に成立するとされており、また、滞納会社が原処分庁と納付相談中である場合あるいは原処分庁の滞納会社に対する徴収手続が尽くされた後でなければ第二次納税義務を課すことができない旨を定めた法令上の規定はなく、請求人は、同条に規定する第二次納税義務を負うこととなる。
 また、請求人の納付相談に応じてほしい旨の要請に対し、原処分庁がこれを容認した事実は認められず、請求人が徴収担当職員から拒否されなかったことをもってこの要請を了解していた旨の請求人の主張は、請求人の一方的な理解にすぎない。そうすると、原処分庁が公的見解を表示した事実は認められず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平を犠牲にしても、なお請求人の信頼、利益を保護しなければ正義に反するというような特別の事情があるとは認められない。

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会社法第762条の規定に基づく新設分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例

裁決事例集 No.76 - 573頁

 請求人は、会社分割において、新設分割設立株式会社の株式の売却が予定されている場合には、株式が第三者に譲渡されて始めて事業の譲渡があったものと解すべきであるところ、請求人の株式がBに譲渡された時には、請求人は滞納法人の特殊関係者に該当しないから、請求人が滞納法人の特殊関係者であるとしてされた原処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、会社法第762条に規定する新設分割による権利義務の承継は、国税徴収法第38条の事業の譲渡に該当するものと解されるところ、会社法第764条第1項は、新設分割設立株式会社は、その成立の日に新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する旨規定しているので、国税徴収法第38条にいう事業の譲渡があった時とは、新設分割設立株式会社の成立の日をいうものと解され、また、会社法第764条第4項は、同法第763条に基づいて新設分割計画に新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付する株式の数等に関する事項を定めた場合には、新設分割会社は、新設分割設立株式会社の成立の日に新設分割計画の定めに従い、新設分割設立株式会社の株主になる旨規定しているところ、会社法第49条は、株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する旨規定しているのであるから、新設分割設立株式会社の設立登記がされると同時に、新設分割計画の定めに従って、新設分割会社の事業が新設分割株式会社に譲渡され、新設分割会社が新設分割設立株式会社の株主になると解するのが相当である。そして、国税徴収法第38条が適用されるのは、納税者の事業の譲受人が納税者の特殊関係者である場合であるところ、国税徴収法施行令第13条第2項は、特殊関係者であるかどうかの判定は、納税者がその事業を譲渡した時の現況による旨規定している。そうすると、請求人の設立登記と同時に、滞納法人の事業が請求人に譲渡され、滞納法人が請求人の発行済株式のすべてを有する株主になったと認められ、かつ、請求人は滞納法人と同一の場所において同一の事業を営み、滞納法人は滞納国税について徴収不足の状態であると認められ、本件事業譲渡の日は本件滞納国税の法定納期限の1年前の日後であることから、国税徴収法第38条の第二次納税義務の成立要件のすべてを満たしていることになる。なお、納税者が事業譲受人の株式を譲渡したことによって、当該事業譲受人が特殊関係者に該当しないこととなったとしても、そのことによって同条の規定が適用されなくなるものではない。

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国税徴収法第38条にいう「譲受財産」とは、積極財産のみをいい、消極財産を含まないと解するのが相当であるとした事例

