課税標準

課税標準及び税額の認定

  1. 課税標準の認定基準
  2. 固定資産課税台帳価格がない場合
  3. 課税標準及び税額の認定(7件)

登録免許税法第10条に規定する「登記の時における不動産の価額」の不動産には、マンションの団地共用部分の持分が含まれるから、登録免許税の課税標準の計算上、請求人の持分割合に応じた当該団地共用部分の価額を加算すべきとした事例

平成22年10月12日裁決

 請求人は、売買により取得した本件マンションの所有権移転登記を行うに当たり、本件マンションの区分所有建物(本件建物)の所有権移転登記は行われているが、本件マンションの団地共有部分(本件団地共用部分)については、表示登記はあるものの、所有権移転登記は行われていないから、法令上の根拠なくして、本件団地共用部分を登録免許税の課税標準に含めた本件認定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、本件団地共用部分は、団地共用部分とする規約が定められ、その旨の登記が行われているから対抗要件を備えており、団地建物所有者の共有に属し、専有部分を処分する場合、その処分の効果は、本件団地共用部分にも及ぶ。そして、本件団地共用部分については、民法第177条《不動産に関する物権の変動の対抗要件》の規定は適用されず、団地共用部分である旨の登記がなされれば、その共有持分について登記をする必要がないから、本件建物の所有権移転登記により、本件団地共用部分についても規約による持分割合につき対抗力を有し、財産権保護の利益を享受することとなる。そうすると、請求人に係る本件建物の所有権移転登記は、本件団地共用部分の持分の移転についての登記と同様の法的効果を生じさせるものであるから、当該所有権移転登記における登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項に規定する「登記の時における不動産の価額」の不動産には、本件団地共用部分の請求人の持分が含まれると認められ、このことは、登録免許税は、不動産の登記を受けることにより第三者に対する対抗力を備え、それにより権利が保護される等の利益を受けることにかんがみ、その背後にある担税力に着目して課税するものであるという趣旨からしても相当であると認められる。
 したがって、本件建物の登録免許税の課税標準の計算上、請求人の持分割合に応じた本件団地共用部分の価額が含まれる。

《参照条文等》
 登録免許税法第2条、第9条、第10条、第26条、附則第7条
 登録免許税法施行令附則第3項
 建物の区分所有に関する法律第11条、第15条、第67条

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登録免許税の課税標準の額について、請求人が主張する鑑定評価額は合理的なものではなく、原処分庁が採用した近傍類似価格に所要の調整等を行って算定すべきであるとした事例

平成23年8月2日裁決

《ポイント》
 本事例は、固定資産課税台帳に登録された価格のない土地の課税標準の額を算定するに当たり、固定資産評価基準における「その他の宅地評価法」を用いることは相当であるものの、原処分庁の採用した近傍類似価格は当該土地の形状等に応じた所要の調整を行って算定されていないため、当該近傍類似価格をそのまま採用することはできないとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人が取得した本件土地の持分の登記に係る登録免許税の課税標準の額について、本件土地が固定資産課税台帳に登録された価格(台帳価格)のない私道の用に供されている宅地であることから、本件土地に係る固定資産評価証明書に記載された近傍類似価格(本件近傍類似価格)を基に、公衆用道路であることの補正のみを行って算定すべきである旨主張する。
 しかしながら、台帳価格のない不動産の登録免許税の課税標準の額は、当該不動産に類似する不動産の適正な台帳価格を基礎として合理的に算定するのが相当であると解されるところ、本件近傍類似価格は本件土地の存する状況類似地区内の整形地である標準宅地の単位地積当たりの価額であるのに対し、本件土地は奥行の長大な不整形地であることからすると、本件土地の持分の課税標準の額は、本件近傍類似価格を基に、本件土地の形状等に応じて固定資産評価基準による所要の調整を行った上で、公衆用道路であることの補正を行って算定するのが相当である。

《参照条文等》
 登録免許税法施行令附則第3項

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固定資産課税台帳に登録された土地の地積を基礎とした同台帳価格が、登録免許税法第10条第1項に規定する価額(時価)を超えていることから、合理的に算定した価額をもって課税標準とするのが相当であるとした事例

