附帯税

更正の予知

  1. 延滞税
  2. 過少申告加算税
    1. 過少申告加算税の賦課
    2. 正当な理由
    3. 更正の予知(11件)
  3. 無申告加算税
  4. 不納付加算税
  5. 重加算税

更正があるべきことを予知してなされた申告ではないとして過少申告加算税を取り消した事例

裁決事例集 No.23 - 15頁

 国税通則法第65条第3項に規定する「更正があるべきことを予知して」とは、課税庁が当該納税申告書に疑惑を抱き、調査の必要を認めて、現実に納税者に対する質問、帳簿調査等の実地調査又は呼出調査等により当該申告が適正でないことを把握するに至ったことを前提として、納税者が修正申告書を提出する時点で更正のあることを察知していたことを指すものと解すべきであるところ、本件においては、原処分庁の調査担当者が電話で調査日時の取決めをした日後2日を経過して修正申告書の提出があり、更に2日を経過した後に調査があった事実などからみて、請求人は、本件修正申告書を提出する時点で、原処分庁がその調査によって請求人の当初の申告が適正でないことを既に把握していたことを察知していたと認めることはできないから、本件修正申告は、国税通則法第65条第3項に規定する「更正があるべきことを予知して」なされた申告ではない。

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租税特別措置法第37条の2第2項の規定による修正申告書の提出が「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらないとした事例

裁決事例集 No.41 - 5頁

(1)請求人は、修正申告書の提出以前においては、課税標準が未確定というべきであるから、所得金額に対する調査が行われることはあり得ないと主張するが、租税特別措置法第37条第4項の適用を受けた場合においては、買換資産の取得価額の見積額によって譲渡所得の金額を計算して確定申告をすることによって課税標準は確定すると解すべきであるし、また、同法第37条の2の規定は、修正申告書の提出以前において所得金額に対する調査ができない旨を規定したものではないこと、及び、(2)[1]原処分庁は、本件調査を行う時点において、本件譲渡物件について、請求人が確定申告書に添付した売買代金を700,000,000円とする売買契約書のほかに、売買代金を800,000,000円とする売買契約書が存在することを把握しており、[2]調査担当職員は、本件調査において[1]の事実を念頭において本件譲渡物件の取引経過及び売買契約書の作成経過並びに譲渡代金の受領経過等の調査を行っていることから、本件譲渡物件の分離課税の長期譲渡所得の金額についての調査があったと認めるのが相当であるし、また、売買代金を700,000,000円とした売買契約書に基づき、本件譲渡に関する売買契約書の作成経過等を調査されたことによって、請求人は、調査担当職員の調査が進行するに従い、本件譲渡物件の譲渡価額を除外して確定申告した事実が発覚し、やがて原処分庁によって更正されることを認識したと認めるのが相当であること等から、本件修正申告書の提出は、「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらないというべきである。

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申告もれの土地譲渡について具体的に指摘した来署依頼状の送付後になされた修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであるとした事例

裁決事例集 No.52 - 31頁

 請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないと主張するが、同法第65条5項の「調査」とは課税庁が行う課税標準又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味するものであり、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であり、課税庁が確定申告書を検討して納税者の過少申告を把握し、これを当該納税者に連絡したような場合には「調査があったこと」に該当する。本件では申告もれの土地譲渡について具体的に指摘した来署依頼状の送付後に修正申告書が提出されているから、修正申告は調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきである。

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修正申告書の提出について、国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないとして、これを排斥した事例

裁決事例集 No.60 - 62頁

 本件修正申告書の提出は、請求人が本件確定申告書の提出に当たり配偶者特別控除の規定の適用を誤ったことに起因し、かつ、当該誤りを是正するために行われたものであって、当初適正であった申告につきその後の事情の変化により過少申告となったことによりされたものではないことは明らかであり、国税通則法第65条第4項に規定する「正当な理由」がある場合には該当しないというべきである。
 また、所得税法は、いわゆる申告納税制度を採用しており、この制度の下では、納税者が自己の判断と責任において、課税標準等及び税額等を法令の規定に従い計算し、適正な申告をすることが求められているのであるから、原処分庁が申告の誤りを確定申告書の提出後直ちに指摘しなかったとしても、そのことで法令の適用を誤った請求人の責任が原処分庁に転嫁されるものではなく、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 そして、原処分庁は、本件確定申告書の内容を検討した結果、請求人には配偶者特別控除の規定が適用されず、結果として過少申告になっていることを把握し、その是正を行うために請求人に本件はがきを送付し、来署を依頼したこと、その後、原処分庁は、請求人が来署しないため、修正すべき内容を記入した本件修正申告書用紙を請求人に送付し、請求人はこの本件修正申告書用紙に署名押印して原処分庁に提出したことが認められる。
 以上の事実によれば、本件において納税者宅に赴く等の直接的な調査までは行われていないが、原処分庁が確定申告書を精査検討して過少申告の事実を把握した事実が認められ、このことは国税通則法第65条第5項に規定する「調査」に該当すると認められるし、また、本件修正申告書の提出は、修正すべき内容を記入した本件修正申告書用紙の原処分庁からの送付を受け、本件確定申告書の誤りを原処分庁から指摘されたことによるものであり、同項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないというべきである。

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法定申告期限から3年を経過した後に提出された修正申告書は、更正があるべきことを予知して提出されたものでないとして、過少申告加算税の賦課決定処分の全部を取り消した事例

裁決事例集 No.63 - 20頁

 原処分庁は、請求人が調査により修正申告が必要であることを指摘されて本件各修正申告書を提出したものであり、過少申告加算税を賦課したことに違法はない旨主張する。
 しかしながら、本件修正申告書は法定申告期限から3年を経過した後に提出され、原処分庁において「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた」ことの立証がされなければならないところ、原処分庁からはこの点について具体的な主張がなく、証拠資料の提出もない。
 したがって、本件修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当すると認められ、過少申告加算税の賦課決定処分については、その全部を取り消すのが相当である。

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調査担当者の電話による質問の後に提出された修正申告書は、更正があるべきことを予知して提出されたものであると認定した事例

裁決事例集 No.63 - 37頁

 請求人は、本件修正申告書の提出が国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する旨主張するが、原処分に係る調査担当者が請求人の申告内容を精査検討の結果、請求人の関与税理士に対して、電話により質問及び指摘しており、その後に本件修正申告書が提出されていることからすれば、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたというべきであり、過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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修正申告のしょうように至るまでの過程において、原処分庁が当初保有していた情報とは異なる申告漏れが判明した事情がある場合において、修正申告は更正があるべきことを予知してなされたものであると認めた事例

裁決事例集 No.74 - 27頁

 課税庁が申告内容について調査を行い、その結果に基づき修正申告のしょうようをした後に、修正申告書の提出があった場合には、自発的な修正申告があったとはいえないから、かかる修正申告書の提出は国税通則法第65条第5項に規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらない。
 本件では、1原処分庁は請求人の所得税に関する調査を行うために呼び出したこと、2その日に請求人に対する調査が行われたこと、3その結果、その場で配当所得の申告漏れになっていた正しい事実が明らかになったこと、4調査担当職員が調査の経過に照らし、上記配当所得以外の申告漏れは見込まれないと判断したことが認められ、修正申告のしょうようがあったものといえる。
 そして、原処分庁は、本件調査日以前に何度か請求人に対してC社との取引内容を明らかにする文書を提出するように求め、当初入手情報の存否の当否を確認するよう努めており、また、調査担当者は、本件調査日において、D社の株式に係る配当金が本件取引口座に入金されているにもかかわらず、当該収入が申告されていなかったという正確な情報を把握した上で修正申告をしょうようしたのであるから、請求人の主張は前提を欠いており理由がない。

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調査開始前に、請求人から関与税理士に従業員の横領行為発覚に伴う修正申告書の作成を依頼し、調査初日、同税理士から調査担当者に対して事実関係を説明するなどした後の修正申告書の提出は、「更正があるべきことを予知してされた」修正申告書の提出には当たらないとした事例

裁決事例集 No.79

 原処分庁は、第一次修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないとき」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、まる1請求人は、請求人に対する税務調査の開始日の約4か月半前ころには、経理担当者による横領の事実を把握し、関与税理士に当該事実を報告し、その約半月後には当該横領に係る資料を当該関与税理士に提出して当該横領に関する修正申告書の作成作業を依頼するなどして、納税者本人において、その申告が不適正であることを発見しあるいはその端緒となるべき資料等を把握し、その後、まる2当該関与税理士は、事実関係の確認及び修正申告書の作成作業に時間を要していたところ、まる3当該関与税理士及び請求人代表者は、当該調査の開始日には、調査担当職員が帳簿調査を開始する前に、当該調査担当職員に対し、当該横領資料の写しを交付し、当該横領に係る事実関係を説明し、当該調査担当職員から当該横領の解明作業を当該関与税理士が行うことの了承を得たもので、税務当局の調査着手後、早期の段階において、納税者から修正申告書を提出する旨の申出がなされたということができる。一方、まる4当該調査担当職員は、当該調査の開始前において当該横領につながるような資料は保有しておらず、帳簿調査において、当該横領行為の一部について確認するにとどまり、その全容について確認していなかったところ、まる5当該調査により、当該横領に関する事実関係が新たに明らかになったものはなかったものと認められる。
 以上によれば、上記申出を受けた当該調査担当職員は、当該申出に係る部分を除いて調査を行ったものであり、当該調査担当職員の調査により更正がなされることを予知されたと評価すべき事実を認めることはできず、第一次修正申告書は当該調査があったこととは別に自主的に提出されたものであり、調査があったことに基づいて提出されたと認められないことから、更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。

