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賞与
満5年ごとに支給される退職金名義の金員は賞与であって、当該金員を受給後間もなく退職の事実が生じても、これをそ及して退職所得とすることはできないとした事例
裁決事例集 No.27 - 78頁
請求人は従業員に就職後5年ごとに雇用期間満了による退職金名義の金員を支給しており、それは給与所得たる賞与に当たるとされているが、その受領後間もなく実際に退職した場合には、そ及して退職所得として取り扱うべきであると主張するが、請求人と受給者との間の従前の雇用契約はそのまま継続しているものと認められること等から当該金員の支払は勤務関係の終了によって支給される退職金ではなく、給与所得たる賞与に当たり、当該金員を受領した従業員がその後確定的に退職したとしても既に確定した所得の性質が後発的な事情によって変わるものではないから、法令の根拠なくしてそ及して退職所得とすることはできない。
昭和59年2月1日裁決
請求人の建物建築工事を請け負った建築工事会社から、請求人の施設長(理事)の預金口座に振り込まれた金員は、請求人が水増工事代金の返金として受領すべきであるところ、施設長の寄付金の原資として調達された資金であると認められるから、請求人の理事である施設長に対する経済的利益の供与であるとされた事例
請求人は、請求人の建物建築工事を請け負った建築会社J社から、請求人の施設長Hの預金口座に振り込まれた本件金員については、Hが建築工事会社の代表者から借り入れたものであり、本件金員をHからの寄付金として受け入れた後、工事代金の残金として支払っており、工事契約には水増契約は存在しないことから、請求人が建築工事会社から水増工事代金の返金を受け、Hに経済的利益を供与する理由及び事実もないと主張する。
しかしながら、[1]Hが借り入れたとする事実が認められないこと、[2]工事契約に係る正式な指名競争入札が実施されていないこと、[3]Hは、原処分庁の調査担当者に、「本件金員相当額を水増しした工事契約を締結し、水増工事代金は建物工事費の減額として返納された。」旨を申し立てていたことから、工事契約は本件金員相当額が水増しされたと認められ、また、[4]請求人は本件金員をHからの寄付金として受け入れ、同額を建築工事会社に支払った旨の経理処理を行っていること、[5]本件金員の資金の流れから、本件金員はHの請求人に対する寄付金の資金ねん出のため工事契約金額の水増しが当初から計画されたスキームであると推認される。
したがって、本件金員は、請求人が水増工事代金の返金として受領すべきであるところ、Hの寄付金の原資として調達された資金であると認められるから、請求人の理事であるHに対する経済的利益を供与したことに当たる。
そうすると、Hは理事の職務にあり、法人税法上役員に当たり、請求人が本件金員相当額をHに交付していると認められることから、Hに対して賞与を支給したとみるのが相当である。
平成10年10月22日裁決