必要経費

減価償却費

  1. 配当所得
  2. 不動産所得
    1. 租税公課
    2. 借入金利子
    3. 修繕費
    4. 立退料
    5. 資産損失
    6. 貸倒損失
    7. 和解金
    8. 青色事業専従者給与
    9. 不動産管理料
    10. 減価償却費(8件)
    11. 土地賃借料
    12. 資産の廃棄損失
    13. その他
  3. 事業所得
  4. 給与所得
  5. 山林所得
  6. 譲渡所得
  7. 一時所得
  8. 雑所得

請求人が耐用年数の短縮を求める理由は、本件建物自体の構造等に変化が生じて物理的、客観的に使用可能期間が短くなったという事由ではなく、取壊しの行われることが将来予定されているという本件契約当事者の取決めを理由とするものであるので、所得税法施行令第130条第1項に掲げる事由には該当しないとした事例

裁決事例集 No.49 - 100頁

 請求人は、本件建物は、賃貸借期間が10年に限定され、賃貸借期間終了後取り壊されるものであることから、本件建物の耐用年数は、法定耐用年数の40年ではなく、賃貸借期間に応じた10年となるとして、耐用年数の短縮を承認すべきである旨主張するが、所得税法施行令第130条第1項が耐用年数の短縮を認める特別な事由を列挙しているのは、耐用年数の短縮は、減価償却資産の使用可能期間が法定耐用年数よりも物理的ないし客観的に短くなるという事由が現に発生しているような場合に限って認める趣旨によるものと解するのが相当である。
 本件建物についてみると、請求人が耐用年数の短縮を求める理由としている「賃貸借期間(10年)満了に伴う本件建物の取壊し」は、本件建物自体の構造等に変化が生じて物理的、客観的に使用可能期間が短くなったという事由ではなく、取壊しの行われることが将来予定されているという本件契約当事者双方の取決めを理由とするものである。
 当審判所の調査によっても、本件建物の構造その他からみて、本件建物について、所得税法施行令第130条第1項に掲げられている耐用年数の短縮を認めなければならない特別な事由があるとも認められないので、請求人の主張は採用することができない。

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税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかないとの請求人の主張が排斥した事例

裁決事例集 No.62 - 49頁

 請求人は、税法の改正により減価償却資産の耐用年数が短縮された場合の減価償却費の処理方法については、明文の規定がなく理論により決するほかない旨主張する。
 しかしながら、所得税法第49条、所得税法施行令第120条、第129条、第131条、耐用年数省令第1条、第4条及び平成10年改正省令附則第2項等の規定が存在するのであって、これらの規定によれば、税法に規定する耐用年数とは、その期間内で償却を完了させるということを意味するものではなく、減価償却費の額を算定するために必要な償却率を算出するための基礎となるものにすぎないと解するのが相当であり、このことは、税法の改正により耐用年数が短縮された場合においても何ら変わるものではないから、原処分庁が、本件建物の期首帳簿価額に、本件改正後の耐用年数に対応する償却率を乗ずることによって本件減価償却費の額を算定したことは適法である。

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平成14年1月4日の相続により取得した建物の減価償却費の計算及びその方法は定額法によるとした事例

裁決事例集 No.67 - 299頁

 請求人は、相続により取得した建物の減価償却費の計算について、所得税基本通達49−1において、所得税法施行令第120条第1項第1号に規定する「取得」には、相続による取得を含む旨定めているが、法律又は政令で明確に規定がない限り、その「取得」には相続による取得は含まないこと、所得税法第60条第1項は、相続により取得した資産の取得費について、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす旨規定していることから、減価償却資産の償却の方法も承継が認められるべきである旨主張する。
 しかしながら、不動産の取得とは、その所有権の取得にほかならず、民法は、その取得原因(取得方法)として、売買や贈与などの契約及び相続などの承継取得、また、時効取得などの原始取得についても規定していることから、相続についても売買等の契約と同様に取得原因になりうると解される。
 また、所得税法第60条第1項の規定は、単純承認に係る相続による資産の移転について、被相続人がその資産を保有していた期間中に発生した値上がり益をその相続人の所得として課税しようとする趣旨のもので、その相続人の譲渡所得の金額の計算上控除すべき取得費について、被相続人がその資産を取得した時から相続人がその資産を所有していたものと擬制して取得費の計算を行うために設けられたものである。そして、減価償却資産の取得価額について規定した所得税法施行令第126条第2項において、相続により取得した減価償却資産の取得価額について、相続人が被相続人の取得価額を引き継ぐ旨規定しているが、その規定は、減価償却資産について、被相続人が選定していた償却の方法を相続人が引き継ぐことまで規定したものではなく、償却の方法については、同法施行令第120条に規定するとおりであるから、請求人の主張にはいずれも理由がない。
 したがって、平成14年1月4日の相続により取得した本件建物の償却の方法については、所得税法施行令第120条第1項第1号ロの平成10年4月1日以後取得した建物に該当するので、本件建物の償却の方法は定額法となる。

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平成13年3月の相続により取得した建物の減価償却費の計算及びその方法は定額法によるとした事例

