相続税の課税価格の計算

保証債務

  1. 分割財産に係る課税価格
  2. 非課税財産
  3. 債務控除
    1. 借入金
    2. 敷金、保証金等
    3. 判決、訴訟上の和解による債務
    4. 物上保証、連帯債務等
    5. 使用人に対する退職金債務
    6. 保証債務(2件)
    7. その他
  4. 相続開始前3年以内の贈与
  5. その他

相続開始時において、主たる債務者は返済不能の状況に至っていないので、被相続人の保証債務額は、債務控除の対象にならないとして請求人の主張を排斥した事例

裁決事例集 No.52 - 113頁

 請求人は、被相続人の保証債務額5億2,259万円は主たる債務者M社及びN社の財産及び損益の状況からみて、相続税法第13条及び第14条に規定する債務控除の対象となる旨主張する。
 しかしながら、次のとおり被相続人の相続開始時において、M社及びN社は債務超過の状況と認められるものの、T銀行らに対する弁済遅延もなく、事業閉鎖等の事実も認められないので、当該保証債務額は、債務控除の対象とならないとした本件更正処分は適法である。

  1.  M社及びN社は、[1]被相続人の相続開始時まで債権者であるT銀行らに保証債務額を弁済していたので、催告を受けておらず、また、[2]事業活動を継続しており、事業閉鎖等、強制執行又は会社更生の申立等を受けたことがないこと。
  2.  ところで、相続税法第14条に規定する「確実と認められる」債務とは、債務の存在とその履行が確実と認められる債務と解すべきところ、保証債務は、保証人が当該債務を履行するか否か不確実であるから、原則として「確実と認められる債務」に該当しないが、主たる債務者が弁済不能にあるため保証人が当該債務を履行しなければならない場合で、かつ、当該債務者に求償しても弁済を受ける見込みがない場合には、例外的に「確実と認められる債務」に該当すると解するのが相当である。
  3.  そして、主たる債務者が弁済不能にあるか否かは、破産、和議、会社更生又は強制執行等の手続開始を受け、若しくは事業閉鎖、行方不明等により、債務超過の状態が相当期間継続しながら、他から融資を受ける見込みもなく、再起の目途が立たない等の事情により、事実上債権の回収ができない状況にあることが客観的に認められるか否かによると解するのが相当である。

トップに戻る

請求人が被相続人から承継した連帯保証債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらず、債務控除の対象とならないとした事例

平成25年9月24日裁決

《要旨》
 請求人は、相続税法第14条《控除すべき債務》第1項に規定する「確実と認められるもの」について、主たる債務者が弁済不能で保証債務の履行が必要であり、保証債務履行後の求償権の行使が不可能であるという条件が相続開始日に現実に存在しているだけでなく、相続開始日における主たる債務者の財産状態や信用能力を客観的に観察した結果、当該条件に該当する事実が潜在的に存在する場合にも、保証債務は同項に規定する「確実と認められるもの」に当たるという解釈を前提に、本件における被相続人(本件被相続人)が代表社員に就任したN社及びQ社(本件各会社)の金融機関からの借入れに係る本件被相続人の各連帯保証債務は、同項に規定する「確実と認められるもの」に当たる旨主張する。
 しかしながら、保証債務が相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するのは、相続開始時点を基準として、主たる債務者がその債務を弁済することができないため保証人がその債務を履行しなければならない場合で、主たる債務者に求償しても補填を受ける見込みがないことが客観的に認められる場合に限られることからすると、請求人の同項に規定する「確実と認められるもの」の解釈は、保証債務一般の性質を述べるものであって、正当な解釈とはいえない。本件各会社は、本件被相続人の相続開始日において、債務超過の状況にはなく、また、各金融機関に対して弁済条件に従った返済を行っていることなどからすると、本件各会社が債務を弁済することができないため、保証人である本件被相続人がその債務を弁済しなければならい場合であったとは認められない。

《参照条文等》
 相続税法第14条
 相続税法基本通達14−3

トップに戻る