法人税法の特例

移転価格税制

  1. 特定設備等の特別償却
  2. 中小企業者の機械等の特別償却
  3. 新築貸家住宅等の割増償却
  4. 交際費等の課税の特例
  5. 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例
  6. 土地の譲渡等がある場合の特別税率
  7. 収用等の場合の課税の特例
  8. 特定資産の買換えの場合等の課税の特例
  9. 準備金
  10. 税額控除
  11. 新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例
  12. 移転価格税制(6件)
  13. タックスヘイブン対策税制

原処分庁の採用した独立企業間価格の算定方式は採用できないが、銀行が行っている保証の保証料率を比較対象として独立企業間価格を算定するのは、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法であり相当であるとした事例

裁決事例集 No.63 - 454頁

 原処分庁は、格付会社が公表する格付け及びデフォルト確率によって請求人が外国子会社に対して行った保証取引及び保証類似取引の保証料率を求め、同料率によって請求人の保証取引等の保証料の独立企業間価格を算定する方法は、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に当たるので原処分は相当であると主張し、請求人は、同方法は市場のコンセンサスを得られていたとはいえないので相当でないと主張する。
 確かに、原処分庁の採用した方法は、審判所の調査によっても審査請求事業年度において金融市場の参加者が保証料率の算定に使用されていたとはいえず、同方法が合理的であるとするに足りる証拠は認められないので採用できないが、銀行が行っている保証取引の保証料率を比較対象として採用して請求人の保証取引等の保証料の独立企業間価格を算定する方法は、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法に該当するので、同方法により算定した独立企業間価格と原処分庁の認定した価格との差額を取り消すのが相当である。
 なお、本件各保証予約念書の差入れ及び本件各経営指導念書の差入れは、各金融機関が行っている保証と同等の法的責任を負っているということはできないので、これを保証取引とみなして独立企業間価格を算定することは相当でない。

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租税特別措置法第66条の4第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類が原処分庁の要求後遅滞なく提出されておらず、原処分庁の行った独立企業間価格の推定も適法であるから、同条第7項の推定規定を適用して移転価格課税を行った原処分は適法であるとした事例

裁決事例集 No.72 - 424頁

 請求人は、1租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第66条の4第7項に規定する帳簿書類等とは我が国の納税者が作成・保管することを要求されているものをいい、我が国の納税者が保有していない外国で作成されている資料は、同条第8項に規定する帳簿書類等に該当し、あくまでも入手努力義務があるにすぎないこと、2国外関連者との取引価格の算定資料については、同社との取引を独立した第三者間の取引と認識しているため、見積書以外はないところ、当該資料は原処分庁に提出したから、提出すべき資料はすべて提出していること及び3請求人が再販売価格基準法及び取引単位営業利益法により算定した独立企業間価格によれば所得移転はないことから、帳簿書類等を請求人が提示又は提出しないことを理由として原処分庁が同条第7項の推定規定を適用して更正をしたことは違法である旨主張する。
 しかしながら、原処分庁の調査担当職員が提示又は提出を求めた資料は国外関連者の財務諸表及び国外関連者との取引価格の算定資料であるところ、これらは、独立企業間価格の検討を行う上で基本となる資料であり、国外関連者が有する帳簿書類等であっても、措置法第66条の4第7項の帳簿書類等に含まれるものと認められるから、これらの独立企業間価格の算定に不可欠な帳簿書類等が遅滞なく提示又は提出されない場合には、同項の推定規定の要件を充足すると解される。また、請求人は、請求人が主張する再販売価格基準法が本件における独立企業間価格の算定方法として合理的であると主張するが、当該方法については、取引段階及び取引市場が国外関連取引とは異なっていることから、比較対象取引としての類似性を有するものとは認められず、請求人が加えた差異の調整も、当該差異の調整の算定根拠が不明で、その合理性が認められないから、請求人の主張は採用できない。さらに、請求人は、取引単位営業利益法により計算したところによれば所得移転はない旨主張するが、請求人が用いた方法は、比較可能性を検証する事項についての言及もないまま、単に請求人と国内関連企業2社の計3社の平均連結営業利益率と請求人が競合他社と認識している2社の営業利益率を比較しているものであり、合理性が認められないから、請求人の主張を採用することはできない。そうすると、原処分庁は、請求人から独立企業間価格の算定に必要な帳簿書類等の提示又は提出を受けることができず、他に比較対象取引となり得る取引も見出せなかったことから、本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定に当たって措置法第66条の4第2項第1号イ、ロ、ハ及びニに掲げる方法のいずれも適用することができなかったものであり、当審判所の調査の結果によっても、当該独立企業間価格の算定について当該各方法のいずれも適用することができないと認められる。
 したがって、原処分庁が、本件調査により国外関連者の総原価の額を把握し、措置法第66条の4第7項の規定により独立企業間価格を推定したことは適法である。

