納付及び還付

過誤納金の還付

  1. 申告納付手続き
  2. 過誤納金の還付(12件)

申請に係る所有権移転の登記原因が実態と異なることを理由とする還付通知の請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.24 - 159頁

 請求人は、本件登記は登記申請手続からみれば登記原因を売買とする所有権移転登記であるが、実質は譲渡担保契約の解除又は終了を原因とする抹消登記であるから、既に納付した登録免許税の額と正当額との差額について還付請求を求めるものであるが、登記官は、不動産登記法第49条各号に掲げる事項に関するいわゆる形式的審査権を有するにすぎず、当該申請の内容が実態に則したものか否かを審査するいわゆる実体的審査権までは有していないから、請求人の主張のように、実態とそごしていたとしても、それを理由に当該登記を当然無効とすることはできないのであって、請求人の主張には理由がない。

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登録免許税法第31条第2項に規定する請求期限を徒過してなされた還付通知請求は適法な請求ではないとした事例

裁決事例集 No.59 - 401頁

 請求人が還付通知請求書を提出したのは、登録免許税法第31条第2項に規定する還付通知請求をすることができる期間を途過した後であるから、仮に、請求人の主張に理由があるとしても、本件還付通知請求には理由がないといわざるを得ない。

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共同抵当権の設定登記をして納付した登録免許税については、その後、抵当権の追加担保の設定登記をすべきであったとして、錯誤を登記原因として更正登記がなされても、登録免許税の過誤納には当たらないとした事例

裁決事例集 No.61 - 713頁

 請求人は、当初、共同抵当権の設定登記をした後、抵当権の追加担保の設定登記をすべきであったとして更正登記申請をしたのに対し、登記官が登記原因を錯誤として当該更正登記を認めたのであるから、当初の共同抵当権の設定登記に係る登録免許税については、登録免許税法第31条第2項に規定する過誤納に当たると主張するが、登記官においては、形式的審査権による審査の結果に基づき、当該更正登記申請に形式的な無効原因がないため、申請書記載の登記原因をそのまま認容したにすぎないと認められるから、更正登記申請が受理されたことをもって、当初の登記時に遡及して、登記申請行為及び登記を受けたこと自体が変更され、登録免許税の額が減額変更されるものではないので、請求人の主張には理由がない。

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震災特例法の免税規定を知らずに登録免許税を納付した者が、その後、被災者証明書を添付して行った還付通知すべき請求に対してなされた、還付の通知をすべき理由がない旨の通知処分は適法とした事例

裁決事例集 No.62 - 480頁

 請求人は、阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(震災特例法)第37条《阪神・淡路大震災の被災者が新築又は取得した建物に係る所有権の保存登記等の免税》第1項の規定の存在を知らずに登録免許税を納付したもので、過誤納といえるから、所轄税務署長に対し還付通知すべきである旨主張する。
 しかしながら、震災特例法第37条第1項は、新築又は取得をした建物で政令で定めるものの所有権の保存又は移転の登記については大蔵省令で定めるところにより受けるものに限り登録免許税を課さない旨規定し、震災特例法施行規則第20条第1項は、その登記申請書に市町村長の証明に係る書類で阪神・淡路大震災により所有建物に被害を受けた者の氏名及び住所並びに当該建物の所在地の記載があるものを添付しなければならない旨規定しており、そして、震災特例法には、登記申請時に証明書の添付がない場合でも当該免税規定の適用を受けることができるとするゆうじょ規定は存在しないため、本件で過誤納の事実があったということはできず、請求人の主張には理由がない。

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登録免許税を納付して登記を受けた後であっても一定の書類を添付した場合にはゆうじょ的に非課税規定の適用を認めるべきであるとの請求人の主張が排斥された事例

