納付義務の確定

通常の事由

  1. 納付すべき税額の確定方式
  2. 納税申告
  3. 更正の請求
    1. 請求期間
    2. 通常の事由(15件)
    3. 後発的事由
    4. 基礎となった事実関係に関する判決等
    5. やむを得ない理由
    6. その他
  4. 更正又は決定

申告後に改正された通達を根拠として法定の期限経過後になされた更正の請求は、不適法であるとした事例

裁決事例集 No.21 - 1頁

 原処分庁の申告指導により、昭和52年分の分離短期譲渡所得の金額について、譲渡資産の取得に要した借入金の利子を取得費に算入しないで確定申告をしたところ、その後の通達の改正により当該借入金利子は取得費に算入することに変更されたことに伴い、当該確定申告は過誤のあるものとなったが、その過誤につき請求人に何らの過失はなく、したがって、本件更正の請求は国税通則法第23条第2項の規定に基づく適法なものであるとすべきであり、仮に、当該更正の請求が期限後によるもので不適法であるとしても、原処分庁には申告の過誤を是正すべき職責があり、これをしないのは違法又は不当である旨の主張について、請求人の主張するような抽象的な基準の変更等の場合は、同項各号に規定するいずれの事由にも該当しないものと解されるから、当該更正の請求は不適法というべく、また、職権による更正を求めることは請求人の権利ではなく、これに応じない場合であってもそれが著しく正義公平に反するものでなければ、その不作為をもって直ちに違法とすることはできないものと解すべきであり、原処分庁が行った申告指導は、その当時においては、その解釈、取扱いは多数の判例によって支持されていたところであり、また、その後の改正による通達も、「今後処理するものからこれによることとする。」と定めており、それ以前の解釈、取扱いについては、それなりに正当なものであるとして肯定しているところであるから、原処分庁が職権による更正をしないとしても著しく正義公平に反する場合に該当せず、違法又は不当ではない。

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現金主義による所得計算の特例(所得税法第67条の2)を適用して事業所得の計算をした者が発生主義による所得計算と比較して税負担が不利益になるという理由による更正の請求をすることは認められないとした事例

裁決事例集 No.33 - 1頁

 現金主義による所得計算の特例の制度は、小規模な個人事業者のうちには発生主義によって所得金額を計算することになじめない者が多く、青色申告の帳簿書類の簡素化とあいまって設けられたもので、納税者の税負担の軽減を目的としたものではない。また、同特例を選択することは納税者の任意であるが、所得税法施行令第197条第2項により、その適用を受けることをやめようとする場合には、その年の3月15日までにその旨の届出書を提出しなければならない旨規定されているから、同特例を選択した場合、その適用をやめる手続を踏まなければ発生主義による所得計算をすることができないところ、請求人は係争年分について上記手続をしていない。したがって、請求人が係争年分の事業所得の金額を現金主義により計算したことは、所得税法の規定に基づいた適法な計算であり、当該計算に誤りがあったことも認められないから、更正の請求には理由がない。

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課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の算定方法につき、確定申告において概算法を採用したときには、後日、実額配賦法を採用して更正の請求をすることはできないとした事例

裁決事例集 No.38 - 1頁

 請求人が、課税土地譲渡利益金額の計算上控除される譲渡経費の額の計算に当たって概算法又は実額配賦法のいずれの方法を用いて申告するかは、専ら請求人の自由な選択にゆだねられているところ、請求人は、確定申告時において概算法を選択しているのであるから、仮に、その後、実額配賦法の方が譲渡経費の額が多くなるとしても、概算法による計算に誤りがない以上、国税通則法第23条第1項第1号に規定する「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。

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少額配当等に係る更正の請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.44 - 23頁

