所得金額の計算

役員及び従業員給与

  1. 収益の帰属事業年度
  2. 益金の額の範囲及び計算
  3. 損失の帰属事業年度
    1. 土砂採取跡地の埋戻し費用
    2. 租税公課
    3. 賃借料
    4. 技術使用料
    5. 役員及び従業員給与(6件)
    6. 支払利息
    7. 保証債務の履行損失
    8. 示談金
    9. オプション料
    10. 手数料
    11. 雑損失
    12. 過年度仮装経理の修正損失
    13. 寄付金
    14. その他の費用
  4. 損金の額の範囲及び計算
  5. 圧縮記帳
  6. 引当金
  7. 繰越欠損金
  8. 借地権の設定等に伴う所得の計算
  9. 特殊な損益の計算
  10. 適格合併

社債の払込みに充てられた従業員の特別賞与は損金算入できないとした事例

裁決事例集 No.7 - 31頁

 社債の払込みに充てることを条件として支給した従業員の特別賞与は、労働協約等によって定められたものではなく、また、その支給額の決定に当たっても、請求人(会社)の一方的意思によるなどし意性があるので、これを支給する具体的な原因があったとは認められない。
 さらに、本件社債については、譲渡制限があり、かつ、会社が社債を買い取る場合の換金割合も会社の一方的な内規によって定められているなど、客観的にみて本来の社債であるとは評価し難い。
 したがって、本件特別賞与について債務が確定しているとは認め難く、損金の額に算入することを否認したのは相当である。

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従業員に対する決算賞与について期末までに債務が確定しているとして損金算入を認めた事例

裁決事例集 No.23 - 126頁

 従業員に対する決算賞与の支給に当たり、期末に未払金経理により損金に計上した決算賞与は、[1]期末に従業員ごとの賞与の額が決定されていること、[2]決算期賞与明細書を作成していること、[3]当該明細書に従業員の各人が確認印を押印していること、[4]翌期おいて決定額どおりに支給されていることなどの事実から、当該事業年度終了の日までに債務として確定していたものと認めるのが相当である。

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未払金経理により損金の額に算入した従業員賞与の額は当期末までに債務が確定していないから、損金算入は認められないとした事例

裁決事例集 No.36 - 99頁

 未払金として当期に損金の額に算入した従業員に対する総額5,000万円の賞与(本件従業員賞与)について、請求人は、当期末までに、[1]支給総額及び[2]各人別支給額を決定し、かつ、[3]各人別支給額を口頭で各人に通知していたから、当期末までに債務が確定していたと主張するが、未払金内訳書、未払賞与額算定基準書及び関与税理士あて連絡票は、その作成日付のころに経理担当者が作成したものと認められるところ、未払金内訳書には本件従業員賞与の記載がなく、また、同連絡票には支払賞与額5,000万円との記載があるだけであること及び同算定基準書の記載内容からすると、本件従業員賞与の支給総額は翌期以降に決定されたと推認するのが相当であるから、当期末までに債務が確定していたとすることはできず、したがって、本件従業員賞与の損金算入は認められない。

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当該事業年度末に約束手形で支給された翌事業年度の年俸制に係る役員報酬及び従業員給与については、当該事業年度内に具体的な役務提供がされておらず、また、会計上重要性の乏しい費用とは認められないから、当該事業年度の損金の額に算入できないとした事例

裁決事例集 No.65 - 343頁

 請求人は、臨時株主総会又は従業員との間の合意による役員報酬又は従業員給与の年俸額(以下「本件役員報酬等」という。)に係る損金算入につき、本件役員報酬等を12で除した月割額から社会保険料等を控除した金額を券面額とする12枚の約束手形を振り出し、当該各事業年度内に支払っているから、その債務は当該事業年度の終了の日までに確定しており、仮にそうでないとしても、本件役員報酬等は支払いの日から1年以内に役務提供を受ける短期前払費用であり、法人税法基本通達2−2−14の後段の取扱い(以下「本件取扱い」という。)が適用されるから、たとえそれがその翌事業年度の業務執行等の役務に対応するものであっても、それは当該事業年度の損金の額に算入される旨主張する。
 しかしながら、本件役員報酬等については、その具体的な給付をなすべき原因である役員の職務執行又は従業員の役務提供が当該事業年度の終了の日までになされていないから、その債務が確定しているとは認められず、また、本件役員報酬等は、請求人の財務内容に占める割合などからして、重要性の乏しい費用とは認められないため、本件役員報酬等には本件取扱いの適用がなく、したがって、それを当該事業年度の損金の額に算入することはできない。

