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同族会社の行為又は計算の否認

同族会社の行為又は計算の否認

  1. 同族会社の行為又は計算の否認(15件)

個人で病院を営む請求人が同族会社に支払った管理委託料は、当該同族会社と類似同業者の収受する管理委託料に比準して算定した適正管理料に比して不当に高額であるとして所得税法第157条の規定を適用した原処分は相当であるとした事例

裁決事例集 No.37 - 100頁

 請求人は、各年分の所得税の負担を不当に減少させるために同族会社を設立し、管理委託料を支払ったものではなく、また、所得税第157条に規定する「不当に」の判断は、同法第59条第1項第2号の規定に基づく同法施行令第169条の規定を準用して2分の1の額に満たないかどうかによるべきであるから、管理委託料を支払ったことによって各年分の所得税の負担を不当に減少させたものとはならないと主張するが、同法第157条に規定する「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」と認められるか否かは、同族会社の行為又は計算に基づいて算出された税額と通常あるべき行為又は計算に引き直して算定された税額とのかい離によって判断すべきであり、しかも、そのかい離は、画一的な線を引くことなく、具体的事案ごとに判断すべきものと解されるところ、請求人が同族会社に対して支払った管理委託料についてみると、類似同業者に比準して算定した適正管理料の額をはるかに超えた異常なものであり、殊更に高額な管理委託料を支払うべき合理的な理由も認められず、また、管理委託契約に基づく行為又は計算によって算出された請求人の所得税の負担は、適正管理費の額によって算出された請求人の各年分の所得税の負担に比し、各年分ともかい離していることが認められるから、その高額と認められる部分の金額は、必要経費の額に算入することはできない。

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過大な不動産管理料につき所得税法第157条を適用して否認した更正は適法であるとした事例

裁決事例集 No.38 - 117頁

 所得税法第157条にいう「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」か否かは、同族会社の行為又は計算に基づいて算出された税額と通常あるべき行為又は計算に引き直して算定された税額とのかい離によって判断すべきであり、また、その判断に際しては、納税者が当該同族会社の役員として受領した報酬額及び当該同族会社の法人税の額を考慮すべきものではないと解されるところ、認定によれば、原処分庁の算定した同業者の不動産管理料割合は適正と認められ、これを基に算出された適正管理料の額に基づいて計算した請求人の所得税額は請求人の申告所得税の額に比べ著しくかい離していることが明らかであり、本件不動産管理委任契約に基づく行為又は計算は、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められるから、請求人の不動産所得の金額を所得税法第157条の規定を適用して算定した原処分は相当である。

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過大な不動産管理料につき、所得税法第157条を適用して否認した更正は適法であるとした事例

裁決事例集 No.44 - 198頁

 所得税法第157条に規定する同族会社の行為又は計算の否認は、同族会社たる法人の選択した行為又は計算が実在し、それが私法上有効なものであっても、その私法上許された形式を濫用し、異常な取引形式を選択した場合において、それが所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、実質課税の原則及び租税負担公平の原則の見地から税務計算上これを否認し、通常あるべき行為又は計算に引き直して税法を適用するものである。
 ところで、原処分庁が算定した同業者の不動産管理料割合は適正と認められ、これを基に算出された適正管理料の額に基づいて計算した請求人の所得税額は請求人の申告所得税の額に比べて著しくかい離していることが明らかであり、本件不動産管理委託契約に基づく行為又は計算は、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められるから、請求人の不動産所得の金額を所得税法第157条を適用して算定した原処分は相当である。

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建物を同族会社に賃貸して、同族会社が又貸しによって得た収入に比し極めて低額又は零円の賃貸収入を得ている場合において、所得税法第157条を適用して行為・計算を否認してされた更正は、適法であるとした事例