平成24年1月24日裁決

《ポイント》
 この事例は、登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、基本的には固定資産課税台帳(課税台帳)に登録された価格(課税台帳価格)によるべきであるとしつつ、本件においては、実測面積を上回る課税台帳に登録された地積(登録地積)に基づく土地の課税台帳価格が、登録免許税法第10条第1項に規定する価額(時価)を超えていること及び課税台帳価格を登録地積で除して算出した単価に実測面積を乗じて算出した価格がその土地の時価の範囲内にあることをそれぞれ検証した上で、同価格を課税標準とするのが相当と判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、登録免許税は、登記行為に対して画一的に課されるものであるから、移転登記後に、本件土地の地積が、過大であることが判明したとしても、適法に確定した登録免許税に何ら影響はない旨主張する。
 しかしながら、登録免許税の課税標準たる不動産の価額とは、登記の時における時価であると解されるところ、簡易迅速な税額確定が求められる登録免許税においては、基本的には固定資産課税台帳(課税台帳)に登録された価格(課税台帳価格)によるべきであるが、課税台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合には、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を登録免許税の課税標準として採用することができると解するのが相当である。また、土地の時価とは、必ずしも一義的に確定され得るものではなく、一定の幅をもった概念であるから、時価の算定に当たり、合理性のある算定方法が複数ある場合には、それぞれの算定方法に従って算出された各価額の範囲をもって時価相当額と解すべきである。本件土地の場合、実際の地積は課税台帳に登録された地積を下回るところ、本件土地の課税台帳価格は、地価公示標準地の価格及び取引事例を基礎として合理的に算出された単価に本件土地の実際の地積を乗じて算定した本件土地の価額をいずれも上回るから、当該課税台帳価格は、時価を超えているものというべきであり、課税標準とすべきではない。他方、請求人が主張する本件土地の課税標準は、上記の本件土地の価額の範囲内にあり、合理的に算定されていると認められることから、これをもって課税標準とするのが相当である。

《参照条文等》
 登録免許税法第10条、附則第7条

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台帳価格に土地の現況が反映されておらず、当該台帳価格が登録免許税法第10条第1項に規定する価額(時価)を超えていることから、当該時価を公示価格を基に算定した事例

平成24年12月5日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人が取得した本件土地の登録免許税の課税標準たる価額について、登記を行った年度の固定資産課税台帳に登録された価額(台帳価格)となる旨主張する。
 しかしながら、登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項に規定する不動産の価額と同法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》に規定する台帳価格の関係については、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合には、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を課税標準として採用することができると解するのが相当であるところ、本件土地は、登記を行った年度の台帳価格の基準日において無道路地であったと認められるのに対し、当該台帳価格は無道路地としての評価がなされていなかったと認められることから、当該台帳価格が時価を表していない場合も想定される。そこで、当審判所が土地価格比準表に準拠して公示価格を基に本件土地の時価を求めたところ、登記を行った年度の台帳価格を下回るものとなり、本件土地については他に時価を求める合理的な手法が見当たらないことからすれば、本件土地の登録免許税の課税標準たる価額は、当審判所が求めた価額とするのが相当である。

《参照条文等》
 登録免許税法第10条、附則第7条

《参考判決・裁決》
 平成24年1月24日裁決(裁決事例集No.86)

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原処分庁が認定した登録免許税の課税標準たる土地の価額は、近傍類似の土地の適正な台帳価格を参考として合理的に算定されたものではないとして処分の全部を取り消した事例(平成26年11月登記により納付された登録免許税に係る還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・全部取消し・平成28年3月7日裁決)

平成28年3月7日裁決

《要旨》
 原処分庁は、敷地権付き区分建物に係る請求人及びその配偶者が有する敷地権(本件敷地権)の登記申請(この申請に係る登記を本件登記)において、本件敷地権の目的である各土地(本件各土地)は年の途中で雑種地から宅地に地目が変更されているところ、同申請の添付書類である「固定資産(土地・家屋)評価証明書」には本件各土地の1平方メートル当たりの近傍宅地の類似価額(本件近傍類似価額)が記載されていることから、本件近傍類似価額に基づき本件敷地権に係る登録免許税の課税標準額たる価額を算出すべきである旨主張する。
 しかしながら、登録免許税の課税標準額につき、台帳価格のある土地についてはその価格に相当する額とするが、登記簿の記載により現況地目が変更していることが判然としている場合は、近傍類似の土地の固定資産評価額(台帳価格)を参考として定めるとされていることからすると、登記官が認定した課税標準たる土地の価額は、それが近傍類似の土地の適正な台帳価格を参考として合理的に算定されたものであるとすれば、適法であると解するのが相当である。これを本件についてみると、原処分庁が算出した課税標準たる本件敷地権の価額は、本件近傍類似価額に本件各土地の地積と本件敷地権の割合を乗じて算出したものであり、本件各土地の形状等に応じた固定資産評価基準に定める画地計算法等に基づく補正は行っていないことが認められるところ、このような補正を行っていない原処分庁の本件各土地の価額の算定は、合理的なものと認めることはできない。したがって、原処分庁が算出した課税標準たる本件敷地権の価額は、本件登記の時における不動産の価額として適正であるとは認められない。

《参照条文等》
 登録免許税法第10条、同附則第7条
 登録免許税法施行令附則第3項及び第4項

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成23年8月23日判決(訟月59巻5号1299頁)
 平成14年5月30日裁決(裁決事例集No.63)