裁決事例集 No.77 - 582頁

 請求人は、事業譲渡に係る財産には資産及び負債の双方が含まれることが前提であるから、国税徴収法第38条にいう「譲受財産」には、積極財産のみならず消極財産を含む旨主張するとともに、仮に、同主張が認められないとしても、請求人が本件滞納者から譲り受けた財産のうち、本件告知処分の日現在で実質的に残存している財産の額を限度として第二次納税義務を負うに過ぎないと主張する。
 しかしながら、国税徴収法第38条の趣旨は、事業の譲渡が行われるときは、通常、その事業用資産だけでなく、その事業に係る債務も譲受人に移転されるので、譲渡人の債権者が当該事業譲渡によって不利益を受けることはないが、租税債務については私人間の合意によって譲受人に移転させることができないので、譲渡人が納付すべき国税を譲受人から強制的に徴収することができず、また、事業の譲渡に伴ってそれまで滞納処分の引き当てとなっていた財産が譲受人に移転することによって、仮に譲受人から譲渡人に対して相応の対価が支払われたとしても滞納処分が困難となる結果、国税の確保に支障が生じることとなる一方、事業の譲渡に際しては、通常、譲受人から譲渡人に対して相応の対価が支払われるので、譲受人に対して譲渡人の国税についての第二次納税義務を負わせることが酷に過ぎることも考慮し、事業の譲受人が譲渡人の特殊関係者である場合に限って、譲受人に譲渡された財産を限度として、譲受人に対して譲渡人の国税についての納税義務を二次的に負わせることにより、国税の確保を図ることとしたものと解される。すなわち、同条は、事業の譲渡に伴い、譲渡人の国税の引き当てとなっていた財産が譲受人に譲渡されたことによって、国税の確保に支障が生じることから、譲受人が譲渡人の特殊関係者である場合に限り、その譲受人に対し、譲渡人の国税の引き当てとなっていた譲受財産を限度として、二次的に譲渡人の国税についての納税義務を負わせることとしたものと解されるのであるから、同条にいう「譲受財産」は、滞納処分の対象となっていた積極財産をいい、消極財産を含まないと解するのが相当である。
 また、国税徴収法第38条が第二次納税義務の責任の範囲として「譲受財産を限度」とする旨規定しているところ、同条は「譲受財産」という財産自体を限度としているのであって、財産の価額を限度とする規定ではなく、また、同条にいう「譲受財産」には、その財産の異動により取得した財産及びこれらの財産に基因して取得した財産が含まれ、さらに、同条は、第二次納税義務の限度を同法第39条のような「現に存する限度」としていないのであるから、同法第38条の規定による第二次納税義務の限度を「譲受財産」のうち第二次納税義務の納付告知処分時点において残存しているもののみを限度とするものと解することはできない。

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第二次納税義務に係る租税債務が成立した時点において無限責任社員であった者は第二次納税義務を負うと解するのが相当であるとした事例(不動産の差押処分・棄却・平成25年12月2日裁決)

平成25年12月2日裁決

《要旨》
 請求人は、原処分庁が、主たる納税者(本件滞納法人)の滞納国税(本件滞納国税)を徴収するために、請求人の所有する不動産の差押処分(本件差押処分)を行ったことに対し、本件差押処分の前提となる国税徴収法(徴収法)第33条《無限責任社員の第二次納税義務》に基づきなされた第二次納税義務の納付告知処分(本件納付告知処分)は、請求人が本件納付告知処分時には既に本件滞納法人の無限責任社員ではないことから無効であり、これを前提として行われた本件差押処分も無効又は違法なものとして取り消されるべきである旨主張する。
 しかしながら、徴収法第33条の趣旨からすると、会社法が規定する無限責任社員の責任は私法上の債務だけでなく公法上の債務にも適用されると解され、無限責任社員の弁済責任が会社債務の発生と同時に生じることからすると、会社債務の発生時、すなわち第二次納税義務に係る租税債務が成立した時点において無限責任社員であった者は、第二次納税義務を負うと解するのが相当である。これを本件についてみると、本件滞納国税が成立した時点において、請求人は、滞納法人の無限責任社員であったと認められることから、本件滞納国税について第二次納税義務を負うこととなり、本件納付告知処分は無効ではない。したがって、本件納付告知処分の無効を前提とする請求人の主張には理由がない。

《参照条文等》
  会社法第580条
  国税徴収法第33条

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新株発行による増資は差押処分の処分禁止効には抵触しないとして、増資後の株式総数を基に第二次納税義務の限度額を算定するとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し・平成25年12月9日裁決)

平成25年12月9日裁決

《ポイント》
 本事例は、増資によって株式の価額が減少したことは、発行済株式の総数と資産の額に変動が生じた結果にすぎず、そのことを捉えて増資が被差押財産である株式そのものに対する処分であるということはできないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、主たる納税者(本件滞納会社)の滞納国税を徴収するために、請求人に対して国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》に基づきなされた第二次納税義務の限度額について、当該限度額は滞納者が所有する株式の価額であり、その株式の価額は納付通知書を発する時における同族会社の資産から負債の総額を控除した額をその株式の数で除した額を基礎として計算した額によると規定されているところ、請求人が発行した株式(本件株式)は原処分庁が差し押さえていることから、本件滞納会社が請求人に新株を発行させたこと(本件増資)は、本件株式の価値を減少させる行為であり、請求人は原処分庁に対し新株発行の効力を主張できず、本件株式の価額は本件増資前の株式の総数を前提に計算するべきである旨主張する。
 しかしながら、そもそも差押処分による処分禁止効とは、被差押財産そのものに対する処分を禁止する効力をいい、本件増資は、被差押財産である本件株式そのものに対しての処分ではないことから、本件株式の価額は、本件増資後の発行済株式の総数をもって評価すべきである。したがって、請求人は当該評価額を限度として第二次納税義務を負うべきであり、この額を超えて請求人に負わせた原処分庁の第二次納税義務は違法であるから、その一部を取り消すべきである。