裁決事例集 No.47 - 169頁

 請求人は、その所有する本件建物を同族会社であるA社及びB社に賃貸しているところ、[1]A社、B社とも、当該賃貸部分を各1社に又貸ししており、[2]両社の売上げは、いずれも、この又貸し料収入がすべてであり、[3]請求人に支払っている賃借料は、A社は又貸し料収入の半額以下、B社は零円であることが認められる。
 両社の又貸し料収入から両社が支払った管理費実費負担額及び請求人に支払った賃借料を控除した金額を管理料相当額とし、その又貸し料収入の額に対する割合を管理料相当額割合として、比準同業者の平均管理料割合と比較すると、前者は後者をはるかに超える異常なものと認められるところ、請求人とA社、B社との間の賃貸借契約は、同族関係者であるが故に可能な行為又は計算であり、経済人としては不合理、不自然なものといわざるを得ない。
 そこで、請求人の各年分の所得税額について比準同業者の平均管理料割合等により算出して計算した所得税額と請求人の確定申告による所得税額とを比較すると、両社の所得税額には著しいかい離があり、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となっていると認められる。
 したがって、所得税法第157条を適用して行為・計算を否認してされた更正は適法である。

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青色申告書に係る更正の理由附記に不備はなく、また、医療機器の支払リース料について、所得税法第157条“同族会社等の行為又は計算の否認”を適用して更正処分をしたことは相当とした事例

裁決事例集 No.48 - 119頁

  1.  原処分庁は、請求人(医院)の同族会社に対するリース料(「本件リース料」)の支払につき、所得税法第157条を適用して更正処分をした。
  2.  請求人は、更正通知書に附記された理由は、「適正な償却費」とは具体的に何を意味しているか不明であり、その額が「所得税の負担を不当に減少させる」こと、「リース料の妥当性」及び「適正なリース料の算定」とどう関係するのか、その判断過程が具体的に示されていず、不備である旨主張する。
     ところで、附記された文章の表現をみると、請求人の主張するように、用語の意味及び文章の前後の関連性にやや明確性に欠ける点も認められるが、理由附記が適切であるか否かは、記載された理由全体をみて判断すべきであって、個々の用語又は文章の表現のみによって判断すべきものではない。
     そうすると、本件更正の附記理由では、原処分庁が、どのような資料に基づき、どのような理由で課税処分をしたのか、その根拠、判断過程とも明らかにされているというべきであり、理由附記に不備はない。
  3.  各年分の適正リース料の額は、比準会社のリース料倍率を適用して算定していることが認められる。そのリース料倍率は、比準会社が、医院等を営む者に対し、リース期間5年でリースしている物件を選定して算定したものであり、その算定の基礎とした比準会社は適正に選定されており、リース料倍率及び適正リース料の額の計算過程のいずれにも誤りはない。
     請求人は、比準会社の規模に類似性がない旨主張するが、本件においては、リース会社がリース物件をリースするに当たって、医院等を営む者に対し、通常行われているリース取引に係るリース料の額、つまり取引内容の類似性を判断すれば足りるのであって、リース会社の規模の類似性についてまで判断要素とする必要は認められない。
     したがって、本件リース料の額の支払に関する請求人の行為又は計算が、所得税法第157条に規定する請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認定した本件更正処分は相当であり、本件リース料の額のうち、各年分の適正リース料の額を超える部分の金額は、各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費の額に算入することはできない。

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請求人所有の本件土地上に赤字法人である同族会社に対して地上権を無償で設定した後に本件土地と地上権を第三者に譲渡した行為は、所得税法第157条に該当するとした事例

裁決事例集 No.55 - 175頁

 請求人は、本件契約を同族会社が赤字法人であることを奇貨として譲渡代金の分散を図る目的でしたものではなく、また、原処分庁が所得税法第157条を適用したことは、借地権等の設定について、同法第59条第1項の規定の適用がないということについての納税者の予見可能性を無視したものであり、所得税基本通達59−5の趣旨に反し、著しく信頼を損なうものである旨主張する。
 しかしながら、請求人及び同族会社が本件底地及び本件地上権を譲渡するに至った一連の行為の事情からして、本件地上権を同族会社に無償贈与する合理的な理由を見いだすことはできず、また、無償贈与した行為は、請求人を同族関係者とする同族会社であるがゆえになし得た行為であり、経済的合理性を欠く行為と認められ、この行為が請求人の所得税の負担を不当に減少させていることが認められる。
 また、所得税法第59条第1項は、借地権等の設定について、みなし譲渡課税をする旨規定していないが、そのことをもって同法第157条の規定が適用できないとするものではない。