裁決事例集 No.64 - 574頁

 請求人は、登録免許税法第4条《公共法人等が受ける登記等の非課税》第2項(本件非課税規定)に規定する証明書(本件証明書)を添付せず、登録免許税法第9条《課税標準及び税率》の規定に基づいて登録免許税を納付したが、本件証明書を添付しなかったのは、原処分庁の職員や司法書士の指導不足等が原因であるから、後日、本件証明書を添付して還付通知請求をした場合でも、本件非課税規定が適用されるようゆうじょの計らいがあるべきであると主張する。
 しかしながら、請求人は登記申請時に本件証明書を添付しなかった以上、本件非課税規定を適用することはできず、また、登録免許税法には、本件証明書の添付がなかった場合でも登録免許税を非課税とする旨の規定、あるいは、ゆうじょ的に扱うべき規定もないことから、原処分庁の行った還付通知をすべき理由がない旨の通知処分は適法である。

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納付された登録免許税は、正当に計算され、登記申請は適法に受理されたものであるから、その後抹消登記をしても、遡及して登録免許税が変更、減額されるものではないとした事例

裁決事例集 No.67 - 778頁

 登録免許税は、登記、登録等を担税力の間接的表現として捉え、それを課税の対象とする租税であり、登記の時点を捉え、登記したという行為に画一的に課されるものである。一方、登記官は、いわゆる形式的審査権を有するにすぎず、当該申請が実体関係と符合しているか否かを審査する実体的な審査権まではないと解されている。
 したがって、いったん登記されると、不動産登記法第49条各号の規定の却下事由がない限り、登記が当然に無効となるものではなく、まして、当該登記をしたという行為自体が登記の時点に遡及して消滅するものではないと解され、そうすると、登録免許税の課税標準及び税額についての計算に誤りがなく、一度適法に登記を了し目的を達したときは、その登記を受けた者の納税義務は確定し、その後、抹消、変更、更正登記がされても、その確定した登録免許税の課税標準及び税額は何ら影響を受けるものではないと解される。
 本件では、本件登記申請に際して納付された本件登録免許税は、登録免許税法等に基づいて正当に税額の計算が行なわれており、また、本件登記申請には不動産登記法第49条各号に該当する却下事由があると認めるに足りる証拠はなく、適法に受理されたものである。
 したがって、請求人が本件登録免許税の額の計算に誤りがないまま、適法に本件登記を受けた以上、その後に抹消登記をしても、本件登記申請時に遡及して、本件登記申請行為及び本件登記を受けたこと自体が変更され、本件登録免許税の額が変更、減額されるものではないと認められるから、本件登録免許税に過誤納があるとは認められない。

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登録免許税法第13条第2項の規定を適用しないで登録免許税を納付し当該登記を受けた後において、同項の規定の適用によって納付税額が過大であったとする還付請求は認められないとした事例

裁決事例集 No.69 - 427頁

 請求人は、[1]社会通念上、一般に、税の申告の修正又は訂正が認められているところ、登録免許税法に登記申請の修正を認めない旨の規定はないことから、本件規定の適用を求め、同法第13条第2項に規定する証明書(以下「本件証明書」という。)を提出して行った本件還付通知請求は認められるべきであり、また、[2]共同担保である他の物件の根抵当権移転登記において、既に根抵当権の極度額を課税標準とする登録免許税を納付済みであるから、本件登記申請に本件証明書類の添付がないという手続きの不備を理由に本件還付通知請求を認めないことは、二重課税を容認することとなり違法である旨主張する。
 しかしながら、[1]登録免許税法には、本件証明書の添付がなかった場合でも本件規定の適用を認める旨の規定はなく、更に、本件登記の完了後において、本件証明書類を添付して本件還付通知請求をしても、本件規定を適用すべき事由はない、また、[2]本件登記に係る登録免許税の額は、同法第9条の規定に基づいて算出されたもので税額に誤りはないことから、本件還付通知を認めることはできない。

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登録免許税法第4条《公共法人等が受ける登記等の非課税》第2項の規定の適用を受けないで登記を受けた後において、非課税の登記に該当するものであることを証する書類を提出しても、既に納付した登録免許税の還付を受けることはできないとした事例