裁決事例集 No.71 - 192頁

 請求人は、請求人が相続した本件各建物の取得日は、被相続人の取得日を引き継ぐべきものであるから、本件各建物の減価償却の方法は定率法によるべきである旨主張する。
 しかしながら、[1]所得税法施行令第120条第1項第1号イにいう「取得」に、相続による承継取得が含まれない旨の明文の規定はなく、また、これが含まれないと解すべき合理的理由もないこと、[2]民法上、相続は不動産の取得原因の一つとされていることから、その「取得」は、文理解釈上、相続による承継取得は含むと解すべきである。
 したがって、請求人は、本件各建物を平成10年4月1日以後に相続により取得しているから、所得税法施行令第120条第1項第1号ロの規定により、本件各建物の償却の方法として選定できるのは定額法のみである。

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譲渡契約の日以降も不動産所得を生ずべき業務の用に供される建物の未償却残高について、譲渡所得の計算上、取得費として既に必要経費に算入されていることから、譲渡の日以後生ずる不動産所得の計算上、減価償却費には算入されないとした事例

裁決事例集 No.74 - 66頁

 請求人は、建物移転補償金は、実際に建物を取り壊したときに対価補償金に当たるものとして取り扱うことができることからすると、本件建物等移転料については、本件建物を取り壊した平成16年分の所得として申告すべきであり、平成14年には本件建物の譲渡所得の総収入金額は発生していないから、本件修正申告は、申告義務のない違法な申告であり、本件各土地及び本件建物等移転料に係るいずれの譲渡所得も平成16年分となるべきである旨主張する。
 しかしながら、譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるが、納税者が当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認めることと取り扱われている。
 そして、一の契約において、2以上の資産の譲渡が行われた場合、一部の資産について、その引渡しがあった日を譲渡の日とし、他の資産について、契約の効力が発生した日を譲渡の日として申告することは、納税者の選択により、契約の効力発生の日を譲渡の日として選択することを認めた趣旨に合致しない不合理なものであることから、認められないと解すべきである。
 これを本件についてみると、請求人は、本件建物等移転料については租税特別措置法通達33−14の定めに従い、本件修正申告において、これを対価補償金として申告することを選択しており、その後、本件建物は平成16年3月下旬に取り壊されている。
 また、本件建物等移転料の支払いに係る契約は、本件各土地の譲渡と一体不可分の契約であると認められ、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料のいずれもがこの契約により平成14年において、収入すべきことが確定した金額であると認められる。
 そして、少なくとも、本件建物等移転料を対価補償金として譲渡所得の総収入金額に算入することを選択した場合には、本件各土地の対価補償金と本件建物等移転料の収入すべき金額に係る譲渡所得の収入すべき時期については、同一の基準で判断すべきであると認められるところ、請求人は本件各土地の対価補償金、残地補償金及び建物等移転料について、契約の効力発生の日の属する平成14年分の譲渡所得の総収入金額として修正申告しており、これは適法な申告であると認められる。
 加えて、請求人は、本件修正申告において、譲渡所得の金額の計算上、本件建物等移転料の対象となった本件建物について、平成14年9月末現在の未償却残高を取得費として控除していることが認められ、これは所得税法第38条の規定に照らして適正なものであると認められるから、本件建物の取得に要した金額のすべては、請求人の平成14年分までの不動産所得及び譲渡所得の所得金額の計算上、その各所得の総収入金額から控除されている。
 したがって、平成15年分の所得税の不動産所得の金額の計算において、本件減価償却費を必要経費とすることは、本件建物の取得に要した金額を超える金額を、所得の計算上控除することとなり、すなわち、投下資本の回収部分を超える金額を控除することになるから、本件減価償却費を必要経費に算入することは認められない。

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相続により取得した賃貸用建物については、中古資産としての耐用年数を適用することができないとした事例

平成24年3月1日裁決

《ポイント》
 この事例は、請求人の配偶者が所有し、賃貸の用に供していた建物等を同人の死亡により請求人が相続し、これを賃貸の用に供して不動産所得を得ていたところ、当該不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する減価償却費に係る当該建物等の耐用年数につき、いわゆる中古資産に係る簡便法による耐用年数が適用できるか否か判断したものである。

《要旨》
 請求人は、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》等の取得には相続による取得が含まれることを当然の前提としている一方で、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)第3条《中古資産の耐用年数等》に規定する取得には相続を除く旨の明文の規定はないので、文言解釈の統一性の要請から、同条における取得にも相続による取得が含まれる旨主張する。
 しかしながら、耐用年数省令第3条第1項は、所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項の規定する取得時における当該減価償却資産の当該取得価額(購入対価等の額ないし時価相当額等)をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする規定であるところ、減価償却資産を相続等により取得した場合については、所得税法第60条の規定を受けた所得税法施行令第126条第2項において、相続人等は、当該減価償却資産を被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したものとし、相続人等と被相続人等との間でいわゆる取得価額の引継ぎを行うものとして償却費の額の計算をすることとされているのであるから、取得時における当該減価償却資産の当該取得価額をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする耐用年数省令第3条第1項の規定を適用して相続等による取得後の当該減価償却資産に係る償却費の額の計算を行うことはできないというべきである。