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請求人が同族会社に支払った月額賃料と原処分庁が算定した類似建物月額賃料との差額が1.4倍ときん少であっても、所得税の負担を不当に減少させる結果となっているとして所得税法第157条の規定の適用をした課税処分は正当であるとした事例

裁決事例集 No.55 - 196頁

 請求人は、仮に類似建物月額賃料を一応の基準としても、本件月額賃料は類似建物月額賃料の1.4倍程度のものであり、類似建物月額賃料との比率の開差は極めて合理的な偏差の範囲にあり、著しく過大なものではないから、本件賃料の決定行為に不当なものはない旨主張する。
 しかしながら、所得税の負担を不当に減少させる結果となったか否かについては、単に基準となるべき適正な賃料との比率の開差の大小のみによって一律に判断すべきものではなく、その基準となるべき適正な賃料に基づいて算出した納付すべき税額と請求人が決定した賃料に基づいて算出した納付すべき税額とを比較し、その税額のかい離がどの程度であるかを考慮した上で判断すべきものと解するのが相当である。
 請求人の場合、本件病院用建物に係る本件月額賃料の決定は、同族会社とその関係人である請求人であるがゆえになしえた行為又は計算であることが認められ、請求人のこのような行為は、純経済人の行為として不自然・不合理な行為又は計算によるものであり、その結果本件月額賃料が不当に高額なものとなっており、請求人の所得税の負担を不当に減少させているものと認められる。

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請求人の同族会社からの建物賃貸料収入が当該同族会社の又貸し賃貸料収入に比して余りに低額であるとしてなされた所得税法第157条による更正処分が適法であるとされた事例

裁決事例集 No.59 - 112頁

 請求人は、その同族会社からの建物賃貸料収入が当該同族会社の又貸し賃貸料収入に比して余りに低額であるとしてなされた所得税法第157条による更正処分に対し、同族会社は賃借人に対して経営指導等経済的付加価値を有する役務を提供しており、その又貸し賃貸料収入には同役務に係るコンサルタント料が含まれているから、更正処分を取り消すべきである旨主張する。
 しかしながら、同族会社が賃借人に対して経営指導等をしている事実は認められず、請求人の主張には理由がない。
 また、請求人の確定申告の管理料相当額割合が比準同業者の平均管理料割合をはるかに超える異常なものと認められるところ、請求人と同族会社との賃貸借契約は、請求人が当該同族会社の株主・代表取締役であるがゆえに可能な行為又は計算であり、純経済人として、不合理、不自然といわざるを得ないから、請求人の主張には理由がない。
 ただ、原処分庁が認定した比準同業者の平均管理料割合の計算において、比準同業者として適当でない者が含まれており、また、その収入(又貸し料)に含めるべきでない臨時的一時的収入が含まれているので、審判所において再計算したところ、平成6年分はその一部を取り消すべきである。

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同族会社への不動産賃貸料につき、無利息の保証金に係る経済的利益を加算すると、必ずしも低額でないから、所得税法第157条の適用はないとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 No.60 - 344頁

 請求人は、本件土地の賃貸借に伴って貸付先である同族会社から無利息の保証金を受領しており、この保証金から生ずる経済的利益の額と本件土地の賃貸料を加算すれば、必ずしも低額でない旨主張するが、本件土地の賃貸料は、同地域の他の比準同業者の賃貸料に比し低額であり、請求人が主張する保証金から生ずる経済的利益の額を加えたところで判断しても、低額であることが認められ、所得税法第157条の規定を適用して不動産所得の計算をした原処分は適法である。

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請求人らが同族会社から受け取る土地建物管理運営契約に基づく賃貸料につき、所得税法第157条を適用した更正処分は適法であり、同条の適用に当たっては請求人らの役員報酬を考慮する必要はないとした事例