裁決事例集 No.71 - 741頁

 登録免許税の納付義務は、登記の時に成立し、納付すべき税額は、納税義務の成立と同時に特別の手続きを経ないで確定するのであり(国税通則法第15条第2項第12号及び同条第3項第5号)、登録免許税を納付した場合において過誤納が生じるのは、国税として納付された金員に対応する確定した登録免許税額が、登記の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていないことなどにより存在しない場合である。
 本件の場合において過誤納が生じているか否かについてみると、各登記につき租税特別措置法第72条第1項及び登録免許税法第9条の規定に基づき適正に登録免許税額が算出されており、本件各納付も正しく行われた税額の計算に基づき行われたものであるから、請求人の各登記が、登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていないとはいえず、本件各納付によって過誤納が生じているとはいえない。
 また、本件証明書を登記後に提出した場合に非課税規定の適用を認める規定が存在しない以上、登記後に本件証明書を提出したとしても非課税規定の適用を認めることはできない。

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宗教法人が境内建物等の所有権の取得登記について登録免許税の非課税規定の適用を受けるためには、登記の申請書に非課税証明書の添付が必要であるとした事例

裁決事例集 No.77 - 461頁

 登録免許税法第4条第2項及び同法別表第三(以下「別表第三」という。)の12第3欄の第1号は、宗教法人が、専ら自己又はその包括する宗教法人の宗教の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物の所有権の取得登記又は同条に規定する境内地の権利の取得登記については、登録免許税を課さない旨規定するが、別表第三の12第4欄は、これを同号の登記に該当するものであることを証する財務省令で定める書類(以下「本件非課税証明書」という。)の添付があるものに限る旨規定している。また、登録免許税法第4条第2項は、登録免許税を課さない登記等は、別表第三の12第4欄に財務省令で定める書類の添付があるものに限る旨の規定がある登記等にあっては、当該書類を添付して受けるものに限る旨、その要件を明確に規定している。これは、権利に関する登記の申請があった場合、登記官の審査対象は、申請書類及び登記簿に限定される(形式的審査権)ことも考慮し、宗教法人が本件非課税規定の適用を受ける際の要件として、本件非課税証明書の添付を要求したものと解される。
 これを本件についてみると、請求人は、本件各登記の申請の時に本件非課税証明書を添付せず、本件非課税規定を適用しないところで登録免許税の額を算出してこれを納付しており、原処分庁は、本件非課税証明書の添付がない本件各登記申請書を受理し、本件各登記を完了したことが認められる。
 本件非課税規定は、登録免許税を非課税にするという例外的な規定であることからすると、その適用に際しては、厳格に解釈するべきであり、本件各登記について手続的要件を満たしていない以上、本件非課税規定の適用を受けることはできないというべきである。

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登録免許税の過誤納を求める還付通知請求は、還付通知請求期限を徒過して提出されたものであるから、その請求は不適法であるとした事例

平成24年5月22日裁決

《ポイント》
 本事例は、原処分庁の「登録免許税の過誤納金の還付請求権は、時効(消滅時効5年)により消滅している」旨の不適当な主張にとらわれることなく、還付通知請求自体の適法性を検討して判断したものである。

《要旨》
 請求人は、土地及び工場財団について、平成18年6月に抵当権設定登記申請を行った際に納付した登録免許税額が過誤納となったことについて、まる1原処分庁職員の指導に基づき登録免許税額を算出したことに起因して過誤納となったものであること、まる2原処分庁は、登記機関として登録免許税法第26条《課税標準及び税額の認定》第1項に基づき申請書に記載された課税標準の金額等の調査をすべきであったにも関わらずこれをしなかったことから、平成23年12月にした本件還付通知請求に対しては、過誤納の事実に基づき還付通知をすべきである旨主張する。
 しかしながら、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受ける手続を利用することができる地位を保証しているものと解されることからすれば、同項の規定に基づく還付通知をすべき旨の請求に対する拒否通知の適否を判断するに当たっては、登記等を受けた者が、登記等を受けた日から1年を経過する日までに簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用していることが前提となるものと解するのが相当であるところ、本件還付通知請求は、同項に規定する還付通知をすべき旨の請求ができる期間(1年)を経過した後に行われた不適法なものであるから、その他の点を判断するまでもなく、原処分は、適法なものである。

