所得の種類

不動産所得を生ずべき事業

  1. 利子所得
  2. 配当所得
  3. 不動産所得
    1. 所得の区分
    2. 取得価額の算定方法
    3. 不動産所得を生ずべき事業(2件)
  4. 事業所得
  5. 給与所得
  6. 退職所得
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得

建物貸付けは、同族会社2社及び親族に対する限定的かつ専属的なものであり、貸付けに係る維持管理等の程度が実質的には相当低いとして、不動産所得を生ずべき事業に当たらないとした事例

裁決事例集 No.74 - 37頁

 請求人は、1資産の取得に係る投資額(借入金)の多寡を重要視すべきであること、2事業とは、社会通念に照らして事業と認められるものすべてを含み、事業所及び人的・物的要素を結合した経済的組織を必ずしも必要とせず、本件貸付けは十分に自己の危険を持ち得る事業といえること、また、3総合ビジネスを視野においた事業を行うという計画を基に建築、事業経営を行っているという現状にかんがみると、本件貸付けは不動産所得を生ずべき事業に該当すること、さらに、4東京高裁平成13年7月11日判決の中で挙げられている事業規模の判断基準に照らし合わせた場合、本件貸付けは事業に該当するとも主張する。
 しかしながら、不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか否かは、1営利性・有償性の有無、2継続性・反復性の有無、3自己の危険と計算における事業遂行性の有無、4取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、5人的・物的設備の有無、6取引の目的、7事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。
 本件貸付けについては、営利性、継続性、人的・物的設備など部分部分としてみた場合は直ちに事業ではないということはできない要素も認められるが、本件貸付けは、本件同族会社2社及び親族に対する限定的かつ専属的なものであり、平成5年借入金は、請求人の税理士事務所等として使用することを目的とした本件建物の建設資金等であったこと及び本件借入金の年間返済額は、本件貸付けの年間賃貸料収入を上回っており、本件貸付けに係る賃貸料収入以外の収入も原資となっていること、また、本件同族会社2社の賃貸料は、それぞれの法人の収入及び人員割合が計算の根拠となっていることからすると、請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、本件建物は、その構造からみて他に賃貸が可能である等の汎用性が少ないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算による事業遂行性は希薄であると認められる。
 さらに、本件建物の設備等の管理・修理点検等は請求人が行っているものの、清掃及び冷暖房設備点検、ビルの防犯・火災のセキュリティ契約等は本件同族会社2社が行っていること、賃貸料の集金等はインターネットバンキングにより振替処理されていること、また、本件貸付物件は本件同族会社2社及び親族に継続して貸し付けられていることから、請求人にとって賃借人の募集等をする必要はなく、賃貸料の改定交渉等の業務の煩雑さもなく、ビル管理業務等の負担も軽微であることから、本件貸付けに費やす精神的・肉体的労力の程度は、実質的には相当低いと認められる。
 これらの諸点を総合勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。

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客船の船室及び船内施設を他人に利用させるなどして得た所得は雑所得に該当するとした事例

平成25年3月27日裁決

《要旨》
 請求人は、船舶の一部の貸付けによる所得も不動産所得に含まれること、○○国船籍の客船(本件船舶)の一船室の貸付け(本件業務)は、本件船舶に係る居住権の貸付けでありこれは船舶の上に存する権利の貸付けであること、本件業務に係る所得は資産性所得であること、そして、役務の提供は僅かであることなどの理由から本件業務に係る所得は不動産所得であると主張する。
 しかしながら、請求人はレンタル利用者に対し単に一船室を利用させているだけではなく相当程度のサービスと一体となったクルーズを提供しているというべきであり、本件業務に係る所得がほとんど又は専ら船舶を利用に供することにより生じたものとはいえないことから、本件業務に係る所得は不動産所得には該当せず、また、本件業務は営利性・有償性及び継続性・反復性を具備しているものの、本件業務の目的は毎年の維持管理費用を少しでも回収すること、請求人は年に4回程度外国送金依頼書に署名するのみであること、本件業務に係る従業員を雇用せず事務的設備を整えていないこと、医療法人の理事長として給与等を得ており生活の資の大部分をこれらの法人から得ていたこと、そして、自己資金の範囲内で本件業務を行っていることなどから、一般社会通念に照らし、本件業務は事業とは認められず、本件業務に係る所得は雑所得に該当する。

《参照条文等》
 所得税法第26条第1項、第27条第1項、第35条第1項

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