裁決事例集 No.63 - 171頁

 請求人らは、請求人らと同族会社との間の土地建物管理運営契約書に基づく行為又は計算は、所得税法第157条第1項が適用される著しく異常な取引といえない旨主張するが、同族会社が第三者に本件賃貸物件を転貸して得る賃貸料収入と請求人らが同族会社から受け取る地代家賃との差額は適正管理料相当額をはるかに超える異常なものと認められること、及び同族会社が請求人らに支払う地代家賃は年一回の清算で同族会社の当期利益が黒字になるように決められていることからすると、請求人らと同族会社との間の土地建物管理運営契約書に基づく行為又は計算は、請求人らが出資者かつ代表取締役あるいは取締役という関係にあるがゆえに可能な行為又は計算であり、純経済人として、不自然、不合理なものといわざるを得ない。
 請求人らは、所得税法第157条第1項の適用に当たっては、同族会社から請求人らに支払われた役員報酬を考慮すべきである旨主張するが、請求人らの役員報酬は、代表取締役及び取締役としての役務の提供の対価として支給されるものであって、所得税法第157条第1項を適用した請求人らの不動産所得とは所得の発生根拠を異にする別個のものであり、同条同項の適用に当たり、請求人らの役員報酬を考慮する必要はない。
 請求人らは、請求人らが法人を設立せず、個人の不動産所得として申告した場合と比較すると、本件更正処分は本来生じようもない所得に課税している旨主張するが、現行の租税法の下においては、事業者が選択した企業形態に応じてそれぞれ税法が適用され、租税額が決定されるのであって、その選択のいかんによって事業者が納付すべき租税額が異なってくることは法が当然に予定していることである。
 また、「所得税の負担を不当に減少させている」との要件の判断に当たっては請求人らが選択していない企業形態によった租税額と対比、考慮する必要はない。

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同族会社に支払った医療機器等の賃借料の額が過大であるとして、所得税法第157条を適用した更正処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.64 - 207頁

 請求人は、自己が取締役を務める同族会社との間で行った医療機器等の賃貸借契約はレンタル方式であるにもかかわらず、原処分庁は賃貸借契約に係る回収期間を経過した後の賃貸料の金額を所得税法第157条の規定を適用し、リース方式であると決めつけて当該賃貸料の金額を算出したことは、違法である旨主張する。
しかしながら、一般の賃貸業者においては、医療機器等を賃貸するとした場合、賃貸借期間経過後の賃貸料の金額を当初の契約に定められた金額の10分の1の金額としていることが認められるにもかかわらず、請求人が医療機器等の耐用年数を超えても、賃借料を減額することなく継続して当初の契約に定められた賃借料を支払っていることは、同族会社とその関係人であるがゆえになしえた経済的合理性を欠く行為又は計算であり、その結果、請求人の所得税の負担を不当に減少させていると認められるので、医療機器等の賃貸借契約がレンタル方式であるかリース方式であるかにかかわらず、所得税法第157条の規定を適用し、医療機器等ごとに、一般の賃貸業者が同種の医療機器等を賃貸する場合に賃貸借期間中に支払いを受ける賃貸料総額を月額賃貸料で除して賃貸料総額を回収する期間を算出し、当該回収期間経過後の賃貸料を当初の契約に定められた金額の10分の1に減額して請求人が支払うべき適正な賃借料を算出するのが相当と認められる。

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審査請求人が営む不動産貸付けについて、同族会社1社への専属的な貸付けであり、本件貸付けの維持管理業務の程度が実質的には相当低いなどとして、不動産所得を生ずべき事業には当たらないとした事例

