役務提供による収入
- 収益の帰属事業年度
- 益金の額の範囲及び計算
- 損失の帰属事業年度
- 損金の額の範囲及び計算
- 圧縮記帳
- 引当金
- 繰越欠損金
- 借地権の設定等に伴う所得の計算
- 特殊な損益の計算
- 適格合併
入学金の収益計上の時期は学生の身分を取得させた日であるとした事例
裁決事例集 No.3 - 18頁
入学金は学生たる身分を取得するための対価であるから、その収益計上の時期は学生たる身分を取得する時期であると解すべきである。したがって、入学金の入金時をもってその収益計上時期とした原処分は誤りである。
昭和46年12月10日裁決
講習会に係る講習料についての収益の計上時期は講習会の終了時であるとした事例
裁決事例集 No.15 - 47頁
請求人は、本件講習会にはその事後処理の事務である受講終了者の名簿の作成及び当該名簿の知事への送付等を含むものであり、これらの事後処理の事務は当事業年度には完了していないから、その受講料に係る収益の計上時期は、翌事業年度であると主張しているが、本件受講料に係る請求人の受講者に対する役務の提供は、当事業年度内に完了しており、本件受講料に係る各講習会の事業とその事業等の整理等として行う事後処理の事務とは区分することが相当と認められるので、本件受講料の収益の額の計上時期は当事業年度であるとする原処分は相当である。
昭和52年11月21日裁決
自動車の運転免許の技能教習料等のうち未教習部分に係る金額について前受金経理を相当であるとした事例
裁決事例集 No.23 - 107頁
既納の技能教習料のうち、未教習部分に係る金額は、受講者に返還請求権があること及び入所後6か月を経過した受講者も未教習部分に対し受講する権利があることなどから、入所後6か月を経過した時点で既納の技能教習料のすべてを実現した収益とするのは相当でない。
また、既納の学科教習料のうち、未教習部分に係る金額については、いったん納入されると受講者に返還請求権がないこと及び請求人は受講者に対し道路交通法規則に従い入所後6か月以内に学科教習をする義務があり、受講者が6か月以内に終了できる時間割表によって学科教習を実施していることなどからみれば、入所後6か月を経過した受講者の未教習に係るものは実現した収益とし、入所後6か月以内の受講者の未教習に係るものは、未実現の収益とするのが合理的である。
昭和56年10月28日裁決
請求人が建設業者との間においてテレビ共同聴視受信設備の維持管理業務を長期にわたって受託する旨の契約を締結し、その保守管理料を一括収受した場合の収益計上は、その一括収受額を契約期間で除して得た金額によることが相当であるとした事例
裁決事例集 No.35 - 93頁
請求人は、本件金員(一括収受額)は建設業者からの預り金であるから、現実に保守及び事故等による工事をする都度、これに要した費用等相当額を費用及び収益に計上するとともに、本件委託契約が終了した時点において、本件金員と現実に要した維持管理費との間で過不足を生じた場合には、その時点で当該過不足分を収益又は損失として計上すべきであると主張するが、本件金員は、請求人に帰属する収益に該当するものであり、その収益として計上すべき時期については、本件金員は本件委託契約に基づき請求人の共聴設備の維持管理業務という役務提供の対価として支払われたものであり、かつ、当初から返還を要しないものであると認められるから、本件金員を収受した日の属する事業年度の益金の額に算入するのが相当であると考えられないではないが、本件のように、[1]長期にわたる維持管理収入を当初に一括して前受けするという契約で、[2]本件金員を収受した時点においては、契約上の義務である役務提供を何ら履行しておらず、将来請求人の役務提供が不可能となったときは本件金員の一部の返還義務を負うこともあり得るもので、[3]契約期間中に発生すべき原価等の額を当初において合理的に見積ることが事実上不可能と思われるものについては、本件金員を契約期間で除して得た金額を1年当たりの収益として各事業年度の益金の額に算入するという計上方法は、法人税法第22条第4項にいう一般に公正妥当な会計処理の基準に合致するものということができる。
昭和63年6月22日裁決
請求人は、本件発注者に対して、工事完了年月日までに本件工事の全部を完了して引き渡したものと認められるから、本件工事の請負代金の額は、本件事業年度の益金の額に算入するのが相当であるとした事例(
平成26年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分、
平成26年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分、
平成26年7月1日から平成27年6月30日までの消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分、
延滞税・
一部取消し、
棄却、
却下・平成29年10月4日裁決)
《ポイント》
本事例は、本件工事には設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等は含まれておらず、請求人は、本件発注者に対して本件竣工届を提出して、工事完了年月日付で本件工事の請負代金の残額を請求したこと、本件発注者は、請求人に対して本件検査通知書を発行し、同日以降、設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等をしていたことからすると、請求人は、本件発注者に対して、同日までに本件工事の全部を完了して引き渡したものと認められるとしたものである。
