課税範囲

「事業として」の意義

  1. 課税取引
    1. 「事業として」の意義(5件)
    2. 「対価を得て行われる」の意義
    3. 資産の貸し付けの範囲
    4. 役務の提供の範囲
    5. みなし譲渡
  2. 非課税取引
  3. 免税取引

約40年に1度行われた立木の譲渡であっても、山林の反復、継続的な育成、管理が行われていた場合には、事業として対価を得て行われる資産の譲渡に該当するとした事例

裁決事例集 No.66 - 309頁

 請求人は、「事業として行う資産の譲渡」というには、反復、継続が必須であるところ、約40年間立木の譲渡はなく今回初めて譲渡したものであって反復、継続していないこと、今回譲渡した立木は、当初3年程下草刈りをした後、10年後くらいに1回間伐しただけであり、以後27年間程度は何の手入れもしていないなど十分な育成、管理を行っていないことから、反復、継続の蓋然性があるともいえないこと、森林施業計画に係る森林の伐採の届出書は、育成、管理したことを証明するものではなく、森林施業計画の認定を受けたカラマツを伐採、譲渡したことをもって、反復、継続的に育成、管理していたとはいえないことから、本件立木の譲渡は課税資産の譲渡に該当しない旨主張する。
 しかしながら、山林の育成には長期間を要するのが通例であることから、山林の伐採又は譲渡が消費税法第2条第1項第8号の「事業として」に該当するかどうかは、伐採又は譲渡の反復性、継続性のみにより判断するのではなく、伐採又は譲渡の準備行為ともいえる山林の育成、管理の度合いも加味して総合的に判断すべきものと解されるところ、請求人は、森林法第11条第1項に規定する森林施業計画を定期的に作成し市町村の長にその認定を求めていること、P市長に対し「立木の伐採(譲渡)証明申請書」を提出し、本件譲渡が森林施業計画に基づくものであるとの証明を受けていること及びT広域森林組合のJ総務部長の「請求人が今回譲渡した立木は成長も悪くなく、手入れをしていたということは、はっきり分かった」との申述からすれば、本件立木の譲渡は、森林施業計画に基づき反復、継続的な育成、管理が行われていたと認めるのが相当である。
 以上のとおり、本件立木の譲渡は消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として対価を得て行われる資産の譲渡」に該当するとした本件更正処分は適法である。

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E生命保険の営業社員である審査請求人が消費税法上の事業者に該当すること、報酬に含まれる通勤手当等が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれること及び報酬明細・収支報告書が消費税法第30条第7項の帳簿には当たらないとして仕入税額控除が認められないことについて判断した事例

裁決事例集 No.69 - 363頁

 請求人は、E生命保険との営業社員契約等を根拠に、請求人はE生命保険に従属しており、また、同人の営業社員報酬を決定するのはE生命保険であることから、事業者でない旨主張する。
 ところで、消費税法第5条第1項は、事業者は課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務がある旨規定している。
 また、事業者について、消費税法基本通達1−1−1は、事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいう旨定めているところ、消費税法にいう事業者に関する当該基本通達の解釈については、請求人及び原処分庁とも争いはなく、当審判所においても相当と認められる。
 これを本件についてみると、E生命保険は、請求人の仕事のための費用の一部を負担しているものの、請求人は、仕事として保険種類の販売を行い、契約を獲得するに当たり、当該仕事の遂行上の主要な費用である保険募集に係る車両関係費、旅費交通費、接待交際費等の全額を負担していることが認められる。
 確かに、[1]請求人はE生命保険G支社への週2回の出社が義務付けられていること、[2]契約第2条には、営業社員の制限事項が定められていることに加え、[3]就業規則には、服務の原則等の規則が定められていることなどにおいては、請求人がE生命保険の指示、命令を受ける一面があることは否定できない。
 しかしながら、[1]については、E生命保険が請求人に対し出社を求めるのは、主として営業販売促進を図る目的で行われる打合せ等のためであり、[2]については、契約第2条が保険業法その他関係法令上の要請によるものと認められ、また、[3]については、単に、営業社員の服務及び労働条件について定めたものであるのに対し、請求人の主要な部分である保険募集の地域、保険募集の相手及び販売する保険商品の種類の選択等の保険契約獲得の手段並びに月曜日及び木曜日以外の日の出社の要否、営業所外での就業時間の管理等については、請求人自身の責任と判断に委ねられているものと認められる。
 以上のことからすると、営業社員としての請求人は、自己の計算においてその仕事を遂行するものであり、また、役務の提供につきE生命保険の一般的な指揮命令下にあるということはできないから、請求人は自己の計算において独立して事業を営む者であると解するのが相当であり、消費税法上の事業者に当たる。
 また、請求人は、営業社員報酬に含まれる通勤手当等については、明らかに実費弁償又は社員サービスとして金銭補助であるから、課税資産の譲渡等の対価の額に含めるべきではない旨主張する。
 ところで、消費税法第28条第1項は、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額とする旨規定しており、また、消費税法第2条第1項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
 これを本件についてみると、営業社員としての請求人が消費税法上の事業者に該当し、同人がE生命保険から営業社員報酬として支払を受けた研修手当が、課税資産の譲渡等の対価の額になると認められる以上、研修手当とともに営業社員報酬の一部として支払を受けている通勤手当等についても、その全額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれると解するのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 さらに、請求人は、贈答用品等代金(E生命保険は当該代金を営業社員報酬から差し引いている。)に含まれる消費税額及び不動産貸付けにおける課税仕入れに係る消費税額については、報酬明細及び収支報告書により証明できるから、課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除すべきである旨主張する。
 ところで、事業者が、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、同法第62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれらを提示することが可能なように態勢を整えて保存しなかった場合は、同法第30条第7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に当たり、同項ただし書にいう事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明しない限り、当該保存がない課税仕入れ等の税額については、同条第1項の規定の適用はされないものと解されている。
 これを本件についてみると、[1]請求人は当審判所に対し、記帳代行会社の専属税理士から帳簿を返してもらったかどうか記憶がなく、また、不動産貸付けに係る帳簿はない旨答述していること及び審査請求書の「審査請求の理由」欄に調査担当職員が課税仕入れ等の税額に係る帳簿及び請求書等の提示を求めた際に記帳代行会社の専属税理士が書類を紛失して返却されていないため提示が不能であった旨記載があることから、調査担当職員から帳簿及び請求書等の提示を求められた際には、請求人は帳簿の提示が可能なような態勢を整えていなかったことがうかがわれ、[2]請求人は報酬明細及び収支報告書を提示しているとしても、これは帳簿とは認められないことから、課税期間の課税仕入れ等の税額に係る帳簿を保存していなかったものと認められる。
 そうすると、本件の場合、課税仕入れに係る消費税額について消費税法第30条第1項の規定の適用はない。
 したがって、仮に報酬明細及び収支報告書により課税仕入れに係る消費税額が計算できたとしても、当該消費税額を課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除することはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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宗教法人が行った絵画の譲渡について「事業として」行われる資産の譲渡等に該当すると認定した事例