《参照条文等》
 登録免許税法第31条第2項

《参考判決・裁決》
 最高裁平成17年4月14日第一小法廷判決(民集59巻3号491頁)

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納付済みであった登録免許税について、事後に震災特例法の規定による登録免許税の免税の特例に当たるとしてなされた還付通知をなすべき旨の請求が認められないとした事例

平成25年6月3日裁決

《ポイント》
 本事例は、震災特例法の登録免許税の免税規定の適用を受けるには、登記申請の際に法所定の書類の添付が必要であり、登記の際その添付がなかった場合には、既に確定した登録免許税を事後に免除することはできないとしたものである。

《要旨》
 東日本大震災の被災者である請求人は、請求人が行った所有権移転登記及び抵当権設定登記(本件各登記)が、被災代替建物に係る土地の取得のために行ったものであり、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(震災特例法)第40条《東日本大震災の被災者等が被災代替建物に係る土地を取得した場合の所有権の移転登記等の免税》の規定(本件免税規定)に該当することから、登記申請の際に必要書類の添付がなくても本件免税規定の適用には問題がなく、本件各登記に係る登録免許税は過誤納となっている旨主張する。
 しかしながら、登録免許税の納付及び納付すべき税額は、国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項第12号及び第3項第5号の規定により、登記の時に成立し、その成立と同時に特別の手続きを要しないで確定するのであり、登録免許税第31条《過誤納金の還付》第2項によれば、登録免許税の納付をした場合において過誤納が生じるのは、国税として納付された金員に対応する確定した登録免許税の額が、登記の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する規定に従っていないなどの場合であるところ、本件各登記に係る登録免許税は、登録免許税法等の規定に従って適正に算出されており過誤納は生じていない。また、所有権移転登記の申請書に、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則第16条《東日本大震災の被災者等が被災代替建物に係る土地を取得した場合の所有権の移転登記等の免税》に規定する書類を添付しなかった場合について、既に確定した登録免許税を免除できる規定は存在しない。

《参照条文等》
 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律第40条
 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則第16条

《参考判決・裁決》
 平成21年6月9日裁決(裁決事例集No.77・461頁)

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登記記録の地目が畑で現況が墓地の土地の登記につき、登録免許税法第5条《非課税登記等》第10号に規定する「墳墓地に関する登記」に該当するかどうかは、不動産の現況ではなく登記記録の地目によるべきであるとした事例(登録免許税に係る還付通知の請求に対してされた還付通知をすべき理由がない旨の通知処分・棄却・平成27年5月25日裁決)

平成27年5月25日裁決

《要旨》
 請求人らは、請求人らが相続した登記記録の地目が畑で現況が墓地の土地の登記につき、登録免許税法第5条《非課税登記等》第10号に規定する「墳墓地に関する登記」に該当するかどうかは、登記記録の地目ではなく現況に従って判断すべきである旨主張する。
 しかしながら、同号は「墳墓地に関する登記」について非課税とするものであるところ、この規定を適用するについては、登記記録の地目が墓地と記録されている土地に限られる。これは、登録免許税が、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が自動的に確定する国税で、相続税等の財産税とは異なり流通税としての性格を有し、このような性格を持つ登録免許税において、登記官は、不動産登記の際、登記記録や登記申請に基づき、当該不動産の地目を形式的に判断する必要があるためである。したがって、登録免許税法第5条第10号に該当するかどうかは、不動産の現況ではなく登記記録の地目によるべきであることから、現況地目が墓地であっても、登記記録の地目が墓地でなければ、同号の適用はない。

《参照条文等》
 登録免許税法第2条、第5条第10号

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