所得の種類

みなし配当

  1. 利子所得
  2. 配当所得
    1. 配当所得と認めた事例
    2. みなし配当(3件)
  3. 不動産所得
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得

会社が株式の任意消却のため株式を買い入れた場合に株主が支払を受けた金銭はみなし配当に当たるとした事例

裁決事例集 No.24 - 19頁

 請求人は、強制消却の場合と異なり、任意消却における株式の買入れは、株式の消却とは別個の独立した株式の売買行為であるから、その所得は譲渡所得に該当すると主張するが、任意消却における株式の買入れの本質、支払われる金銭等の経済的実質からすると、強制消却の場合の効果と同様に、任意消却において売株主に対して支払われる金銭等は、株式の消却により交付される金銭等に当たると解するのが相当であり、その所得はみなし配当所得に該当する。

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商法第349条第1項に規定する反対株主の株式買取請求に基づき株式発行法人が自己の株式を取得した日は、株式買取価格の決定の申請に係る和解成立の日であるとした事例

裁決事例集 No.70 - 105頁

 請求人は、商法第349条第1項に規定する反対株主の株式買取請求に基づき、株式発行法人が自己の株式を取得した日は、株主等が発行法人との間で能動的に行った契約の成立ないし法律行為の日、すなわち反対株主が株式買取請求権を行使した日であり、その日は商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律第44条第2項(本件経過措置)に規定する施行日(平成13年10月1日)前であるから、所得税法第25条第1項第5号に規定する自己の株式の取得を事由とするみなし配当課税は適用されない旨主張する。
 しかしながら、同号に規定する自己の株式の取得とは、株式発行法人がする証券取引所の開設する市場における購入による取得等以外の自己の株式の取得であり、本件自己の株式の取得は、反対株主の株式買取請求に応じて売買により取得したものであるから、本件自己の株式の取得の日については、売買の効力が生じたときがいつであるかに帰着するところ、売買では代金は重要な要素であるから、代金額が定まっていない場合には、売買の効力は生じないと解される。本件は、当事者間において株式買取価格が調わず、裁判所に商法第245条の3第3項の規定に基づき価格の決定を申請し、和解により株式買取価格が決定し、それに基づき株式発行法人が請求人に対して株式買取代金を支払い、請求人は株式発行法人に株券を引き渡したものであるから、その和解の日に、売買契約の効力が生じ、当事者双方が契約を履行したといえる。そうすると、本件における自己の株式の取得の日は、本件経過措置に規定する施行日以後となるから、所得税法第25条第1項第5号の規定が適用される。
 なお、最高裁昭和48年3月1日決定は、反対株主が株式買取請求権を行使したときは、法律上当然に会社と株主の間に売買契約が成立したのと同様の法律関係が生ずると判示するが、この法律関係とは、会社が株主から将来決定する価格で株式を買い取る義務を負い、株主が会社に同価格で株式を売り渡す義務を負うという法律関係をいうのであって、売買契約の効力が生じたことまでをいうものではない。

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持分会社の社員の死亡退社に伴う持分払戻請求権の価額相当額のうち、出資した金額を超える部分はみなし配当に該当するとした事例(平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)

令和4年6月2日裁決

《ポイント》
 本事例は、持分会社の社員が死亡退社した場合には、その社員の有していた社員権が死亡と同時に持分払戻請求権に転換し、その転換した時点において、持分払戻請求権の価額のうち元本(出資)を超える部分が、所得税法第25条第1項の規定により剰余金の配当等(みなし配当)として当該死亡社員の所得を構成すると判断したものである。

《要旨》
 請求人らは、持分会社の社員(本件被相続人)の死亡退社に伴う持分払戻請求権(本件払戻請求権)について、その払戻額を零円とすることが持分会社の総社員による同意で決定されており、相続人である請求人らに対し金銭その他の資産の交付はされていないから、所得税法第25条《配当等とみなす金額》第1項の規定によって配当等とみなされる金額はない旨主張する。
 しかしながら、当該持分会社の定款には会社法第608条《相続及び合併の場合の特則》第1項に規定する持分の承継に関する定めがないことからすれば、本件被相続人は死亡退社により本件払戻請求権を取得したものと認められ、本件被相続人が有していた社員権(出資)が本件払戻請求権に転換した時点、すなわち、相続開始日において本件払戻請求権の価額相当額の経済的価値が本件被相続人にもたらされたといえる。したがって、当該価額相当額のうち、出資に対応する部分の金額を超える金額は、本件被相続人のみなし配当と認められる。

《参照条文等》
 所得税法第24条,第25条第1項第6号
 会社法第607条第1項第3号、第608条第1項、第611条第1項、第2項

《参考判決・裁決》
 神戸地裁平成4年12月25日判決(税資193号順号7054)
 東京地裁平成20年7月15日判決(税資258号順号10990)

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