《参照条文等》
 国税徴収法第35条

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国税徴収法第35条の第二次納税義務の告知処分に係る限度額は、同族会社である請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出されたものではないとして、当該告知処分の全部を取り消した事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し・平成29年12月13日裁決)

平成29年12月13日裁決

《ポイント》
 本事例は、国税徴収法第35条の第二次納税義務の限度額の算定に当たっては、同族会社の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当であるとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》の規定に基づき、請求人の負うべき第二次納税義務の各限度額(本件各限度額)を、請求人の直前の決算期末の貸借対照表に記載されている簿価により算出したことは、国税徴収法基本通達第35条関係の13《資産及び負債の額の計算》に定める「特に徴収上支障がない」場合に該当することから、株式の適正な時価を反映させた適法なものである旨主張する。
 しかしながら、当該通達が、特に徴収上支障がない場合には、直前の決算期の貸借対照表等を参考とすることを認めているのは、納付通知書を発した日の時価評価を簡便に行えるようにすることを企図するものである一方、国税徴収法第35条第2項の「当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額」は、同族会社に対し納付通知書を発する時の客観的な時価を標準として計算されるべきものであることを踏まえ、飽くまで「参考」とすることができるにとどめているものと解される。そうであるとすると、直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当であり、本件各限度額は、請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえない 。

《参照条文等》
 国税徴収法第35条
 国税徴収法基本通達第35条関係13

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国税徴収法第35条の第二次納税義務の納付告知処分に係る限度額は、同族会社である請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出されたものではないとして、当該納付告知処分の一部が取り消された事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し・平成30年5月29日裁決)

平成30年5月29日裁決

《ポイント》
 本事例は、国税徴収法第35条の第二次納税義務の限度額の算定に当たっては、同族会社の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、納付通知書を発した日における金額が明らかとなっている資産又は負債が含まれている場合等には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算定するのが相当としたものである。

《要旨》
 原処分庁は、国税徴収法第35条《同族会社の第二次納税義務》の規定に基づき、請求人が負うべき第二次納税義務の限度となる株式(本件株式)の価額を、請求人に納付通知書(本件納付通知書)を発する日の直前の決算期末の貸借対照表(本件貸借対照表)に記載されている金額により算定したことは、国税徴収法基本通達第35条関係の13《資産及び負債の額の計算》に基づいて本件株式の適正な時価を反映させた適法なものである旨主張する。
 しかしながら、当該通達が、特に徴収上支障がない場合には、直前の決算期の貸借対照表等を参考とすることを認めているのは、納付通知書を発した日の時価評価を簡便に行えるようにすることを企図するものである一方、飽くまで「参考」とすることができるにとどめているのは、国税徴収法第35条第2項の「当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額」は、同族会社に対し納付通知書を発する時の客観的な時価を標準として計算されるべきものであることを踏まえたものと解され、納付通知書を発する日の直前の決算期の貸借対照表等の各勘定科目の中に、納付通知書を発した日における金額が明らかになっている資産又は負債が含まれている場合や、具体的な経済的価値を有しているとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて、納付通知書を発した日における客観的な時価を算定するのが相当である。本件においては、現金や預金など本件納付通知書を発した日における金額が明らかとなっている資産等があると認められる以上、一定の修正を加えて本件株式の客観的な時価を算定するのが相当であり、原処分庁が本件貸借対照表に記載されている金額をそのまま用いて算定した本件株式の価額は、適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえない。

《参照条文等》
 国税徴収法第35条
 国税徴収法基本通達35条関係13

《参考判決・裁決》
 平成29年12月13日裁決(裁決事例集109)

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事業の譲受人である請求人は滞納者と同一とみられる場所において事業を営んでいるとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・平成31年3月26日裁決)