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海外子会社から○○用器具を購入する審査請求人の取引について移転価格税制を適用し、当該取引は利益分割法により算定した独立企業間価格で行われたものとみなされるとしてされた更正処分等は適法であるとした事例

裁決事例集 No.73 - 376頁

 本件審査請求における各争点については、次のとおりであるが、当審判所の調査によれば、移転価格税制を適用すべき取引は、原処分と異なり、平成13年3月期の「b製品」並びに平成14年3月期の「a製品」、「b製品」及び「d製品」の各取引のみと解するのが相当である。
 しかしながら、当該各取引に係る当審判所認定の国外移転所得金額は、いずれの事業年度も原処分額を上回ることとなるから、本件更正処分は適法というべきである。
 租税特別措置法関係通達66の4(4)−1は、利益分割法において分割対象とされる租税特別措置法施行令第39条の12第8項第1号に規定する「所得」は、原則として、売上総利益や当期純利益ではなく、事業活動の直接の結果を示す営業利益を用いることが合理的であることを明らかにしたものであって、営業損失を分割の対象から排除すべきか否かについて直接言及したものではない。当該所得とは、本件国外関連取引に参加したすべての関連者に生じた当該取引に係る損益(原則として営業損益)の総和をいうと解するのが相当であり、当該所得には、営業損失も含まれるというべきであり、請求人の主張は採用できない。
 また、財務会計上、為替相場の変動による所得とは、取引発生時と決算時又は決済時という2つの時点における為替相場の変動による換算レートの差から算出されるいわゆる為替差損益をいうのであり、財務会計上の営業外損益に属するものである。これに対し、請求人の予算レート(予算策定や事業計画を立てる際に使用するためにあらかじめ定めた円換算レート)と社内レート(外貨建取引を会計帳簿に記録する際の円換算レート)との差により算出される金額は、営業外損益となる為替差損益などではなく、当該所得に含まれるもの(当該所得の計算において除外すべきものではない)というべきであり、請求人の主張は採用できない。
 L部門に属する本件国外関連取引とM部門に属するC研究所の業務内容とは、事業セグメントを異にするというべきであり、同研究所の販売費及び一般管理費は、利益分割法の適用に当たり、本件国外関連取引に関連して支出された費用とみるべきではなく、原処分庁の主張は採用できない。
 一方、D研究所の研究開発業務には、L部門に属する業務が含まれていたものと認められ、同研究所の販売費及び一般管理費は、利益分割法の適用に当たっては、本件国外関連取引に関連して支出された費用とみて、分割対象利益及び分割要因を計算することが相当であるから、請求人の主張は採用できない。

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ロイヤルティに係る国外関連取引に基本三法と同等の方法を適用することはできず、残余利益分割法を適用して独立企業間価格を算定する方法が相当であるとした事例

裁決事例集 No.79

 請求人は、原処分庁が請求人とP国国外関連者との使用許諾取引(以下「本件国外関連取引」という。)には比較対象取引が存在せず、基本三法と同等の方法が適用できないとして残余利益分割法と同等の方法により独立企業間価格を算定したことについて、請求人とQ国非関連者との間における使用許諾取引(以下「本件比較対象取引」という。)は、本件国外関連取引と使用許諾に係る製品種別及び技術が同種であり、また、使用許諾に係る条件に差異はあるものの、実質的に同様の状況にあるか、当該差異がロイヤルティ率に影響を及ぼすと結論付ける合理的な理由はないことから、これを比較対象取引として「独立価格比準法と同等の方法」を適用することができる旨主張する。
 しかしながら、無形資産の使用許諾取引に「独立価格比準法と同等の方法」を適用する場合の比較対象取引の選定に当たっては、使用許諾に係る無形資産が「同種」であり、かつ使用許諾の時期、使用許諾の期間等の使用許諾に係る条件が「同様」であることが要件であるところ、本件国外関連取引と本件比較対象取引については、使用許諾に係る無形資産は「同種」であるが、1使用許諾開始時期、2使用許諾期間、3独占許諾・非独占許諾の許諾条件、4技術者派遣の有無及び5販売地域という使用許諾に係る条件が契約上も実態上も明らかに異なっているものと認められる。そして、本件においては、技術者派遣の有無、許諾条件の相違、許諾期間の制限の有無など、使用許諾に係る条件の差異が明らかに認められ、これらの差異は独立企業間価格(ロイヤルティ率)に影響を及ぼすものであり、その差異による具体的な影響額を調整することもできないものと認められることから、本件比較対象取引を使用して「独立価格比準法と同等の方法」を適用することはできない。

