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所得の区分
請求人が役務を提供したことに対する対価は給与所得ではなく、事業所得に該当するとした事例
請求人は、F社に雇用されているにすぎず、F社からの収入は給与所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人とF社の間の請負基本契約及び当事者間の取決めによれば、請求人は、業務の遂行に関して、自己の責任において代替者を手配でき、その者が代替して業務を遂行できること、
請求人は、不可抗力により損害が生じた目的物に係る報酬をF社に請求できないこと、
請求人は、作業の方法や進行の段取りに関して、F社の指揮監督下にないこと、
請求人は、業務の遂行に関して、F社から時間的な拘束を受けていないことが認められ、
F社が請求人に無償で材料を支給し、用具等を貸与していることについては、合理的な理由が存することが認められる。
以上の諸要素を考慮すれば、請求人の業務は請負契約に基づくものであり、請求人は、自己の計算と危険において独立して業務を遂行していたものと認められるから、当該業務に係るF社からの収入は事業所得に該当する。
《参照条文等》
所得税法第27条第1項、第28条第1項
平成22年4月21日裁決
請求人が給与の名目で受領した金員は、請求人が営む代理店業務の収入と認められるから、その金額を給与所得の収入金額から減算すべきであるとした事例
《要旨》
原処分庁は、請求人の取引先である冠婚葬祭業者の関連組合から請求人に対して給与として支払われた金員(本件金員)があり、給与所得の課税は適法である旨主張する。
しかしながら、本件金員は、請求人が葬祭業務を行うに際し、寝台車を運転するためには社会保険の加入が必要であったため、請求人の代理店収入の一部の金額を取引先が差し引き、この金額に相当する金額を取引先の関連組合を経由して請求人に給与という名目で支払うという形式を採ったものであると認められ、他方、請求人と同関連組合の間において、雇用契約その他これに類する契約の締結及び労務その他役務提供が行われた事実は認められず、また、請求人が葬祭業務を行うに当たって、同関連組合から具体的に指示を受けた事実も認められないから、本件金員は、給与所得としての要素を有するものとは認められず、その実質は取引先からの代理店収入の一部と認めるのが相当である。
したがって、原処分庁の主張には理由がなく、取引先からの代理店収入の一部の金額を給与所得として課税したことは相当ではない。
《参照条文等》
所得税法第15条、第16条、第28条第1項、第156条
消費税法第20条、第21条、第30条
国税通則法第30条
《参考判決・裁決》
最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)
最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決(民集46巻2号77頁)