 いわゆる少額配当等を有する者が、少額配当等に係る配当所得の金額を除外したところにより総所得金額を計算して所得税の確定申告書を提出している以上、租税特別措置法第8条の5“確定申告を要しない配当所得”第1項の規定を適用したものとして取り扱われることとなるから、請求人が確定申告において、少額配当等に係る配当所得の金額を失念して申告額に含めなかったことは、国税通則法第23条第1項に規定する「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」という場合には該当しないこととなる。
 したがって、原処分庁が本件少額配当等に係る部分の配当について請求人からの更正の請求を認めなかったことは相当である。

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相続税の確定申告書において、租税特別措置法第69条の3の適用を受けるために、いったん宅地を適法に選択した以上、後日、他の宅地への選択替えを求めて更正の請求をすることはできないとした事例

裁決事例集 No.46 - 1頁

 国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、納付すべき税額が、納税申告書に記載した課税標準等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により過大であるときになしうるものであるから、所得計算の特例等の規定で、納税者に一定事項の申告及び選択等を条件としてその規定の適用を受けることをゆだねている場合に、いったん自由な意思でこれらの規定に従い、かつ、適法な計算に基づいて申告書を提出し税額を確定させたものは、後日その一定事項の申告及び選択等の内容を変更することを理由に更正の請求をすることはできないと解すべきである。
 したがって、相続税の確定申告書において、租税特別措置法第69条の3の適用を受けるために、いったん宅地を適法に選択した以上、後日、他の宅地への選択替えを求めて更正の請求をすることはできない。

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消費税の仕入税額控除の計算を一括比例配分方式で申告したものについて、更正の請求において、個別対応方式に変更することはできないとした事例

裁決事例集 No.53 - 49頁

 請求人がいったん一括比例配分方式を選択適用して申告した場合には、仮に、その後において個別対応方式によって計算した仕入控除税額の方が一括比例配分方式によって計算した仕入控除税額を上回り、その結果、消費税の納付すべき税額が少なくなることが判明したとしても、請求人の本件申告書における仕入控除税額は、消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除)の規定に従って誤りなく計算されたものである以上、国税通則法第23条(更正の請求)第1項第1号にいう「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの要件にも該当せず、したがって、同条に定める更正の請求をすることはできない。

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土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告をしなかった場合には、同制度を適用して法人税額を減額することを求める旨の更正の請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.55 - 16頁

 国税通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により過大であるときになしうるものであるから、所得計算の特例等で、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきものとされているものについて、その申告等をしなかった者は、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることはできないと解すべきである。
 したがって、確定申告に際し、租税特別措置法第62条の3第4項又は第5項に規定する優良住宅地等のための譲渡等に対する土地譲渡益重課制度の適用除外に該当する旨の申告等をしなかった場合には、後日それらの規定を適用し、法人税額を減額すべきであるとする旨の更正の請求は認められない。

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後日確定した代金の返還を事由とする更正の請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.57 - 1頁

 請求人は、[1]代金請求時に重量計算の誤りがあり、代金の一部を返還したのであるから、更正の請求は認められるべきである、[2]原処分庁は法人税基本通達2−2−16を適用して更正をすべき理由がないとしているが、代金の返還は国税通則法施行令第6条第1項第2号に該当するから、更正の請求は認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、[1]返還金を支払うことを確定したのは翌事業年度であるから、返還金に相当する損失は翌事業年度の損金の額に算入すべきであり、更正の請求の要件を欠くこと、[2]法人税基本通達2−2−16は、当期に発生した損失は既往の事業年度の益金に対応するものであっても当期の損失に計上するという、一般に公正妥当な会計処理の基準の考え方を表したものであることから、更正の請求の要件を欠いており、請求人の主張には理由がない。

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平成8年分の所得税の確定申告において、措置法第36条の6第1項の特例の適用を受けた結果、8年分と10年分の所得税の合計額が、適用を受けなかった場合の合計額よりも過大になったとしても、更正の請求はできないとされた事例