《参照条文等》
 所得税法第49条
 所得税法施行令第126条、第129条
 減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条第1項

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一括して売買された土地及び建物の購入の対価は、合理的な基準によりあん分して算定すべきであるとされた事例(平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し)

令和4年9月9日裁決

《ポイント》
 本事例は、土地と建物が一括して売買され、当該売買契約において定められた土地及び建物それぞれの価額がその客観的な価値と比較して著しく不合理なものである場合には、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、土地及び建物を一括で3物件(本件3物件)買い受けて貸付けの用に供したところ、各売買契約書に記載された土地及び建物の各価額(本件各内訳価額)は第三者間での相対の商取引において合意された価額であって合理的な価額といえるから、当該各建物に係る所得税法施行令第126条《減価償却資産の取得価額》第1項に規定する「当該資産の購入の代価」は、本件各内訳価額に基づいて算定すべきである旨主張する。
 しかしながら、固定資産税評価額は一般的に適切な時価を反映しているといえるところ、本件3物件の各売買代金総額は各固定資産税評価額総額を上回るのに対し、各建物価額はその固定資産税評価額を大きく上回る一方、各土地価額はその固定資産税評価額と同様か又は下回っている。本件においてそのような評価とすべき事情は見当たらず、本件各内訳価額に係る各建物価額は、各売買代金総額から過剰に価額が配分されたものというべきであり、客観的な価値と比較して著しく不合理なものである。そして、売主が土地及び建物を一括して譲渡する場合、建物の購入の代価について、売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比によりそれぞれあん分して算定することは、一般的には合理的な基準による算定であるといえるところ、本件各内訳価額に係る各建物価額についてはいずれも上記の不合理な場合に該当し、また、本件3物件の各固定資産税評価額が適正な時価を反映しているとはいえないような事情もないから、本件3物件に係る各建物の購入の代価は、本件3物件の各売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額比によりそれぞれあん分して算定すべきである。
 なお、本件3物件のうち2物件の各建物に係る取得価額に加算すべき仲介手数料の金額等及び本件3物件の各仲介手数料に係る繰延消費税額等について、いずれも計算誤りがあると認められるため、原処分はその一部を取り消すべきである。

《参照条文等》
 所得税法第49条第1項
 所得税法施行令第126条第1項

《参考判決・裁決》
 大阪地裁令和2年3月12日判決(税資270号順号13395)
 那覇地裁平成20年8月6日判決(税資258号順号11001)
 那覇地裁平成16年9月21日判決(税資254号順号9752)

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一括して売買された土地及び建物の購入の対価は、合理的な基準によりあん分して算定すべきであるとされた事例(1平成28年分及び平成29年分の所得税及び復興特別所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、2平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・1棄却、2一部取消し)

令和4年11月8日裁決

《ポイント》
 本事例は、土地と建物が一括して売買され、その土地及び建物の個別の購入の対価が明らかでない場合、所得税法施行令第126条第1項第1号イにいう「当該資産の購入の代価」は、合理的な基準により算定するのが相当であると判断したものである。

《要旨》
 請求人は、国外において一括取得した賃貸用の土地及び建物(本件各物件)に係る売買契約書に売買代金総額しか記載がなかった場合、本件各物件における各土地及び各建物の購入の代価は、請求人が取得した不動産鑑定評価書における各鑑定評価額の割合で区分すべきであり、個別的な事情が捨象され、米国e州(現地)の法令等に反する方法で評価された現地の固定資産税評価額の割合で区分すべきではない旨主張する。
 しかしながら、本件各物件については、建物の減価償却費の額の算出に当たり、合理的な方法によって本件各物件の土地及び建物の購入の代価を区分する必要があるところ、現地の固定資産税評価額は、同一の公的機関が同一時期に合理的な評価基準によって請求人が本件各物件の所有権を取得した時点の市場価値を評価したものであると推認され、かかる推認を妨げる特段の事情に当たると評価すべき事実があるとは認められない。したがって、本件各物件に係る建物の購入の対価を算定するに当たっては、現地の固定資産税評価額の割合によって区分して算定すべきである。
 また、原処分庁は、本件各物件のうち平成30年に取得した物件の変更後の固定資産税評価額については、請求人が弁護士を通じて自身に有利になるよう査定官に働きかけ、故意に作出させた可能性が排除できないため、変更前の固定資産税評価額を用いるべき旨主張する。
 しかしながら、現地では、固定資産の所有者がその固定資産税評価額に同意できない場合、その評価額の見直しを求める不服申立制度があり、一度評価された固定資産税評価額が事後に変更され得ることは予定されているため、査定官の職権により事後に変更されたことをもって故意に作出させたなどということができない。したがって、平成30年に取得した物件については、変更後の固定資産税評価額を用いるべきである。

《参照条文等》
 所得税法第49条第1項
 所得税法施行令第126条第1項

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成30年4月12日判決(税資268号順号13139)

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