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火災による損害が反映されていない建物の台帳価格が、登録免許税法第10条第1項に規定する価額(時価)を超えていることから、合理的に算定した価額をもって課税標準とするのが相当であるとした事例(登録免許税の還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し・平成28年6月8日裁決)

平成28年6月8日裁決

《ポイント》
 本事例は、火災による損害が反映されていない台帳価格の建物の時価は、経年減点補正率により算定された建物の台帳価格に、市の建物の固定資産評価に係る調査結果に基づき算定した建築時再建築費評点数に占める補正後再建築費評点数の割合を乗ずることで、本来考慮されるべき損害を反映した建物の台帳価格に相当する価額の算出が可能であり、当該価額は、固定資産評価基準に従って適正に算定されたものといえ、登記の時における建物の適正な時価を表したものと認められると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、所有権移転登記(本件登記)時に課税標準とした建物(本件建物)の固定資産課税の台帳価格(台帳価格)に、過去に生じた火災による損害(本件損害)が反映されていないとしても、台帳価格のある不動産の課税標準の額は、登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》、登録免許税法施行令附則第3項の規定により、本件建物の本件登記の時における台帳価格によるべきである旨主張する。
 しかしながら、登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項の登録免許税の課税標準たる不動産の価額とは不動産の「時価」をいうところ、時価の設定は基本的に当該不動産の台帳価格によるべきであるものの、台帳価格が何らかの理由により時価を表していない場合には、他の方法により求めた時価を登録免許税の課税標準として採用することができると解するのが相当である。そこで、本件建物の時価を検討すると、経年減点補正率により算定された本件建物の台帳価格に、市の本件建物の固定資産評価に係る調査結果に基づき算定した建築時再建築費評点数に占める補正後再建築費評点数の割合を乗ずることで、本来考慮されるべき本件損害を反映した本件建物の台帳価格に相当する価額の算出が可能であり、当該価額は、固定資産評価基準に従って適正に算定されたものといえ、本件登記の時における本件建物の適正な時価を表したものと認められる。そして、本件建物の台帳価格はその時価を上回るから、本件建物の登記に係る課税標準の額は、本件建物の台帳価格とはならず、当該時価によるべきである。

《参照条文等》
 登録免許税法第10条第1項
 登録免許税法附則第7条

《参考判決・裁決》
 平成24年1月24日裁決(裁決事例集No.86)
 平成24年3月6日裁決(裁決事例集No.86)
 平成24年12月5日裁決(裁決事例集No.89)

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登録価格のない土地の課税標準について、当該土地の近傍に存する土地の登録価格を基礎として算定した事例(平成27年3月登記により納付された登録免許税の還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・一部取消し・平成28年9月28日裁決)

平成28年9月28日裁決

《ポイント》
 本事例は、登録価格のない土地の課税標準について、当該土地に類似する土地は当該土地に隣接する土地よりも当該土地の近傍に存する土地(近傍地)であるから、当該近傍地の登録価格を基礎として算定した価額と判断したものである。

《要旨》
 請求人は、登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》に規定する価額につき、同附則の委任を受けた登録免許税法施行令附則第3項(施行令附則第3項)に規定する固定資産課税台帳に登録された評価額(登録価格)のない土地(本件土地)の登記申請に際し納付した登録免許税額は過大であり、本件土地が合筆・分筆される前の土地(本件土地とおおむね所在地が同じ。)に係る平成27年1月1日現在の登録価格に基づく1平方メートル当たりの評価額に本件土地の地積を乗じて算定した価額(請求人主張額)を本件土地の登録免許税の課税標準(本件土地課税標準)とするべきである旨主張し、原処分庁は、登記申請に際し、登記機関が認定した価額(本件登記機関認定価額)の基礎とした本件土地に隣接する土地(本件隣接地)は、その立地条件等から本件土地との類似性が極めて高い土地であり、本件登記機関認定価額に誤りはない旨主張する。
 しかしながら、本件土地の登記申請が平成27年3月になされていることから、本件登記機関認定価額算定の基準日は、施行令附則第3項第1号の規定により、平成26年12月31日となるため、請求人の主張する平成27年1月1日現在の登録価格を算定の基礎とする請求人主張額をもって、本件土地課税標準とすることはできない。また、本件隣接地は、本件土地の属する地域の土地利用に係る行政上の規制等の内容や登録価格の算定の基礎となる価格が異なっており、本件土地と類似する土地であるとは認め難く、他方、本件土地の近傍に存する土地(本件近傍地)は、土地利用に係る行政上の規制等の内容や登録価格の算定の基礎となる価格が本件土地と同じである。したがって、本件隣接地よりも本件土地に類似する土地は、本件近傍地であると認められ、本件近傍地の登録価格を基礎として算定した価額を本件土地課税標準とするのが相当である。

《参照条文等》
 登録免許税法第10条
 登録免許税法附則第7条
 登録免許税法施行令附則第3項

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