裁決事例集 No.60 - 1頁

 請求人は、平成8年分の所得税の確定申告において特定居住用財産の買換えの特例(以下「本件特例」という。)の適用を選択し、平成10年において本件特例の適用を受けた買換資産を譲渡したが、本件特例の適用を受けた場合の平成8年分と平成10年分の納付すべき税額の合計額が本件特例の適用を受けなかった場合の納付すべき税額の合計額に比較して過大となるから、更正の請求を認めるべきである旨主張するが、本件特例の適用を受けたことにより納付すべき税額が過大であったとしても、このことは、通則法第23条第1項第1号に規定する更正の請求事由に該当しない。

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更正の請求で、住宅借入金等特別控除の適用を求めることはできないとした事例

裁決事例集 No.73 - 1頁

 請求人は、青色申告者からの更正の請求が認められない場合には、国税通則法第23条第4項及び所得税法第155条第2項の規定の精神を酌み、通知書に理由を附記すべきである旨主張する。
 しかしながら、国税通則法第23条第4項によれば、税務署長は、更正の請求があった場合には、調査の結果、更正をすべき理由がないと判断したときは、請求者にその旨を通知すれば足り、更正をすべき理由がない旨の通知書に理由を附記すべきことを定めた法令の規定はないから、本件通知処分に係る通知書に理由の附記がないことに違法はない。また、本件通知処分は、所得税法第155条第2項が前提とする同条第1項の更正処分とは法的に全く異なり、実質的にみても、所得税法第155条第2項が青色申告書に係る更正処分に理由附記を要求している趣旨は、納税者が提出した申告書の誤りを税務署長が指摘するときに理由附記を義務付けることにより、その慎重な処分を期するとともに、不服申立てに際しての判断材料を与えようとする点にあると解されるところ、国税通則法第23条第4項に基づく更正をすべき理由がない旨の通知処分については、納税者の更正の請求に対する応答としてなされるものであるから、上記の趣旨が当てはまるものではないと解される。
 したがって、請求人の主張は、法の要請を超える独自の見解であり、採用できない。
 また、請求人は、住宅借入金等特別控除の適用要件を実質的に満たしているから、国税通則法第23条第1項にいう課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったことに該当する旨主張する。
 しかしながら、申告納税方式における納税義務者は、申告行為によって具体的な租税債務を負担することになるが、納税者が申告をした後、その申告内容に変更を加える必要の生ずる場合があることは否定できず、このような場合にはその修正を認めるべきであるが、あらゆる場合にこれを自由に認めることは、申告の性格に照らして適当といえないのみならず、納税義務の具体的内容を不安定にさせ、行政を混乱に陥れる弊害もあるから、国税通則法第23条第1項は、これに一定の制限を加え、一定の期間内に限り特定の手続によってのみ是正することができるものとしたと解される。このような見地からすると、一定事項の申告等を条件に所得金額、税額の減免をすべきこととされているものについてその申告等をしなかった者が、後日その特例の適用を求めるために更正の請求をすることは、許されないと解することが相当である。それは、上記一定事項の申告等を付さないでした納税の申告といえども、法律の規定に従っていなかったり、計算に誤りがあったりしたわけではなく、実体的に不当であるとはいえないからである。
 これを本件についてみるに、住宅借入金等特別控除は、申告等を条件に適用され、所得税額が減免される規定であるところ、請求人は、平成17年分の所得税の確定申告を行うに当たり、同控除の適用を申告しておらず、本件更正の請求は、申告後に同控除の実体的要件を満たしているとして、その適用を求めようとしているものであるから、国税通則法第23条第1項による更正の請求ができる場合に該当せず、その理由がないというべきである。

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株主総会において支給が確定した退職金の一部を受領しなかったのは、相続人たる請求人らが退職金の支払義務の一部を免除したものであるから更正の請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.76 - 1頁