《参照条文等》
租税特別措置法第66条の4第1項、第2項
租税特別措置法施行令第39条の12第1項、第8項
租税特別措置法関係通達66の4(2)−1、66の4(2)−2、66の4(4)−1、66の4(4)−5、66の4(6)−1、66の4(6)−6

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国外関連者に対する貸付金利息について原処分庁が行った独立企業間価格の算定は相当であるとした事例(1平19.6.1から平25.5.31の各事業年度の法人税の各更正処分、2平19.6.1から平20.5.31、平22.6.1から平23.5.31及び平24.6.1から平25.5.31の各事業年度の法人税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分、3平24.6.1から平25.5.31の課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・平成28年2月19日裁決)

平成28年2月19日裁決

《ポイント》
 本事例は、国外関連者に対する貸付金利息の独立企業間価格について、原処分庁が独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法により算定したことは相当であるとした事例である。

《要旨》
 請求人は、国外関連者に対する金銭の貸付け(本件貸付け)に係る利息の独立企業間価格について、原価基準法と同等の方法により算定できる旨主張する。
 しかしながら、1当該国外関連者は請求人以外の者から借入れを行ったことはないこと、2原処分庁は本件各貸付けに係る比較対象取引を把握することができず、当審判所の調査の結果によっても当該比較対象取引を見いだすことができないこと、3請求人からも比較対象取引の具体的な提示がないことから、原価基準法と同等の方法を用いることはできず、他の基本三法と同等の方法を用いることもできない。そして、金融市場が存在する通貨の貸借取引について、比較可能な取引が実在しない場合には、融資取引の代表例である金融機関による貸付けを基準とすることにも十分な合理性があるというべきであるところ、本件貸付けの貸手である請求人は、本件貸付けの資金を金融機関からの借入れにより調達しており、当該借入れに係るスプレッド情報を得られるから、原処分庁が本件貸付けに係る利息の独立企業間価格を独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法である貸手が金融機関から本件貸付けと同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率を用いる方法により算定したことは相当である。

《参照条文等》
 租税特別措置法第66条の4
 租税特別措置法関係通達(法人税編)第66条の4関係
 移転価格事務運営要領

《参考判決・裁決》
 東京地裁平成18年10月26日判決(訟月54巻4号922頁)

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請求人の国外関連者に当たる子会社に対してされた米ドルの各貸付けにつき、その利息額の独立企業間価格の算定においては、各米国債の利率による方法が相当とした事例(1平成25年7月1日から平成26年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、2平成26年7月1日から平成27年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、3平成25年7月1日から平成26年6月30日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、13一部取消し、2全部取消し、平成29年9月26日裁決)

平成29年9月26日裁決

《ポイント》
 本事例は、米ドルの各貸付けに係る利息額の独立企業間価格の算定について、借り手の銀行調達利率による方法及び貸手の銀行調達利率による方法を採用することができないときは、各米国債の利率による方法を採用することが相当であるとしたものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人の国外関連者に該当する子会社(本件子会社)に対して請求人が行った米ドルの各貸付け(本件各貸付け)につき、その利息額の独立企業間価格の算定については、独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法である貸手の銀行調達利率による方法(米ドルのスワップレートにスプレッドを加えた利率)によることが最も適切である旨主張する。
 確かに、借手である本件子会社には非関連者である銀行等からの借入れの実績がなく、本件子会社が非関連者である銀行等から本件各貸付けと同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率を見いだすことができないことから、借り手の銀行調達利率による方法を採用することはできない。
 しかしながら、原処分庁が用いたスプレッドは、請求人が本件各貸付けと同様の状況で銀行等から借り入れた場合のスプレッドとして正確性を有するものとは認められず、当審判所の調査によっても他に請求人が非関連者である銀行等から本件各貸付けと同様の状況の下で借り入れたとした場合に付されるであろう利率を算定する適切な方法を見いだすことはできないことから、貸手の銀行調達利率による方法を採用することはできない。もっとも、本件各貸付けにおいては、発行日が本件各貸付けの貸付開始日と近接し、発行日から満期償還日までの期間が本件各貸付けの貸付期間に近似する各米国債(本件各米国債)が存在することが認められ、本件各米国債の利率は、本件各貸付けに係る資金を本件各貸付けと通貨、取引時期、期間等が同様の状況の下で国債等により運用した場合に得られるであろう利率に当たると認められることから、本件各米国債の運用利率による方法を採用することが相当というべきである。

《参照条文等》
 租税特別措置法(平成26年法律第10号による改正前のもの)第66条の4
 租税特別措置法関係通達(法人税編)66の4(7)-1、66の4(7)-4

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