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公正処理基準に反しない会計処理の方法により決算を確定させて確定申告を行った後に、その会計処理方法を遡及して変更することは許されないとした事例

裁決事例集 No.78 - 340頁

 請求人は、確定申告において本件事業年度の決算月(12月)の給与計算期間の締切日後の期間(12月16日から同月31日)に係る期末未払給与の額は期中に債務として確定しているから、前事業年度の期末未払給与の額との差額(以下「本件期末未払給与差額」という。)を当事業年度の損金の額に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、法人税法第22条第4項に収益の額及び損金の額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(以下「公正処理基準」という。)に従って計算されるものとするとあるのは、法人が採用した会計処理の方法に客観的、常識的にみて規範性があり、これが公正処理基準に該当すると認められるものであれば、法人の会計がそれに従っている限り、それを認めていこうとする態度を明らかにしたものであると解するのが相当であるが、請求人が多年にわたり採用してきた経理慣行に従って、期末未払給与の額を現実に支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することは、客観的、常識的にみて規範性があると認められ、また、企業会計原則に定める重要性の乏しいものは未払費用等として処理しないことができるとするいわゆる重要性の原則に照らしてみても公正処理基準に反するものということはできない。そして、法人税法第74条第1項において、確定した決算に基づき当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額及び所得の金額に対する法人税額を記載した申告書を提出しなければならないと規定されており、確定申告後に確定申告の基礎とされた決算における会計処理の方法を変更することは原則として許されないものというべきであるところ、請求人が、多年にわたって採用してきた公正処理基準に反しない経理慣行に従って損益計算をし、これに基づいて確定申告をした後に至って、本件事業年度にさかのぼって会計処理の方法を変更し、改めて損益計算をして本件期末未払給与差額を本件事業年度の損金の額に算入することは認められず、請求人の主張には理由がない。

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請求人が損金の額に算入した使用人に対する未払の決算賞与は、労働協約又は就業規則で定められた支給予定日が到来しているとは認められず、事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払われていないことから、実際に支払った日の属する事業年度において損金の額に算入すべきであるとした事例

平成22年9月2日裁決

 請求人は、本件各事業年度において計上した使用人に対する決算賞与(本件各決算賞与)については、利益調整でないことが明らかであり、本件各事業年度末日における税引前利益から自動的に算出され債務が確定するから、本件各事業年度において損金の額に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、平成22年改正前の法人税法施行令第72条の5《使用人賞与の損金算入時期》(本件施行令)は、使用人賞与の実情や支給実態にかんがみ、使用人賞与の損金算入時期を具体的に定めるとともに、これを使用人賞与一般についての統一的な基準として規定することにより課税の明確性及び統一性を図ったものであり、使用人賞与の損金算入に関し、法人税法第22条第3項第1号及び第2号について、その施行のために必要な技術的、細目的事項を定めたものと解されるから、使用人賞与については、本件施行令の規定に従って損金算入時期を判断することになるところ、本件各決算賞与は、労働協約又は就業規則で定められた支給予定日が到来しているとは認められず、また、本件各事業年度終了の日の翌日から1月以内に使用人へ支払われていないことから、本件施行令の第3号に規定する賞与として、実際に支払われた日の属する事業年度において損金の額に算入されることとなる。

《参照条文等》
 法人税法施行令第72条の5(平成22年政令第51号による改正前のもの)、第134条の2(平成18年政令第125号による改正前のもの)

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