 請求人らは、相続税の課税財産として申告した退職手当金等について、その算定根拠に誤りがあったことから相続税の法定申告期限後に減額され、一部しか受領していない旨主張する。
 しかしながら、株主総会における本件被相続人に係る退職金及び弔慰金の本件支給決議は、その議事録等から、定款の定めに従って満場一致で承認されていると認められる。また、取締役会議事録には本件被相続人に対する退職金の金額の計算根拠に誤りがあったと記載されているもののその誤りについて具体的な記載がなく、請求人らからも本件支給決議の際の意思表示に要素の錯誤があった等の主張はされておらず、当審判所の調査によっても、本件支給決議を無効ならしめるような事由は認められない。そうすると、D社が本件被相続人に係る退職金及び弔慰金を支給すること並びにその額は、本件支給決議によって確定したとするのが相当である。
 そして、請求人らが退職金の一部しか受領しなかったことについて、請求人らによる債務免除の意思表示があったとすれば、いったん有効に確定した退職金を遡及的に訂正して減額するのではなく、新たな法律行為により請求人らがD社の退職金の支払義務の一部を免除したものであると解するのが相当である。

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申告行為の無効は国税通則法第23条及び相続税法第32条の更正の請求の事由とすることはできないとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、請求人の贈与税及び相続税の申告書はいずれも請求人が関知しないものであるなどとして、これらの申告書による各申告は無効であるから、贈与税及び相続税の更正の請求を認めるべきである旨主張する。
 しかしながら、贈与税及び相続税の更正の請求については、国税に共通の更正の請求の規定である国税通則法第23条第1項及び第2項と、贈与税及び相続税に特有の更正の請求の規定として相続税法第32条が規定されており、それ以外には規定はないところ、国税通則法第23条第1項各号に規定する更正の請求が認められる事由は、いずれも当該申告書に記載した、課税標準等若しくは税額等(第1号)、純損失等の金額(第2号)及び還付金の額に相当する税額(第3号)の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこととされており、当該申告書及びその申告自体が無効であることは更正の請求の事由とされていない。
 また、国税通則法第23条第2項各号に規定する事由も、その申告の基礎となった事実に関する訴えについての判決等により当該基礎となった事実が申告と異なることとなったこと等であり、いずれも、その申告自体が無効であることは更正の請求の事由とされていない。
 さらに、相続税又は贈与税の申告書を提出した者に係る更正の請求の特則である相続税法第32条に規定する更正の請求が認められる事由も、同条各号のいずれかに該当する場合であって、かつ、その申告に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときとされているので、その申告自体が無効であることは、更正の請求の事由とされていない。
 したがって、請求人が主張する「申告の無効」はこれら更正の請求の事由には該当しないので、「申告の無効」を事由とした更正の請求はいずれも不適法であり、請求人の主張は採用することができない。

《参照条文等》
国税通則法第23条第1項、第2項
相続税法第32条

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個別対応方式における用途区分の方法に誤りがあったとしてされた更正の請求について、確定申告において採用した用途区分の方法に合理性がある場合には、国税通則法第23条第1項第1号の適用はないとした事例

平成23年3月1日裁決

《要旨》
 請求人は、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項第1号の規定(個別対応方式)の適用に当たり、医薬品の課税仕入れに係る消費税額の用途区分の方法について、課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要するものに区分すべきところ、課税仕入れの都度、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものに区分した上で、課税期間の末日の決算修正により、当該課税期間の医薬品に係る課税売上げの額に基づいて課税資産の譲渡等にのみ要するものと課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分したために、納付すべき消費税及び地方消費税の額を過大に算定する誤りがあったのであり、国税通則法第23条《更正の請求》第1項第1号の規定の適用がある旨主張する。
 しかしながら、個別対応方式が適用される場合に、用途区分の方法に誤りがあったとして同号の規定が適用される場合とは、申告当時に納税義務者が採用した用途区分の方法に合理性がなく、合理性のない用途区分の方法を採ることによって納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいい、他の合理的な用途区分の方法を採っていた場合と比較して単に納付すべき消費税等の税額が過大となる場合をいうものではないと解するのが相当であるところ、請求人が行っていた用途区分の方法は、医薬品の課税仕入れについて、その課税売上対応分を個別に把握可能な課税売上げに係る医薬品名及び数量又は金額を基準として、売上実績に基づいて区分する方法であり、合理性があると認められることから、国税に関する法律の解釈適用についての誤りがあった場合には該当せず、また、当審判所が請求人の納付すべき消費税等の税額を算出したところ、その計算過程に誤りがあった場合にも該当しない。したがって、国税通則法第23条第1項第1号の規定の適用はない。