《要旨》
請求人は、改修工事(本件工事)を請け負い、主要な工事を終えて発注者(本件発注者)に対し、竣工日を平成27年3月27日とする竣工届(本件竣工届)を提出し、本件発注者から工事完了年月日を同月31日とする工事検査通知書(本件検査通知書)を受領しているが、本件工事には、次期工事が開始されるまでの間、本件工事の完了箇所及び次期工事予定区域を囲うためにバリケードを設置して現場管理することが含まれ、それらを同年9月まで継続して行っていたのであり、本件工事は同年3月31日までに完了していなかったから、本件工事の請負代金の額は、同日を含む事業年度(本件事業年度)の益金の額に算入されない旨主張する。
しかしながら、本件工事には設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等は含まれておらず、請求人は、本件発注者に対して本件竣工届を提出して、同月31日付で本件工事の請負代金の残額を請求したこと、本件発注者は、請求人に対して本件検査通知書を発行し、同日以降、設置したバリケードの管理及び本件工事の施工区域の管理等をしていたことからすると、請求人は、本件発注者に対して、同日までに本件工事の全部を完了して引き渡したものと認められるから、本件工事の請負代金の額は、本件事業年度の益金の額に算入するのが相当である。ただし、本件事業年度の益金の額に算入される本件工事の請負代金の額には、請求人が設置したバリケードの使用料が含まれており、それに個別対応する原価であるバリケードの賃借料の一部を本件事業年度の損金の額に算入すべきところ算入されていなかったことから、原処分の一部を取り消すべきである。
《参照条文等》
法人税法第22条第2項
民法第624条、第633条
法人税基本通達2-1-5、2-1-6
請負による収益の額は、約した役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入するとした事例(平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、平成26年4月1日から平成27年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、平成24年4月1日から平成25年3月31日まで、平成26年4月1日から平成27年3月31日まで及び平成27年4月1日から平成28年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成30年4月13日裁決)
《ポイント》
本事例は、原処分庁が、注文書等に記載された請負代金の支払条件である「検収に基づく出来高払い」の文言を誤って解し、請負による収益の額を部分完成基準により益金の額に算入すべきとした原処分の全部を取り消したものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人が元請先から請け負った各工事(本件各工事)に係る注文書及び注文請書には、請負代金の支払条件として、元請先の検収に基づく出来高払いによることとされていることから、法人税基本通達2−1−9《部分完成基準による収益の帰属時期の特例》が定める特約又は慣習があり、出来高に応じた請求金額(本件各出来高請求金額)を出来高が検収された日の属する事業年度の益金の額に算入すべきである旨主張する。
しかしながら、本件各出来高請求金額は、本件各工事の工事監督者が本件各工事の出来高を査定したもので、本件各工事の出来高の請求書ではこの査定を「検収」と記載しているが、これは出来高の金額を確認する、あるいは出来高の金額の支払を認めるという意味で使用しているものであり、元請先が本件各出来高請求金額に相当する部分の完成を確認したものではない。そして、元請先は、工事の竣工検査における合格日(検査合格日)を検収日(引渡日)としているから、本件各工事はそれぞれの検査合格日に請求人の役務の提供が完了したと認められる。したがって、本件各工事に係る収益は、法人税基本通達2−1−5《請負による収益の帰属の時期》に定めるいわゆる工事完成基準により、本件各工事の請負代金の全額を本件各工事の検査合格日の属する事業年度の益金の額に算入すべきものである。
《参照条文等》
法人税法第22条第2項、第4項
法人税基本通達2−1−5、2−1−9
収益は、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきものとした事例(
平成23年1月1日から平成23年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、
平成24年1月1日から平成25年12月31日までの各事業年度の法人税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分、
平成23年1月1日から平成23年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、