裁決事例集 No.68 - 59頁

 請求人は、本件貸付けによる収入が年間700万円以上であること、また、9年間事業規模相当として申告してきたことなどを理由に本件貸付けは不動産所得を生ずべき事業に当たる旨主張する。
 事業性については、[1]営利性・有償性の有無、[2]継続性・反復性の有無、[3]自己の危険と計算における事業遂行性の有無、[4]取引に費やした精神的肉体的労力の程度、[5]人的・物的設備の有無、[6]取引の目的、[7]事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合勘案して判断されるべきところ、本件貸付けについては、不動産貸付けの目的、営利性、継続性などを部分部分としてみた場合においては、直ちに事業ではないということはできない要素も認められる。
 しかしながら、本件貸付けは、請求人が代表取締役社長を務める同族会社F社への専属的な貸付けのみであり、事務所の修理等は専ら賃借人である同社が主導的に行い、賃借料の決定は同社の業績が優先的に考慮されていることから、請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、事務所は、F社が利用しやすいようF社が所有する事務所の1階とワンフロアで一体的に利用できるよう改造されており、その構造からみて他に賃貸等が可能である等の汎用性がないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算における事業遂行性は希薄であると認められる。
 さらに、請求人の配偶者Gが大半の時間を費やして行っている清掃などには、本来F社がその業務として行うべきものが含まれており、GがF社の取締役に就任していることに照らすと、本件貸付けにおいて貸主として本来行うべき維持管理業務の程度は、実質的には相当低いことが認められる。
 これらの諸点を総合して勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。
 なお、請求人が本件貸付けを9年間事業規模相当として申告し、原処分庁がこれに対して是正しなかったとしても、そのことをもって本件貸付けの事業性が認められるものではない。

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請求人が同族会社から受領した土地の賃料が著しく低額であるとして、所得税法第157条を適用した更正処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.73 - 278頁

 同族会社であるG社は、請求人から賃借している本件各土地をH社に転貸するなどし、それに伴う業務及び経済的負担を負うとともに、本件各土地転貸料を得ているのであるから、実質的にみれば、本件各土地転貸料と本件各土地賃料との差額が、G社が請求人から取得する本件各土地の管理の対価、すなわち管理料相当額とみることができる。
 したがって、本件各土地賃料の額が不当に低額であるか否かは、当該管理料相当額が適正か否かを基準に判断すべきである(以下、この基準により適正賃料を算定する方法を「適正管理料置換方式」という。)。
 そこで、審判所において選定した比準同業者の賃貸料収入の額に占める管理料の割合の平均値をもって適正管理料割合とし、当該適正管理料割合を本件各土地転貸料に乗じることにより本件各土地に係る適正管理料を算定した。
 そして、適正管理料置換方式は、土地賃貸借契約を管理委託契約という契約形式に置き換えるものであるから、適正管理料の算定に当たっては、管理委託契約では生じない土地賃貸に係る保証金の差し入れを加味するのが相当であり、請求人は、G社から本件各土地賃貸借契約に基づき定期借地権の設定による保証金(2億円)を受領していることから、当該保証金の運用益相当額を算定して本件土地転貸料から控除するのが相当である。
そこで、当該保証金に係る運用益相当額を保証金の経済的利益の課税に当たって適正な利率として用いられている10年長期国債の年平均利率を用いて算定した。
 以上のことから、適正管理料置換方式による本件各土地に係る適正賃料(審判所認定適正賃料)の額は、本件各土地転貸料の額から本件適正管理料の額及び本件運用益相当額を控除した後の金額であり、本件各年分に係る審判所認定適正賃料の額を本件各土地賃料の額と比較すると、後者は著しく低額であることが明らかであることから、本件各賃貸借契約は請求人が当該同族会社の株主・代表取締役という関係でなければ結ばれ得ないものであり、客観的にみて経済的に合理性を欠き、不自然・不合理であるといわざるを得ない。
 なお、本件においては、G社は、請求人から賃借している本件各土地を転貸して、本件各土地転貸料を得ているところ、原処分庁においては、本件各土地の近隣において、請求人と類似の条件で土地を貸し付けていると認められる者を比準同業者として選定し、当該比準同業者の平均賃料を適用する方法により、本件各土地に係る適正賃料を算定しているので、原処分庁の主張する適正賃料に合理性を認めることはできない。

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請求人が同族会社に賃貸した土地の賃料の額を容認した場合には、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になるとした事例