《参照条文等》
 国税通則法第23条第1項
 消費税法第30条第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和62年11月10日第三小法廷判決(昭和60年(行ツ)第81号)
 平成22年5月17日裁決(裁決事例集No.79)

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報酬金額が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されているとして更正の請求を認めた事例

平成24年5月29日裁決

《要旨》
 原処分庁は、請求人が提示した書類等だけでは、社会保険労務士報酬(本件金員)が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されていること、及び請求人の事業所得の金額がいくらであるかを認定することができないから、更正の請求は認められない旨主張する。
 しかしながら、当審判所の調査の結果によれば、本件金員が事業所得の総収入金額と給与所得の収入金額とに二重計上されていること、及び本件金員が事業所得に係る収入金額であることが認められ、当審判所において請求人の総所得金額及び還付金の額に相当する税額を算定すると、総所得金額は更正の請求の額と同額となり、還付金の額に相当する税額は更正の請求の額を上回るから、本件通知処分はその全部を取り消すべきである。

《参照条文等》
 国税通則法第23条第1項

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給与を返還した場合には源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するとした事例(1平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分、2平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求に対する理由なし通知処分・1一部取消し、2棄却)

令和5年4月12日裁決

《ポイント》
 本事例は、給与の返還に伴って源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額が減少した場合には、その減少後の正当に徴収された又はされるべき所得税等の額を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできないとしたものである。

《要旨》
 請求人は、役員給与につき源泉徴収された所得税等(本件各源泉所得税)について、当該役員給与を一部返還したことにより過大となったにもかかわらず、源泉徴収義務者が源泉徴収税額の精算をしない場合には、源泉徴収義務者が請求人に役員給与を支払う際に徴収した源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、所得税法(平成31年法律第6号による改正前のもの)第120条《確定所得申告》第1項第5号の「源泉徴収された又はされるべき所得税の額」は、実際に源泉徴収された所得税等の額と解するのが相当であり、請求人は、本件の各更正の請求により本件各源泉所得税の額の還付を受けることができる旨主張する。
 しかしながら、同号にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収をされた又はされるべき所得税等の額を意味するものであり、役員給与が減額された以上、源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少するのであるから、請求人が主張する事情があったとしても、請求人は、本件の各更正の請求において、本件各源泉所得税の額のうち、「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付を受けることはできない。
 なお、原処分庁は、請求人の源泉徴収による所得税等の額は原処分庁ではなく源泉徴収義務者が再計算すべきものであり、また、請求人は源泉徴収義務者が発行した訂正後の源泉徴収票又はこれに代わる書類を提出していないから、源泉徴収義務者によって再計算された請求人の給与所得に係る源泉徴収された所得税等の額や所得控除の額を確認することができない旨主張する。
 しかしながら、所得税法第120条第1項第5号の「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」の意味を踏まえると、請求人が本件の各更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その計算をした所得税等の額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているか否かを判断することが相当である。

《参照条文等》
 国税通則法第23条第1項
 所得税法第120条第1項第5号(平成31年法律第6号による改正前のもの)

《参考判決・裁決》
 最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁)
 東京高裁昭和55年10月27日判決(訟月27巻1号211頁)
 平成24年12月20日裁決(裁決事例集No.89)

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