平成24年1月1日から平成24年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、
平成25年1月1日から平成25年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分・
一部取消し、
棄却、
却下・平成30年11月14日裁決)
《ポイント》
本事例は、ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと解されるとしたものである。
《要旨》
請求人は、原処分庁が売上計上漏れがあったとした事件業務に係る請求金額の一部について、請求した金額ではなく調停により減額決定した金額であること、
着手金の支払がなく委任契約が途中解約されたことから零円であること及び
日当旅費は、委任契約上免除する旨の合意がありその支払もなかったことから零円であることなどから益金の額が過大である旨主張し、原処分庁は、当該事件業務の売上高は、請求人が保管していた顧客との委任契約書及び請求書を基に算出したもので、当該事件業務に係る契約が解除された等の事実は認められない旨主張する。
しかしながら、収益はその収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきところ、及び
については、請求人は報酬金を依頼人に請求していることから、この時点で当該報酬金の支払請求権が確定したものと認められ、当該請求金額は請求した事業年度の益金の額に算入されることとなり、
については、依頼人との委任契約書において、日当を免除する旨定められていることから、請求人は、当該依頼人に対して日当を請求する権利を有していたとは認められず、請求書に記載されている日当の額は益金の額には算入されない。そして、
の減額金額については、請求した事業年度の益金の額に算入されるものの、翌事業年度に減額が確定しており、当該減額金額は翌事業年度の損金の額に算入されること及び
の金額は益金の額に算入されないことになるから、それらの部分を取り消すべきである。
《参照条文等》
法人税法第22条第2項及び第4項
《参考判決・裁決》
最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決(民集47巻9号5278頁)
東京地裁平成20年1月31日判決(税資258号順号10880)
一括払された金型等相当額を24か月にわたり収益計上した請求人の会計処理が公正処理基準に適合するものとした事例(令和2年4月1日から令和3年3月31日までの事業年度の法人税、令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税事業年度の地方法人税及び令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税期間の消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し)
《ポイント》
本事例は、一括払された金型等相当額について、その全額を請求人が受領した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきとしてされた更正処分に対し、金型等相当額の負担に係る契約の法的性質等からすれば、24か月にわたり収益計上した請求人の会計処理は公正処理基準に適合すると判断したものである。
《要旨》
原処分庁は、請求人が、発注者から24回の月額均等分割払で受領し、部品の量産開始日を含む月から24か月に分割して毎月月末に収益に計上していた、請求人が所有権を有する金型等の製作費用相当額(金型等相当額)について、契約の変更により一括で受領しており、請求人が受領した時点で請求人の管理支配下に置かれ所得が実現したとして、金型等相当額を受領した日の属する事業年度において、全額を益金の額に算入すべき旨主張する。
しかしながら、金型等相当額の負担に係る請求人と発注者との契約の法的性質及び当該契約に係る各役務の特質からすれば、請求人が受領した金型等相当額は、請求人から発注者に対し、継続的に日々提供される役務に応じて、1か月を単位として対価が支払われる約定に基づき、各月末日の経過ごとに、24回にわたり、過去1か月分の役務に対する対価として代金が確定し、その支払期日を翌月とする発注者と請求人との間の契約に基づき支払われるものと認められること及び金型等相当額の支払に関する基本契約書の条項が変更されていないことから、請求人が、部品の量産開始日を含む月から24回にわたり、毎月末日に収益に計上した会計処理は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(公正処理基準)に適合するものであり、一括で受領した金型等相当額の全額を受領した日の属する事業年度の益金の額に算入すべきとは認められない。
《参照条文等》
法人税法第22条の2第1項、第2項
消費税法第2条第1項第8号
《参考判決・裁決》
最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決(民集47巻9号5278頁)
最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁)