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所得の種類

有価証券の継続的売買による所得

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得
    1. 金銭の貸付けによる所得
    2. 還付加算金
    3. 有価証券の継続的売買による所得(4件)
    4. 先物取引による所得
    5. 不動産の継続的譲渡による所得
    6. 競走馬の保有による所得
    7. 航空機等のリースによる所得
    8. 覚醒剤の密輸、密売に係る所得
    9. 謝礼金等
    10. 適格退職者年金
    11. 個人保証の対価
    12. LPSから得た損益及び分配金
    13. 新株予約権の行使に伴い生じた経済的利益
    14. 職務発明報奨和解金
    15. 社債の換金による所得

有価証券の売買による所得を雑所得とした事例

裁決事例集 No.1 - 9頁

 有価証券の売買は、継続的に行われているが、売買の実態を総合的に勘案すると、その所得は事業所得ではなく雑所得とすることが相当である。

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有価証券の売買による所得が事業所得ではなく雑所得であるとした事例

裁決事例集 No.21 - 19頁

 株式の取引が事業に当たるか否かは、一般社会通念に照らして判断するほかはないが、そのためには事業としての社会的客観性が問われるべきであり、この観点からすれば、その取引の種類、取引におけるその者の役割、取引のための人的、物的設備の有無、資金の調達方法その他諸般の状況等を総合勘案して判断すべきものであり、単に所得税法施行令第26条第2項各号に規定する株式の売買回数及び売買株数を充足しているだけでは足りず、株式のために投下若しくは動員された資金の額及び人的物的設備等が相当程度の規模によっていることを要すると解されるところ、請求人の株式取引のために費やした精神的、肉体的労力の程度、取引のための資金調達の方法、その人的、物的設備の組織的な利用状況、請求人の社会的地位等から判断して、本件の株式取引は事業に当たるとする社会的客観性を有しているものとは認められないので、当該株式取引から生じた損失の額を、雑所得を生ずべき営利を目的とした継続的行為から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。

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有価証券の売買及び商品先物取引により生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分を適法とした事例

裁決事例集 No.38 - 36頁

 一定の具体的取引行為が「事業所得を生ずべき事業」に該当するか否かは、結局一般社会通念に照らし当該取引が事業として行われているか否かによって決せられるべきものであるが、有価証券の売買及び商品先物取引は投機性の強いものであるから、その判断においては、単に当該取引の営利性、有償性、継続性及び反復性の有無のみならず、事業としての客観性の有無が問題とされるべきであり、この観点からは、当然にその取引のための人的・物的設備の有無、資金調達方法、取引に費やした精神的、肉体的労力の程度、その者の職歴、社会的地位などのほか、当該取引によって相当期間継続して安定した収益を得られる可能性があるかどうかについて考察せざるを得ないものというべきである。
 本件において、請求人が、長期間にわたって有価証券の売買及び商品先物取引を大規模、かつ、継続的に反復して行っていたことが認められ、取引に費やした精神力、肉体的労力の程度も軽視し難いものがあったことは認められるものの、請求人は大規模な病院を経営し、その傍ら本件有価証券の売買及び商品先物取引を行っていたものであり、結局、請求人の趣味と実益を兼ねた投機により損失を被ったにすぎないから、本件有価証券の売買及び商品先物取引は、いまだ社会通念上事業と認められるに足りるものとはいえず、所得税法上の事業には該当しないものというべきであり、したがって、本件有価証券の売買及び商品先物取引から生じた損失を雑所得を生ずべき業務から生じた損失の額と認定した原処分は適法である。

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値下がりしている保有株式を売却すると同時に、同一銘柄の株式を同株数、同価額で購入する取引によって生じた売却損について、これを租税回避行為として否認することはできないとした事例

裁決事例集 No.39 - 106頁

 値下がりしている保有株式を売却すると同時に、同一銘柄の株式を同株数、同価額で購入する取引によって生じた売却損について、原処分庁は、かかる取引は手数料等の実損を生じるだけ積極的な利益追求としてのメリットは全くない、株式売却損を発生させ、他の売買益と通算して税負担を減少させる目的で行ったものと認められるから、所得税法に内在する実質課税の条理に基づき、本件取引はなかったものとして雑所得の金額を計算すべきである旨主張する。
 しかし、[1]本件売却損は、保有株式の値下がりによる損失を現実の売却により顕在化させただけであって、意図的に作り出したものではないから、結果として損失が生じたとしても、不自然、不合理なものとはいえないし、[2]保有株式の値下がりによる損失を顕在化させる目的で本件取引をしたものであっても、株式取引が極めて経済的危険の多い取引であり、所得税が経済取引上考慮されるべき経済的負担であることを考えると、そのような目的があるからといって、これを不自然、不合理として否定することはできず、[3]現実の取引によって値下がり損失を実現している以上、評価損と同視することはできず、仮装ないし不自然な取引とはいえないから、その行為は租税回避行為に当たらない。

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