平成23年7月8日裁決

《ポイント》
 この事例は、請求人が同族会社に賃貸した土地で、その同族会社がまる1第三者に駐車場用地として転貸したもの、まる2第三者に賃貸するための倉庫・事務所用建物の敷地として使用したもの、まる3第三者に賃貸するための店舗・事務所・住居用建物の敷地として使用したものに係る賃料の額につき、所得税法第157条の規定の適用が認められるか否かを判断したものである。

《要旨》
 請求人は、同族会社が請求人との間で合意した土地の賃貸借契約に係る賃料として収受した本件賃料額を容認しても、請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果にはならない旨主張する。
 しかしながら、所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項の「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかは、当該行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かにより判断すべきであり、「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」とは、経済的合理性を欠いた行為又は計算の結果として所得税の負担が減少することをいうものと解すべきであって、土地の賃貸借契約に関していえば、立地条件、用途、規模などの貸付地の状況が類似する土地(比準貸付地)であれば、特別の事情がない限り、賃料の額は同程度となるといえるから、同族会社とその株主等との間で貸し付けられた土地と立地条件、用途、規模などが類似する比準貸付地を抽出し、その比準貸付地の平均賃料を用いて算定した適正賃料額と実際に株主等が同族会社から収受した賃料の額とを比較して、同族会社がその株主等と合意した賃料の額が経済的合理性を欠くか否かを判断することも許されるというべきである。本件賃料額は、本件各年分においていずれも適正賃料額を大きく下回り、これにより請求人の所得税の額も減少するのであるから、同族会社が請求人との間で合意した本件賃料額を容認した場合には請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果になると認められる。

《参照条文等》
 所得税法第157条

《参考判決・裁決》
 浦和地裁平成13年2月19日判決(税資250号順号8839)
 東京地裁平成9年4月25日判決(訟月44巻11号1952頁)

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個人で事業を営む請求人が同族会社に支払った不動産賃借料について、地理的条件等の類似する不動産賃借料よりも高額であることから、所得税法第157条を適用した事例(平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分、平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し、棄却・平成28年5月30日裁決)

平成28年5月30日裁決

《ポイント》
 本事例は、不動産の賃料が、地理的条件、用途、規模、構造などの状況が類似すれば、特別な事情がない限り、その金額は同程度になることから、所得税法第157条の適用の検討に当たり、地理的条件等の類似性が確保された不動産の平均賃料と請求人が同族会社に支払った賃料を比較することには合理性があるとしたものである。

《要旨》
 請求人は、原処分庁が所得税法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認等》第1項の規定の適用に当たって算定した診療所(土地を含む。)の適正賃料について、その算定方法に合理性がないことから、請求人が同族会社に支払った賃料(本件賃料)を必要経費に算入したことは請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となるとは認められない旨主張する。
 しかしながら、同項に規定する「所得税の負担を不当に減少させる結果となる」と認められるか否かは、同族会社の具体的行為又は計算が通常の経済人の行為等として経済的合理性を有しているか否かを基準として判断すべきであり、不動産の賃料は、地理的条件、用途、規模、構造などの状況が類似すれば、特別な事情がない限り、その金額は同程度になることから、請求人が本件賃料を支払ったことについて通常の経済人の行為として経済的合理性を有しているか否かを判断する際に、地理的条件等の類似性が確保された不動産の平均賃料と本件賃料を比較することには合理性があると認められる。そして、原処分における診療所の類似物件の抽出基準は地理的条件等の類似性が確保されており、本件賃料は当該基準に従って抽出した不動産の平均賃料(診療所の適正賃料)よりも高額であることから、請求人が本件賃料を支払ったことは通常の経済人の行為として経済的合理性を有していない。したがって、請求人が本件賃料を必要経費に算入したことを容認した場合には請求人の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる。
 なお、原処分庁による診療所の類似物件の平均賃料の算定に一部誤りがある。

《参照条文等》
 所得税法第157条第1項

《参考判決・裁決》
 平成23年7月8日裁決(裁決事例集84)

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