裁決事例集 No.74 - 439頁

 請求人は、請求人が行った絵画の譲渡は、その売却資金をすべて宗教活動の資金としている等、宗教法人である請求人の宗教活動の一環として行われたものであること、また、単発的な取引であり、消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として」行われたものに該当しないことから、消費税等の課税対象とはならない旨主張する。
 しかしながら、宗教法人が宗教活動の一環として行った資産の譲渡等について消費税等を課税しないとする法令上の規定はなく、また、法人はそれ自体が事業を行う目的で設立されることからすれば、法人が行う資産の譲渡等は、そのすべてが事業として行われたものに該当することになると解されるから、法人である請求人が行う絵画の譲渡は、事業として行われたものに該当することになる。したがって、請求人の主張には理由がない。

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請求人が締結したビジネス専門学校との講師契約は、請負契約あるいはそれに類似する契約と認められるので、請求人が行った講義は消費税法に規定する「事業として」行われたことに該当するとした事例

裁決事例集 No.78 - 473頁

 消費税法第2条第1項第9号は、「課税資産の譲渡等」とは、「資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう」とし、同法第2条第1項第8号は、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう」と定義している。
 そして、消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として」につき、消費税法基本通達5−1−1は、「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう」と定めているところ、消費に広く負担を求める消費税法の趣旨・目的に照らして、当審判所においても、この解釈は妥当と認められる。
 請求人は、本件講義を反復、継続して行っていたと認められる。また、本件講義については、請求人の裁量が広く認められており、本件講師契約の実質が雇用契約あるいはそれに類似するものではなく、請負契約あるいはそれに類似するものであることからすれば、請求人の役務の提供については消費税法における「事業」というに足りる独立性が認められるというべきである。
 したがって、請求人が本件講義を行ったことは、消費税法基本通達5−1−1に定める対価を得て行われる役務の提供が反復、継続、独立して行われたことに該当するのであるから、消費税法第2条第1項第8号に規定する「事業として」行ったことに該当する。

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稲作の休作期間中に売却を目的として整地工事をした土地の譲渡は、事業の用に供していた資産の譲渡として、「資産の譲渡等」に該当するものとした事例

平成23年3月8日裁決

《ポイント》
 資産の譲渡等には、事業活動の一環として又はこれに関連して行われる資産の譲渡を含み、事業の用に供している土地等の譲渡は、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡に該当するものと解される。
 この事例は、秋の収穫後の冬季の休作期間に売却を目的として整地工事をした稲作農地であった土地につき、売却時点において、事業の用に供する資産に当たるか否かが争われたものである。

《要旨》
 請求人は、稲作農地であった本件土地は、宅地に整地した時点で稲作ができなくなり、その時点で家庭用資産になったのであるから、本件土地の譲渡は「資産の譲渡等」に当たらない旨主張する。
 しかしながら、本件土地は稲作農地として請求人の事業の用に供されていた土地であって、例年どおり冬季の休作状態にあった時期に、本件土地の売却の話があり、それを受けて宅地に整地するための工事が行われたことからすれば、当該工事は、請求人の事業用資産である本件土地の売却を目的として行われたものにすぎず、事業用資産としての性格を失わせる事情にはならない。また、他に本件土地の事業用資産としての性格を失わせる事情は認められないことを併せて考えると、本件土地は、売却時点において、請求人が営む事業の用に供していた資産であったと認めるのが相当であり、本件土地の譲渡は、請求人の事業活動に関連して行われる資産の譲渡であって、「資産の譲渡等」に該当するものと認められる。

《参照条文等》
 消費税法第2条第1項第8号
 消費税法施行令第2条第3項

《参考判決・裁決》
 富山地裁平成15年5月21日判決(税資253号9349)

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