《参照条文等》
国税通則法第65条、第68条

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請求人による修正申告書の提出は、自発的な決意を有していたことが客観的に明らかであるから、更正があるべきことを予知してなされたものではないとした事例

平成23年5月11日裁決

《ポイント》
 この事例は、元事務員による給与支給額の水増しを把握した請求人が、原処分庁に事前説明に赴いたことを契機として税務調査がされ、修正申告に至ったことについて、請求人の具体的な事前説明に、請求人が自発的に修正申告を提出する決意を有していたと認めることができると判断して、加算税の賦課決定処分を取り消したものである。

《要旨》
 原処分庁は、本件修正申告書は、調査において調査担当職員が請求人の元事務員による給料支給額の水増し(本件水増し)を確認した結果判明した横領の事実に基づき提出されたものであり、また、調査に先立つ事前説明時には請求人が横領の事実を確定的に認識していたとは認められず自発的に提出されたものではないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない旨主張する。
 しかしながら、請求人は、少なくとも事前説明時までに本件水増しのすべてを把握して修正申告をする決意をし、事前説明の際には面談職員らに対して本件水増しについて説明した上で調査を求めており、それに基づいて調査が行われたと認められることから、請求人は自発的に修正申告書を提出する決意を有しており、その決意は事前説明において客観的に明らかになったものということができる。そうすると、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。

《参照条文等》
 国税通則法第65条第5項

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「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」ことの判断は、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して行うべきであるとした事例

平成24年1月24日裁決

《要旨》
 請求人は、本件各修正申告書の提出が国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たる旨主張する。この点、「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない」ことの判断は、国税通則法第65条第5項の文言及び趣旨からすると、調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、修正申告に至る経緯、修正申告と調査の内容との関連性等の事情を総合考慮して行うべきであるところ、本件においては、請求人は、調査担当職員からの国外送金に係る確認依頼を発端として修正申告を決意したものであり、請求人の国外における所得に関する調査が進行するなかで、当該所得について更正される可能性が高まったことを認識し、その認識した調査の内容と関連性を有する修正申告を行っているから、本件各修正申告は調査を受けたことを原因として更正される可能性があるとの認識によってされたものと認めることができる。したがって、本件各修正申告書の提出は、「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たらない。

《参照条文等》
 国税通則法第65条第5項

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税務署における資料の調査により請求人の給与所得の申告が漏れているものと判断した上で、尋ねたい事項や持参を求める書類を具体的に明記した文書を送付するなどの一連の過程から、国税通則法第65条第5項の「調査」があったと判断した事例

平成24年3月7日裁決

《要旨》
 請求人は、税務署への来訪を案内する文書(本件文書)には「調査」である旨の記載がない上、税務相談であればよいと断った上で面接に応じたものであり本件修正申告書を提出する前に「調査があった」とはいえないから、本件文書を受け取った後、自ら申し出た上での本件修正申告書の提出は、「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当する旨主張する。
 しかしながら、原処分庁所属の調査担当職員は、税務署における資料の調査により、請求人の給与所得の申告が漏れているものと判断し、その判断に基づいて、尋ねたい事項及び持参を求める書類を具体的に明記した本件文書を請求人に送付し、その後の電話でも本件文書と同じ内容を告げており、これらの一連の過程は、証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て決定に至るまでの判断過程の一端であるから、「調査」があったと認められる。そして、請求人は、調査があったことを端緒として、給与所得についての修正申告をしなければ、調査が進行し、やがて原処分庁が請求人に対する更正処分を行うであろうことを予知し、その上で本件修正申告書を提出したものと認められるから、本件修正申告書の提出は、「その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しない 。

《参照条文等》
 国税通則法第65条第5項

《参考判決・裁決》
 東京高裁平成17年4月21日判決(訟月52巻4号1269頁)
 平成14年2月25日裁決(裁決事例集63・37頁)

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