平成31年3月26日裁決

《ポイント》
 本事例は、タクシー事業における車庫は、タクシー事業を営む者が事業活動を行っていくために、運行管理業務等を行う営業所と同視できる程度に重要かつ必要不可欠な場所であると認められることから、滞納者が車庫として使用していた場所を営業所としてタクシー事業を営んでいる請求人は社会通念上同一の場所と認められる場所で事業を営んでいると認められるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、国税徴収法(平成28年法律第15号による改正前のもの。徴収法)第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》に規定する「事業を営んでいる場所」とは、タクシー事業においては、道路運送法第5条《許可申請》第1項第3号に規定する営業所を指すと解するべきであり、車庫は営業所には含まれないから事業を営んでいる場所には当たらず、請求人は同一の場所で事業を営んでいるとはいえない旨主張する。
 しかしながら、徴収法第38条の「同一とみられる場所」とは、同一の場所のほか、社会通念上同一の場所と認められる場所をいうと解するのが相当であるところ、請求人は、第二次納税義務の納付告知処分時において、滞納法人が車庫として使用していた場所を営業所としてタクシー事業を営んでおり、同営業所は滞納法人の営業所とは地理的に異なった場所であるが、タクシー事業における車庫は、その確保が事業許可の要件となっているだけでなく、その場所についても営業所と近接していなければならないという制限があるなど、営業所と相互に密接に関連付けて利用・管理され、有機的一体として機能する財産の一部であり、また、車庫に保管されている営業用車両が収益を生み出す基礎となるというタクシー事業の特質に鑑みると、車庫は、タクシー事業を営む者が事業活動を行っていくために、運行管理業務等を行う営業所と同視できる程度に重要かつ必要不可欠な場所であると認められる。加えて、請求人の営業所は、滞納法人の営業所と、物理的に異なる場所とはいえ県道を挟んだ斜め向かいに位置し、いずれも当該県道に面しているほか、直線距離で42メートルしか離れていないことも踏まえると、請求人の事業と滞納法人の事業は外形的に同一性を有するということができるから、請求人の事業は社会通念上同一の場所と認められる場所で営まれているものと認められる。

《参照条文等》
 国税徴収法第38条

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会社法第762条の規定に基づく新設分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例

令和3年4月12日裁決

《ポイント》
 本事例は、請求人が事業を間断なく継続して運営するためには、資産の承継が前提となっており、新設分割と資産譲渡という2つの法形式により事業譲渡が完成したことが認められ、複数の取引による事業譲渡については、いずれの取引により譲渡されたものであっても国税徴収法第38条にいう譲受財産に当たると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、会社法第762条《新設分割計画の作成》の規定に基づく新設分割(本件新設分割)により滞納法人から事業(本件事業)を譲り受け、本件事業に係る契約上の地位のほか、本件事業に属する消極財産を承継した後、滞納法人が本件新設分割により取得した請求人の全株式を第三者法人に譲渡した上で、本件事業の用に供するための資産(本件資産)である積極財産を時価で譲り受けた(本件資産譲渡)ことから、本件資産が国税徴収法第38条《事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務》にいう譲り受けた事業に属する譲受財産に該当せず、請求人が本件資産を譲り受けた時点で同条及び国税徴収法施行令第13条《納税者の特殊関係者の範囲》第1項第5号に規定する特殊関係者に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件新設分割において、請求人が本件事業を間断なく継続して運営するためには、本件資産の承継が前提となっており、滞納法人が本件資産譲渡に関する手続を本件新設分割と並行して行っていたことから、本件事業の譲渡は、本件新設分割と本件資産譲渡という2つの法形式により完成したことが認められる。加えて、近時は事業譲渡が複数の取引により行われることも通常みられ、複数の取引が1つの企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱うとされていることから、複数の取引による事業譲渡については、いずれの取引により譲渡されたものであっても譲受財産に当たると解するのが自然である。したがって、本件事業の譲渡は、複数の取引による事業譲渡に当たると認められ、それらの取引の一つである本件資産譲渡により譲渡された本件資産は、国税徴収法第38条にいう譲受財産に該当すると解する。また、特殊関係者の判定は、本件資産に係る事情を踏まえると、請求人が本件新設分割の時点において特殊関係者であれば足りるというべきであることから、請求人は、国税徴収法第38条及び国税徴収法施行令第13条第1項第5号に規定する特殊関係者に該当する。ただし、原処分庁が認定した譲受財産には、原処分庁の差押えにより請求人への引渡しが不能となった債権が含まれ、この場合あらかじめ請求人と滞納法人との間において譲渡対価を減額する旨の合意をしていたことから、本件資産譲渡に係る契約の一部を合意解除したものと解され、当該債権は国税徴収法第38条に規定する譲受財産には含まれない。

《参照条文等》
 国税徴収法第38条
 国税徴収法施行令第13条第1項第5号、第2項
 法人税法第67条第2項
 会社法第49条、第762条第1項、第763条第1項、第764条第1項、第8項

《参考判決・裁決》
 平成20年10月1日裁決(裁決事例集76)
 東京地裁平成22年8月27日判決(税資(徴収関係判決)順号22−45)
 東京高裁平成23年2月22日判決(税資(徴収関係判決)順号23−7)

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